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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―

作者:鳩麦
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第二章
  八話 合宿へ──変えたい“今”──

 
前書き
期間空いて八話……

えー、お待たせいたしました。まぁ、細かいことはあとがきで話すとして、まずは本編行ってみましょう!

魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing― 第二章 始まります!

 

 
まだ少し暗さを残す冷たい空気が、ミッドチルダの南地区にある少し大きめの家が立ち並ぶ住宅街の中を満たしていた。
緑が多いせいかしっとりさらさらとした肌触りのその空気は、軽く吸い込んでみると体の中を冷やしてくれるようで心地よい。そんな空気を切り裂くように、蒼い影がしっかりとコンクリート(とは正確には違うのだが近い物体)で舗装された歩道を走り抜ける。
我らが主人公、クラナ・ディリフス・タカマチである。ブルーブロンドの髪をなびかせつつ、街路樹の横を自転車ばりのスピードで走って行く。

「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ」
当然ながら、魔法で身体強化術を使いながらのランニングだ。常に魔力を消費しつつ、なおかつ体力も消費しつつと言うのは、近接格闘戦技を戦闘の中核に据えている者の常である。故に、魔力と体力の同時消費に慣れておく練習と言うのもままある物では有るのだ。
まぁとは言え、だからと言って無駄に多くの魔力を消費する事も、体に要らぬ負担を掛ける上、起こりうるかもしれぬ「有事」の際の危険も増す。当たり前ながら、消費魔力自体はしっかりとクラナ自身が制御していた。

「ふっ、ふっ、ふっ……」
[3、2、1、ゴールです。相棒]
「ふぅー……」
アルの合図を聞きつつ、息を吐いて、クラナは緩やかにスピードを落とした。

朝のジョギングは、クラナの日課である。

かなり幼いころからやっている事なので、自然と体が朝早くに目覚めてしまう。当然、毎日やっている。正直、もう少し寝ていたいと思う時もあるのだが……残念かつ不思議な事に、脳が目覚め切るより前に体が目覚めてしまっているようで、それ以上寝付けないのだ。
目の前にあるのは当然彼の自宅、高町家である。クールダウンをした後、ドアを開けて中に入る。リビングの方で少し人の動く気配がし、ついでに鼻歌が聞こえた。なのはだ。
挨拶をするか迷ったが、敢えてわざわざしに行くのもおかしいようなきがして、クラナは着替えを取りに行こうと正面の階段を目指す。と……階段の上から誰かが降りてきた。

「あ、クラナ、おはよう」
「……おはようございます」
腰まで伸びた長く明るい色の金髪を先の方で一つ結びにし、赤い瞳に微笑みを滲ませた女性。同じ特徴をクラナの妹である少女も持っているが、彼女は右目が翠だ。と言う訳で外見的特徴から判断するに……と言うか別に外見的特徴云々以前にこの家でクラナを“クラナ”と呼ぶ女性はなのはを除けば一人だけ。即ち、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンその人である。

「朝ごはんまでちょっと掛かるから、少し待っててね?」
「……はい」
一応毎日の事なので分かってはいるのだが、クラナは何となく返事をしつつ彼女の脇を通り、階段を上って行く。その中途……

「……ふぁ」
「?」
丁度フェイトの脇を通り抜けるぴったりその時、クラナの口から漏れ出たように小さく欠伸が出てしまった。
その声(?)にフェイトが反応する。

「クラナ、寝不足?」
「え?あ……」
言われて反射的に反応してしまい、クラナは立ち止まってしまった事に頭が痛くなる。そのまま歩いて居れば、聞こえないふりが出来たのだが……
立ち止まってしまった以上、何か答えないと立ち去るにしても不自然だ。と言うか親を完全に無視した事になる。一応距離を取るとはいっても親であり、自分を育ててくれているフェイトやなのはに対して礼を失する事はクラナとしても抵抗が有った。と……

[そーなんですよ!相棒も今日定期テストでして、昨晩も何時もより遅くまで勉強三昧だったのです]
「…………」
アルが答えた。ペラペラとよく喋るデバイスに怒るべきか感謝するべきか困りつつも、クラナは特に何も言わずにその場に立ちつくす。

「そうなんだ……クラナ、テスト、平気そう?」
「…………」
微笑みながら聞くフェイト。とは言え、クラナは基本的に成績は悪くない。学校でも中の上程度をキープしており、フェイトもそれは知っている筈だった。詰まる所これは彼女の戦略……と言えば聞こえは悪いが、まぁそれに近い物なのだ。
彼女も息子……とは行かないものの弟のような存在であるクラナともっと会話を弾ませたいと言う願望は前々からあったし、その為にフェイトはじっくりと、しかし少しずつ会話数を増やしていくつもりで居た。それが功を奏してなのか、フェイトはこの家に置いて最も多くクラナと会話する人物だ(それでも“家族”としては極僅かだが)。そしてこの“戦略”については、クラナも分かっている。なので通常、このようにフェイトが戦略に入った時には、頷くかはいの答えだけを返してそのまま立ち去るようにしている。しかし……

この間歩み寄ると言った手前、少々それではそっけなさすぎるような気も……しないでも、無い。

『んー……』
少しだけ考えて、クラナは答えを出した。

「……大丈夫、です」
「え……」
それだけ言うと、フェイトのキョトンとした顔をそれ以上見ることなく、クラナは二階に向かって駆けだした。
取り残されたフェイトは、少しの間唖然とした様子でそこに居て……

「……そっか♪」
誰もいない階段に向かって一言そう言うと、フェイトは台所に向かって歩き出した。

『あ、そう言えば何時もよりクラナと長く話してたなー』
そんな事に気が付いたのは、リビングの入口を通り抜けた時だった。

────

「なのは」
「あ、フェイトちゃん」
台所に入ると、なのはがパン生地をこねている所だった。あらかじめ発酵等の工程を終えたうえで、そのままの状態を魔法で保存し、販売されているこのインスタントのパン生地は、取り出して少しこねた後、形を整えて焼くだけで簡単にお好みの大きさや形のパンを作ることが出来る優れ物である。
ヴィヴィオ、そしてクラナと暮らし始めてからなのはフェイト共に彼女の朝ごはんを作るようになり、そのころから覚えたスキルだ。

ちなみに初めての時は、なのはが変な所にスイッチが入ったらしく、「えへへ~、パン屋さん~」などと言ったなのはがフェイトにじゃれて来たため全く作業が進まず、危うく子供二人が朝食抜きになってしまうところだった。ちなみにその後数週間、クラナがなのはとフェイトが朝食を作るのを待ってくれなくなり、市販の物で適当に済ませて出かけてしまうようになっため、二人は必死でクラナの説得をしなければならなくなった。

今は流石に作業も順調に進むが、昔からなのははどうにもフェイトに対してじゃれたがるというか子供っぽいというか……別にそれが嫌な訳ではフェイトとしては決してないのだが、ただやはりそうしょっちゅうじゃれられてしまうと恥ずかしいと言うか要らぬ誤解を生むと言うか、まぁなのは自身はあくまでじゃれているだけなわけで特に悪気は無くて寧ろ長い付き合いなので慣れつつあるし突然無くなってしまったらそれはそれで寂しいかななんて思ったりする事も無いわけでも無いというか……

何故フェイトの心境を長々と語っているのだろうか。とにかくそんな風な長ったらしい事を時折思ってしまったりする

まぁしかし、やはりなのはやヴィヴィオ、クラナと暮らすのは(クラナの方は若干問題有れど)フェイトとしては楽しい。
一般的な仕事と比べ家から離れている時間が長い彼女にとっては、この家に戻ってくる少ない時間は短いながらも和める時間であり、楽しみでもある。本当はもっともっと長い時間この家に居たい、それこそなのはのように毎日帰ってきたいくらいだ。
まぁしかし実際の所、今の仕事にはフェイトなりの誇りとやりがいを持って臨んでいるので辞めるつもりも無く、辞めるつもりが無い以上、それは叶わぬ事と分かってはいるのだが。

さて、そんなフェイト、何と今週は丸々家に居られる。久々に長期の休暇が取れた為だ。というのもその休暇はある目的の為の物なのだが、まぁそれは今は良い。そんなわけで休暇二日目。フェイトは台所に付くと、なのはの隣でパン生地をこね始めた。

「フェイトちゃん、さっき階段でクラナと話してたの?」
「うん。試験期間だから昨日も勉強してて眠いって」
「えっ!?それ、クラナが!?」
驚いたように声を上げたなのはにフェイトは苦笑する。
ちなみに今のなのはの問いは「そんな長い言葉を!?」と言う意味の問いだ。

「ううん。アル」
「あ……そっ、かぁ……」
少し残念そうにパン生地に目を落とすなのはに、フェイトは微笑む。

「でも、その後テストの事聞いたら言ってたよ?「大丈夫です」って」
「え……」
なのはは驚いたように目を見開いた。そう言った場合、クラナが返してくるのが大概「はい」か、あるいは頷くだけの返事であることは彼女も分かっているからだ。そう言った場合に、彼が三文字以上で返すと言うのは、極珍しい。

「本当?」
「うん♪」
嬉しそうに言うフェイトに、なのはもほっこりと微笑む。
息子がたったそれだけの事を言っただけで喜ぶ母親と言うのがどれほど異常な物であるかは、この際説明する必要も無いだろう。
まぁとは言え、彼女達自身それは分かっている。しかし嬉しいものは嬉しいのだ。わざわざ暗い話題につなげる事もあるまい。

「最近クラナ、ちょっと変わったよね」
「うん。やっぱりあの時からかな……」
フェイトの言葉に、なのはが返す。フェイトガふと気が付いたように聞いた。

「あの時って……クラナがヴィヴィオの練習に付き合ってあげたっていう?」
「うんっ」
楽しそうに頷いたなのはに、フェイト嬉しそうに微笑んだ。

あれから数週間。高町家の現状は、ほんの少しだけ変わり始めていた。具体的に何がと言われるとあれなのだが、強いて言えば、クラナの反応が少しだけ豊かになったのだ。
例えばなのはの言葉に、はい、いいえ以外……「あ、いえ」だとか……「そうですね」等と言われた時はかなり驚いた物だ。
とはいえ、相変わらず口数は少なくあちらから話しかけて来ることも無いのでコミュニケーションが少ないのは事実なのだが……コミュニケーションの面だけで言うならば、最も変わったのはヴィヴィオの方かもしれない。

と言うのも、なんとも驚くべきことか。クラナがヴィヴィオに返事をするようになったのだ。
まぁ殆どが「あぁ」か「へぇ」等の滅茶苦茶にそっけない物だが、今まで直接的な頑として無視されてきたヴィヴィオとしては一大事である。
初めの内は相当嬉しかったのだろう。まるでマシンガンのようにクラナに話しかけて居た物の、クラナが途中から相当にうっとおしそうな顔をし始めたのを察して、流石に通常運転に戻ったようだった。ちなみにアルも、相変わらずクラナについての情報をちょくちょくなのはやヴィヴィオに流してくれる、貴重な情報源(なんともおかしな言い方だが)になりつつある。
まぁそのたびにクラナは渋い顔をしているのだが。

「私ももっと、クラナに話しかけるようにしてみようかな」
「なのはは、最近クラナと話して無いの?」
「うーん、前よりはお話するよ?でもやっぱり普通のお話とか、そう言うのはあんまりないから……ヴィヴィオは頑張ってるみたい。いつかまた……あの時みたいになれたらいいなって、最近良く思ってるんだ」
「そうだね……」
そう言って、二人は作業へと戻る。考え込むようななのはの横顔を見ながら、フェイトは作業を進め……ふと、思い出したことを口にした。

「そう言えば……クラナは、今回は……」
「あ、えっと……やっぱり、そっちは駄目かも……」
言われたなのはは、今度は少し落ち込んだ表情になる。俯くと、顔に影が差した。

「クラナ、その話になると、凄く嫌そうな顔するって言うか……話、しようとしなくなっちゃって……」
「そっか……やっぱり、まだ……」
「うん……そうだと思う」
察したように言ったフェイトに、なのははコクリと頷いた。フェイトが再び、悲しげな表情を作る。

「メガーヌさんは、何て?」
「仕方ないって……ルーちゃんは、謝りたいって……でも、やっぱりこのままじゃ……」
「そう、かな……?」
なのはの懸念を察してか、フェイトが声を上げた。その、探るような声に、なのはが少しだけ首を捻ってフェイトを見る。

「フェイトちゃん……?」
「なのは、クラナが変わってきたって、さっき言ったよね?」
「う、うん……」
素地をこねる手を止め、フェイトとなのはは向き合う。フェイトは何時もより幾分か強い視線で、なのはに言った。

「なら、今変えてみるべきなんじゃないかな?」
「…………」
「クラナが変わってきた……それを、ルーちゃんとの事でまた元に戻しちゃうのが、なのはは怖いんじゃないかな?」
「それは……」
言い淀み、少しだけなのはが俯く。少々きついことを言った事に、フェイトは内心で罪悪感を覚えたが、それを顔に出すような事はあえてしない。やがてなのはは、観念したように言った。

「怖い、かな……やっと、クラナと少しでも距離が近く慣れた気がしたの……だから……」
「なのはがそう思うのは、きっと当たり前だと思うよ。だけど……」
ほんの少しだけ考えるようなしぐさをして、フェイトは言った。

「逆に考えてみるのも……良いんじゃないかな」
「逆に……」
「うん……クラナの方から変わろうとしてる今が……私達の接し方も変える、チャンスなんじゃないかなって、思うんだ」
「あ……」
フェイトは元々、じっくり、ゆっくりとクラナとの距離を詰めて行き、やがて来るであろう機会を窺おうとしていたのは、以前説明したとおりである。
いうなれば、フェイトが待っていたのはこう言った機会なのである。クラナの側から、自分やなのはへと少しずつでも歩み寄って来てくれる。そんな機会がいつか必ず来ると、フェイトはある意味愚直とも言えるほどに信じ、待っていたのだ。
であるならば、今ここにあるチャンスを、少しでも生かしたいと彼女が思うのは、ある意味当然と言えるだろう。

普段はおっとりと、静かに構えているフェイトが、珍しく強めの言葉を口にしたことで、戸惑った様子だったなのはも、彼女の言う事の意味と意図を噛みしめるように、表情を引き締める。
そうして少し考え込むと……若干迷うような表情で、口を開いた。

「フェイトちゃんの言ってる事は……分かるよ。なんでそういう風に言ってくれるのかも、分かってるつもり……」
「、なら……「でも……でもね?」っ」
フェイトの言葉を遮るように、なのはは続けた。

「この前の事……一番頑張ったのは、ヴィヴィオなんだ……もしも……私達のした事でクラナとの仲また前みたいに戻ったら……ううん、もし、前よりも悪くなったら……」
「なのは……」
その時最も悲しむのは、恐らくはヴィヴィオだろう。ようやく掴みかけた希望を、すんでの所でひっこめられるような物だ。なのはが危惧しているのはそこだった。
おそらく、ヴィヴィオとその話をしたならば彼女は前へと進もうとする方を選ぶだろう。しかしだからと言って、大人たちの一存で一番の功労者である彼女を無下にして良い事にはならない筈だ。
ただ、なのは自身、この理由が自分の不安による行動不能を、正当化するための言い訳に過ぎない部分が有ることは理解していた。ヴィヴィオがどう言うかを殆ど予測できているにもかかわらず何もしない時点で、自分は行動の先に有る結果を恐れているだけの、唯の臆病者であることは明白だった。唯それでも……

「じゃあ……」
「うん……だから……今夜、聞いてみる」
それでも、少しでも問題を先送りしたくなってしまうほどに、数週間前までの彼女は追いつめられていたのだ。

────

さて、あらゆる学校において、現時点での生徒の学力を図るためにほぼ間違いなく行っている物が有る。
この言葉に対して個人的には全く良い印象が無いのだが、あえて申し上げよう。所謂、“テスト”あるいは“試験”と呼ばれる物だ。
Stヒルデ魔法学院も、現在は初等部から高等部まで、全ての学年が、前期試験の真っ最中であった。それは勿論、高町ヴィヴィオや、我らが主人公、高町クラナも例外ではない。

Stヒルデ魔法学院初等科校舎の四年生の教室。そこに今、スクールバックを背負った金髪、光彩異色(オッドアイ)の少女が飛び込んできた。クラナの妹こと、高町ヴィヴィオである。

教室に飛び込んだ彼女に気付いた銀髪と黒髪八重歯の少女が、彼女に駆け寄った。

「おはよっ、コロナ!リオ!」
「おっはよー!」
「おはよう、ヴィヴィオ」
駆け寄った二人と両手でタッチを交わして、ヴィヴィオは自席に荷物を置くと、リオの席に向かう。目的は勿論……

「……て、いうかー」
リオが自分の前に教科書を掲げながら言った。

「今日も試験だよー!大変だよー!」
「そうなんだよね~~」
半泣きで行ったリオに、ヴィヴィオはげんなりとした様子で机に顔を乗せる。そんな二人の様子に、コロナが暗記カードを見ながら微笑んだ。

「ヴィヴィオとリオなら、きっと大丈夫だよ。おとといの勉強会の時もちゃんと覚えてたし」
「「うーん……」」
言われて、二人は唸る。とは言え、この中で最も勉強に強いのはコロナである。その彼女の言葉ともなれば、少しは自信が持てると言う物だ。
と、そこでリオが元気を取り戻そうとするかのように言った。

「でも、試験が終われば土日と合わせて四日間の試験休み!」
と、それにコロナが返した。

「うん!楽しい旅行が待ってるよ~!」
そういって、楽しそうに二人は笑う。ちなみにStヒルデ魔法学院には、何と高等部にまで試験後の休みが有る。初等部に定期試験が有ったり、学習内容が少々ハイレベルである割には、厳しいのか緩い今一分かりにくい学校だ。

「もう、宿泊先も遊び場も準備万端だって」
「「おぉー!」」
ヴィヴィオが言うと、二人は歓声を上げる。
先程から話されている旅行やら宿泊云々と言うのは、今週末から来週の試験休み終了にかけて行われる、高町家、その他元六課メンバー数名と、ヴィヴィオの友人達で行く、異世界における春の大自然旅行ツアー+オフトレーニング会の事である。年に数回行われている行事で、既にコロナは一度ヴィヴィオと共に言ったことが有るが、リオは初めてだ。

と、ふと気が付いたように、コロナが聞いた。

「そう言えば、クラナ先輩は、今年は来るの?」
「え?」
コロナの問いに、ヴィヴィオは一瞬驚いたように反応する、苦笑しながらコロナは再度言った。

「去年は、来て無かったよね?用事が有ったって聞いたけど……今年はどうなのかなって」
「あ……」
コロナの言葉を聞くと、ヴィヴィオは少し顔を伏せた。
コロナもリオも、あまりヴィヴィオとクラナの間柄がおもわしくない事には、既に気が付いている。ただ、この間のクラナによる指導の件を二人とも知っていたため「もしかすると」と言うある意味願望に近い予想が彼女には有ったのだ。とは言え、現実問題は流石にそこまで単純ではないのだが……まぁ、それを二人に理解してもらうのは、無理が有ると言う物だろう。

「今はまだ、話して無いないけど……多分来れないと思う」
「そっ、かぁ……」
ヴィヴィオが小さく言うと、リオが俯いて残念そうに唸った。

「うー、クラナ先輩の練習、もう一回見たかったのに」
「あはは……まぁ、先輩には先輩のご都合が有るんだし、しょうがないよ。リオ」
「うー……」
不服そうなリオをなだめるように、苦笑したコロナが言った。こう言った所はある意味、コロナの方がオトナであろう。まぁどちらが十歳児らしいかと言われると判断に迷う所では有るのだが、それは今は良い。
さて、そんな二人の言葉にヴィヴィオはというと……

『練、習……』
少しばかり、考えに耽って居た。
と、言うのも、彼女もまた、この間のクラナとの練習の事を思い出していたのだ。
あの指導を頼んだ時、正直な事を言えば、始めは駄目元だったのだ。これまで全く関わりを持てなかった兄と、今になってそう簡単に関わり合いを取り戻せるとは思えなかったし、どちらかと言えば話しかける事その物に意味が有る、程度の考えでしかなかった。しかし結果は……

──練習……するぞ──

「……っ」
「多分来れないと思う」。つい十数秒前に自分が言った言葉だ。しかし……今ならば、“多分”を覆すことも、出来るのではないだろうか。兄が……クラナが少しずつ今までとは変わり始めている。今ならば……また、何かが変わるのではないだろうか?

「…………」
「よーし!じゃあ、楽しい試験休みを笑顔で迎える為に!」
考え込んだ表情のヴィヴィオのすぐ横で、リオが声を上げた。その声にハッとしたように、ヴィヴィオも顔を上げる。
コロナが、後を引き継ぐように言った。

「目指せ!百点満点!!」
「「おぉーー!!」」

幾つかの問題はさておいて、小学生の少女達は、元気いっぱいのようだった。

────

「ふぅ……」
さて、それから一時間と少し。所変わって、Stヒルデ魔法学院、高等科の校舎三階に有る自分の教室で、クラナは一人、小さな溜息をついた。今は歴史の試験が終わり、休み時間だ。次の教科の教科書やノートを一心不乱に読む者。友人と問題の出し合いをする者。終わったテストの話をする者、勉強する必要が無いのか……あるいは諦めたのか、唯ぼぅっとするだけの物。
そんな中でクラナは最後……ぼぅっとする者に入っていた。どちらの理由であるかは……ご想像にお任せしよう。

「よっ」
「ん……ライノ」
「なんだ~?優等生さんは今日も余裕かい?」
二ヤッと笑って人の座って無い前方の席の背もたれを抱え込むように座るライノに、クラナは苦笑して返す。

「別に余裕じゃないよ。ちゃんと頭の中では思いだしながら復習してるって」
「よく言うねぇ」
ちなみにライノはクラスの中では中の中程度の学力位置に居る。……とはいっても取ろうと思えば絶対にもっと上の順位になるだろうとクラナは踏んでいるのだが。

「ライノは?復習しなくて良いの?」
「はっ!俺は悪あがきはしない主義なんだよ!」
「はいはい」
無駄に胸を張って言うライノを、クラナは何時も通り軽く受け流す。
案外と何時も通りの日常。のんびりとしたそれに、クラナはのんびりと伸びをした。と……

「そう言えばさぁ……」
「ん?」
ふとした様子で言いだしたライノにクラナは伸ばした腕を戻す。

「ノーヴェさんから、昨日通信で誘われたんだけど」
「え?何を?」
「何をってお前……」
とぼけた答えをかえすクラナに、ライノは文章通信の履歴を開き、一つの長文メールを表示させた。クラナの方に向けられてそれを覗き込んだクラナは……

「な……」
[ありゃ]
「あ?」
目を見開いて明らかに驚いた顔をしたクラナと、妙な声を上げたアルに、ライノは不思議そうに首をかしげる。しかしクラナにしてみれば、驚かない方がおかしいくらいだ。
何故ならそれは……試験期間終了後に高町家……正確にはクラナを除いた高町家だが……彼女らが行く予定の、異世界における大自然旅行+オフトレーニングの予定表だったのだから。

「な、なんで……」
「いや、だから、ノーヴェさんが送ってきたんだって」
「へ、へぇ……」
ちなみに、ノーヴェとライノは知り合いだ。以前クラナがノーヴェとのスパーリングに行った時、ライノも一緒に行った時から親交があり、ちょくちょくメール等を送り合ったりしているらしい。

「お前も行くんだろ?」
「はぁ!?」
「うおっ!?」
大声を出して身を乗り出したクラナに、驚いたようにライノが身を引いた。

「なんだよ、どうした?」
「いや、それも、ノーヴェさんが……?」
「あぁ?」
「俺が行くって事……」
呟くように聞くと、ライノは納得したように頷いた。

「あぁそれか。おう。最初に言われたぞ?クラナも来るし、かなりレベルの高い人たちのオフトレで良い実戦勘の取り戻しにもなるだろうからお前もどうだ。ってさ」
「~~~っ(あの人は~!!)」
反射的に、クラナは頭をがりがりと掻き毟りたくなったが、すんでの所で上がりかけた腕を引きとめた。

「お前の妹とか、その友達とか、御袋さん達も来るんだろ!?美人揃いじゃねぇか!俺も行くぜ!てか行かせろ!」
「いや、あの……」
[下心丸出しですね]
「ちょ、ウォーロックさん!?」
言い淀むクラナの前に割り込むように、合成機械音声の落ち着いた女性の声が入ってきた。行き成りな毒舌だ。
入ってきたのはライノのデバイスである、ウォーロックの声である。彼女の主人に対する毒舌は正直言うと何時もの事なので、まぁこの際気にしない事にする。

「いや、その……俺は……」
「ん?」
言い淀んだクラナの顔をみて、ライノは首をかしげる

「俺は、今回は……」
「…………」
そこまで言った所で、ライノが何かを察したように思案顔になる。

「あー、ノーヴェさんに担がれたか……まだ、妹さんとは上手く行ってねぇの?」
「…………」
俯くクラナに、ライノは困ったように溜息をつく。

「俺はお前の事だし、なんも言えないけどな……いつまで続けるんだ?」
ライノは、学校の中でクラナの過去を知る数少ない人物の一人だ。元々彼とは初等部の頃からの長い付き合いで、クラナが妹や母親と上手く行っていない事も、その理由も知っている。そして同時に……クラナの本心も知っている。ある意味ではとても希少な人物でもある。

「…………ごめん」
「別に謝られるような事じゃねぇけど」
そう言うと、ライノは二ヤッとわらって背もたれの上で組んだ腕に、顔を乗せる。

「ま、んじゃあ行く気になったら連絡くれよ」
「……あぁ」
ライノがそう言うのを待っていたように、チャイムが鳴った。それを聞いて、ライノが立ち上がる。

「んじゃ、後でな」
「うん」
頷くと、ライノは自分の席へと戻って行った。その背中を見ながら、クラナはため息交じりに小さく呟く。

「……いつまで……か」

ライノのお陰で、次のテストに集中できるかが少し不安になってしまったクラナだった。

────

さて、それからさらに数時間。Stヒルデ魔法学院中等部第一学年生の、アインハルト・ストラトスは、珍しく自身の携帯端末が表示する情報を見ながら下校していた。内容は、現在行われているテスト期間終了後に有ると言う、異世界での高町家主催、オフトレーニング合宿についての概要だ。今朝がたノーヴェから誘いが入り、何と言うか……半分無理矢理な形で行く事を了承させられてしまった。

しかし、一応(どれだけの物なのかは分からないが)練習の為に行くと言う事なので、偶にはこういう事もやむなしと少々強引ながらも自分の中で結論付ける事で、なんとか自分を納得させ、今に至る。

『えっと……テストの評価が出たその日に……』
ただ強いて言うならば、彼女は一つ、ちょっとした間違いを犯してしまった。その事に頭がいっぱいで、珍しく、しっかりと前を見て歩くと言う事を忘れてしまっていたのだ。

「おぅっ!?」
「ふにゅっ!?」
体が何かかたいものにぶつかり、跳ね返るようにアインハルトは制止する。と、自分が前を見ていなかったために誰かに衝突したのだと、下がりきって頭を一度振ってようやく気付いた。

「も、申し訳ありません!」
「ア?あぁ。良いって良い……んん?」
全力で頭を下げたアインハルトに、尋ねるような声が振ってきた。恐る恐る、顔を上げると、其処には自分達の上級生……Stヒルデ魔法学院高等部の制服を着た、金髪長身の男子生徒が立っていた。
彼はアインハルトと目を合わせると、その眼をじっと見た。

「ん~……」
「っ……!?」
正面からまっすぐに自分の目を見て来る男に対し、異性に(というか他人に)正面から見つめられる事に慣れていないアインハルトの顔は、あっという間に真っ赤になった。おろおろしながら、あうあう言いながら口をパクパクと開く。

「これは……何と言う美少女」
「っ!?」
開口一発目からナンパかよ。と言いたくなるような──

[開口一発目からナンパですか。マスター]
……失礼。どうやら言ってくれたようだ。言われて、マスターと呼ばれた青年は苦笑しつつ頭を掻く。

「そう言うなって。良いじゃんかウォーロックさん、事実なんだから……」
「っ!?っ!!?」
聞いたアインハルトはますます朱くなるが、そんなことはお構いなしに目の前の青年と恐らくデバイスであろう声は話し続ける。

[わざわざ人の顔を覗き込んで行き成りナンパ発言とは……本当に色々な意味で不審者です。事実なら許されると?]
「すみません……」
「あ、あの!」
さんざんに言われ、頭を下げる青年に、アインハルトはついに勇気を持って話しかけた。正直、このままスルーして立ち去っても誰も文句は言わなかったと思うが、はたしてこれは彼女の優しさか否か。

「わ、私に、何か御用でしょうか?」
「あ、そうだった」
言われて、青年は思い出したように彼女の方を向いた。

「えっと、間違ってたらごめんだけど、お前さん、もしかしてアインハルト・ストラトス?」
「え……?」
突然名前を呼ばれた事に彼女は眼をキョトンと見開くが、青年は興味深げに彼女の事を見ているだけだ。別に良いが、はたから見たら明らかな不審者である。

「えっと、はい……あの、どうして……名前……」
「あ、あぁそうか。普通先にそっちか。えっとな……俺、君の知り合いの……クラナ・ディリフ……じゃない。高町クラナ、知ってる?そいつの友達」
「クラナさんの……」
しばし考えこむように目を伏せた彼女に、青年はニッと笑うと名乗った。

「おう。俺、ライノスティード・ドルク。よろしくな。小さな《覇王》さん」
「そこまで……アインハルト・ストラトスです。よろしくお願いします……あの、それで……ご用は……」
「用?あぁー、ねぇよ?別に」
「え……」
あっけらかんと言った青年を、少しばかり拍子抜けしたようにアインハルトは見た。そのまま青年は面白がるように笑って言う。

「俺が個人的に君に興味あっただけだよ」
「はぁ……」
[マスター、さらっとスルーされてますね。ぷっ]
「デバイスに笑われるとか……!」
何と言うか、カッコいい事言ったつもりでそう言う方面に疎いアインハルトには意味が無かったらしい。残念。さて……

「しっかし、覇王の後継者か……随分小さな女の子だなぁ」
「む……」
特に考えも無く言った風な一言に、アインハルトはピクリと敏感に反応した。基本的にいつもいつも“強く、強く”と思っているせいか、男性からのこういう発言に対しては今一こらえ性が薄い。

「背丈は魔法で補えますので」
「おろ、怒ったか?」
「…………」
スルーしつつ顔を反らした。別に怒った訳ではないと否定してもこの男には無駄そうだと言う事は、この数十秒で理解していた。

「っはは。まぁ、覇王の武って奴にも興味はあるけど……それはまたそのうちにとっとくかな」
「……えっ?」
どうにもその発言に引っ掛かりを感じて、アインハルトは顔を上げながら青年が居る方向を向く。しかし、青年は既に、後ろ手に手を振りながら道の向こう側に歩きだしていた。追っても良かったが、あちらは自分が行くのとは方向が違うし、何となく空気的に追ってはいけない気がして、やめた。

「…………」
ただ何となく、あの青年とはもう一度会う事になりそうな……そんな予感がしていた。

────

「「「「…………」」」」
その日の夜……高町家の食卓は、なんとも重たい空気に包まれていた。
というのも、卓について居る男女四人の内、全員が全員何かを言いだす機会を狙っているような雰囲気だったからだ。ヴィヴィオやなのははともかく、クラナまでそう言った雰囲気を発しているのはとても稀有なのだが、残念ながら女性陣は自分の事に(約一名は親友の事に)手いっぱいで、その雰囲気に気付けていない。

「「「「…………」」」」
結局のところ、四人の人間が卓を囲んでいるとは思えない程に長い沈黙が続く。誰かが話しだせば流れも変わってくるのだろうが、いかんせん此処に居る四人の内三人は、何時斬りだすか、どう切り出すかに集中し過ぎているせいか全く話しだす気配が無い。
と、そこで、唯一その中にとらわれないフェイトが、少し困ったように顔でヴィヴィオに聞いた。

「そう言えばヴィヴィオ、試験、大丈夫だった?」
「え?あ、う、うん!大丈夫!!……だと思う」
一度勢いよく答えてから一瞬迷って言いなおす。殆ど反射的な判断だけで一度目を答えたせいだ。しかしそれでも、なのはとヴィヴィオは話の出だしを作ってくれたフェイトを、まるで神様でも見るような眼で見る。流石に大げさだと思わなくも無かったが、フェイトはそのまま話をつなげた。

「合宿、行けそう?」
「あ、う、うん!きっと行けるよ!ね!?クリス!」
「!?(ピッ!)」
何故かクリスに同意を求め、行き成り振られたクリスは慌てたように片手を上げた。と、そんな話の連鎖を逃すまいと、なのはがクラナに聞いた。

「クラナは?試験、大丈夫だった?」
「……はい」
[ばっちりですよね!かなり遅くまでやってましたし!]
コクリと頷いて答えたクラナの後に続いて、アルが答える。とは言え、アル自身は試験の結果を知っている訳ではない。試験中は不正防止のため、各自のデバイスはいったんスリープモードになるからだ。ちなみにこのモードを切った状態のデバイスが試験中に部屋にいると、即座に試験官に分かる仕様になっている。

「そっか!じゃあ……クラナ」
「…………」
黙り込むクラナに、少し緊張した面持ちでいよいよなのはは聞いた。

「試験後の旅行、今年は……一緒に行かない?」
「…………」
一瞬、クラナは迷ったように、顔をしかめた。もしも決心がつけば自分から言う事も考えてはいたのだが、まるで言いだせない自分の心を読んだかのように聞かれてしまったので、不意を突かれた形になったからだ。
そしてそんなクラナの沈黙に、なのは、フェイト、ヴィヴィオは失敗を感じて少し表情を曇らせる。しかし……

「……分かりました」
この一言で、空気が固まった。

「……え?」
「……行きます」
思わず聞き返したなのはに、クラナは今度こそはっきりと答えた。沈黙した世界の中で、初めに反応したのは若さゆえか、ヴィヴィオだった。

「ほ、ホント!?ホントに!?」
「っ!?」
身を乗り出すようにクラナの腕を掴んで聞いたヴィヴィオに、クラナは珍しく驚きを顔に出して目をぎょっと見開く。キラキラした目で自分を見つめるヴィヴィオに、焦ったように返した。

「ちょっ……乗り、出すな……っ!腕、離せ……!」
「え、あ、ご、ごめんなさい!」
飛びのくようにクラナの腕を離したヴィヴィオ。その様子を見ていた大人達が、遅れて、慌てたように……やっぱり身を乗り出した。

「え!?クラナ、今、行くって言ってくれたよね!?」
「クラナ!」
「っ!?は、はい……」
今度は正面からの驚いたような声に再びクラナが驚き、慌てて首をコクコクと振る。その様子を一瞬だけ眺めて……、なのははフェイトと、ヴィヴィオを交互に見て、他の二人もまた、自分以外の二人を見まわして、三人の眼が合い……叫んだ。

「「「やっ、たぁぁ!!!」」」
「…………」
跳ね上がって、弾けるような笑顔で喜ぶ三人の姿を茫然と眺めていたクラナは……唯一人、人知れず、小さく、本当に小さく微笑んだのだった。

────

なんとも、息子一人を合宿に誘うだけで大騒動な事だが、まぁかくして、クラナ・ディリフス・タカマチは、無人世界カルナージにおける、元起動六課メンバー一部+チビッ子その他メンバーによる春の大自然ツアー+オフトレーニングに、参加することとなった訳である。
 
 

 
後書き
はい!いかがでしたでしょうか!

えー、まずは何よりも、前回のアンケートについて。

えー、何とも予想外に多くの方から感想欄やメッセージなどで投票をいただきまして……にもかかわらず、なんと全会一致で、「六、原作に追いついたとしても、思いつく限りずっと」に決まりました!

ほとんどの方から、「このまま終わるのはもったいない」などのご意見をいただきまして、本当に作者としましては喜んでいいやらプレッシャーにガクブルすればいいやらと何とも蚤の心臓のようなことになっておりますが、とりあえずですね、えー二章のプロットが書けましたので、合宿編という形で再開をさせていただきます!

これから先、ふくらましてしまった妄想が枯渇するまでこの作品を続けていくつもりでおります。(あくまでメインはSAOなんですが……)
なので不定期になるとは思いますが、この作品の続きを、皆様まっていただければ幸いです。

では、アンケートに返答して下さった全ての皆様!本当に、ありがとうございました!

では、予告です。


ア「アルです!いやぁ、何とも、まさか続くと思いませんでした!この話、けどこれで私も作者さんのプロットノートから抜け出してガンガン登場できそうです!みなさんありがとうございますです!さて、今回は……」

バ「俺だな」

ア「バ、バルディッシュさん!?」

バ「アクセルキャリバーか……お前が此処の司会だろう?俺は気にせず、続けろ」

ア「は、はい!えっと、とりあえず相棒がなんとか合宿に参加できそうですね!」

バ「……」

ア「フェイトさんも上手く誘うよう誘導して下さって、本当にありがたい限りです」

バ「……」

ア「その辺り、いかがですか?バルディッシュさん」

バ「……以前からマスターもクラナと距離を縮めることは望んでいる。良い兆候だ」

ア「……ですよね!ありがとうございます!では次回、『異世界へお出かけ!』です!」

バ「……」

ア「あー、えっと……絶対見てくださいね!」

……

…………

レ「バルディッシュ」

バ「ん?レイジング・ハートか。どうした」

レ「いえ……以前にも言いましたが、やはり貴方はもう少し愛想というか、ノリのようなものを分かったほうが良いと……」

バ「そう……なのか?よくわからん……」


 
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