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X ーthe another storyー

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第五十三話 幸福その六

「実はお前のご両親をだ」
「えっ、まさか」
「こちらに呼んだが」
「ほな会えるんか」
「そうだが」
「ちょっとこれは予想せんかったな」
 空汰は腕を組んでこう言った。
「まさかな」
「親に会えるとはか」
「夢にも思わんかったわ」
「わしそして山からの贈りものだ」
「それでか」
「折角生きているのだ」
 そうであるからだというのだ。
「もうな」
「ここでやな」
「親御さん達ともな」
「会うことやな」
「それで時々でもな」
「こっちに戻ってもか」
「ご両親に会うのだ」
 こう言うのだった。
「そうするのだ」
「ほなな、それやとな」
 空汰は嵐を見てまた言った。
「嵐も紹介させてもらうか」
「そうしてくれるのね」
「大事な人やからな」
 それ故にというのだ。
「是非な」
「それではね」
「今度な」
「ご両親に会いに行って」
「その時にな」
「私も一緒ね」
「二人で会おうな」
 笑顔で言うのだった。
「その時は」
「それではね」
「そうせよ。しかし本当によかった」 
 僧正は満面の笑みで述べた。
「空汰が生きておってな」
「死ぬ筈やったのに」
「あの時わしはどれだけ悲しかったか」
 星見で空汰が死ぬ運命だとわかってというのだ。
「しかしそれが外れてな」
「嬉しいんやな、じっちゃんも」
「うむ、ではな」
「これからはやな」
「幸せに生きるのだぞ」
「二人でそうするわ」
 嵐を見て答えた、その後で僧正は二人を寺の鐘のところに案内したが壁に落書きがあった。嵐はそれを見て言った。
「これは」
「空汰が書いたのじゃ」
「そうですか」
「全く。悪戯好きでな」
 僧正は嵐に暖かい顔で話した。
「それでじゃ」
「こうしたことをですか」
「いつもしておった、そして今もな」
「変わらないですか」
「やんちゃじゃ」
 こう言うのだった。
「全く以てな」
「そうでしたか」
「しかしな」
 それでもというのだ。
「それがよい」
「お茶目ってことでな」 
 空汰は明るく笑って言った。 
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