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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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あたしの決意


〈ファントムとの戦いが終わって1週間。やっとあたし達も落ち着きを取り戻してきたの・・・っていうのも、あの後凄く大変だったからね。評議院の軍隊ルーンナイトに取り囲まれちゃって・・・〉

「全員動くな!我々は魔法評議院傘下強行検束部隊ルーンナイトだ!」
「あちゃー」
「もう嗅ぎ付けてきたのかい!」
「早すぎんだろ!?」

突然現れたルーンナイトにグレイ、カナ、スバルは驚く。

「逃げろーーーーっ!」
「わーーーーーっ!」
「ドラグニルもシュトラスキーも・・・逃げられる訳ないだろう」
「どうせ捕まるんだからな」

逃げようとするナツとルーに呆れたようにライアーとヒルダが止める。

「あーん」
「マスター、しっかり!」

泣き喚くマカロフをエルザが慰めていた。
そんな光景を見ていたティアは盛大に溜息をつく。

〈あたし達は事情聴取の為、軍の駐屯地に連行されちゃったのね。毎日取り調べを受けて1週間たった今、やっと落ち着いてきたってわけ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)に対する処分は評議会の後、後日下されるらしいの・・・はぁ〉

やっと落ち着いてきた為、ルーシィは手紙を書いていた。

〈でも心配しないでね、ママ。そんなに重たい処分は下らないと思うんだ。だって状況証拠や目撃証言はファントムの襲撃を立証してるからね〉

そこで一旦ペンを止め、左脇腹を押さえる。

「いたた・・・これ、アザとか残らないよねぇ」

そう言いながらトップスをたくし上げ、左脇腹の怪我に目をやる。
これはガジルとシュランによって連れて行かれる際、しばらく目を覚まさない様にとシュランがルーシィに蹴りを入れたから出来た傷だ。
トップスを戻し、窓の外に目をやる。
そこには親鳥から口移しでエサを貰う鳥がいた。

「ファントム・・・かあ」

〈ねえ、ママ・・・これは本当に裏で『あの人』が操っていた事なのかな?いくらあの人でもここまでやるなんて・・・〉




「ねえ、パパ。あたし、おにぎり作ったんだよ」

二カッと笑う幼いルーシィに、何も答えない。

「あのね・・・」
「仕事中だ、向こうへ行け」

そう言われ、幼いルーシィは父親を見つめた後「はい」と短く返事をして背を向ける。
が、少し歩いて、どうしても言いたい事があるというように振り返った。

「あのね・・・」
「邪魔だと言ってるのが解らないのか!ルーシィィィ!」

すると、父親は勢いよく立ち上がり、怯えるルーシィに対して一気に怒鳴り声を散らす。

「料理は専属のシェフが作る!そんな事をしてるヒマがあったら少しでも帝王学を学ぶんだ!出て行け!」

勢いよくドアを指さす。
言葉通り部屋を出たルーシィは、ドアの前で体育ずわりをし、小さく口を開いた。

「あのね・・・今日・・・あたしの誕生日・・・」

そう呟いて、ルーシィは声を殺して泣いた。
その横には父親の為に作ったおにぎりが転がっていた。




〈やるよね・・・あの男なら・・・これくらい平気で・・・でも何で今更急にあたしを連れ戻そうとするの?あたしになんて興味ないくせに〉

ギュウ、と便箋にハンコを押す。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)には迷惑かけちゃったなぁ。、ママ・・・あの人ならまたやるよね、同じ事を・・・お金の力で。それだけはあたし・・・〉







「お~もぉ~て~えぇ~」

ここは妖精の尻尾(フェアリーテイル)があった場所。つまりは跡地。
そこではギルド再建の為、メンバー総出で土木作業をしていた。
そして、ナツが12本ほどの木材を一気に持ち上げていた。

「1度にそんなに持つからだよ。バカじゃねーの」

右腕で木材を持つグレイを、物陰から見つめる少女の影が。
青い髪をくるんとカールさせ、暗い色合いの帽子にコート。
彼女の名はジュビア。1週間前まで戦っていた幽鬼の支配者(ファントムロード)のエレメント4の紅一点『大海のジュビア』だ。

「?」

グレイに・・・正確にはグレイとルーに負けた彼女は、元雨女だ。
行くところ行くところで雨が降り、その事から恋人にフラれた過去を持つ。
が、グレイによって・・・正確にはルーの風もあってなのだが・・・その雨を晴らされ、ジュビアはグレイに惚れているのだった。
彼女の頭ではルーなど存在していない。グレイ一色だ。
そんなグレイを物陰から見つめているのだが、グレイが視線を向けるとささっと隠れてしまう。

「ははっ!おめぇは軟弱だからそれが限界なんだろーなァ」
「ア?俺がその気になればテメェの倍はいけるっての!」
「おいフルバスター。挑発に乗る必要はないと思うのだが・・・」

通りかかったライアーの言葉は無視し、グレイは24本ほどの木材を一気に持ち上げる。

「お、おう・・・ど・・・どうよ」

見ている人全員が「無理してるな」と思うであろう表情だが、なんとか耐える。
そんなグレイを見てジュビアはパチパチと手を叩く。

「ん?」

しかしグレイが視線を向けると、ささっと隠れてしまった。
と、同時に、ガラガラと木材が落ちる。

「ぐほぉっ!」

崩れてきた木材の下敷きになるグレイ。

「なっさけなーっ!見たかハッピー、今の」
「あい」
「だから言っただろう・・・」

それを見たナツとハッピーは爆笑し、ライアーはやれやれと肩を竦めた。
そこに緋色の髪を揺らし、エルザが歩み寄る。

「おい、お前達。遊んでるヒマがあったらさっさと運ばんか。一刻も早くギルドを修復するんだ」
「エルザは気合入ってるな」

エルザはいつもの鎧ではなく土木作業着に換装しており、それを見たウォーレンが呟く。

「マスターもね」
「あ、ミラ。水貰えるか」
「えぇ、今持っていくわね」

アルカに呼ばれたミラの言う通り、マカロフは巨大化し土木作業着を着て、木材を組み立てていた。
その横ではサルディアによって召喚された飛竜(ワイバーン)のアイゼンフロウが渡される木材を組み立てていく。

「この機会に改築するとか言って図面まで描いてたもんな」
「しかもパースとかヘタいんだよ、これが」

大きな怪我をしているジェットとドロイが口々にそう言う。

遠近法(パース)なんて昔の画家の目の錯覚じゃ。芸術は自由でなくてはならん」
「こりゃいくら何でも自由すぎんだろ!建物の設計図がこんなんじゃ完成する訳ねー!」
「さ、さすがにこれを芸術と呼ぶのは・・・」

マカロフの描いた設計図に文句を言うスバルと、設計図を手に首を傾げるヒルダ。

「監督。この角材はどこへ」
「おー、あっちじゃ」
「何だよ、監督って・・・」

工事現場の人になりきっている2人にアルカがツッコむ。
と、そこにキャラメルカラーのセミロングを揺らしながら、少女が走ってきた。

「マカロフさーん!」
「ん?」

手作り感満載のパッチワークの大きいバックを肩から下げ、黒いウエストコートにフレアスカート、白シャツを着た少女はこれまた黒いショートブーツをぴったり揃え、巨大化しているマカロフを見上げた。

「先生に頼まれて治癒薬や包帯の補充に来ました」
「そうか。スマンな、態々」
「気にしないで下さい」

ティアに分けてあげたいほど愛想のいい笑顔を浮かべる少女は、わらわらと集まってくるギルドメンバーに頭を下げた。

「初めまして。メープル・エレシャリオンです。ポーリュシカ先生の下で治癒魔導士の勉強をさせてもらっています」

それを聞いたメンバーは驚愕した。

「メープル!?」
「シロップー!」
「おいお前達、失礼だろ」

・・・ナツとハッピーを除いて。
アルカがメープルに頭を下げるが、本人は気にしないでというように右手を振った。

「あのポーリュシカさんが!?」
「人間嫌いのばーさんが弟子を!?」

そう。
ポーリュシカといえば人間嫌い、人間嫌いといえばポーリュシカと連想できるほど、ポーリュシカは人間が嫌いなのだ。
それなのに弟子をとるとは・・・と驚くメンバーに、メープルは口を開く。

「私も驚いたんですけど、『治癒魔導士になりたいなら話は別だ』とおっしゃって・・・」

そこまで言い、本来の目的を思い出したのはバックをゴソゴソと漁る。

「えっと、今回の抗争で多くの薬を消費したと思うので」

そう言いながら包帯やら薬やらを取り出していく。
そのバックの中で血のように赤黒い色の鍵がきらりと煌めいた。

「・・・これで全部です」
「ポーリュシカに感謝すると言っといてくれぃ」
「はい、伝えておきます・・・ひっ!」

それまで人受けのよさそうな笑顔を浮かべていたメープルが、突然怯えた様に悲鳴を上げた。
顔を真っ青にしてガタガタと震え、少し距離を置き、隠れる。
その細い指が、1人の男を指さした。

「・・・俺?」

グレイ・フルバスター。
現在なぜか服を脱いでいる男を、メープルは指さす。

「服脱いでるからじゃない?」
「うおっ、いつの間に!」
「そ、そうじゃないんです・・・」

メープルは首を横に振り、尚もグレイを指さす。

「そ、その・・・それが・・・」
「それ?」
「きゃあああああっ!失礼しましたぁぁぁぁぁぁぁっ!」

首を傾げるグレイに首が千切れるんじゃないかというスピードで頭を下げると、メープルはハッピーも真っ青のスピードでギルドを後にした。
当然、あんな健気な少女を怯えさせたグレイは周りから様々な目で見られる。

「グレイ・・・」
「俺何もしてねぇよ!?」

まぁ、確かにメープルが勝手に怯えて勝手に逃げて行ったのだが。
とにかくまずはギルド再建だとメンバーは再び散っていく。

「ぐぇー、メープルシロップって聞いたら腹減ったー」
「ナツ君、関係なくお腹空いてるんじゃないの?」

空腹で倒れるナツに、サルディアが困ったような呆れた様な表情を浮かべて呟く。

「そういや俺も腹減ってきたな」

そんなナツを見たグレイがそう言い、ジュビアの目がキュピーンと光る。

「うおっ!?」

すると、グレイの前を素早い何かが通り過ぎ、グレイの手に1つの包みが持たされる。
その素早い何かはジュビアであり、目的を果たし終えたジュビアは先ほどの物陰へと隠れた。

「何だ今の」
「女の子?」

通り過ぎて行ったジュビアにナツとハッピーが首を傾げている間に、グレイは包みを開けていた。
そこにはピンクのハート模様がかかれたご飯に、色とりどりのおかず。

「てか、これ・・・弁当!?」
「おおお!よくわかんねぇけど美味そうじゃねーか」

栄養バランスも色合いも完璧と言える弁当。
が、これを渡してきたのが誰かグレイは気づかず、そうとなれば怪しむのも当然で。

「冗談じゃねぇ。こんな得体のしれねェモン食えるかよ」

それを物陰で聞いていたジュビアはガーンっとショックを受ける。

「んじゃ俺もらっていい?」
「いーよ」

グレイからナツに手渡される弁当を目で追いながら、ジュビアは目に涙を浮かべて首を振る。

「いただきまーす」

・・・が、その念はグレイに届かず、弁当は完全にナツへと渡された。
それを見たジュビアはガックリと肩を落とす。

(ジュビア悲しい!早起きして作ったのに)

涙を流しながら項垂れるジュビアの胸に、もうてるてる坊主はない。
代わりににっこり笑顔のブローチがついていた。

「ん?」

そしてこんな状態でも隠れる事は忘れない。
ナツが弁当に手を伸ばしたその時、現在のナツにとっては悪魔、ジュビアにとっては救いの女神が現れた!



「待ちなさいバカナツ」



「いって!」

その伸ばされた手をティアがはたくように叩き、ナツから弁当箱を取り上げた。

「何すんだよティア!俺ァ腹減って死にそうだってのによォ!」
「アンタにこれを食べる権利はない」

取り上げた弁当を、ティアは真っ直ぐグレイに差し出す。

「アンタね、これはさっきの女が一生懸命、アンタを想って作った・・・かも知れないのよ。それを得体の知れないだなんて酷いんじゃないかしら?」
「うぐっ・・・」

ティアの指摘に言葉を詰まらせるグレイ。

「それとも何?アンタはそうやって平気で女の純粋な好意を踏みにじるのかしら?最低、たれ目、愚者、露出魔」
「何かいろいろ関係ねぇの混じってるだろ!?」
「で?どうするの?」

弁当を突き付け、微量の殺気を滲ませるティアに反論できるはずが無く。
いや・・・出来るとしたら空気を読まないルーか弟のクロスぐらいだろう。

「・・・わーったよ!食えばいいんだろ、食えば!」

遂に折れたグレイはティアから半ば引っ手繰るように弁当箱を受け取り、手掴みでおかずを口に運ぶ。

「感想は?」
「・・・うめぇ」
「はい、よろしい」

うんうんと納得したように頷くティアに、ナツが恨めし気に近づく。

「ティーアー・・・」
「何よ」
「俺腹減ってんだよ!これ食おうと思ってたのにどうしてくれんだコノヤロウ!このままじゃ腹減って死ぬだろーが!」

凄い勢いで捲くし立てるナツにティアは溜息をつくと、ショルダーバックから包みを散り出して突きつけた。

「はい」
「・・・何だコレ」
「弁当だけど」

黒地に白ドットの風呂敷の中に、1人で食べるには少し大きめの弁当箱が入っていた。

「やっぱり必要になったわね。アンタの事だからすぐお腹空くとは思っていたけど・・・言っておくけど私はミラじゃないから、ファイアパスタとかは作れないわよ」

そう言って腰に手を当て顔にかかる前髪を払うティアに、ナツは満面の笑みを向ける。

「ありがとな!ティア」
「っ!」

真正面から礼を言われる事に・・・そもそも、礼を言われる事に慣れていないのだろう。
ティアは少し動揺したように瞳を揺らし、顔をジュビアのいる物陰の方に向ける。

「・・・ど」
「ど?」
「・・・どういたし、まして」

もごもごと呟くと、凄まじい速さでショルダーバックのファスナーを閉め、帽子で顔を隠して早歩きで去っていった。
礼を言われる事に慣れていない為、その礼に返事をするのも慣れていないのだろう。
それか、「別に礼を言われるほどの事じゃないわ」とか何とか返す事が多そうだ。

「んんっ!うめぇっ!」
「良かったねナツ」

するとそこに、フラッと男が現れる。

「ナツ・・・グレイ・・・」

名前を呼ばれ振り返ると、そこにはいつものイケメンフェイスとは真逆とも言えるやつれた顔をしたロキが立っていた。

「こ、これ・・・ルーシィに渡しといてくれるかな」
「鍵?」
「ルーシィのだ」

ロキが差し出したのは、ルーシィが失くした星霊の鍵の束だった。

「お前、その顔!しばらく見ねぇと思ってたら、ずっとコレ探してたのか!?」
「いや・・・ははは・・・辛いね、フェミニストは」
「一言声かけてくれれば手伝ったのに」
「んが」

口いっぱいにおかずを頬張るナツに、ロキが口を開く。

「そ、それよりルーシィはどうしてる・・・かな?」
「家にいぶんがねもごべもむ」
「飲み込んでから喋ろうよ」
「多分家だ」
「そっか」

それを聞いたロキは安心したようにブルーカラーのレンズのサングラスを押し上げた。

「たまには遊びに行くか!」
「あいっ!」
「だな・・・ちょっと心配だしな」
「ロキ・・・お前ルーシィん家初めてだろ」

ナツにそう声を掛けられ、ロキは顔を背けた。

「いや・・・僕は行かないよ。知ってるだろ?星霊魔導士にはやな思い出が・・・」
「そっか。ルーシィはルーシィなのになぁ」
「・・・?」

ナツを追おうとしたグレイは、ロキのどこか悲しげな表情に首を傾げる。
すると、そこにトンカチ片手にエルザが走ってきた。

「貴様等!どこに行くつもりだ!働けェ!」
「!」
「逃げろーーー!」
「まぁてー!」
「うほぉー!」
「ハッピー、飛ぶぞっ!」
「あいさ!」
「オイ!ナツてめぇ、ズリィぞっ!」

そんなプチ逃走劇を、ロキは無言で見ていた。






「はぁ・・・グレイ様・・・」

ギルドからプチ逃走するグレイを、ジュビアはうっとりとしたような表情で眺める。

「へぇ・・・アンタ、あんな露出魔が好きなの?物好きね」
「だってグレイ様カッコイイし、ジュビアの雨を晴らしてくれたから・・・え?」

そこまで言い、ようやく違和感に気づいた。
明らかに自分の物ではない声が聞こえる。しかもかなり近くから。
ゆっくりと声のする方に顔を向ける、と。

「はじめまして」

相変わらずの無表情で肘を曲げたまま右手を上げるティアがいた。

「えっ!?あっ!?えぇぇぇっ・・・!」
「とりあえず落ち着きなさいな」

突然の出来事に慌てふためくジュビアを落ち着かせるティア。
調子狂うわ、と言いたげに溜息をつき、曇りのない青い目でジュビアを見つめる。

「アンタ、名前は?」
「・・・ジュビア・ロクサー・・・」
「ジュビア、ね」

そう言えばジュビアってスペインって国の言葉で雨って意味だったわね、と1人納得するティアに、遠慮がちに声を掛ける。

「あ、あの・・・貴女は・・・」
「ティア=T=カトレーン」

何とも不思議な自己紹介を終え、ティアは早速本題を切り出す。

「ところで、ここ1週間ずっと物陰からグレイを見ているけど・・・何か用なの?用があるなら私が呼んでくるけど」
「っ・・・!」

ティアにそう言われ、ジュビアはビクッと体を震わせる。
なぜそのような反応をするか解らない、と言いたげにティアが首を傾げると、ジュビアは頭を下げた。

「ご、ごめんなさいっ!」
「・・・は?」
「ジュ、ジュビア・・・グレイ様の事が好きなんですっ!」
「え、ちょっと待って。意味が・・・」
「解ってます!もうグレイ様には彼女がいるんですよね。ジュビア気づいてました。でも好きなのは止められなくて・・・ごめんなさい!」
「少し落ち着いて、ついて行けない・・・」
「グレイ様の『彼女である』貴女にこんな事言うのもあれですけど、ジュビア諦めませんから!」
「少し待ちなさいっ!」

大きく勘違いしているジュビアを強制的にティアが止める。
目をぱちくりさせるジュビアに溜息をつくと、ティアは口を開いた。

「あのね・・・何か勘違いしているみたいだけど、アイツと私はアンタの想像するような仲じゃないわ」
「え?」
「それにグレイに彼女はいないし、諦める必要もないし、そもそもアイツと私は他人だから」
「え?そ、それって・・・」
「やっと理解したみたいね」

やっとジュビアは自分が盛大な勘違いをしていた事に気づき、恥ずかしさから顔を真っ赤に染める。

「ジュ、ジュビア・・・ご、ごめんなさいっ!」
「いいわよ、別に怒ってなんてないし」

そう言い、にしても・・・と口を開く。

「あの変態露出魔に惚れる女が出てくるなんて・・・物好きもいるのね、世界は広いわ」

改めて世界の広さを実感したティアは、ジュビアに向き直る。

「あ、あの・・・カトレーンさん・・・」
「ティアでいいわ」
「・・・ティアさん。じゃあ、ティアさんはグレイ様の事・・・好きじゃないんですか?」
「えぇ」

即答。
その速さにジュビアは目を見開いた。

「誰があんな変態露出魔好きになるものですか!しかもアイツの弟弟子だなんて・・・絶対好きにはならない。いいえ、そもそも私は絶対恋などしないわ」

まさかの『恋なんてしない』宣言に呆気に取られるジュビア。
ティアもその空気に気づいたのか、コホンと咳を1つ。

「ティアさんって、面白い人ですね」
「え?」
「初めて見た時、もっと近寄りがたい人かと思ってましたけど・・・話してみると、想像よりフレンドリーな人なんだなぁって。ジュビアと気も合いそうだし」

笑みを浮かべてそう言うジュビアに、今度はティアが呆気に取られる。
フレンドリーだなんて、ティアにとっては正反対の言葉だからだ。
すると、ジュビアは何かを思いついたのか、ティアを真っ直ぐ見つめる。

「あの・・・ティアさんっ!」
「・・・何?」

ジュビアは少し躊躇い、やがて意を決したように口を開いた。

「ジュビアと、お友達になってくれませんか!?」








「ルーシィ、元気かぁ!」
「元気かぁ」

バンッとナツとハッピーがルーシィの家に不法侵入という名の訪問をする。
・・・が、そこには誰もいない。
その為、「あたしの部屋ー!」という叫びと共に飛んでくる蹴りもない。

「・・・」
「なんだかんだ言ってついて来たのかよ」
「私も気がかりだからな」

土木作業着からワンピースに換装したエルザも一緒だ。

「あれ?いないのかな」

ハッピーがきょろきょろと部屋を見回す。

「風呂か!?お約束の展開が待っていそうで申し訳ないが」
「いねえ」
「風呂のチェックはえぇよ!」

若干頬を赤く染めてグレイが叫んだと同時に、同じような表情のナツがバスルームから顔を出して右腕を振り、グレイは思わずツッコむ。

「出かけているようだな」

エルザがそう言い、ハッピーが飛びながら壁の上の方に付けられた戸棚を開ける。

「ルーシィ、どこ~?・・・わ、わわわっ」

すると、開けたと同時にがばっと手紙が溢れ、凄い量の手紙がハッピーを包み込んだ。

「何だこれぁ」
「手紙?」

落としてしまった手紙を片付けにかかるナツ達。
・・・が、ナツは勝手に封筒から出し勝手に読み始める。

「『ママ・・・あたし遂に憧れの妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入る事が出来たの』」
「おいおい、勝手に読むもんじゃねぇぞ。勝手に家に入るもんでもねーが」

全くもってその通りだ。
が、ナツは尚も手紙を読み続ける。

「『ママ、今日はエルザさんって人に会ったの!かっこよくてキレーで・・・あのナツがね・・・』」
「む・・・」

かっこよくて綺麗、という言葉にエルザが頬を赤く染める。

「ママへ、ママへ。これ全部ママへの手紙?」
「何で送ってねーんだ?」
「家出中だからに決まってんだろ」
「じゃあ何の為に書いたんだ?なぁ、エルザ」

そう言ってエルザに目を向けるが、エルザは机の上に置かれた紙を見つめている。
その長い緋色の髪で顔が隠れ、表情は見えない。

「ん?」
「どした?」

手紙を読もうと開くナツと、大量の手紙の抱えるグレイが首を傾げる。
そしてエルザは手に持った紙を2人にも見せた。

「ルーシィの書き置きだ・・・『家に帰る』だ、そうだ」
「「「何ィィ!?」」」

突然の事に驚くナツ、グレイ、ハッピー。
と、そこに、凄まじい勢いでアルカがやってきた。

「ルーシィ!いるかぁ!」
「アルカ!」
「どうした!?」

尋常じゃない慌てっぷりにグレイが問うと、アルカは息を整えながらズボンのポケットから紙を取り出した。

「家に帰ったら・・・ルーが・・・書き置きを・・・」

そこには見覚えありまくる丸っこい字でこう書かれていた。

『ルーシィの実家に行ってきます』

それを見た4人は少し沈黙し・・・。

「「「「えええええええええっ!?」」」」

同時に叫んだ。

「帰るって何だよオイイ!何考えてんだアイツはァア!ルーも何しに行くんだよオオオオ!『娘さんを僕にください』ってかアアアアッ!?」
「マジかよオオオオオオッ!?確かにルーはルーシィの事気に入ってるがアアアアッ!ティアの方が気に入ってるじゃねぇかアアアアアッ!?」
「とりあえず落ち着けお前等!」
「ま、まさかルーシィ、まだ責任感じてるのかなぁ」
「ルウウウウウウウウウウ!戻ってこおおおおおおおい!」
「解らん・・・とにかく急いで追うぞ。ルーシィの実家だ!」

大がいくつついても足りないほど混乱しているアルカも連れ、ナツ達は急いでルーシィの実家へと向かうのだった。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
気づけば50話、早すぎますね・・・。
そしてライアー、サルディア、スバル、ヒルダは出ているのにクロスだけ出ていないという・・・あぁ困った困った。
次回はずっと前から考えていた、ルーがカッコいい・・・かも知れないお話です。

感想・批評、お待ちしてます。 
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