Element Magic Trinity
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NEXT GENERATION
妖精の尻尾と幽鬼の支配者の抗争から数週間。
1番被害にあったルーシィや傷ついたレビィ達、他のギルドメンバーの傷も、心身ともに殆ど消えかけていた。
とくに大きな事件もなく―――――強いて言うならば、ルーがルーシィに「宣戦布告」した事くらいだ―――――時は過ぎていく。
そして現在、場所は魔法評議院の裁判所。かつてエルザがスケープゴートとして訪れたこの場所で、妖精の尻尾と幽鬼の支配者この2つのギルドの命運を大きく分ける重要な裁判が行われている。
・・・の、はずなのだが・・・
「ぐごおおおお・・・ズビー・・・ふご・・・ぐがああああ・・・ぐピイイイ・・・ぐごおおお・・・ぐがああああ・・・ぐごおおおお・・・」
その部屋には盛大なイビキが響いていた。
そのイビキの主はマスター・マカロフ。
被告席に立ちながら―――――彼は背が低いので踏み台がある―――――盛大なイビキを掻いて爆睡するという、何とも器用な事をやってのけている。
それを見た評議員10名は、笑う者、怒りに身を震わせる者、ポカーンと呆れる者・・・反応は様々だ。
「あ・・・あの、マカロフさん?」
「はい!」
声を掛けられたマカロフは、慌てて姿勢を正して起きる。
「裁判中なのですが・・・まさか寝てたりしてませんよね?」
「!滅相もない!ふぉほほほっ!」
・・・こんな珍事件が起こりながらも、裁判はこれ以外の問題は起こらず、滞りなく進められた。
そして何とか裁判は終わり、マカロフは廊下で評議員の1人である老人と話をしていた。
「幽鬼の支配者の解散・・・ジョゼの聖十の称号剥奪。そこまでは予想通りじゃ。しかし妖精の尻尾が『無罪』とは思いきった判決じゃのう」
「感謝せぇよマー坊。ワスも弁護スたけぇねぇ」
マカロフと話しているのは、魔法評議員六ノ席の『ヤジマ』。
「恩にきるわいヤン坊。ギルドが直ったら1度遊びに来なさいよ。ラーメン奢っちゃる」
「妖精ラーメンチャースー12枚のせで頼むわい」
「12枚は多すぎじゃろォ」
「今回の件もギルド間抗争禁止条約違反第四条から・・・」
「わぁーたわいっ!20枚でも30枚でものせてやる!」
「チャースーは12枚じゃ」
ズーズー弁で喋るヤジマは「チャーシュー」が「チャースー」、「禁止」が「きんス」になっている。
そんな会話をした後、マカロフは溜息をついた。
「まぁ・・・本当・・・助かったわい」
「マー坊、もう無茶はスるな」
「ん?」
「最近の妖精の尻尾の狼籍ぶりは目にあまる。現にミケロやオーグは解散請求まで提出スとるんヨ。このままではいずれマー坊が重い罰を受ける事になる」
魔法評議員二ノ席『オーグ』と三ノ席『ミケロ』は妖精の尻尾を目の仇にしている評議員だ。
そもそも、妖精の尻尾を問題視していない評議員の方が少ないのである。
ジークレインやウルティア、ヤジマ・・・この3人ほどしか妖精の尻尾の味方はいない。
「それに、うちのティアがかなり迷惑かけてるっぽいしな」
そんな2人の会話に突然入ってきたのは、マカロフにとって見覚えのある群青色の髪に瞳の若い、細身の青年。
見た目20歳前半、といったところだろうか。
人受けのよさそうな―――――この顔を見たら「いい人だな」と誰もが思うであろう―――――笑顔を浮かべ、でもやはり今どきの若者だからかアルカに似た雰囲気を感じさせる青年は、マカロフの右隣に腰を下ろした。
「お久しぶりっス、マカロフの旦那」
「クロ坊か、久しぶりじゃの」
「ははっ、そう呼ばれるのも久しぶりだ」
クロ坊と呼ばれる若者、本名は『クロノヴァイス=T=カトレーン』。
評議院第一強行検束部隊隊長であり、かつては妖精の尻尾の魔導士でもあり、ティアとクロスの『異母兄弟』の兄である。
異母兄弟・・・文字通り、父親は同じだが、母親は違う。が、そんな事を感じさせないほど、クロノヴァイスは2人を本物の妹と弟のように可愛がっているし、2人も本物の兄のように思っている。
「悪いな、マカロフの旦那。ティアは昔っからあーだからよ。いくら注意しても直らねーんだわ」
「解っておるわい。相変わらずギルドのガキ共とある程度の距離を置き、一定のラインより内側に入る事は許さない・・・いろんな意味であ奴は変わっていない」
マカロフの言葉に、クロノヴァイスは「そかっ」と頷くと、口を開く。
「でもよォ、マカロフの旦那。ヤジマの旦那が言うように、とっとと引退した方がいいんじゃねーの?こんな事ァ言いたくねぇが」
「クロノ君の言う通りヨ。とっとと引退せンと・・・身がもたねーヨ」
ヤジマとクロノヴァイス・・・通称クロノの言葉に、マカロフは考えるように黙ってしまったのだった。
「皆ー!今日から仕事の受注を再開するわよー!仮説の受付カウンターだけど、ガンガン仕事やろーね!」
「うおおおおおっ!」
「仕事だ仕事ーーー!」
ミラの言葉に反応し、多くのメンバーが依頼板の前に殺到する。
「何アレぇ。普段はお酒飲んでダラダラしてるだけなのにィ」
「そのお酒を飲むお金が無くなっちゃったんじゃない?」
「あはは」
その光景を呆れたように見るルーシィにルーが説明し、ミラが楽しそうに笑い声を上げる。
まだギルドは完成していない。ようやく骨組みが作り終わったところだ。
「そういや、ロキいないのかなぁ」
「あーあ・・・ルーシィもとうとうロキの魔手にかかっちゃったのね」
「・・・むぅ」
「違います!何か、鍵見つけてくれたみたいで・・・一言お礼したいな・・・って」
ジャラ、と鍵の束をカウンターに置きながらそう言うルーシィ。
その横でルーが頬を膨らませ不機嫌そうにしているのは余談・・・かもしれない。
「うん・・・見かけたら伝えとくわ。それより星霊に怒られなかった?鍵落としちゃって」
「はは・・・そりゃあ・・・もう・・・怒られるなんて騒ぎじゃなかったデスヨ・・・」
そう。
あのガラの悪い星霊アクエリアスに、これでもかというほど叱られ、ハエ叩きによって尻を叩かれまくったのだ。
「思い出しただけでお尻が痛く・・・」
「あらら」
「大丈夫?僕の魔法でどうにかしようか?」
「うん・・・大丈夫・・・」
そう言ってカウンターに屈するルーシィを見てミラは苦笑いし、ルーは左手に淡い緑色の光を灯しながら尋ねる。
「冷やしてやろうか?」
「さりげないセクハラよ、それ」
「ルーシィ、赤いお尻見せてー」
「堂々としたセクハラよ、それ!」
「もっとヒリヒリさせたらどんな顔すっかな、ルーシィ」
「鬼かお前は!」
グレイ、ハッピー、ナツの行動にツッコむルーシィ。
すると、そんなナツに勢いよくテーブルが1つぶつかった。
「もう一ぺん言ってみろ!」
エルザの怒号が響き渡る。
妖精の尻尾最強の女であるエルザに睨まれて恐縮しない人間はいないだろう・・・ティアや空気クラッシャールーを除いて。
「エルザ?」
が、今エルザの前にいる人物は全く動じない。
それどころか、平然と笑みまで浮かべている。
そりゃそうだろう。あの氷の女王と対等に口喧嘩する男・・・ラクサスなのだから。
「この際だ、ハッキリ言ってやるよ。弱ェ奴はこのギルドに必要ねェ」
「貴様・・・」
「ファントムごときに嘗められやがって・・・恥ずかしくて外も歩けねーよ」
エルザの怒りはこれ以上ないくらいに燃えている。
その場にいたメンバーは思った。
あぁ・・・今ティアがミラに頼まれてお使い中でよかったな・・・と。
ここにティアがいたら、状況はさらに悪かっただろう。
「ラクサス・・・帰って来てたのか」
「あんにゃろう。帰って来るなり好き放題言いやがって」
「S級のラクサス」
「そしてティアの天敵」
ハッピー、グレイ、ルーシィ、ルーはそう呟く。
ラクサスはエルザの怒りに全く動じず、近くにいたレビィ達・・・チーム『シャドウ・ギア』を指さす。
「オメーだよ、オメー。元はと言えァオメーラがガジルとシュランにやられたんだって?つーかオメーら名前知らねぇや。誰だよ?情けねぇなァオイイ」
そう言ってレビィ達を笑い飛ばすラクサス。
反論したいがラクサスの言う事にも一理ある為、レビィ達は辛そうに顔を歪ませる。
「ひどい事を・・・」
ルーシィが呟くと、ラクサスの目がルーシィの方を向いた。
「これはこれは。さらに元凶のねーちゃんじゃねーか」
元凶、という言葉にルーシィが小さく身を震わせる。
すると、そんなラクサスの前にライアーが立ち塞がった。
「貴様は変わらんな。そこまで仲間を侮辱して楽しいか?」
「あん?・・・おー、誰かと思えば『十字架の奴隷』じゃねーか」
「っ・・・貴様・・・!」
ラクサスの発した『十字架の奴隷』という言葉に、ライアーは怒りの表情を見せる。
それだけではない。サルディア、スバル、ヒルダ、クロス・・・5人はラクサスを睨みつけた。
あの温和で常に笑顔のサルディアでさえ、だ。
すると、ミラがカウンターを力強く叩いた。
「ラクサス!もう全部終わったのよ。誰のせいとかそういう話だって初めからないの。戦闘に参加しなかったラクサスにもお咎めなし。マスターはそう言ってるのよ」
ミラの言葉に、ラクサスはニィッと口角を上げる。
「そりゃそうだろ。俺には関係ねぇ事だ。ま・・・俺がいたらこんな無様な目には合わなかったがな」
ラクサスのその言葉を聞いた瞬間、エルザとライアー、クロスは怒りの表情を露わにし、今にもラクサスに殴りかかろうという雰囲気を纏う。
「ラクサス、テメェ!」
「コノヤロォォォォォォッ!」
「ナツ!」
「スバル!」
だがそれよりも早く、黙って会話を聞いていたナツとスバルがラクサスへと殴りかかる。
しかしラクサスは余裕の笑みを崩す事なく一瞬にして姿を消し、ナツの拳とスバルのエウリアレーは空振りに終わった。
そしてラクサスは2人の背後に姿を現した。
「え?」
「ラクサス!俺と勝負しろォ!この薄情モンがァ!」
「俺達をバカにしやがって!俺達は奴隷じゃねえ!テメェの腐った根性撃ち負かしてやる!」
「あはははっ!俺をとらえられねぇ奴が何の勝負になる」
怒るナツとスバルをラクサスはバカにしたように笑い飛ばす。
そして、その時。
ギルドメンバー全員が恐れ、起こらない事を願っていた事が起こってしまったのだった。
「あーうるさい。その喧しい口、どんな魔法を使えば一生使えないように出来るかしら」
微細な感情をも消し去った氷のように冷たい声が響く。
ラクサスが鬱陶しげに振り返り、舌打ちした。
「・・・ほう。女王様じゃねーか」
「何度言ったら解るかしら?私にはティアという名前があるのよ」
ただでさえ不機嫌そうな顔が更に不機嫌そうになる。
ミラに頼まれ買ってきた食材の入った袋を放り、腕を組んでラクサスを睨みつける。
ちなみに袋はクロスがナイスキャッチした。
「何をしに来たの?邪魔、さっさと消えて」
「あ?俺がギルドに帰って来ちゃいけねぇのかよ」
「帰ってくるとしたら、私のいない時にしてくれると有り難いわ。その面見なくて済むから」
基本丁寧めな口調のティアが『顔』ではなく『面』と言うとは・・・かなりラクサスの事を嫌っているようだ。
「ククッ・・・聞いたぜ?オメーも元凶のねーちゃんの為に戦ったんだってな」
「・・・何を勘違いしているの?私はどこぞの令嬢様の為になんて戦っていないわ」
ギルド中が驚愕し、言葉を失った。
・・・というのは少し嘘で、姉の事をよく知るクロス、そしてティアに惚・・・げふんげふんのライアーはそれを知っていた。
え?途中で何言ってるか解らなくなったって?・・・ライアー本人の希望で、こうなりました。
「私は妖精の尻尾が勝とうと幽鬼の支配者が勝とうと、どっちでもいいわ。だって私には関係ないもの。令嬢様がギルドから消えようと、特に私の生活に問題は起きない。なら他人の事だから関係ない。だから興味もない。つまり、誰かの為に戦った訳ではないの」
平然と言ってのけるティア。
つまり彼女にとって、ギルドメンバー全員がギルドの誇りをかけて戦ったあの戦は興味の対象ではなく、他人事であり、参戦するかしないかは『成り行き』だったという事だ。
あの時、ジュピターが無かったら・・・ティアは参戦していなかっただろう。
何せ、ティアが参戦したのはジュピターを消滅させようとした事が始まりなのだから。
「・・・ケッ」
ラクサスは小さく笑い声を漏らす。
それを聞いたナツはラクサスを睨みつけ、ラクサスはそんなナツ達に背を向けた。
「俺がギルドを継いだら、弱ェモンは全て排除する!そして歯向かう奴も全てだ!最強のギルドをつくる!誰にもなめられねぇ史上最強のギルドだっ!」
そう宣言すると、ラクサスは高笑いと共に去っていった。
それを見送ったルーシィは、ドカッと樽の上に座る。
「継ぐ・・・って、何ぶっとんだ事言ってんのよ」
「それがそうでもないのよ」
「?」
ミラの溜息まじりの言葉にルーシィが首を傾げていると、不機嫌そうな表情のティアがルーシィの隣に座り、口を開いた。
「あの七光り男はマスターの実の孫なの」
「えーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」
ラクサスがマカロフの孫だと聞いて驚愕の声を上げるルーシィ。
「だからマスターが引退したら、次のマスターはラクサスの可能性は凄く高いの」
「そ・・・そんな・・・でも・・・あたしは嫌だな。仲間の事をあんな風に思ってる人がマスターになるなんて」
「だからマスターもなかなか引退できないんじゃないかっていう噂なの」
「あの人がマトモになるのを待ってるって訳?」
「あくまで噂よ。実際、次期マスターの話なんて一言もマスター本人は漏らしてないし。それに・・・ラクサスも、昔はあんな人じゃなかったのよ」
「え?」
ミラの言葉にルーシィは首を傾げる。
「昔はね、あんな風に仲間を悪く言うような人じゃなかったの。いつからだったかしらね、あんな風になっちゃったのは・・・」
「6年前よ」
ティアが断言した。
「6年前・・・兄さんがギルドを抜けてからよ」
「兄さん!?アンタ、弟だけじゃなくてお兄さんもいたの!?」
「異母兄弟だけれどね」
さらりと発せられた『異母兄弟』という言葉に、ルーシィは言葉を失った。
「2人は歳も近いし、実力も同じくらい。お互いがお互いを意識し実力を高め合う、いいライバルだったらしいわ」
「へぇー・・・あれ?お兄さんって今もギルドにいるの?」
「いないわよ。今は評議院第一強行検束部隊の隊長」
「評議院!?」
まさかこんな問題児の兄が評議院の人間だとは・・・と目を見開く。
そしてとある疑問が生じた。
「ねぇ、ティア」
「何」
「どうしてお兄さんは・・・ギルドを抜けちゃったの?」
ルーシィの問いにティアは少し考えるように俯き、ゆっくり口を開いた。
「・・・殺されたからよ、大切な人を」
「・・・え?」
予想もしていなかった答えに、ルーシィは再び言葉を失った。
「あんのヤロォ・・・」
ラクサスを殴り損ねたナツは、その拳を強く握りしめる。
そんなナツにエルザが声を掛けた。
「もういい・・・あいつに関わると疲れる。それよりどうだろう、仕事にでも行かないか?」
「え?」
エルザの突然の申し出に、ナツは目を丸くする。
「もちろんグレイとルーシィ、ティアも一緒だ」
「え!?」
「はい!?」
「何で」
「グレイ、服は?」
いきなり話を振られ、グレイとルーシィは驚き、ティアは怪訝そうな表情をする。
そしてやっぱり服を脱いでいるグレイにミラが軽く尋ねた。
「鉄の森の件から常に一緒にいる気がするしな。この際チームを組まないか?私達5人で。ハッピー入れて6人か」
「わあ♪」
エルザの提案にルーシィとハッピーは嬉しそうな顔をするが、他の3人は愕然としている。
あのティアでさえ、少し目を見開いているのだ。
が、すぐさま正気を取り戻すと、勢いよく立ち上がる。
「冗談じゃないわ!どうして私がチームなんて組まなきゃいけないのよ。悪いけどお断りだわ。生憎、私は単独行動が好きなの」
「いや、ティアには絶対入ってもらう」
「はぁ!?」
そう言うとエルザは一通の手紙を取り出し、開いた。
緑色の魔法陣が展開され、群青色の髪と瞳のクロスではない青年のホログラムが浮かび上がる。
「兄さん!?」
「クロノじゃねーか!」
クロノは手をヒラヒラと振ると、口を開いた。
『よぉ、エルザ。久しぶりだな!んで、頼みがあるんだけど・・・ティアをどうにか単独行動から引き離してくんねーか?アイツ、いい加減誰かに頼るとか誰かと行動するとか、人間関係良好にしねぇといけねぇと思うんだよ。あ、絶対アイツ断ると思うけど、無理にでも単独行動から引き離してくれ。頼んだぞ』
それを聞いたティアがプルプルと怒りで震えると、身体から湯気を発し始めた。
「あのバカ兄貴・・・裁くっ!」
「ね、姉さん落ち着けっ!」
今にもクロノを半殺しに行こうとするティアを慌てて抑えるクロス。
何とか落ち着きを取り戻したティアは溜息をついた。
「それに、お前はナツのストッパーだろう?」
「勝手に任命しないでくれるかしら」
「ナツが余計に暴れた際に止める人間が必要だからな」
エルザにそう言われ、ティアは不機嫌そうに腕を組むと、先ほどより大きな溜息をついた。
「・・・仕方ないわね。ま、こいつのストッパーなら引き受けてもいいわ」
「何でだよ!?」
「アンタが余計に暴れるからに決まってるでしょバカナツ!」
「うごっ」
早速拳が決まった。
「妖精の尻尾最強チーム正式決定だー!」
「いいぞーーー!」
「てかルーシィ最強・・・か?」
「俺はアクエリアス出されたら勝てる気がしねぇ」
「た、確かに・・・」
「お前等が最強だーーー!」
すると、その話を聞いていたギルドメンバーが一気に歓声を上げる。
が、犬猿の仲であるナツとグレイは睨み合っていた。
「「こ・・・こいつと・・・」」
「不満か?」
「「いえ、嬉しいです」」
・・・が、それもエルザの一言でなくなった。
「あれ?ルーとアルカは?」
「僕達は最強チーム傘下のチームだよ、今から」
「ま、最強チーム準主要メンバーってトコだな。何かあったらいつでも呼んでくれ!ミラとのデートじゃねぇ限りは駆けつけてやんよ!」
頼もしい様で頼もしくない2人だった。
エルザは言うが早いが1枚の依頼書を手にする。
「さっそく仕事だ!ルピナス城下町で暗躍してる魔法教団をたたく!行くぞ」
「「「「おおおおおっ!」」」」
「はいはい」
エルザの言葉に、結成された最強チームは依頼へと出かけて行ったのであった。
その夜、建設途中のギルドでは組み木の上でマカロフが1人、月見酒を煽っていた。
「引退・・・か」
そして思い出されるのは、ヤジマとクロノから言われた引退の話。
「ギルドも新しくなる、ならばマスターも次の世代へ・・・」
そう言って、マカロフは自分の後継者となりそうな人物の名を上げていく。
「ラクサス・・・あやつは心に大きな問題がある。ギルダーツは無理だしのう・・・ミストガンは・・・ディス・コミュニケーションの見本のような奴じゃ・・・ティアは若いが実力もあり冷静でもある・・・が、心に壁を張りすぎておる・・・だとすると・・・やはり若いが、エルザ・・・」
マカロフの中で段々考えがまとまっていく。
すると、そこにミラがやってきた。
「マスター、こんなトコにいたんですかぁ~」
「ん?」
そう言うと、ミラは満面の笑みで持っていた紙の束を持ち上げた。
「またやっちゃったみたいです」
「は?」
ミラの言葉の意味が解らず聞き返すマカロフ。
そしてミラは言い放った。
「エルザ達が仕事先で街を半壊させて、魔法教団員をティアが全員裁いちゃったみたい」
「!」
その悪魔の様な言葉を聞いた瞬間、マカロフはまるでムンクの叫びの様な表情になった。
「評議院から早々に始末書の提出を求められてますヨー。あれ?マスター、どうしました?」
ミラの言葉など既にマカロフの耳には入っていない。
マカロフは白い灰のようになり、「おおお・・・」と小さく呻くと、叫んだ。
「引退なんかしてられるかぁーーーーーーーーーーーーーーー!」
後書き
こんにちは、緋色の空です。
急遽つくられたティアとクロスの異母兄弟クロノヴァイス・・・。
多分この人、メープル並みに出番少ないです。
メープルやクロノ、シュランのキャラ説はクロス達と同じ時に載せます。
時期的には、次回の「フレデリックとヤンデリカ」、そしてまだ予定ですがオリジナルの話の後でしょうか。
感想・批評、お待ちしてます。
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