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Fate/WizarDragonknight

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"Nobody's perfect"

 スカルマグナム。
 その黒い銃は、無数の銃弾を一気に発射した。
 ドラゴンはその雄々しい尾を振るい、銃弾を一気に薙ぎ払う。
 ドラゴンの背中の突起が赤く発光、その口から、紅い炎の光線が放たれた。

「とぅ!」

 大きくジャンプしたスカルは、そのままドラゴンの頭上を飛び越える。
 振り向いたドラゴンへ、そのままキックで蹴り飛ばした。

「ぐっ……」

 ドラゴンは怯みながら、再び背中の突起が発光する。
 今度は、威力よりも即効性を重視するように、低威力ながらも連射可能なものを発射。

「はあっ!」

 赤い弾丸を無数に放つ。
 だがスカルは、前転して回避。彼の体がスクロールした後で、爆発が連続的に続いていく。
 放射光線とスカルマグナム。二つの遠距離攻撃は、それぞれ空中と地上を走りながら走り続ける。
 やがて、スカルの姿が爆炎の中に消える。
 足を止めたドラゴンは、いずれ爆炎の中から現れるであろうスカルへ燃え上がる背中の突起を用意する。
 だが。

「……いない?」

 爆炎が薄くなっても、スカルはその姿を現さない。
 柱のように足を固定させながら、ドラゴンはその姿を探る。
 そして、その気配は……。

「……上かっ!」
「とうっ!」

 ドラゴンの予想通り、頭上から飛び降りてきたスカル。
 彼のかかと落としが、ドラゴンが後退した地面に炸裂する。

「すごい気配の殺し方だな。……戦闘経験が豊富なのか」
「これでも長年、故郷の街を守ってきていてな」

 スカルはスカルマグナムを構える。
 彼の引き金が引かれるよりも先に、ドラゴンは大きな翼を広げ、飛び上がる。
 スカルマグナムを避けながら頭上へ移動、吠えると空気が震えた。

「ほう……」

 スカルは帽子に手を当てながら、ドラゴンを見上げている。
 ドラゴンの背中から、赤い光が発光。口の中に灼熱の光が宿り、大きな光線が降り注いでいく。

「とうっ!」

 だが、スカルは身軽にそれを避けていく。

「素早いな……だったら……!」

 彼の動きを先読みしたドラゴンは、スカルではなくその行く先へ熱線を当てる。
 やがて、砂利を溶かすほどに熱せられた大地は、やがて陽炎を作り上げていく。

「ほう……」

 スカルは足を止め、熱線を吸収していく地面を凝視している。
 そうしている間にも、ドラゴンはさらに熱線を放ち続ける。
 光線はやがて、スカルの前後左右。
 すぐに、スカルの周囲の地面はマグマのように溶けだしていく。

「逃げ道を塞ぎ、その灼熱で相手の体力を削っていく……か」
「その通り。そして、この地獄を受けて、自由に動けた奴はいない」

 ドラゴンは静かに告げた。
 その時間をかければかけるほど、スカルは消耗していく。
 だが、それでも上空のドラゴンを狙うスカルマグナムの正確さは衰えない。

「お前……疲れてないのか……!?」
「ああ。変身するというのは、少しの間死ぬということだ。……少なくとも俺の場合はな」

 スカルはそう言って、ベルトに差し込まれているメモリを抜き取る。

「? どういう意味だ?」
「……お前が気にする必要はない。言ったはずだ。お前がするべきなのは、死人(・・)である俺に勝つことだとな」

 スカルが指を動かす。すると、再びメモリのスイッチより『スカル』という音声が流れ、スカルはそれをスカルマグナムに装填した。

『スカル マキシマムドライブ』

 スカルマグナムの銃身を組み上げ、その銃弾を発射する。
 白く、濃縮された銃弾は、ドラゴンの翼を撃ち抜き、小さな爆発を引き起こした。

「ぐあっ!」

 体を回転させながら墜落するドラゴン。だが、それでも一矢報いようとスカルへ向かう。
 ドラゴンは落下の勢いを利用し、その爪でスカルを攻撃。それは、スカルマグナムを弾き飛ばした。

「よし! これであの銃は封じた!」
「それだけで……勝てるか?」

 スカルは鼻を鳴らし、徒手空拳を挑んでくる。
 ドラゴンは発達した四肢で対応するが、卓越した戦闘能力を持つスカルに、ドラゴンはだんだんと追い詰められていく。
 だが、ドラゴンにとってスカルへの優位性は、翼と巨大な尾。
 スカルの拳を受け流した直後、ドラゴンは体を回転させる。
 すると、大きな尾はスカルの胴体を大きく弾き飛ばす。
 地上を離れたスカルへ、ドラゴンは腰を大きく低くした。

「む?」

 ドラゴンの動きに警戒したスカルが、落下しながらも体勢を立て直す。
 翼を大きく広げたドラゴンは、その右手の爪へ魔力を注ぎ込む。
 すると、爪が大きく成長し、より鋭さが増していく。

「だあっ!」

 翼の勢いも込めて、弾丸のようなスピードでスカルへ突っ込んでいくドラゴン。
 剣となったその爪は、鋭い突撃となりスカルの心臓を貫こうとする。
 大きく飛び散った火花。一瞬、スカルの体から力が抜けたように見えたが。

「……冷たい」

 貫いた手を、ドラゴンは見下ろした。
 人間特有の体温が、全く感じられない。

「まさか……アンタ……!」

 一瞬の沈黙。
 だが、スカルは突然とその体に力を取り戻した。
 ドラゴンの手首を掴み、ゆっくりと顔を上げた。

「甘い」

 冷たく告げるスカル。
 彼の胸元の肋骨型のパーツが左右に開く。
 すると、その心臓部分から紫の炎が溢れ出す。

「な、何だ!? これ!?」
「言ったはずだ。変身するのは……死ぬことだと」

 彼の胸から発生する炎は、やがてドラゴンとスカルの間に集まっていく。
 冷たい炎は、髑髏の形となり、吠える。発生した衝撃が、ドラゴンを大きく後退させた。

「ぐっ……」

 折れた爪。
 両腕で防御したドラゴンは、スカルを睨み上げた。

「さあ、正念場だ」
「スカル……」
「そろそろ終わりにしよう……お前の他にも、まだあの世から見守らなければならない奴がいるからな」

 スカルはメモリを引き抜き、そのスイッチを押した。

『スカル』

 そのままメモリを、ベルトの腰に付いているスロットに差し込む。
 収納ケースかと思ったが、そこにも同じようにスイッチが設置されており、それを押すと、メモリからガイダンスボイスが流れた。

『スカル マキシマムドライブ』
「さあ、来い!」
「……うん!」

 ドラゴンは頷いた。
 スカルの前の髑髏は、そのまま空中に浮かび上がっていく。
 それを見上げながら、ドラゴンは両腕を交差させる。同時に、背中の突起が、この上なく赤く発光した。
 背中の赤は、徐々にその濃度を上げていく。赤はやがて色合いを強めていき、やがて白くなっていく。
 一方スカルは、髑髏とともに飛び上がる。紫の髑髏を、ドラゴンに向けて蹴り飛ばした。
 髑髏がだんだんと巨大化しながら、ドラゴンへ迫っていく。
 やがて、目と鼻の先になったとき、ドラゴンは口を最大限までに開いた。
 そして、発射される青白い光線。
 それは、紫の骸骨をドラゴンの寸前で食い止めた。

「うっ……ぐ……っ……おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 ドラゴンは声を荒げる。
 地面を支える足が、強く埋め込まれる。全身により力を込めることで、より光線が太くなっていく。

 そして。

「そうだ。それでいい」

 激しい破壊音の中、スカルのそんな声が聞こえた。
 白い光線が、紫の髑髏を押し返していく。
 決して力を緩めることはない髑髏。だが、だんだんと上回っていく白い光線は、スカルの傍で髑髏を掻き消した。
 そうしてスカルの姿は、白い光線に飲み込まれる。
 その黒い姿が、白一色に染まり、爆発の中に消えていった。



 ドサッと、重い音が鳴り響く。
 爆炎の中から、スカルが落下したのだ。
 仰向けになったスカルへ、ドラゴンは駆け寄った。

「スカル!」

 走りながら、ドラゴンはその姿をハルトに戻していく。
 あちらこちら体が痛むが、それでもハルトはスカルへ手を伸ばす。だがスカルは、その手を制した。

「行け」
「でも……」

 起き上がるスカル。
 だが、彼の姿はとても無事とは言い切れない。
 バチバチと胸のアーマーからは火花が散り、その骸骨の顔にもひびが入っている。
 だがスカルは、帽子を外し、ハルトへ向き直る。すると、彼の骸骨の仮面だけが粉々に消失し、元の渋い男性の顔になった。

「気にするな。何度も言っているが、俺はもとより死人だ。娘と孫に会えないのは残念だが、死んだ俺にできることは、今を生きるお前の力になることだけだ」
「でも……スカル……アンタは……」

 だが、ハルトにはそれ以上かける言葉が見つからなかった。
 そんなハルトへ、スカルは言葉をかけた。

「お前……名は?」
「俺は……」

 ハルトは、右手を抑える。
 数回、深呼吸を重ねた後。

「松菜ハルト。そして(・・・)……ドラゴン」
「……良い名だ」

 スカルは帽子を被り直し、ハルトに背を向ける。すると、首から下の部分もまた砕け、元の白い紳士服が露わになった。

「さあ。仲間に会いに行け。お前のことを、しっかり伝えろ。お前が、本当の仲間を得るために」
「……ありがとう」



 果たして今の体は、あとどれくらい持つのだろうか。こうして使命を放棄して歩いているのに、あの自称天使が現れないということは、それほど長くはもたないのだろう。
 そんなことを考えながら、ただずっと山道を歩いている。
 すでに偽りの力で蘇った体は、あちらこちらに異常が来ている。白いスーツの下に隠した体は破片のようにヒビが入り、中から一部が欠け落ちていく。
 だが気分がいい。鼻歌でも歌おうか。

「あ、あの!」

 その時。
 山道の反対側から、少女が走って来た。
 最後に会った娘よりは年上だが、送られてきた最後の写真を並べたらおそらく同じ年代に見えるだろう。ボブカットの茶髪と、黒いリボンで結んだお下げが特徴だが、その手に持った日本刀らしき長物には少し驚いた。
 彼女はこちらを見上げて尋ねた。

「男の人、見ませんでした? 私より年上で、革ジャンを着ていて……背は、これくらい!」

 少女は、自分より頭一つ上に手を掲げる。

「可奈美ちゃん! 待ってくれ!」

 そして、少女の後を追いかけてくる青年。
 こちらは、茶髪のウェーブが特徴の若い男だった。少女とはかなり年が離れているように見える。肩で呼吸しながら、彼もまたこちらを見上げる。

「はあ、はあ……! あ、えっと、どうも! あの、人を探しているんです! 男の人で……」
「真司さん、今私が伝えた!」
「ああ、そう……」

 落ち着きのない二人を見ながら、口に笑みを浮かべた。

「……ああ。見たよ」
「本当!?」
「ど、どこで!?」

 その答えに、少女と青年は目を輝かせた。

「この先の、山の中腹にいた。早く行けば、会えるだろう」
「ありがとう!」
「っしゃあ! あ、サンキューな!」

 二人は、礼を言って、指した方向へ駆けだしていった。
 その内、少女の方は凄まじい運動神経を見せている。
 あっという間に青年を振り切り、一瞬で見えなくなった。

「あ、可奈美ちゃん! 待ってくれ!」

 青年の叫び。
 そして、二人に遅れてもう一人。黒いスーツと赤系統のシャツを着た青年もまた、彼らの後を追うように大股で歩いている。
 首からカメラを下げた青年は、すれ違いざまに振り替えった。

「……お前……っ!」
「どうした?」

 だが、首からカメラを下げた青年は何も言わない。
 やがて首を振り、

「……いや。そんなわけないか」
「……どこかで……会ったか?」
「さあな? だが……あんたには、感謝を伝えなければならない……そんな気がする」

 カメラを下げた青年はそれだけ言って、二人の後を追いかけていった。
 白い帽子を目深に被り。

「何だ。いるじゃないか」

 安心したうにほほ笑む。
 そして。
 見上げた時、桜の花が風によって揺れていた。
 桜の花びらが少しずつ散っていくが、それと同じように、自らの体が少しずつ崩れていくのが見えた。

「春か……そういえば、俺にも孫ができた、らしいな……」

 ならば、桜が似合う名前だろうか。丁度、自らの娘が季節の名前を取り入れているのと同じように。

「どんな名前だろうな……せめて、名前くらいは知りたかった」

 そうして、目深になった景色が、罪を数える探偵の、最期の一言となった。

 だが、消える最期の瞬間まで、は鼻歌を続けた。

___さぁおまえの罪を数え___
___魂に 踏みとどまれ___
___愛する者を守るために___
___立ち向かえばいい___
___立ち向かっていけばいい___ 
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