ふわふわ時間
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第二章
「だからよ」
「有り難う、それじゃあね」
「本当に動かないからね、あんたは」
私は聡美にやれやれといった口調でまた言った。
「のんべんだらりとしてて」
「気が抜けてるっていうの?」
「そう、脱力系ね」
まさにそれだというのだ。
「そんな感じだから」
「だからなの」
「じゃあいいわね」
私はあらためて言った。
「ちゃんと会う場所用意するから」
「有り難う、じゃあね」
「本当に仕方ないわね」
聡美の笑顔を見て私も笑顔になる、この笑顔にいつもやられる。
とにかく場所を設定した、そこは駅前のファミレスだ。
聡美をそこに連れて行って奥の窓側の席を指差して言った。
「あそこにね」
「あっ、式君いるね」
「あんたに会いたい娘がいるってメールしておいたから」
「陽子ちゃん式君と知り合いだったのね」
「聞いたの、美術部の友達からね」
そのメールをだというのだ。
「聞いてそれで本人に前以てそのお友達を交えてね」
「お話してくれたの」
「それがあんただっていうことは言ってないから」
サプライズの方が面白いだろうと思ってそうした。
「だからね」
「それでなの」
「そう、じゃあいいわね」
「うん、それじゃあね」
聡美は私に顔を向けて笑顔で頷いた、そのうえでだった。
私は離れた席から見守ることにした、そこに座ってコーヒーを飲みながら見守る。
聡美と式君もコーヒーを飲みながら向かい合っている、だが。
その彼女を見ていると。
「何よ、あれ」
何と二人共会話がない、ただ笑みを向け合っているだけだ。
私はその二人を見て呆れて言った。
「会話位しなさいよ、二人共」
思わず聡美の方に行きそうになった、けれど。
それをすると何もかもが潰れるので思いとどまった、それで。
私は二人を自分の席から見守った、少し離れている席からじっと見る。
けれど何のやり取りもないままだった、一時間が過ぎて。
二時間になった、二人共牧場の牛みたいにそこにいるだけだ。
それで三時間経ってやっと式君が言って来た。
「じゃあね」
「うん、それじゃあね」
彼が席を立ってそのまま帰る、聡美は笑顔でそこにいるだけだった。その一部始終を見て私はあきれ果てて帰った、もう聡美のところに行く気力も失せていて。
次の日聡美のクラスまで行ってそれであらためて言った。
「あのね、あんたね」
「昨日のこと?」
「何やってるのよ」
聡美の前に座って言った。
「本当に」
「ずっと見ていてくれてたのね」
「心配だからね。それで何よあれ」
「何って陽子ちゃんが見たままだけれど」
「会話なしなのが?」
「駄目?」
「駄目も何もあれじゃあ何もならないでしょ」
私はわざと怒った声で言った。
「喋らないと」
「喋ってたわよ」
「何処がよ」
「いや、ちゃんと喋ってたわよ」
聡美は少しきょとんとした顔で私に言ってきた。
「私もね」
「そうなの?」
「うん、ちゃんとね」
「声が小さかったのね」
確かに聡美は脱力系だけれど素直だ、嘘は言わない。私は彼女のそうしたところも知っている。
「そうなのね」
「何度かね」
「三時間もいたのに何度も?」
「だって式君無口だし」
そして聡美も自分からは言わない娘だ、私が話しかけて今も話している。
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