IS ~インフィニット・ストラトス 漆黒と純白と紅の狼~
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目覚める双牙
前書き
タイトル、変えました。
~真紅狼side~
あれから、無事一週間が過ぎていった。
………すまん、無事じゃなかった。
毎晩が決戦だったのを忘れていた。
アレさえ無ければ、本当に無事に過ごせた一週間だった。
だいたい、氷華の奴はスタイルが元々いいのに、俺の食事を食ってるからさらによくなっている気がする。
そして、今日はオルコットと勝負の日。
俺は、ISスーツに着替えて時間まで一眠りすることにした。
氷華は『見に行くから♪』と言っていたな。
さて、楽しめるかねぇ。
~真紅狼side out~
~氷華side~
私は、授業を抜け出して試合が行う第三アリーナのモニター室にに向かった。
そこには、織斑先生と山田先生がいた。
「更識、お前、何故ココに居る?」
「真紅狼が勝負すると聞きましたので、見にきました」
「そう言えば、蒼騎は織斑とオルコットの試合をモニタリングしていないのか?」
「真紅狼は、そういうのを一切しませんから」
「何故だ? 敵のスタイルを知っておけば幾分か楽になるし、対処もしやすいだろう?」
「そういうのが嫌いだそうです。彼曰く、『楽しめることも楽しめない』だということそうなので、今頃寝てるんじゃないんですかね」
山田先生は、大物ですね~と呟き、織斑先生は何も言わなかった。
織斑一夏君の試合は始まった。
最初は、セシリアちゃんの《スターライトmkⅡ》とピットによる攻撃により、どんどんエネルギーを削られていくが、《ブルー・ティアーズ》のピットの行動を読み始めたのかエネルギーを削られる幅がだんだんと少なくなっていった。
だが、その反撃も終わりが近づき、隠していたピットで迎撃され、誰もが負けたと思った瞬間、織斑一夏君の機体はいまだに浮遊していた。
「機体に救われたな、馬鹿者め」
織斑先生はどこか嬉しそうな声で呟いた。
そこには、真っ白い機体があった。
セシリアちゃんは、ようやくこの事態に理解がいき叫んだ。
『まさか………一次移行!? 貴方、今まで初期化状態で戦っていましたの!?』
なるほど、それならあの攻撃を受けても未だに浮遊出来るわね。
織斑一夏君は、自分専用になった機体、『白式』を見つめた後、セシリアちゃんに迫るが、一気にエネルギーゲージが0となり、試合終了の合図が鳴り響いた。
『試合終了。セシリア・オルコットの勝ち』
織斑君は、ピットに戻っていく。
その姿を確認した織斑先生と山田先生もピットに向かった。
私も向かう事にした。
移動中………
私がピットに入ろうとした時、向かい側から真紅狼が欠伸しながらやってきた。
「真紅狼、やっぱり寝てたのね?」
「まぁな。試合終了のブザーがちょうどいい目覚ましベルになったよ」
「動かすのはいきなり本番となっちゃったけど、大丈夫よね?」
「大丈夫だ、問題ねぇ」
「あ、あとね。皆に宣言しちゃったから♪」
「は? 何が?」
「この前、私が『この学園の長は常に最強であれ』って言ったじゃない? それを元にすると、私と付き合う男も最強じゃないとダメって考えに至ったのよ」
「おい、まさか………?」
「つまり、真紅狼も最強になってね。あ、一年生の枠だけでいいから」
「おい、いきなりハードル上げんな!! ちょっと一週間おとなしく謹慎していた結果がこれとか………やり直しを要求したい!!」
「ダーメ♪」
真紅狼は、ため息つきながら私と共に歩いたが、ピットの前の扉に着いたや否や表情を切り変えた。
中に入ると、織斑君が何やら機体の説明を受けていた。
「織斑先生、連れて来ました」
「御苦労、更識。蒼騎、準備はいいか?」
「はい」
誰もが真紅狼から離れていった。
私は最後に小さく頑張ってねと呟くと、おうよと返事をした。
そして、真紅狼はISを展開した。
~氷華side out~
~真紅狼side~
全員が離れた事を確認した後、俺はISを展開する為に、起動キーを言う。
「吼えろ、双響狼(ツヴァイ・オルガロン)」
俺は展開中に二頭の響狼の咆哮が聞こえた。
そこから出現したのは、両腕が黒く胴体は白く彩られた機体だった。
両肩の部分は狼の絵柄が刻まれており、右肩は黒狼で左肩は白狼になっている。
中世の鎧のようになっているが、それよりもさらに薄く、スマートかつスタイリッシュな姿だった。
そして、両脚の付け根から、かかとまでたてがみが一本ずつ入っていた。
「蒼騎、これがお前の機体か?」
「そうです。これが俺の機体………………『双響狼』です」
「あれ? でも、“双響狼”って言う割には、二つも無いんですが?」
山田先生は素朴な疑問をぶつけてくる。
「まぁ、そういう意味じゃないですからね。この機体はちょっとばかり特殊なんですよ」
「それも試合で見れるんだな?」
「まぁ、セシリア・オルコットの実力が伴っていれば見れますよ? では、セシリア・オルコットも準備出来たようなので、行きます」
俺は、PICを起動させて身体を前に傾けてアリーナに向かう。
かなり離れた場所にだが、俺の“敵”が浮遊していた。
見るからにして、遠距離タイプ。
まぁ、最初は様子見だな。
お互い、所定位置に移動しながらオープン・チャンネルで会話する。
『逃げずに来ましたわね』
「そりゃこっちのセリフだ」
『貴方には、色々と借りがあるのでここで纏めて返しておきますわ』
「返品不可なんで結構です」
『………もういいですわ。完膚無きまでに叩き潰してあげますわ! さぁ、踊りなさい! セシリア・オルコットとブルー・ティアーズが奏でる輪奏曲で!!』
「さぁ、オルガロン。相手は空で優雅に踊っている。なら、やることは一つだ」
そう機体に言い聞かせる。
もちろん、観客やモニタリングしている氷華たちにも聞こえる様に言い続ける。
「優雅で踊っている者を地に墜とし、我が爪牙で敵を穿て!!」
その時、殺気を感じたので上に逃げる。
ダンッッ!
『これくらいは避けてもらいませんと、話になりませんわ!』
そう言って、オルコットは左手を振ると四機のピットが襲いかかってきた。
キュ…………
ピュンッ!
キュオンッ!!
キュカ!
ガガガガガガガガッ!!
俺はしばらくの間、四機のピットの攻撃に付き合いながら、敵の行動を観察することに集中した。
~真紅狼side out~
~一夏side~
セシリアと真紅狼の勝負が始まり、最初は俺と同じ流れになり、セシリアが上空からブルー・ティアーズとセシリアによる狙撃というパターンになった。
怒涛のラッシュだが、真紅狼は一発も当たらず軽やかに避け続けていた。
「すげぇ………」
それしか感想が出てこなかった。
もっと注目するべきところはあるはずなのだが、本当にこの一言しか言えないのである。
さらに今まで応援していたクラスメートもこの光景を見て、声が出ず誰もが魅いっていた。
「更識」
「はい、なんでしょう? 織斑先生」
千冬姉は、更識と呼ばれた女子生徒に質問していた。
「蒼騎は今回でIS起動何回目だ?」
「それは全体ですか? それとも部分展開ですか?」
「全体でだ」
「それだと二回目です」
「二、二回目なんですか!?」
山田先生は、驚く。
「あの~山田先生、二回目でここまでの動きは凄いんですか?」
「凄いってもんじゃありませんよ! 織斑君!! 普通、どんなに頑張ってもここまで一発も当たらず避け続けることなんて、代表候補生でも出来ません!! 最低でも一、二発は掠っています」
山田先生は興奮気味に説明してくれた。
続けて、千冬姉は質問する。
「では、何故あんな動きが出来るか、お前は知っているのか?」
「まぁ、それなりには。でも、言っていいのか………」
口を濁すと、蒼騎が避けながらプライベート・チャンネルを開いてきた。
『楯無、別に喋っても構わないぞ? どうせ、試合終了後に聞かれるだろうし』
「そう。なら、話しておくわ」
『おう』
そう言って、真紅狼は再び避け続ける。
「真紅狼がここまで避け続けられる理由は……………………経験が違うんですよ」
「経験が違うだと?」
「真紅狼は殺気や殺意を感じることが出来るそうです。その為、ああやって避け続けることが出来るんですよ。無意識の内に殺気………この場合、敵の攻撃を咄嗟に把握し、回避する。それを無意識の内にやってるんです。だから、ほとんど自身の感覚ですよ。ハイパーセンサーは使っていないみたいです」
「ハイパーセンサーを使っていないだと………? そんなバカな!! ただの人間じゃそんな芸当は出来んぞ!?」
「だって、その感覚を掴める理由は………………暗殺者の業らしいですから」
俺は驚いた。
真紅狼が暗殺者の出の人間だったなんて。
さらりと新事実を述べた後、彼女はマイクを掴んで真紅狼に向けて喋る。
「真紅狼、様子見はそこまでにしなさい」
『もうちょっと様子見たかったがしょうがない』
「お客さんが白けてるわ、白けない様にうまく運びなさいよ」
『それもそうだな。なら、そろそろ反撃しますか。アイツの力はほとんど見切った』
そう言って、真紅狼は四機のピットからかなり離れた場所まで下がり、セシリアに向かって叫んだ。
『どーだ、セシリア・オルコット? 俺のダンスは?』
『ちょこまかと避けてる癖に!』
『オイオイ、お前が踊れって言ったんじゃないか。それに曲を奏でられたら踊るのが踊り手の役目ってもんだろう?』
『この…………!』
『やめとけよ、お前の仕種、攻撃方法、弱点は全て分かった。故にここからは真面目にやらせてもらおう』
『“真面目”ってことは、貴方………今まで本気ではなかったの!?』
セシリアの叫び声に観客もざわつく。
『あー、今のは様子見だけど? こっからが本番だ』
『この私をどこまで舐めれば気が済むんですか!!』
『なら、舐められたくねぇなら最初から本気出せや! お前が本気を出さなかったから、俺もそれに応じただけ。それのどこが悪いんだ? 言ってみろ!』
『くっ!』
『さて、この機体はな、ある謂れがあるんだよ』
真紅狼はゆっくりとしかしはっきりと全員の頭に刻み込むように謳う。
『“深淵の闇に潜む、爪牙を研ぎし――――――――絶望の化身”ってな。 さぁ! 魅せてやるよ、オルガロンの力を!!』
そこから真紅狼の姿は一瞬で消えて、セシリアの目の前に迫っていた。
~一夏side out~
真紅狼って一体何者なんだ?
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