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聖闘士星矢Ω 虎座の聖闘士

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第五話 夢に放て!ハリケーンボルト!

二回戦前日

相変わらず生傷が絶えない大河は澪の治療を受けていた。

あまりにも大河が己のダメージを顧みない戦い方をしているからか雑に包帯を巻いている。

「いでいで!もっと優しく巻いてくれよ~」

「うっさい!男だったら我慢我慢!」

あまりの痛みに涙目になる大河に向かって叱咤する澪。こんな調子で二回戦を突破できるか心配になるのだった。


第五話 夢に放て!ハリケーンボルト!


翌日・控室にて

「うえ~・・・」

あまりにも乱暴に治療をされたせいかダメージが悪化したのではないかと思う大河。それもそのはず前回の事は並の人間ならさらにダメージが酷くなり生きているのがやっとという状態である。

そんな大河を見て澪は一言つぶやいた。

「あんた・・・次の試合棄権しなさい」

「は?」

澪の突然の言葉に目を丸くする大河。いきなり棄権と言われても話についていけていない。

その理由を澪が説明し始めた。

しかも新しくなったコンピュータを片手に持ちながら・・・

「いい・・・あんたの今のダメージは生きてるのがやっとってくらい甚大でしょ・・・それでもって次の相手はコンパス座のフック・・・相手の事を徹底的に調べ上げて対戦してくると思うからあんたの左拳のフィニッシュブローはまず見切られるし打たせる隙も与えない・・・あんた右拳には何のフィニッシュブローも無いし・・・ジェットアッパーもブーメランフックも絶対に冴えない・・・これ以上怪我したくなかったら潔く棄権することね」

コンピュータの計算を大河に突き付けながらそう説明する澪。

それを見た大河は目を細めながらぼそっと呟いた。

「おめえよ・・・俺の事勝たせる気有るのか?」

「何を言うの?コンピュータの計算上あんたの敗北を合理的に弾き出してるだけよ」

「いやさ・・・毎回毎回お前のコンピュータ計算外すじゃねえか」

今まで二度コンピュータに己の敗北を宣言された大河だが、何とか勝利を納めコンピュータの計算を上回ってきた。

大河がそういう計算型タイプじゃないからかもしれないが、もうコンピュータの計算を信じられなくなっているのである。

おまけに毎度毎度澪が破壊して次のコンピュータを持ってくるので余計信用出来ないのかもしれないが・・・

「なぁミヨ」

「ミオだっつうの・・・なに?」

「何でみんな聖闘士ファイトなんかやってんだ?」

実は大河の参加した時からの疑問皆は何故聖闘士ファイトに参加するか。

「ああ・・・聖闘士ファイトで優勝すれば白銀聖闘士の資格を貰えるからね」

「白銀聖闘士・・・ってなんだ?」

「要はあんたら青銅聖闘士の上の階級の聖闘士」

「ふむ」

大河にわかりやすいように端折って説明する澪。知識0から理解するには必要最低限の事で良いと合理的に計算した説明だった。

「というか・・・あんたは何で参加してんの?・・・何のために戦ってんの?」

「へ?」

言われてみれば思いつかない大河。

今まで戦ってきたのは全て誰かに言われたから・・・自分ではどう思っているのか分からなくなってきた。

大河の頭が煙を上げている事が目に見えてわかる澪は一息つき・・・

「わかった・・・あたしが悪かった・・・とりあえず次の相手に集中しなさいって」

取りあえず大河が負けると確定している澪の頭の中では大河を考えさせるより行動させた方が良いと思い次の試合に向かわせるのだった。

試合会場でコンパス座のフックと対峙する大河。

だが先程の澪とのやり取りが頭に引っかかる。

(何のために・・・戦う・・・か・・・)

ボクシンググローブをきつく締めボーっとしながら立っているとフックが両手を大地に翳した。

「すでに試合は始まってるんですよ・・・眼中に無いようですね!」

「!?」

フックの言葉に大河が我に返ると大地が自分に向かって突き出された。

咄嗟にジャンプしてかわす大河だが後方から大地が突き放たれ大河の背中を直撃した。

「がは!」

地面に叩き付けられた大河が根性で立ち上がりフックに向かって突き進むがフックは大河の間合いに入らないように大地を突き出しながら大河の間合いを取らせないように戦っている。

だが大河はフットワークを駆使して自分の距離まで接近するとフックに左ジャブを繰り出した。

だがフックは大河の左ジャブを寸前でかわし自身の拳を放った。

「ぐ!」

まともに食らってしまった大河は踏みとどまるが根性で左ジャブを繰り出し続けたがフックは大河のジャブを回避していく。

この勢いではフィニッシュブローを打っても当らない。

焦りが大河の脳裏をよぎるが焦れば焦るほど大河の左ジャブは空を斬った。

「無駄です・・・君の左拳は徹底的に調べ上げました・・・軌道は全て見切っています」

「なに!?ぐあ!」

左ジャブを見切られている事に大河が驚愕した隙を突いたフックの拳が大河を宙に舞わせた。

「がは!」

地面に叩き付けられ出血する大河。だがよろめきながらも立ち上がり必死になって構えた。

それを見たフックはあざ笑うように呟いた。

「成程・・・根性だけは人並み外れているようですね」

「なに?」

「君からは何も感じない・・・小宇宙も・・・その目的も・・・それに僕の事も眼中になかったでしょう!」

その通りだった。自分の事だけを考え目の前の相手の事を考えていなかった大河。フックは自分の事を研究しちゃんと自分を見て戦った。

だが自身はどうだったか。何も考えず目的の無い戦いを繰り広げていた。

あの頃の様に・・・

「君の拳は何のために有るのですか!?」

「俺の・・・拳・・・」

フックに言われ始めてきづいた。戦いの目的は分からない・・・だが拳の意味は違った・・・竜児と共に練習に明け暮れていた時は世界チャンピオンになるという夢の為に拳を磨いていた。

だが今の自分には何があるか分からなかった。

そして

かつてあるボクサーから言われた事を思いだした。

孤児の自分を嘆き周りの大人を信じなかったあの頃・・・竜児に引き取られたのにもかかわらず、竜児を信じず誰かを傷つけていた自分。

それを止めたのは竜児の友・香取石松だった。

おろかにも石松に向かって行った大河はあっけなく返り討ちに合いその場に沈んだ。

その時の言葉が大河を変えた。

打ちのめした大河に石松は力強く言った。

「男の拳は誰かを傷つける為にあるんじゃねえ・・・夢を掴むためにあるんだ」

「けど・・・俺の父ちゃんは・・・」

ボロボロの大河は立ち上がろうとし石松を睨みつけると、石松は目を閉じ静かに答えた。

「馬鹿か・・・おめえの親父はピンピンしてらぁ・・・生きてる限り逢えるだろうが」

「え?」

「おめえの親父は高嶺竜児・・・それ以外の何でもねえ!」

石松のその言葉に立ち上がった大河。それ以来竜児との関係が改善され始めていったのだ。


その言葉を思い出し、大河は立ち上がり左拳を構えフックに飛び掛かった。

「ふふ・・・君の左拳は既に見切っています!!」

フックが大河の左ジャブを掻い潜ろうと大地をせり上げようとした瞬間。

「ふん!!」

大河の右ストレートがフックの顔面にさく裂した。

突然の出来事にパニックになるフック。身体よりも心理的なダメージが大きかった。

そして澪が・・・

「しまった・・・あいつ・・・右拳は必殺ブローが無いだけで普通に使えるんだよね・・・ああ!私の馬鹿ああああああああああ!!」

己のうっかりで計算を外した事に嘆きコンピュータを破壊するのであった。

「く!う!」

鼻血を出しながら後ずさるフック。それだけでも大河の右拳の破壊力がうかがえた。

「おめえに感謝するぜ・・・今の俺の拳は何の目的もなかった・・・けど今分かったぜ!・・・俺は・・・聖闘士になる!!」

顔を上げた大河が左拳を構えその拳の意味を宣言した。

顔を抑えているフックに大河は向かって夢を乗せた拳を放った。

「ブーメラン!フック!!」

「うわあああああああ!!」

凄まじい真空波と共に放たれた拳で大空の彼方へ打ち上げられるフック。

だが大河は自身も跳躍し空中に居るフックの上を取った。

それはケンカチャンピオン・・・香取石松のブロー・・・

その名は!

「ハリケーン!ボルト!!」

「があああああああ!!」

空中のフックを叩き落とすように左拳を突き出す大河。
巨大なクレーターを生み出したその拳に会場中がざわめき大河の勝利を確定させた。

有る二人の人物を除いては・・・

「奴か・・・虎座の聖闘士とは・・・それにあの天才少女を引き連れているとは」

会場の片隅に隠れるように立つα星の姿が・・・

更に

「あれがハリケーンボルトだと?・・・何だあの猿真似は・・・ふざけるな!」

大河のハリケーンボルトに敵意を向ける海龍の姿が・・・


そして大河は控室に向かいながら拳を見つめ新たなる決意を描いた。

「俺は・・・聖闘士になる・・・自分の人生を輝かせるために・・・竜児さん達の為に」

決意を込めた拳を握り締めながらコンピュータを破壊していらっとしている澪の元へ帰る大河だった。






 
 

 
後書き
聖闘士ファイトもいよいよ大詰め!次の対戦相手は龍座の龍峰。最強のドラゴンの盾が聖衣を装着できない俺を苦しめる!そして俺は・・・等々聖衣を・・・

聖闘士星矢Ω 虎座の聖闘士 龍虎対決!誕生する聖闘士!

 
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