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聖闘士星矢Ω 虎座の聖闘士

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第四話 地を這うアッパー!ジェットアッパーさく裂!



医務室

「いでいでいでいで!」

ベッドに腰掛けながら澪に身体に包帯を巻いてもらっている大河。前回の戦いでの傷が甚大のようだったらしく、脱臼やら骨折、打撲は数えきれずと並の人間なら重症であり命の危険もあった。

「はぁ・・・聖闘士が聖衣着ないで戦うとこうなるのか・・・」

ぼやきながら包帯を巻く澪だがあまり気にした様子の無い大河。

「へん何のこれしき!」

身体のダメージを一蹴りしようとする大河だが冷静に澪が語る。

「あんたね・・・こんな戦い方してたら30まで生きてられないわよ!」

「!?」

その言葉に言葉を失う大河。

すると澪はカセットレコーダーを取り出した。

「今時カセットテープ?」

「やかましい!イライラした時にはこの旋律が一番!」

澪が取り出したカセットテープには名前が書かれていた。

『河井武士』と・・・


第四話 地を這うアッパー!ジェットアッパーさく裂!


昼の食堂にて、洋食中心のプレートを前にして大河は澪に言われた事が頭に留まっていた。今の戦い方をしていたら・・・そう思うと箸が進まない。

「はぁ・・・」

取りあえず気を取り直し今日の試合に備え無理やりにでも食べることにした大河。

どんな時でも身体を作るのは食べ物だからだ。

これから向かうであろうリングでは誰も助けてくれない。

どんなに苦しくても自分で立たなければならない。

だったら精一杯身体を作ろうと思った。

思いっきりがっついて食べ始める大河。すると向かい側の席に座る目つきの悪い男の姿が・・・

「よぉ~お前がティグリスだって?」

「?」

食べている最中の大河はキョトンとしていると男は明らかに大河を見下したような態度を取り出した。

「俺はトビウオ座のアルゴ。お前の対戦相手だ」

「はぁ・・・よろしく」

あまり興味の無さそうな大河だがアルゴは続けた。

「お前・・・聖闘士の事なんてロクに分かってねえんだよな?・・・それでよく聖闘士ファイトに参加する資格があんな?」

どう見ても大河を挑発するアルゴの態度に大河は黙ってフォークを進め一通り食べ終わると一気に立ち上がった。

「慌てなさんな・・・試合まではまだある・・・そしたらオメエを秒殺してやるからよ」

そう言って大河がボードを持って立ち去ると奥歯を噛んで睨みつけるアルゴ。

大河は胸くそ悪さを感じつつ澪に合流するべく探し始めた。

一定の場所を捜し歩き石塀に挟まれた路地に澪の姿を見付け声をかけた。

「おお~い!ミヨ~」

「ミオだっつうの!」

合流して早々激怒する澪。すると気を取り直し澪はアルゴのデータを算出し新たに持って来たコンピュータに表示した。

「いい・・・次のアルゴの事なんだけど・・・虎・・・あんた負ける」

「は?何で?」

データをはじき出して早々負けを宣言されてしまう大河。

すると澪はその理由を話し始めた。

「相手のアルゴは前に奇策でペガサス光牙とライオネット蒼摩の妨害行為を行った・・・それで失格になったけど・・・聖闘士の事もロクにわかんないあんたじゃ対処しきれないでしょ・・・だからあんたが負ける」

「おいおい・・・やってみないとわかんねぇだろ」

「あんたのような馬鹿じゃ勝負は火を見るより明らかよ・・・それにこの試合に勝てばシルバー聖闘士の資格を得られる・・・しかも今回はシルバー聖闘士も参加するって話だから怪我する前にやめときなさい」

どう考えても勝たせる気があるのか澪の計算に対していらっとする大河。

すると突如凄まじい爆音が響き渡った。

「何だ!?・・・!?」

爆音に驚いた大河が廻りを見ると石塀が爆発を起こし大河と澪に振ってきた。

このままでは二人とも下敷きになってしまう。

容赦なく降ってくる大粒の石が凄まじい砂煙を起こすと周り中煙だらけになった。

その様子を見るアルゴの姿が・・・

「へ・・・これで第一回戦はいただきだぜ」

この事態を起こしたのはアルゴであり大河を試合前に怪我させ欠場させようと企んだのだ。

確実に大河を負傷させたと確信したアルゴはそのまま試合会場へ向かった。

徐々に砂塵が晴れ始めると澪がつぶっていた瞼を開いた。

「・・・けほ・・・けほ・・・なに?・・・虎!?」

澪が目を見開き驚愕した。自分達に降り注ぐ意思を全て大河が身体で受け止めているからだ。

そのおかげで澪は怪我一つないが大河は目元に影を落とし動かない。

「虎・・・虎!!」

必死に呼びかける澪だが大河は何も答えようとしない。

そんな大河達を置いて置き聖闘士ファイトは予定通り開催されていた。

控室には参加者である青銅聖闘士とシルバー聖闘士が自身の試合順を待っていた。

大河の試合は第3試合。現在第2試合だが大河の姿は控室には無かった。

第2試合の青銅聖闘士の拳が決まると試合終了を告げた。

とうとう大河の試合になってしまい係員が大河を呼びに控室に現れるが大河の姿はやはり無い。

試合会場で審判の檄も大河不在を係員から聞くが、とりあえず選手の名を読み上げた。

「第3試合・・・トビウオ座!アルゴ!」

檄の声と共にリングに歩いてくるアルゴ。

(へへ・・・あいつは今頃ベッドの中だ・・・)

己の策で陥れた大河の不戦敗を予見するアルゴはリングに立ち聖衣を装着した。

「虎座!大河!」

大河のコーナーを見るが誰も居ない事に会場の全員が首を傾げていると、もう一度檄が対戦者である大河の名を呼んだ。

「虎座!大河!」

もう一度呼ばれても反応の無い大河。会場の誰もが試合放棄と思うと檄は一呼吸置き決着を宣言しようとした。

「この試合・・・不戦勝とする・・・勝者は「待ちな」 !?」

勝者を宣言する檄の言葉を遮り傷だらけの大河がコーナーから入ってきた。大河の姿に会場中がざわめきリングに立つ大河はボクシンググローブを装着した。

「てめぇ・・・」

「俺は義理堅いんでね・・・さっさと始めようぜ」

面白くなさそうに大河を睨むアルゴ。だがそんな事お構いなしにファイティングポーズを取る大河達を檄が制止した。

「この試合の勝者は決定している」

「へ!そうだよ! 聖衣も装着できないような奴が「勝者!虎座大河!」なに!?」

明らかに自分の勝利だと確信していたアルゴは大河の勝利に驚愕し今の檄の判定は不服と訴えかけた。

「どういう事だよ!先生!何で聖衣も装着できないような奴が勝ちで俺が負けなんだよ!」

アルゴの抗議に対し檄は静かに答えた。

「貴様の聖闘士ならざる行為は先刻承知だ・・・二度目とはな・・・俺達が気付かないと思ったか?」

「う!」

大河にやった妨害行為がばれてしまいタジタジになるアルゴ。そんなアルゴを放っておき檄は勝者を再び宣言する。

「よって・・・勝者!虎座「断る!」なに?」

檄の勝者宣言を大河が遮った。勝者である事を否定している事に会場がざわめくと檄が大河に向かって言った。

「何故だ?お前の勝利なんだぜ?」

「こんなの勝利じゃねえ・・・勝利って言うのは自分自身で掴み取るもんだ・・・俺はこいつと戦って勝ってみせるさ」

大河の意気込みに檄はしばらく考え込むと聖闘士の掟として不戦勝を言い渡すかあくまでも尋常の勝負を要求する大河の意思を尊重するか・・・頭をポリポリかきながら檄が決断した。

「お前みたいな馬鹿は久しぶりだよ・・・いいだろう!この試合認めてやる!」

檄の宣言に会場中が沸き大河とアルゴの勝負が開始された。

「へ・・・へへ・・・良いぜ!やってやるよ・・・テメエとの格の違いを見せてやるぜ!」

アルゴが小宇宙を燃やすと大河は静かに宣言した。

「・・・テメエ・・・ケツの穴は洗ってきたか!?」

「何だと?・・・!?」

試合開始の合図とともに大河が一気にアルゴとの距離をつめた。

突然の奇襲にアルゴが仰天するが聖衣の耐久力を生身の拳で貫けるはずがない。

そう慢心しているが・・・

「!!」

目を見開き低姿勢から左拳を構える大河。

大河の態勢と拳から只ならぬものを感じ取りながら混乱するアルゴはその拳をこう評した。

「なんだ!?この地を這うようなアッパーは!?」

そのアッパーを会場の隅から見ていた澪は知っていた。

「世界を震撼させたスーパーブロー・・・貴公子・河井武士の・・・」

・・・その名は・・・

「ジェットアッパー!!」

「ぐああああああああああああああ!!」

聖衣をぶち抜き大空の彼方へ打ち上げられ真っ逆さまに落ちてきたアルゴは巨大なクレーターを作り完全に白目をむいて伸びていた。

「し!勝者!虎座大河!」

思いもよらぬジェットアッパーに驚愕する檄の勝者宣言に腕を上げる大河。

大河はそのまま何事もなかったかのように控室に進もうとすると澪が待っていた。

「ミヨ」

「ミオ!」

大河に名前を言い間違えられ頭に筋を浮かべる澪。

だが気を取り直して大河のジェットアッパーを評した。

「不完全なジェットアッパーね」

「なに?」

見て早々大河のジェットアッパーを不完全と宣言する澪。会場の皆はどう思ったかはわからないが、河井の試合のテープを熱心に見てきた澪にとっては不完全なジェットアッパーであった。

「前に見せてもらったブーメランフックに比べたら今のジェットアッパーなんて下の下の下よ」

「何だと」

「河井武士の本物のジェットアッパーは華麗な旋律を響かせ更に右で打っていた。それを強引に左で打ってるあんたのジェットアッパーは不完全よ」

そう言って持っていたコンピュータをグシャグシャに破壊した澪が大河を背に去っていくと、静かに膝をつく大河。

「いってぇ・・・これ・・・次の試合までに完治は無理かな・・・」

身体に受けたダメージを隠しながら次の試合の事を考えるのだった。

そして澪も・・・

(そう・・・あいつ・・・ブーメランフックの完成度に比べたらジェットアッパーの出来は全然ダメだった・・・ブーメランフックのあの完成度・・・高嶺竜児の指導以外に何か特別な理由でもあるのかな?)

すると澪は何かを思い足を止めた。

「助けてもらったお礼・・・言い忘れちゃったな」

複雑な気持ちを抱きながら次の試合に備えることにした澪だった。

 
 

 
後書き

次の対戦相手はコンパス座のフック。俺の全てを調べ上げ動きを見事に封じられてしまう。俺の左拳が一発も掠らないだったら・・・

聖闘士星矢 虎座の聖闘士 夢に放て!ハリケーンボルト!

 
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