問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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A CAPTIVE TITANIA ⑤
「一輝さん。そこにはなんと?どうしたら音央ちゃんを解放できるのですか? 」
鳴央が少し興奮した様子でそう聞いてくる。
無理もない、妹を解放できるかもしれないのだから。
そんな鳴央に一輝は何も言わず羊皮紙を二人が読める位置に持っていく。
二人は驚いた顔をしていたが、次の瞬間同時に一輝に言った。
「一輝さん、私を殺して、音央ちゃんを開放してください。」
「一輝、私を殺して、鳴央を開放して。」
二人は顔を見合わせると、言い争いを始める。
「なに言ってるの、鳴央!」
「音央ちゃんこそなに言ってるんですか!」
「私は、私よりもあんたが生きるべきだから!」
「いえ、音央ちゃんが生きるべきです。だから、私が消えます。」
「だめよ!私は、自分が死んでも鳴央にいきてほしいの!」
「それは私も同じです!音央ちゃんに生きて欲しいんです!」
お互いに、自分よりも相手が生きるべきだと譲らない二人、普通に考えればお互いのことを思っているいい姉妹なのだが、一輝は怒りに震えていた。
「だから、音央ちゃんが・・・!」
「鳴央のほうこそ・・・!」
「うるさい!良いからそのくだらない話をやめろ!!」
一輝がキレた、ブチギレだ。
急に大声で怒鳴ってきた一輝に一瞬ビクッとなる二人だが、
「くだらないって・・・どこがくだらないのよ!」
「そうです。大切なことを話してるんですから、関係のない一輝さんは口を出さないでください!」
二人の矛先が一輝に向くが、一輝は一切ためらわずに、
「その、自己犠牲と自己満足で相手のことを考えてない会話がくだらねぇっつってんだ!少しは相手のことを考えろ!」
そう怒鳴り散らす。
そして、このことに二人が反応しないわけもなく、
「考えてるわよ!だから鳴央が生きるべきだって・・・!」
「考えてます!だからこそ、音央ちゃんが生きるべきだと・・・!」
二人そろって怒鳴り返す。
「考えてるって?自分が犠牲になって大切な人を生き残らせることがかよ!そんな選択肢が考えた結果だってのか!」
「ええそうよ!そうすれば自分の大切な人は生き残れる!」
「そのためならこの命くらい・・・!」
「じゃあ聞くが、お前らがそんなことをされて嬉しいか?違うだろ!ふざけるなって思うだろ!」
「そ、それは・・・」
「そうかもしれませんが・・・」
「それにな!今回の場合、そのために自分の大切な人が死ぬんじゃなくて、殺されるんだ!その意味が解ってんのか!」
「「・・・・・・」」
二人が、何も言わないので一樹は言葉を続ける。
「少なくとも俺の中には、自分のために命を懸けてくれた人の分も生きようなんて感情はわかなかった。あったのは勝手に決めんなって怒りと、俺の家族を、父さんを殺したやつに対する殺意だ。」
「それって・・・」
「俺も大切な人が目の前で、俺のために命を捨てたんだよ。俺が時間を稼ぐから逃げろって、俺に一族に伝わる全てを託してな。」
「・・・そのおかげで今、こうして生きてるのでしょう?だったら・・・」
「・・・そうよ。だったら私たちがそれをしても・・・」
いいじゃない。そうつなげようとした音央の言葉をさえぎり一輝は続きを話した。
「いや、俺は親への反抗でその場に残り、家族を殺したやつらが来たら怒りのままに全員殺した。」
一輝はいったん言葉を切り、いつの間にか下を向いていた顔を上げ、二人の顔を見ると、
「おそらく、それが人間なんだ。結局のところ本能で行動してしまう。お前たちは自分の大切な人をそんな目にあわせていいのか?」
そう、さっきまでとはまったく違う、優しい声音で言う。
そして、そのせりふや、それまでの台詞が恥ずかしかったのか、いつもの感じに戻ると、
「それに、この場合、殺したの俺になっちゃうからな。命を狙われるのはごめんだ。」
そういって、ごまかそうとした。
「・・・確かに、大切な姉妹をそんな目に合わせたくはありませんね。」
「・・・そうね。開放されるなら二人一緒に。」
二人がわかってくれたようなので一輝は安心した。
「さて、それじゃあこのゲームの完全攻略の方法を考えよう。鳴央はこのゲームのルールを覚えてる?」
「はい。」
「じゃあこっちのクリア条件と敗北条件、備考を教えてくれ。忘れちまった。」
「では、重要そうなものだけ。クリア条件は捕らわれの少女、この場合私と音央ちゃんのことですね。の開放。敗北条件は生贄にされたら負け。備考はティターニアは生贄によって霊格を高め、一定の霊格を超えると開放される。そして、ゲームクリアの場合、解放された少女はプレイヤーに隷属する、といったところですね。」
「え、じゃあ私たちは一輝に隷属することになるの?」
「まあ、意地でもそうするよ、生贄にはされたくないし。」
一輝はそういいながら、鳴央が言ったことを振り返り、ある一箇所で思考がとまる。
「・・・音央、一つ質問いいか?」
「ええ、私に答えれることなら。」
「じゃあ、ここで生贄にされるのは魂だけで、肉体はなくてもいいんだよな?」
「ええ、そうよ。」
「・・・そうか・・・」
《・・・魂だけあればよく、生贄で解放できる・・・これは・・・》
「・・・二人に言っとくことが一つ。・・・すいませんでした。」
「?どうしたのよ、急に?」
「そうですよ。一体何を謝っているのですか?」
「ええっと・・・今すぐにクリアできる方法があったのに、それに気付かなかったことです・・・」
そういうと、空間に穴を開け、中から『封』と書かれた御札が張ってある小さな瓶を大量に取り出す。
「?この液体は?」
「ええっと・・・先代が封印した妖怪の魂です・・・はい。」
「・・・一輝の家って一体何?」
「さっき村のほうで式神を使ったから鳴央は予想が付いたかもしれないけど、うちは陰陽師だったんだ。んで、復活しないように先代がこうやって封印した。
それ以来代々受け継がれてる。」
「はあ・・・それで?それが何?」
「これを生贄にしようかな、と。結構有名な妖怪、鵺とかのクラスばっかだから、十分いけそうじゃない?」
「いけそうですが、そんなものを使ってもいいのですか?」
「?別にいいだろ。バカな先代のせいでこんな形で残っちゃったんだし、もう俺が継承してるし。生贄は入り口のところの祭壇に?」
「ええ、そうだけど・・・本当に使っちゃっていいの?」
「問題ない、問題ない。」
一輝はそういいながら入り口の祭壇のところに行き、合計百本以上ある瓶のふたを取ると、中身を全て祭壇にぶちまける。
しばし待つ。
すると、音央の体が輝きだし、全ての茨がはじけ飛んだ。
「よし、成功!!」
「一輝、なんだか私解決したって気がしないんだけど。」
「なんだか・・・最後はあっけなく終わりましたしね。」
一輝は解決したことを喜び、音央と鳴央は釈然としないようだった。
「まあまあ。ちゃんとティターニアは村から解放されて、神隠しは任務から解放された。全て解決してるよ。深く考えたら駄目だって。」
「・・・それもそうね。」
「はい。では一輝さん、ゲームの終了を。」
「了解。」
「「「ゲーム終了!」」」
三人は声を合わせてそう言い、森へと帰った。
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「ふう~。それじゃあノーネームに向かうか。行くぞ、二人とも!」
「はい!」
「ええ!」
そうしてA CAPTIVE TITANIAはあっけなく終わり、一輝たち三人はジンたちのいるカフェテラスへと走っていった。
後書き
こんな感じでギフトゲームは終わりました。
次回から原作ぞいになります。
では、感想、意見、誤字脱字待ってます。
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