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IS  ~インフィニット・ストラトス 漆黒と純白と紅の狼~

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双響狼

~氷華side~
真紅狼は声高く叫んだ後、一瞬にしてその場から消えた。
誰もが一瞬だけ、真紅狼の姿を見失う。
ハイパーセンサーを起動させているセシリアちゃんさえも………
だけど、私は真紅狼との手合せを一度やっているからどこに居るか、すぐに分かった。


『余所見とは……………代表候補生様の余裕の表れってやつか?』
『なっ!? い、何時の間に!?』


セシリアちゃんの構えている《スターライトmkⅡ》の銃身に真紅狼は乗っていた。


『この………!!』


セシリアちゃんは四機のピットを真紅狼に向けるが、配置に着いた時にはすでに真紅狼は一機を斬り伏せていた。


ボォン!


あれは、見たことの無い武器ね。
真紅狼が手に持っているのは、大太刀だが本来の大太刀よりかは若干長い。


『い、何時の間に武器を持ちましたの?!』
『アンタが俺に気付くまでに、展開したが?』


セシリアちゃんは、真紅狼を振り落として距離を開こうとするが、真紅狼は振り落とされてからすぐさまセシリアちゃんを追い掛ける。


ギュンッ!
キュンッ!


ブルー・ティアーズが加速して一気に距離を離そうとしても、双響狼(ツヴァイ・オルガロン)は敵の弾幕を躱しながらピッタリと追跡していく。


『くっ、冗談ではありませんわ!!』


セシリアちゃんは急に立ち止り、スカートに隠してあったミサイル型のブルー・ティアーズを展開して、真紅狼に放った。


『げっ、マジか!』


先の戦いを見ていない真紅狼にとって、初めて知る情報である為対応出来ずに直撃は免れなかった。


ドガァァァアァン!!


見事に直撃した。
誰もが今の不意を突いた一撃をまともに食らったっと思った。
爆発は確実に捕らえて、セシリアちゃんでさえ「手応えアリ!」という表情をしていたが、真紅狼にISを教えていた私には分かる。
真紅狼の機体………双響狼(ツヴァイ・オルガロン)の力はここからだ。


『私を馬鹿にしないでもらえます? これでも代表候補生なんですよ?』
『………………………………………』
『もしかして、今の一撃で気絶してしまいましたの? 貴方にはまだ返すべき借りが残っていましてよ?』
『………………………………………』


セシリアちゃんは爆発の中心点にいる真紅狼に向けて、色々と口上を述べているが真紅狼はただただ沈黙を保っていた。


「おい、更識」
「なんでしょう? 織斑先生」
「蒼騎はまだ動いてるよな?」
「ええ。モニターを見れば分かるじゃないですか」
「なら、何故、蒼騎の姿が見えない?」
「言わなくてもそろそろ分かりますよ。そして真紅狼の機体名が何故“双響狼(ツヴァイ・オルガロン)”と言われるのか……………それが今すぐに分かります」


私は淡々と事実を述べる。
全員がアリーナに目を向けた瞬間、背筋が凍るような視線を感じた。
そして、遠吠えが耳をつんざいた。


『――ォォォオオオオオオオオオオオオオオオオンンッッ!!』


ようやく煙が晴れ、そこには純白のISが浮遊していた。
~氷華side out~


~セシリアside~
ミサイルは確実に当たっていた。手応えもあった。
なのに、この不気味感はなんですの?
まるで………………何かを目覚めさせたような感覚に陥った感じですわ。
すると、突然、煙の中から遠吠えが聞こえ、思わず身構えてしまった。


「――ォォォオオオオオオオオオオオオオオオオンンッッ!!」


あの爆発をまともにくらっておきながら、まだ動いている!?
「そんな馬鹿な筈は!!」と私は思いながら、煙が晴れてきて出てくるISを見た。
それは、私が先程戦ったIS―――『百式』と同じぐらい純白だったが、その姿はまるで違う。
手と足には鋭利な爪が付いており、腰よりほんの少し下辺りから尾が生えていた。
しかも、腕と足のの裏側には金色の獣毛が綺麗に付加されていた。
さらに背中には、首の付け根から尾の先まで金色のたてがみ一本入っていた。


「なんなのですか、その機体は!?」
「これは、“雌響狼(ノノ・オルガロン)”。性能は、口で言うよりも体験してもらった方が早いな」


そう言い終わった瞬間、先程のように目の前から一瞬で消えた。
ハイパーセンサーを頼なければ反応できない速度であり、先程よりもさらに速度が上がっていた。


「(くっ、先程よりもさらに速い!!)」


そして…………


ガキィン!!


「キャアアアアアッッ!!」


ハイパーセンサーの通告よりも速く相手の攻撃が私を襲った。
速度だけではなく、攻撃を繰り出すスピードも速かったのだ。
敵は大太刀を横に振り抜くと、そのまま右脚を軸にして左足にPICを集中させ自身の遠心力にブレーキを掛けて、刃を上に向けて右手だけで柄を掴んで空いている左手を峰に添えて、貫いてきた。


「はあっ!!」
「キャアッ!!」


咄嗟に危険を感じた私は右に身体を逸らした。
だが、完全に避けることに失敗した私は左肩を掠った。
システムが危険を報せてくる。


――貫通ダメージ105。ダメージ中。次の一撃を食らうと“絶対防御”が発動します。


掠っただけでこんなダメージを負うなんて………!!
しかも、これでダメージ中だなんて、どうなっていますの?!
まともにくらえば、確実に今絶対防御を発動していましたわ。
敵は、外したと分かると急いで距離を取った。
くぅ、憎たらしいほど戦い方を分かってる!
私が体勢を立て直している間に、武器を持ち直し再び接近してくる。


「ですが………! 私にも意地ってのがありますわ! ブルー・ティアーズ!!」


体勢を立て直しながら、左手を振る。


《ブルー・ティアーズ》は敵の機体を囲みながら集中砲火を食らわせた。
すると、一発掠っただけで相手のシールドエネルギーが多く減った。


「なるほど、読めましたわ! その機体は機動力が高い代わりに防御力が普通の時よりも低いのですわね!!」
「だから、どうしたよ?」
「それが分かればこっちのものですわ!」


私は、微かな勝利の光の道を見えたと思った。
そう誰もがそう思ったのだ。


「………なら、もう一つの姿を見せてやろう」


彼はそう言った。
私はハッタリだと思い、その言葉を聞き流した。
全ての渾身の一撃を敵に向けた。
アリーナの上空は、あちこちで爆発を起こし赤い光よりも白く染まった。


「ハァ………ハァ………、これで………今度こそ終幕(フィナーレ)ですわ」


だが、いつまで経っても敵の操縦者は爆発の中から出てこなかった。


「ああ、確かに終幕(フィナーレ)だな。………………セシリア・オルコット」


声が聞こえた瞬間、私は信じたくなかった。
まさか、聞き流した言葉が本当になるなんて………。


「そんな………私の全力が…………!!」
「あれが全力だと? それなら俺を落とすには足りない火力だな。俺を倒したければ、一年の専用機全員でかかってこい。それぐらいの戦力じゃないと話にならんぞ」


その姿はさっきの姿と多少似ている部分があったが、全体的に違うところが目に付いた。
色が180℃変わっていたのだ。
先程は純白が今度は漆黒に変わっていた。
たてがみの色も変わっていて、金色が銀色に変わっている。


「なんなんですの! その機体は!?」
「おいおい、俺の機体名を忘れたのか? 俺の機体名は『双響狼(ツヴァイ・オルガロン)』………これで意味がわかるだろ?」


敵の男は、意味深な笑みを浮かべながら喋る。
私は男の言った言葉を反芻させた。
『双響狼』………双………二つ………ま、まさかそういう意味なんですの!?


「その機体は、二つのスタイルを保有した機体何ですわね!?」
「御名答。さすが、代表候補生だ。………そうだな、正解の証に一つだけコイツの性能を教えてやろう。本来ISには、基本装備(プリセット)後付装備(イコライザ)、そして拡張領域(バススロット)というのがあるよな? だが、それは一つのISに一つだ。それが当り前だ。だがな、この『双響狼』は違う。二つのスタイルに基本装備(プリセット)後付装備(イコライザ)が付いているんだよ。まぁ、拡張領域(バススロット)は無いがな」


ということは、あの機体は先程の純白姿と今の漆黒姿には基本装備(プリセット)後付装備(イコライザ)が付いており。そして黒白の姿一つ一つに基本装備(プリセット)後付装備(イコライザ)、そして拡張領域(バススロット)が付いてると言う事!
そんな機体、聞いたことありませんわ!!


「さぁ、話も試合も決着を付けることにしよう」


男は手に持っている刀の姿を変形させた、今まで細かった刃が太く、極太の大刀となった。
そして………私は………


「やりなさい」
「言われなくても」


上段から思いっきり振り下ろした。
試合終了のブザーが耳に響きながら、意識を失った。
~セシリアside out~



まったく………“絶望の化身”とはよく言ったものですわ。 
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