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ある白猫の生涯

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1-7

 梅雨の合間の日。お父さんが、朝から庭で大工仕事をしていて、俺が近くで見ていたんだが

「岩の見張り小屋を作ってやるからな これから夜露とか雨の日もしのげるだろう」

 さっきから、寸法を測ったり、木を切ったりて、しきりに仮りの組み立てを始めたりして、確認をしていて・・・どうやら 1m四方の小屋みたいだった。一応、部材は揃ったみたいで、そこで休憩のつもりなのかビールを飲み始めた。そして、丁度プリンを食べに来た家の中のミナツちゃんに向かって

「おーい すまんけど冷蔵庫から めざしを持ってきてくれ それと、レンジの下にに電熱器が入っているからー あー 食べ終わってからでいいぞー」

「うわぁー なんなのー それっ! 飲み始める前に自分で用意しておけば良いじゃん?」

「まぁ まぁ そーいうな 急に飲みたくなったんだ 天気も良いしー そんな、鬼みたいな顔すんなよー 可愛い顔が台無しだよー」

「もぉーぅ 可愛い顔は生まれつきですからネ!」と、文句を言いながらもミナツちゃんは用意をして、めざしを焼くのも付き合って観ていたのだ。

「へぇー これが 岩の見張り小屋になるんだぁー 割と大きいね」

「うん 手脚を伸ばして昼寝も出来るようにと思ってな 高床式なんだぞー」

「そーなん もう少し大きければ 私もお昼寝出来るかなー」

「あのなー ミナツはいつから猫の子になったんだ」

 それでも、ミナツちゃんはコンロに目刺しを並べて焼いていた。

「ミナツ 餅じゃぁないんだから、そんなにひっくり返すこと要らないんだよ 片側が少し焦げ目がついたら、返して炙る程度で焦げ目がつけばいいんだ だけど頭はしっかり焼くようにな」

「ふ~ん そんなもんなんだ あのね おっさんが無理やり女の子にお酒の相手をさせて、目刺しを焼かせていたなんて 学校に言ったらどうなるんだろうね」

「うー ミナツ 熱でもあるんか? 妄想が激しすぎる」

「うんなことないよー ねぇ お父さん 私 欲しい夏のサンダルあるのー」

「ミナツ それで 脅迫めいたこと言ったのかー? そんなのお母さんに言えばいいじゃぁないか!」

「お母さんだと 色々と嫌味言われるんだものー」

「それで お父さんに狙いをつけたのか? それで、さっきから そこに居るのか? 
そんなじゃぁー 男の子にもてないぞー」

「そーいうわけじゃぁないよ! お父さん ひとりじゃぁ 寂しいだろうなって・・・せっかくのお休みだものねー」

「ふっ わかったよー いいから 岩に目刺しをやってくれ さっきから待ちきれないみたいだぞー」

「あっ そうかー じゃあ 頭側半分 あげるね 私は尻尾側」

 と、焼きあがった目刺しを半分にして、俺の眼の前に出してくれた。待ちわびたのだ。さっきから匂いに釣られて寄ってきていたのがわからなかったのかよー。俺が、あんまりうまくて フガフガと喰らいついていると

「そうかー そんなに うまいか? じゃぁ もう 1匹」と、お父さんが投げてくれた。

「お父さん 岩に甘いよねー いつも そーやって あげてぇー」

「そーだよ 岩は抱き上げても 文句言わんものー ミナツだと大騒ぎだろう?」

「私? 私も別に大騒ぎしないよー だけど 君の奥様が黙ってないでしょ!」

「あぁ 確かに・・・ さぁー 仕上げるかー あとはネジ留めだけだから」

 それからは、1時間もしなくて出来上がっていた。

「ふ~ん お父さんって 以外と器用なんだね 壁と屋根の間は風が通るように開けてあって防虫ネットなんだー 床もスノコでネットが貼ってある 屋根も二重で間には断熱材でー なんか お金 掛けてるねー」

「そらー そーだよ 我が家の見張り番なんだからー すごしやすいようにな ほらっ 岩 入って見ろ!」

 と 押されて 入口に飛び乗っていったが 意外と 快適なのだ 風通しも良さげで、夏でも熱くないだろう 雨も防げそう それに 此処からなら菜園が見通せるのだ。見張りには丁度いいかも知れない。

「ミナツ 古くなったバスタオルがあるだろう ここに敷いてやってくれ」

「はっ 人使いが荒いのねー」

「ここを片付けなきゃーなんないしな サンダル どんなのがいいのかなぁー」

「うーぅ 買収か?」

「そんな風に言うなよー ミナツにとっても岩が可愛いだろう? ミナツには そーいうことに対しても 素直に はぁ~い と返事をする可愛らしい女の子に育って欲しいなぁー」

『そうだ そうだ ミナツちゃんは 俺に対しても 少し そっけないよ!』と、俺は 近所の見廻りに出掛けたのだ。 
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