異世界からチートな常識人が来るそうですよ(タイトル詐欺)
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第十六話 一ヶ月音沙汰無しでごめんなさい。普通のタイトルでゴメ
前書き
ホントにすんません。幾ら試験期間に入ったとはいえ、ここまで進まないとは思ってませんでした……。
ここまで遅くならないように注意します。(; ̄ェ ̄)
それではどうぞ!
ゲーム再開の合図は、激しい地鳴りと共に起きた。
境界壁から削りだされた宮殿は光に飲み込まれ激しいプリズムとともに参加者たちのテリトリーを包み込む。
見上げれば、天を突くほど巨大な境界壁は跡形もなく消えていた。
代わりに、見たことのない別の街並みが宮殿の外に広がっていた。
「な………何処だここは!?」
「うろたえるな! 各人、振り分けられたステンドグラスの確保に急げ!」
「しかしマンドラ様! 地の利もなく、ステンドグラスの配置もわからないままでは」
「安心しろ! 案内役ならば此処にいる!」
ガシッ! とマンドラがジンの肩を持つ。
驚いたようにマンドラを見上げると、マンドラは険しい顔でジンに耳打つ。
「知りうる限りで構わん! 参加者に状況を説明しろ」
「け、けど、僕も詳しいわけでは」
「だから知りうる限りで構わんと言っているだろうがっ。お前の言葉なら信用するものもいるだろう! とにかく動き出さねば24時間などすぐに過ぎるぞ!」
ぐっとジンは反論を飲み込む。泳いだ視線は十六夜を探していた。しかし見つからない。
制限時間がある以上、一分一秒が惜しいのも事実。
ジンは意を決したように捜索隊の前に立つ。
「ま、まずは………協会を探してください! ハーメルンの街を舞台にしたゲームなら縁のある場所にステンドグラスが設置されているはず。"偽りの伝承"か"真実の伝承"かは、発見した後に判断を仰いでください!」
ジンの一声に一斉に捜索隊は動こうとするが、証が一喝して止める。
「待て! てか動くな!」
はっ? と捜索隊が反応するよりも早く、宮殿の屋根にいた証は氷の弓から矢を放つ。瞬間、正に襲いかかろうとした大量のネズミが、矢から溢れ出てきた炎によって灰となった。
「な………!?」
その間にも至る所に矢を放っていく。証は何でもないかのようにネズミを殲滅して呟く。
「後はヨロシク」
「え………、ちょっと!?」
言うや否や捜索隊を無視して屋根を駆ける証。その後を慌てて追いかける捜索隊達だが、相対するラッテンや火蜥蜴によって足を止めざるをえない。
捜索隊を無視して稲妻を纏い、駆け抜ける証は黒い風の強襲でようやく足を止める。
「待っていたわ、破壊魔さん」
「別に待たなくても良かったけど」
当然のように体捌きのみで避けきった証は一刀一剣を構え直す。
「さて、―――再戦か」
後から追いついてきた黒ウサギとサンドラもそれぞれの武器を構え、激突した。
▽
「寝てられないけど……」
春日部耀はそう呟き、空を見上げる。そこでは証たちと魔王―――ペストが戦っている。
互角に見えなくもないが、明らかに証達の方が不利である。
証がどんな強力な攻撃を放ち、直撃させてもペストはすぐさま傷も服装も再生してしまうのだ。更に黒ウサギやサンドラの攻撃に至っては、黒い風を突破すらできない。これではタイムオーバーで参加者の負けとなってしまうだろう。
(……何も出来ずに負けちゃうのかな………ううん、できる限りのことをやらないと!)
あの人智を超えた戦いに弱気になった心を奮いたてる。証達が体を張って足止めしているのだ。ならば一刻も早く ステンドグラスを探し出して彼等を助けなければ、と気合を入れ直したとき、
「きゃあ!」
はっと、声のした方向を見ると。今にもネズミの大群に襲われ掛かっている少女がいた。すぐさま飛んで彼女を庇う様に前に立ち、旋風を起こしてネズミから女の子を守る。
「大丈夫?」
「は、はい。ありがとうございます」
ぺこりと礼儀正しく頭を下げる金髪の少女に首を傾げる。
(こんな小さい子まで戦っているの?)
僅かに疑問に思うが首を振って隠れる様に指示する。
「危ないから何処かに隠れてて?」
「あ、あのお名前は? なんと仰いますか?」
「え?」
いきなりの質問に首を傾げる。
「前に助けて頂いた方にお礼できなかったので……今度こそはと」
恥ずかしそうにはにかみながらもしっかりと話す女の子に面食らいながらも頷く。
「私は春日部耀。……あなたは?」
「私はエミ です」
「そう……、危ないから此処から一旦下がろう」
「はい」
エミを抱きかかえ、旋風を纏って本陣営へと戻る。その時、戦況が劇的に変わろうとしていた。
▽
「私達が、"主催者権限"を得るに至った功績。この功績には私が………いえ。死の時代に生きた全ての人の怨嗟を叶える、特殊ルールを敷ける権利があった。黒死病を世界中に蔓延させ、飢餓や貧困を生んだ諸悪の根源―――怠惰な太陽に復讐する権限が………‼」
あまり感情を表に出さないと思われていたペストは初めて激情で口調を強めた。
その決意に応じて黒い風が勢いを増して荒れ狂う。しかし、ふと証の方を向いて華の様な笑顔で話し掛ける。
「そう言えば、貴方には聞いていなかったわね」
「あん?」
「私達のコミュニティに入らないかしら? 高待遇で受け入れるわ」
「今更?」
「ええ、それに―――」
私達は同じでしょう? と妖しく微笑んだ。黒ウサギとサンドラは絶句し、証は沈黙で応える。
「貴方も私と同じ様に悪霊群を率いている。上手く隠しているようだけど、私は誤魔化せないわ」
「ほ、本当なのですか!? 証さん!」
証は何も言わない。それが答えなのだろう。
「貴方は私よりも遥かに多い霊群を率いてそれを抑えている。成仏もさせずに、それとも出来な」
「五月蝿いぞ☆」
え? とペストが反応するよりも早く、
氷刃と魔炎が辺り一帯を薙ぎ払った。ついでに街と残っていたシュトロムを破壊した。
防ぎきれずに吹っ飛ばされたペストだったが、すぐに体勢を立て直し、訝しげに尋ねる。
「いきなりは失礼では?」
「知ったことか。それにこの霊群は率いている訳じゃなくて取り憑かれているだけだ。呪いみたいなもんだし」
それに、 と一旦黙り、笑いながら構える。
「そろそろこのゲームもお終いだよ。なのにわざわざ仲間に入るわけないだろう?」
一際大きな地響きが起こる。十六夜達の決着が付いたのだろう。それを確認したペストは目を閉じ、
「………そう、なら―――白夜叉だけ手にいれて皆殺しよ」
辺り一帯に黒い風が巻き起こる。ゲームは終盤へと入り始めた。
後書き
ステンドグラスは無事かなぁ?
【天国】(あまくに)
証の持っている一刀一剣の刀の方。日本刀を初めて創った人物またはその刀。平安時代に創られたので千三百年もの霊格を誇る。特殊な恩恵はないがその霊格自体がかなり強力である。かなりポキポキと刀剣を折ってしまう証が折ることの無い刀の一つ。
感想を頂ければ幸いです。
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