問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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A CAPTIVE TITANIA ④
「さて、村人は全員倒して封印したし、神殿に入りますか。」
と言うと一輝は神殿の扉に手を当て、普通に開けた。
「普通に開けるんですね。意外です。」
「おいおい。その言い方だとまるで、俺が破壊して入ったほうがイメージ通りみたいじゃないか。」
「さっきまでの戦い方をして、そのイメージがもたれないとお思いなのですか?」
《あれぐらいでそんなことを言われてもな~。》
「ま、そんなことはどうでも良いからさっさと入ろう。」
「自分のイメージはどうでもいいのですか・・・」
この程度なら、一輝からしたらどうでもいいようだ。
どこからアウトなんだろう・・・
「ところで、この光景を見てたときから気になってたんだけど・・・」
「なんでしょう?」
「なんで、建物の中に入ったのに、庭園なの?太陽光っぽいのも上から感じるし。」
そう、神殿の中に広がる空間は茨の壁に囲まれた美しい庭園だったのだ。
先のほうには茨で出来た迷路があり、入ってすぐのところに変な祭壇みたいなものがある。
「それは、富士蔵村に入ったときと同じようなものです。」
「別の空間に飛ばされた?」
「はい。」
一輝、今日三回目の別空間へのワープである。
「・・・もういいや。この程度のことは気にしないようにしよう。箱庭ではよくあることなんだ、きっと・・・」
「確かに、よくあることですね。自分のゲーム盤を持ってる主催者もいますし。」
「ここにも富士蔵村みたいな名前はあるの?」
「はい、あります。“妖精庭園”と言います。」
「ふ~ん。じゃあ、さっさと進もう。」
一輝は迷路を躊躇いなく直進していく。
茨を切り裂きながら。
「・・・迷路を普通に攻略する気は?」
「ない。なんか、奥から何かに謝ってるみたいな声も聞こえるし。急いだほうがいいかなと。ちょっと走るけど、大丈夫?」
「ええっと・・・この格好だと・・・」
確かに巫女服では走りづらいだろう。
「う~ん・・・仕方ないか。急ぎたいから我慢してな。」
「え?なにを・・・って、え!?」
一輝は鳴央の膝裏と背中に手を沿え、お姫様抱っこをした。
「ちょっと一輝さん!?」
「悪いけど急ぐからこのままな。あと、舌噛まないように気をつけて。」
その一言を言うと、目の前に空気の刃を作りそれで切り裂きながらものすごいスピードで走っていく。
「いやっほー!!」
「キャー!!!」
二人は声を上げながらどんどん奥へと向かっていった。
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「よし。この辺から歩こう。」
一輝は、ここからすこし進んだら声の元にたどり着くと言う辺りで止まり、鳴央をおろした。
「一輝さん・・・」
「?なに?」
「・・・これから、あれをやるときは一言、言ってください。」
「・・・了解。ごめん。」
鳴央のぐったりとした様子から、一輝は本の少し反省した。
「さて、ここなら声が聞こえると思うんだけど、どう?」
「・・・はい、聞こえます。確かにこれは音央ちゃんの声です。」
「じゃあ、行こうか。」
「はい。」
一輝は目の前にある最後の茨の壁を切り裂き、その先へ歩いていく。
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「ごめんなさい。ごめんなさい。私のせいで、私なんかのために・・・」
一輝たちの目の前で、茨の中に捕まっている少女が目を瞑り、涙を流しながら繰り返しそうつぶやく。
「なあ鳴央、もしかして・・・」
「はい。私たちに気づいていないんだと思います。」
「・・・あんだけ派手にやっといて?」
「神殿の扉が開いたときに、生贄が来たと思ったのかと・・・」
「そうか。なら・・・」
一輝は茨の中の少女に近づき、
「え~っと・・・俺は別に生贄になってないぞ?」
「!?え?うそっ!?」
「そんなに信じられないか・・・」
「う・・・うん。」
「じゃあ信じろ。ここまで来れてんだから。」
そこで一輝は一泊おき、自己紹介を始める。
「俺は寺西一輝。今日箱庭に召喚されたばっかりの人間。一輝って呼んで。」
「え、ええっと・・・私は六実音央。私も音央でいいわ。」
「じゃあ音央、君がティターニアだよね?」
「ええ。そうだけど・・・一輝はなんでここに?」
「?べつに。ただ『A CAPTIVE TITANIA』に挑戦しただけだけど?」
「・・・“契約書類”は読んだ?」
「もちろん。」
「じゃあなんで・・・」
「挑戦したのかって?」
「ええ。」
「簡単だよ。一つはギフトゲームをやってみたかったから。」
「そんな理由で挑戦するにはリスクが高すぎるでしょう!」
「?そうかな?捕まらなければいいだけだし。」
「捕まった場合のリスクを言ってるのよ!」
「その場合はそうだな。でも、理由はまだある。」
「・・・その理由は?」
「友達の鳴央が困ってたから。」
「そう、鳴央が・・・」
「あと、今出来た理由が一つ。」
「・・・それは?」
「新しく出来た友達の、音央が困ってるから。」
「っ!?」
「以上の理由から、俺はこのゲームに挑戦してるし、このゲームを何が何でもクリアして、二人を助ける。」
一輝はそう、はっきりと宣言した。
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「・・・そう。絶対にやめる気は無いのね?」
「ねえな。」
「・・・解ったわ。じゃあ私の後ろにある祭壇を見なさい。このゲームを設定した“主催者”はそこにクリア方法を記したって言ってたから。」
「・・・このゲームを開催したのは魔王だって聞いたんだけど・・・」
「ええ。そうよ。」
「魔王に対するイメージが・・・」
一輝の中で音を立てて、魔王のイメージが崩れていく。
「・・・まあいいや。“ルインコーラー”とやらに行って直接確認しよう。」
そう言いながら一輝は祭壇に近づいて行き、そこにあった羊皮紙を読む。
そこには一輝にとっては最悪の方法が記してあった。
『妖精庭園にたどり着きしものよ。汝に敬意を記し、ここにゲームクリアの方法を記す。
・神隠しを殺め、神隠しの村より妖精の女王を解放せよ。
・妖精の女王を殺め、神隠しをその使命より解放せよ。』
それは一輝にとって、最低最悪の選択肢、片方を犠牲にする選択肢だった。
後書き
では、感想、意見、誤字脱字待ってます。
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