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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第79話 集結する仮面の戦士達。デストロン最期の日(後編)

 デストロン怪人の総攻撃が目の前で繰り広げられていた。
 マシンガン、ミサイル、火炎放射、殺人光線、ect
 とにかく殺人兵器の数々が雨霰の如く放たれていた。その標的となっていたのはフェイト、アルフ、ユーノの三人であった。しかも、アルフとユーノの二人は先の守護騎士達との戦いにより負傷してしまっており、その傷もまだ癒えぬ状態での戦闘となってしまっていた。
 現状でまともに戦えるのはフェイト只一人であった。だが、そのフェイトも、デストロンが切り札として繰り出した仮面ライダーV3こと風見志郎の前に手も足も出せない状態となってしまっていた。
 そして、今三人はデストロンの集中攻撃に晒されてしまっていたのだ。
 三人が今どうなっているのか。それはデストロン怪人軍団の放つ攻撃により起こる爆煙によりその姿を確認する事が出来ない。
 そして、その様をヨロイ元帥は不気味な笑みを浮かべながらその様を見守っているのであった。




「私……まだ、生きてる?」
 目を開くと、目の前には激しい爆発の嵐が起こっていた。本来ならこれ程の量の爆発だ。フェイトの軽量型バリアジャケットでは到底防ぎ切れる筈がない。爆発に巻き込まれて醜い肉片となっていてもおかしくない状況であった。
 だと言うのに、フェイトはまだ生きている。それどころか爆発のダメージを全く受けていないのだ。
 一体どう言う事なのだろうか?
 ふと、回りを見ると、その答えはあった。
「アルフ! それに、ユーノ!」
 目の前にはアルフとユーノが残る力を振り絞って最大出力で防御結界を如いて爆発を防いでくれていたのだ。
 そのお陰でフェイトはデストロン軍団の攻撃から辛くも守られていたのである。
 だが、これだけ高出力の結界を長時間張り続けていれば当然魔力の消耗も激しい。増して、二人は今重傷の身だ。その体でこんな無茶をするのは命取りになる。
「二人共、無茶しないで! その体でそんな事したら二人の体は……」
「どうせ元々この体じゃ戦いには耐えられない。今こいつ等と戦えるのはフェイトしか居ないんだ!」
「だから僕達はフェイトに全てを預ける。僕達の残る全ての魔力を賭けてこの攻撃からフェイトを守る。奴等の攻撃が止んだ隙を狙ってヨロイ元帥を倒してくれ!」
「アルフ、ユーノ……うん!」
 二人の覚悟を受けたフェイトは強く頷いた。現状では少しでも勝てる可能性に賭けるしかない。その為には、例え非人道的な手段でも講じなければならない。
 辛いがやらねばならないのだ。
 フェイトは歯噛みして目の前の光景を耐えていた。傷ついた二人が、今最後のチャンスを見出す為に残る力の全てを注ぎ込んでくれている。
 唯一戦える自分に全てを預ける為に。
「ま……まだ攻撃は終わらないのかい?」
「こ、これ以上は……」
 二人の魔力に陰りが見え始めていた。これ以上奴等の攻撃が続けば、やがては結界が破られてしまう。そして、その時は訪れた。
 二人が決死の思いで築き上げた防御結界は、まるでガラスが割れるかの様に粉々に砕け散ってしまったのだ。
 フェイトは咄嗟に上空へ逃げようとした。だが、そんなフェイトを庇うようにアルフとユーノが突如目の前で壁になったのだ。
「ふ、二人共!」
「ふぇ、フェイト! 今空に上がったら、それこそ格好の的だよ!」
「だから、今は耐えるんだ! 君が倒れたら、全てが終わってしまうんだ!」
「でも、でも……」
 フェイトの目の前で、アルフとユーノが自らを盾にしてデストロン軍団の激しい攻撃から守ってくれていた。もはや、それは命がけの行為であった。
 二人の体が、怪人達の攻撃に晒され傷ついていく。それでも、二人は決して倒れなかった。例え傷つき、倒れそうになっても、気力だけで立っている。それが今の二人だったのだ。
(アルフ……ユーノ……)
 フェイトの目に涙が滲む。そして祈った。早く、早く攻撃よ止んでくれ。そして最後の攻撃のチャンスを与えて欲しい……と。
 そして、その祈りがついに、奇跡を生んだ。ヨロイ元帥が攻撃停止の指示を送った。それに呼応し、怪人軍団が一斉攻撃を停止したのだ。
 待ちに待ったチャンスが訪れた。フェイトは今まで蓄えていた力を全て解放するつもりでバルディッシュを両手で握り締めた。
 そして、それと同時に目の前でアルフとユーノの二人が力尽き大地に伏した。
(有り難う、二人共。二人が作ってくれた最後のチャンス。絶対に無駄にはしない!)
 フェイトは即座に行動した。二人が倒れる寸前にヨロイ元帥目掛けて突進したのだ。
 全ての怪人達は皆、今の攻撃で完全に倒せたと思っており、その為に動きが一瞬だけ遅れてしまった。
 その一瞬だけでもフェイトには充分だった。一瞬だけでもあればケリがつくからだ。
 目指すはヨロイ元帥只一人。奴を倒せばデストロンは総崩れとなる。
「ヨロイ元帥、覚悟ぉ!」
「何、まだ生き残りが居たのか!」
 悟った時には既に遅かった。ヨロイ元帥の前には既にバルディッシュを振るっているフェイトの姿があった。閃光の刃は確実にヨロイ元帥の首を狙っている。後は其処へ目掛けて振り抜くだけだった。
 そして、フェイトはそれを実行に移した。狙いは完璧。周囲の怪人達はようやくフェイトの存在に気付いた所だった。もう奴等は間に合わない。
 ヨロイ元帥を倒せばデストロンは総崩れとなるだろう。だが、この攻撃が失敗した場合。フェイト達に勝ち目はない。
 しかし、その心配は稀有だろう。何故なら、今居るデストロンの怪人達にフェイトのスピードに対応出来る輩は居ないのだから。
「え?」
 フェイトは驚愕した。フェイトが放った筈の閃光の刃はヨロイ元帥の首元でピタリと止まってしまったのだ。幾ら力をつぎ込んでも閃光の刃がヨロイ元帥の下に行く事はない。
「良い作戦だったが、残念だったな」
 声がした。そして、その声の主こそが、フェイトの渾身の一撃を止めた存在であった。
「か、風見さん……」
 そう、それは風見志郎こと仮面ライダーV3であった。フェイトは一番大事な部分を見落としていた。
 確かに、デストロン怪人ではフェイトのスピードに対応出来ない。だが、仮面ライダーV3は別だ。彼は常人離れした聴覚を持っている。例え爆風の中ででもフェイト達の会話を傍受する事など容易い。
 後は、フェイトの動きに合わせて早めに行動すればこの程度の芸当を行う事など容易であった。
「くっ……うぅ!」
 フェイトが更に腕に力を込めた。もう目の前に居るのだ。目の前に居るコイツさえ倒せば、勝機は見えるのだ。
「幾ら足掻いても無駄だ。改造人間の俺の腕力に人間の、ましてや子供のお前が対抗出来る筈がないだろう」
 冷徹な程の言葉が囁かれた。そして、全く無防備だった彼女の腹部に固い膝が叩き込まれた。
 幼い体がくの字に曲がり、地面に倒れ伏す。フェイトの脳内が真っ白に染め上げられていく。折角二人が命がけで築いてくれた最後のチャンスが無駄になってしまったのだ。
 更に、見上げれば、其処には仮面ライダーV3の腕の中で真っ二つに折られていくバルディッシュの姿が映っていた。
(ば、バルディッシュ……そ、そんな……)
 最早打つ手はなかった。最期のチャンスも、最後の手段も奪われてしまった。今のフェイトには、もう戦う術が残されていない。
「流石は仮面ライダー3号だ。しかし忌々しい小娘だ。よもやこのヨロイ元帥を屠ろうとは」
「感謝しろよヨロイ元帥。俺が居なければ今頃お前は串刺しだったんだからな」
「無論だ。さぁ、其処で倒れている忌々しい小娘を即刻始末しろ。その憎たらしい顔を握り潰してしまえ!」
「良いだろう」
 へし折ったバルディッシュを放り捨て、両手でV3は倒れているフェイトの頭を掴みあげた。凄まじいまでの握力で締め上げていく。
「う、がっ! ああぁぁぁぁ!」
「運がなかったな。デストロンに挑んだ時点で、お前の命運は決まっていたんだ」
 苦しみ、もがくフェイトに対し、無情なまでのV3の言葉が浴びせられる。そして、更に腕の力が強まりだした。改造人間の握力でなら、人間の頭蓋を握り潰すことなど容易い。ましてや、それが成長途中の少女の頭蓋なら尚更であった。
 ミリミリと、嫌な音が響いてくる。もう間も無くだ。もう間も無く目の前で少女の頭部は粉砕し、絶命させる事が出来る。
「あ……あ……か、ざ、み……さ、ん……」
 最早、掠れた声でしか聞こえなかった。必死にV3に向かい手を伸ばすフェイトが見える。その姿を見たV3の脳裏に、突如として謎のビジョンが映りだした。
 涙を流し、手を伸ばして何かを叫んでいる少女。全く知らない筈の少女なのに、その少女に何所か見覚えがあった。
 何故だ、何故?
 その少女を見た途端風見は奇妙な感覚に見舞われた。感じた事のない感覚だ。
 少女の口が動いている。その声を聞こうとV3は必死に音を探った。
 そして、その声ははっきりと、鮮明にこう叫んでいたのだ。


【止めて、お兄ちゃん!】


「!!!!」
 突如、V3は掴んでいた両手の力を抜いた。その拍子にフェイトは地面に崩れ落ちる。未だに締め上げられた頭の痛みがする中でフェイトは必死に見上げた。
 其処には、自分の頭を抑えて苦しんでいるV3の姿があった。
「か、風見さん……」
「うおおぉぉぉぉおおぉおぉおお!」
 苦痛の声が響いた。頭痛を訴えるかの様に頭を抑えて腹の其処から叫んでいるようにも聞こえる。
 その光景は見ている全てのデストロン怪人達は元より、ヨロイ元帥にまでも驚愕の思いを与えていた。
「しまった、やはり不完全であったせいか!」
 ヨロイ元帥は舌打ちした。仮面ライダーV3の洗脳手術は不完全であったのだ。
 倒れていた風見志郎を連れ帰り、デストロンの閲兵にすべく手術を行っていた。だが、ダブルライダーが施した何重にも敷かれたプロテクトの解除に手間取ってしまい、結局手術は不完全のまま実戦投入をする羽目となってしまった。
 そのツケが今、此処に回ってきたのだ。
 そして、そのツケを目の前で見たフェイトは悟った。今ならば風見志郎を取り戻す事が出来るかも知れない。今ならば、元の風見志郎に戻す事が出来るかも知れない。
 そう悟ったフェイトは、この可能性に全てを注ぎ込んだ。
「士郎さん! 思い出して! 貴方を育ててくれた家族の事を! 共に戦ってきた私達の事を!」
「ううううぅぅぅぅぅぅうううぅぅ!」
「例え改造人間になったとしても、貴方の魂は、心は人間のままの筈! 思い出して! 人間の心を! 貴方が本郷さん達から受け継いだ仮面ライダーの心を!」
「うぅぅぅぅぅぅ、うおおおぉぉぉぉぉぉぉ!」
 今までの中でより大きな声で叫んだ。天を仰ぎV3は絶叫した。膝が折れ、大地に当たる。やがて、声が出なくなり、両手で地面に倒れるのを防いでいた。
 目の前で完全に仮面ライダーV3は沈黙してしまった。
 目の輝きが点滅している。意識が朦朧としているのだ。
 両者が黙ってその光景を目の当たりにしている。どちら側のV3なのか?
 デストロンか? それとも……
 突如、目の前で仮面ライダーV3は立ち上がった。何事もなかったかの様にすっと立ち上がったのだ。
 そして、倒れているフェイトをV3は見下ろしていた。仮面のせいで表情は掴めない。
 だが、声は一切放たれていない。まさか、デストロンとしての洗脳がまだ残ってしまったのか?
 フェイトの淡い希望が打ち砕かれてしまったのか?
「どうした? ヨロイ元帥様の命令を実行しろ! 聞こえているのか?」
「あぁ、良く聞こえているさ」
 不審に思った怪人がV3の肩を叩く、それに呼応してV3が動いた。
 右手の拳がその怪人の頭部を捉えて飛び込んできた。それに気付いた時には、既に手遅れであった。
 怪人の頭部は粉々に砕け散り、頭部を失った怪人はその場に倒れて爆発四散してしまった。
「てめぇらの喧しくて耳触りな奇声がなぁ!」
「ま、まさか……洗脳が解けてしまったと言うのか?」
「生憎だったなヨロイ元帥。中途半端な洗脳をしたばっかりにこんな目に遭うんだからなぁ。それに、わざわざ総戦力で出て来てくれたとは好都合だ。此処で貴様等デストロンを駆逐してやる!」
「ほざけ! こうなれば貴様などもう用済みよ! 全デストロン怪人を以って貴様を粉砕してくれる!」
 全てのデストロン怪人達が一斉にV3に狙いを定めた。それに対し、V3はフェイトの前に陣取る形で立ち、構えを取った。
 正義のヒーローが持つ、決して後ろには退かない不退転の構えである。
「か、風見さん!」
「下がっていろ。後は俺が片付ける」
 口調は何時もの風見に戻っていた。素っ気無い態度にも見えるが、それでも正義の心を宿した熱い鼓動を感じる。そんな言葉であった。
「馬鹿め、幾ら貴様が1号の技と2号の力を併せ持った所で所詮は一人、たった一人で何が出来ると言うのだ?」
「一人じゃないさ。俺の中には本郷先輩と一文字さんが託した正義の心が宿っている。お前等デストロンには一生掛かったって理解出来やしない心なのさ。それに、聞こえないか? こちらに近づいてくる音が?」
「音だと?」
 ヨロイ元帥は耳を澄ませた。すると、確かに何かが聞こえて来る。それはバイクの走る音だった。しかも、この音は何所かで聞き覚えがある。
 だが、まさか……
 一抹の不安がヨロイ元帥の中に芽生えていた。そして、その不安は正に現実の物となった。
 それは、丁度ヨロイ元帥の後方から迫ってきた。
 全てのデストロン怪人の上空を跳躍し、それは現れた。二台の白いバイク、サイクロン号。そして、それに跨る二人の存在。
 忘れもしない。その存在こそヨロイ元帥が最も恐れていた存在だったのだ。
「き、貴様等!」
 地上に着地したサイクロン号から降りたそれが、デストロン怪人達の前に立ち雄雄しきその姿を見せた。
 緑のマスクに赤い瞳、機械の体に正義の心を宿したヒーロー。
「仮面ライダー1号!」
「仮面ライダー2号!」
 力を込めた構えを取り、二人のヒーローが名を叫んだ。そのヒーローこそ、人類全てが長い間待ち望んだ仮面のヒーロー達だったのだ。
「本郷先輩、一文字さん!」
「馬鹿な、貴様等はカメバズーカと共に海の藻屑となった筈だ!」
 そう、ダブルライダーは半年前にカメバズーカと共に海の藻屑と消えた筈であった。だが、そのダブルライダーが今、こうして目の前に現れたのであった。
「生憎だったなデストロン軍団! 俺達は貴様等の野望を打ち砕き、根絶やしにするその日まで、例え殺されても死ぬ事はない!」
「それになぁ、世の中には【色男は死なない】ってルールがあるんだぜ!」
 本郷の言い分は理由になるが一文字のは余り意味を成さない気がしてきた。
 だが、こうしてダブルライダーが揃ってくれたのは何よりも有り難い事であった。
「風見、今こそデストロンを根絶やしにする絶好の機会だ!」
「ここいらで決着をつけようぜ。ショッカーから続いたこの悲しき連鎖を断ち切ろうぜ!」
「やりましょう! 俺達三人の仮面ライダーの力を結集させましょう!」




     ***




 はやての腕の中で、シグナムの体から体温が消え失せていくのが感じられた。ヴィータの一撃が致命傷となってしまったのだろう。今のシグナムは微動だにしない。
 そして、そんなはやての目の前でヴィータは勝ち誇った顔で立っていた。
「さてと、後はブラックサンをぶっ殺してキングストーンを抜き取るだけだな」
「その点なら問題ないわ。幾ら異常なパワーアップをした所で、創世王様から頂いた力を持ってる私達には到底敵う筈がないもの」
 勝ち誇ったようにシャマルが言う。彼女の言う通りであった。目の前では仮面ライダーBLACKRXがザフィーラを相手に苦戦を強いられているのだ。
 フォームチェンジをする間すら与えない連続攻撃に押され始めている。
 このままでは、いずれRXも力尽きてしまう。そうなれば全てが終わってしまう。
(光太郎兄ちゃん、シグナム……皆死んでまう! 私の大切な人達が皆居なくなってまう。お父さんとお母さんみたいに……もう嫌や! そないな事。もう誰一人私の大切な人が居なくなるのなんて……絶対に、絶対に……)
「絶対に嫌やああぁぁぁぁ!」
 はやては叫んだ。そして願った。もう誰一人として自分の大切な人間が居なくならないで欲しいと。
 その時であった。はやての体から眩いまでの光が発せられた。白銀に輝くその光は眩く輝き、周囲を照らし出す。
「な、何だ!」
「この輝きは……キングストーンの輝き! でも、何故?」
「馬鹿な! そいつは不完全なキングストーンしか持っていない筈だ! なのに何故?」
 はやてが放つ光に三人は驚愕していた。更に驚きの展開が起こった。
 その光を浴びているシグナムが、そして仮面ライダーBLACKRXが、果ては傷ついたアルフ、ユーノ、フェイト達が。
 それら一同の負っていた傷がみるみる内に塞がっていくのだ。それだけじゃない。失っていた筈のパワーもその光の中に居ると戻っていく感覚が感じられてくる。
「あ、主……」
「シグナム!」
 はやての腕の中でシグナムが再び目覚めた。消えかかった温もりが再び感じられる。奇跡の光であった。
「この輝き、何て温かいんだ……これが、本来のキングストーンが持つ力、嫌、はやてちゃんの力なんだな」
「馬鹿な……なり損ないの世紀王にこんな力がある筈がない!」
「隙ありだ!」
 一瞬の隙を突き、ザフィーラに突進するRX。対応に遅れたザフィーラの腕を掴み、そのまま背負い投げの要領で投げ飛ばす。
 更に連鎖式で目の前に居たシャマルにそのままザフィーラの巨体を叩き付けた。華奢な体であるシャマルに大柄のザフィーラをぶつけたのだ。当人にとっては溜まった物じゃない。忽ちザフィーラの下敷きとなり地面に倒れ伏してしまった。
「今ならば二人を助けられる!」
 倒れて身動きが取れない二人に向かい、RXがキングストーンフラッシュを浴びせた。ベルトのバックルから赤い輝きが発せられる。それを受けた二人の体からドス黒いオーラの様な物が浮かび上がり、やがて消え去ってしまった。
 すると二人はまるで糸が切れた人形の様にその場に倒れてしまったのだ。
 成功だ。シグナムの時と同じように二人を救う事に成功したのだ。
 これで残るはヴィータ只一人である。
「さぁ、ヴィータちゃん。君も助けてあげるよ」
「そうは行くかよ!」
 近づこうとした光太郎から逃げるようにヴィータは飛翔する。
「ヴィータ!」
「覚えてろブラックサン! それになり損ないの世紀王! 必ずテメェ等を始末してやるからな!」
 そう言い残し、ヴィータは去ってしまった。追おうとしたが、相手が空を飛んでいるのでは無理だ。それに、今はやるべき事が残っている。
「はやてちゃん、君は二人を頼む。僕は……」
「分かっとる。デストロンをやっつけてな、光太郎兄ちゃん!」
 強く頷くとRXはデストロン達と戦っている三人の仮面ライダー達の支援に向った。
 今、其処で三人のライダー達とデストロン怪人軍団との壮絶な死闘が繰り広げられている。
 其処へRXが加わったのだ。
「手を貸します! 共に戦いましょう」
「助かる」
 RXが加入した事により、形成は大きくこちら側に傾いた。只でさえ強い仮面ライダーが四人も現れたのだ。これによりデストロンに幾ら怪人が居たとしても勝ち目は薄かった。
 遂には怪人達の殆どが撃破され、残すはヨロイ元帥只一人となってしまったのだ。
「ま、まさか……我等デェェェストロンの総戦力を以ってしても、仮面ラァァイダーを倒せないと言うのか?」
「ヨロイ元帥、残すは貴様只一人だ!」
「ぐ、ぐぅぅぅ……」
 四人のライダーを前に退きだすヨロイ元帥。すると、其処へ突如ととして雷鳴が響き渡る。凄まじいばかりの雷であった。
 そして、その雷が落ちた地点には白いローブを纏った者が居た。不気味にそれは佇んでいる。
「な、何だあれは?」
「しゅ、首領!」
 ヨロイ元帥が叫んだ。そうか、あれが首領だったのか!
 一同が首領と呼ばれた者を見る。
「首領! お許しください! デストロンの総力を結集したのですが、今一歩及ばずに……」
【ヨロイ元帥、我がデストロンを此処まで陥れた罪は重い。その罪は貴様の死を以って償うのだ!】
情け容赦のない言葉を発した直後、首領と名乗る者から怪光線が発せられた。それを浴びたヨロイ元帥は苦しみのた打ち回る。そして、やがて骨も残さずに蒸発して果ててしまった。
 残すは首領只一人である。
「貴様が首領だな!」
【如何にも。流石は仮面ライダー。よくぞこの私を此処まで追い詰めた。褒めてやろう】
「へっ、野郎に褒められても嬉しくないぜ!」
【ショッカーに続き、デストロンまで失ってしまった。最早私に世界征服をするだけの戦力はない。私の負けだ】
「覚悟を決めたと言う事だな?」
【無論だ。だが、貴様等は決して真の平和を勝ち取る事は出来ない】
「それは一体どう言う事だ?」
 首領が仮面ライダー一人一人に語り継げた。その言葉には意味があるのだろう。それを必死に汲み取ろうと一同は言葉に耳を傾けていた。
【貴様等は知る事になる。我等侵略同盟など足元にも及ばない真の巨悪の存在に。その力は神すら及ばない程だ。我等人類が幾ら束になって掛かったとしても、そいつに勝つ事は出来ない】
「首領! そいつは一体何者なんだ? そいつが侵略同盟の真の主なのか?」
【奴に味方など居ない。奴にとって、この宇宙に存在している全ての生命が敵なのだ。そいつの目的は、全生命体の抹消にある】
「何だと!」
【フハハハハハハ、絶望するが良い仮面ライダー! 貴様等が苦しみ抜いた末に果てていく様を一足先にあの世で見物させて貰うとしよう】
「首領、貴様が行くのはあの世ではない! 貴様が行く場所は只一つ、それは地獄だ!」
 吐き捨てるかの様に言い放った後、V3の必殺の拳が首領に突き刺さった。
 だが、其処にあったのは只の布切れだけであった。他には何もない。
【フハハハハ、さらばだ仮面ライダー! さらばだ、忌々しきヒーロー達よ! 貴様等が地獄へ落ちてくるのを楽しみに待っているぞ】
 不気味な言葉を残し、首領は散った。そして、程なくしてデストロンの壊滅の報せが町中に知れ渡る事となる。
 だが、一同の胸中は晴れ晴れとはしなかった。最後に首領が残した言葉が気掛かりだったからだ。
 侵略同盟すら足元にも及ばない巨大な悪の存在。一体それは何者なのだろうか?
 そして、その目的が全宇宙の全生命体の抹消。そんな事が可能なのだろうか?
 そして、それを可能に出来るとするならば、それはとてつもなく恐ろしい敵となる。
 果たして、ヒーロー達は守りきれるのか? そして、この星の運命は如何に?




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

 デストロンは壊滅した。その頃、付近を探索していたハヤタ、ダン、郷の三名はある物を発見する。
 

次回【裏切り】お楽しみに 
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