X ーthe another storyー
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第五十三話 幸福その五
「赴任地は東京のままだけれどな」
「学校は、ですね」
「その学校は久留米にあるんだ」
福岡県のというのだ。
「だからな」
「それで、ですね」
「暫く東京にいないんだ」
「そうですか」
「けれどな」
「はい、それが終われば」
「戻って来るからな」
それでというのだ。
「それからな」
「またですね」
「一緒にいような」
「東京で」
二人でこうした話をしながら山奥の道を進んでいった、そうして滝のある場所まで言ってそうしてだった。
二人で滝を見てだ、草薙はこの時も言った。
「ここがか」
「お見せしたかった滝です」
「嬢ちゃんが子供の頃行った」
「お友達に行って連れて行っても辿り着けなかった」
「そうした場所だな」
「今も皆とは仲よしですが」
それでもというのだ。
「ここにはです」
「その時は来られなかったんだな」
「そうでした」
護刃はこの時は残念そうに言った。
「あの時は」
「そうだったんだな」
「ですが今は来られて」
それでというのだ。
「よかったです、それも草薙さんと一緒で」
「それでか」
「尚更です」
「そう言ってくれると嬉しいな、じゃあこれからな」
「この滝を見ましょう」
「一緒にな」
「ワン」
犬鬼は自然と二人の傍にいた、そして二人と一匹で滝を見るのだった。
空汰は嵐を高野山に連れて来ていた、そのうえで星見の僧正と話していた。
「いや、生き残ってな」
「そのうえでだな」
「こんな別嬪さんと一緒でな」
そうなれてというのだ。
「わいは幸せモンや」
「そうだな」
僧正も笑顔で応えた。
「わしは死ぬと思っておった」
「星にそう出たさかいな」
「しかし生き残り」
そしてというのだ。
「帰って来たな」
「それも二人で」
「よかった」
僧正は心から言った。
「まことにな。だが天の龍だからな」
「これからは東京でな」
「働くことになるな」
「そうなるわ」
「そうだな」
「まあ一人やないし」
空汰は笑ってこうも言った。
「食べもんはこっちの方が美味いけど」
「それでもだな」
「よろしゅうやってくわ」
「そうか、それで一つの役目は終えたからな」
僧正は空汰に優しい声で話した。
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