問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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フライングボディーアタック
箱庭につくと、疲れたのか一輝たちは会話をしながら歩き始める。
ジンたちの場所は式神のおかげで解るので、そこに話しながら向かう。
「ねえ、一輝。一応知っておいたほうが良いと思うから聞くけど、一輝って天涯孤独なの?」
「う~ん・・・かもしれないし、そうじゃないかもしれない。」
「?それはどういう意味なのですか?」
「いや、両親に祖父母は寿命だったり家が襲われた時に殺されたりしてるんだけど・・・色々知りたいっていって魔物に会ったりする旅に出た妹が一人いてな。そいつが生きてるかどうかで決まる。」
《あいつのことは結局ほったらかしちまったな。どうにかならないものか・・・》
一輝にとって唯一の心残りは妹のことのようだ。
このシスコンめ。
《・・・俺にとっては最後の血のつながった家族なんだぞ?それを心配するのをシスコンというか・・・?》
・・・それはごめんなさいだけど、こっちの文に対して返事をするなって何回言ったら解るんだ!!
「・・・きっと生きてますよ。」
「そうよ。あんたの妹なら陰陽術も使えるんでしょう?」
「いや、陰陽術は使えない。まあ、別の陰陽術以上に妖怪の類に対して強い能力があるけどな。」
「それは一体・・・」
「おっ、あそこにいるな。何か黒ウサギが怒ってるな~。」
一輝は鳴央の質問の途中で黒ウサギたちを見つけ、そこに急ぐ。
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「な、なんであの短時間にフォレス・ガロとゲームをすることになっているのですか!?」「しかも明日なんて・・・準備する時間もお金もありません!」「一体どういう心算で・・・って聞いているのですか三人とも!!」
「「「ムシャクシャしてやった。反省はしていません。」」反省しています。」
「御二人は反省してください!!!」
反省の様子がない二人に対して黒ウサギはハリセンを振るう。
いい音が鳴ってるな~。
「別に良いじゃねえか。見境なく喧嘩売ったわけじゃないんだし。」
「十六夜さんは面白ければいいと思っているのかもしれませんが、このゲームは自己満足のためだけにやるようなものなんですよ?」
「確かに、得られるのは自己満足だけだが、それも大切なことだろ。もちろん、俺は参加しないから頑張れよ。」
「ええ、もちろん貴方なしでやらせてもらうわ。」
二人のその会話に、黒ウサギはあせって割り込む。
「だ、駄目ですよ!御二人はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと。」
「あのなあ黒ウサギ。この喧嘩は、コイツらが売って、ヤツらが買った喧嘩だ。なのに俺が手を出すのは無粋ってもんだ。」
「あら、わかってるじゃない。」
「・・・もういいです。ところで一輝さんは?先ほどから姿が見えないのですが・・・」
「彼なら紙に変わったわよ。ねえジン君?」
「そうなんだ黒ウサギ。俺に渡しといてって言ってこんな紙に。」
ジンはポケットから紙を取り出し黒ウサギに渡す。
「これは・・・」
「式神じゃねえか?」
「ですね。じゃあ一輝さんはどこに・・・」
「入れ替われたとしたら落ちてくる最中くらいだろうな。」
黒ウサギは本日二度目のortのポーズをとる。
「十六夜さんに続いて一輝さんまで・・・なんでこんな問題児をぅ・・・」
ひとしきり落ち込もうとして、一輝のいる場所について思い出し・・・
「ジン坊ちゃん!もう一度行ってきますので、もう少し時間をつぶして・・・」
「いる必要はないんじゃない?」
たところで、後ろから人の声が聞こえた。
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「いえ、探して来る間は待っていただかないと。この後の予定もありますし。」
「俺、黒ウサギの後ろにいるのに?」
「はい?」
黒ウサギが振り返ると、そこには今問題になっている一輝がいた。
「い、一体どこで何をしていたのですか、一輝さん!!」
「ちょっと外の森で散歩を。一応、はじめまして。」
「あ、確かにそうですね。はじめまして・・・ってそれより、一体どういう心算で!」
「上から見たら綺麗だったから散歩したいな~って。」
「そんな理由で!?」
黒ウサギが一輝の自由っぷりに十六夜のときほどではないが驚く。
「それよりも、一輝。そこの」
というと、十六夜は一輝の後ろにいる二人・・・音央と鳴央を指差し、
「お前の後ろにいる制服二人は誰だ?」
と聞いた。
「ええっと、私は六実音央。これからよろしく。」
「私は六実鳴央です。これからよろしくお願いします。」
「あ、私は黒ウサギです。これからというのは・・・?」
「俺と音央、鳴央はノーネームに入るって意味だ。」
「一輝さんはもう私たちのコミュニティについて・・・?」
「ああ。鳴央に聞いた。その上で加入させて欲しい。」
「ありがとうございます!」
黒ウサギは十六夜たちに続き一輝たちも入ると聞いて大よろこびだ。
「喜ぶのは良いが、黒ウサギ。一個聞くことがあるだろ。」
「そ、そうでした。後ろの御二方はどちらで?」
「ええっと・・・」
一輝は勝手にギフトゲームをやったことに対して、多少の後ろめたさを感じるが・・・
「森にあった神隠しのゲームをクリアして、俺に隷属することになりました。」
「あのゲームにですか!?失敗したら生贄にされるんですよ!?」
「すぐに村人は全員、封印したから大丈夫だ。」
ジンと黒ウサギが頭を抱えているよそで四人は会話をはじめる。
「神隠しのゲームなんて楽しそうなのを一人でやってたのかよ。」
「ずるい。」
「そうよ。そういう楽しそうなのは皆でやるべきよ。」
「そういうお前らも、悪人を裁くなんて楽しそうだし、十六夜もあの樹は何だ?絶対結構な相手とのゲームの賞品だろ。」
「水樹っていうそうだ。水が出るらしぞ。」
「じゃあ風呂には入れそうだな。」
「それは素敵ね。湖に投げ出されたから、お風呂には入りたかったところよ。」
「それは大賛成。」
「・・・もういいです。皆さんの性格については諦めましょう。サウザンドアイズに行って皆さんのギフトの鑑定をしてもらってきますので、ジン坊ちゃんは先に帰っていてください。」
「うん、行ってらっしゃい。」
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サウザンドアイズに向かう途中、飛鳥が道に植えられている木を不思議そうに眺めてつぶやく。
「桜の木・・・ではないわよね。今は夏だもの。」
「いや、夏っつっても初夏になったばかりだぞ。気合の入った桜が咲いててもおかしくないだろ。」
「・・・?今は秋だったと思うけど。」
「俺のところは冬だったな。」
話が噛み合わない四人は顔を見合わせて首を傾げる。
すると黒ウサギが、
「それはですね「あんたたちはそれぞれ違う世界から召喚されたのよ」
「へぇ?パラレルワールドってやつか?」
「近いですが、正確には立体交差並行世界理論というものですね。これについての説明を始めると何日かかかってしまうので興味がある方は自分で調べてみてください。」・・・音央さんは解りますが、鳴央さんに台詞をとられるとは・・・」
鳴央の性格が予想していたのと違い、黒ウサギは本日何度目かわからない驚きをした。
そんな話をしていると、割烹着の女性が看板を下げているのを見て黒ウサギがあわてて待ったをかける。
「まっ」
「待ったなしです。」
待ったをかけれなかった。
そのまま黒ウサギたちが言い争いをしているよそで一輝は音央と鳴央と話していた。
「ところで、サウザンドアイズって?」
「それ私も知りたい。鳴央は知ってる?」
「はい、知ってますよ。特殊な瞳のギフトを持つものたちの郡体コミュニティ。箱庭全土に精通する超巨大商業コミュニティです。」
「にしては、商売っ気が無くないか?」
「そうよね、閉店時間の五分前に客を締め出すなんて。」
「たしかに、それはそうですね。」
「う~ん・・・軽く脅したらやってくれるかな?」
「追い出されるわよ。」
「追い出されると思います。」
「だよな~。さて・・・」
どうするか、と続けようとしたところで大声が割り込む。
「いぃぃぃやほおぉぉぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギイィィィィ!」
黒ウサギはその声の主、着物を着た白い髪の少女にフライングボディーアタックをされ、二人で水路まで吹き飛んだ。
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