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IS《インフィニット・ストラトス》‐砂色の想い‐

作者:グニル
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怒涛の展開

 あの後、箒さんを誤魔化すのにはすごい苦労しました。何せ気を失う寸前に『VTシステム』と言ってしまっていたんだから始末が悪いです。
 何とか誤魔化しながら夕食へ行ったときには校内放送で学年別トーナメントの中止を学校側が正式に発表。噂のせいでその場にいた一年生のほとんどが泣いて脱兎するかその場にへたり込むかしていました。
 そして当の一夏さん本人はというと……

『箒、付き合ってもいいぞ』

『な! ほ、本当か!?』

『ああ、幼馴染の買い物くらいいくらでも付き合って(・・・・・)やるよ』

 はい、という落ちなわけで。もうわざとやってるんじゃないかって言うくらいベタな落ちでした。どこをどう取ればそうなるんでしょう。
 その後はまあこれも予想通り激昂した箒さんは一夏さんをボコボコにした後部屋で不貞寝。

 でもそのお陰で『VTシステム』については誤魔化さなくてもよくなったと言うか。
 一夏さん、ありがとうございます。

 でもデータ収集のため一回戦は全て行うということでトーナメントは実施されました。

 という訳で今は一回戦から3日後の朝のSHRの直前です。

 あれ?

「一夏さん、デュノアさんは来てないんですか?」

 一夏さんがいるのにデュノアさんがいないのに気づきました。一夏さんが遅刻するのは分かるんですけどデュノアさんが遅刻なんてありえないと思うんですが……
 ちなみにボーデヴィッヒさんは未だに完治していないようで戻ってきていません。

「んー、俺もよく分からん。何か先に行っててくれって言われたからな」

「そうですか。でもそろそろ先生来ちゃいますよ?」

「だよなぁ……」

 体調不良か何かでしょうか?

「み、みなさん、おはようございます……」

 教室の入り口から山田先生が来てしまいました。デュノアさん間に合いませんでしたね。
 あれ? 山田先生どうしたんでしょうか? すごい落ち込んでるように見えますけど…

「今日は、ですね……みなさんに転校生を紹介します。転校生といいますか、既に紹介は済んでるといいますか………ええと……」

 全然要領を得ませんね。転校生なのに紹介は済んでるってどういうことでしょう? 一度会ったことがある人ってことですか。
 でも転校生ってコトはこの短期間だけで3人目ということに……

「じゃあ、入ってください」

「失礼します」

 聞き覚えのある声とその持ち主が現れました。よく見知った顔にお馴染みの髪の毛の纏め方。違うのは服装が男物から女物に変わってるというだけで………


 へ?


「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします」

「ええと、デュノア君はデュノアさんでした。と言うことです。部屋割りが……また休日出勤が……有給が……」

 いやいやいやいや、山田先生。そこじゃないですから。大変なのは分かりますけどため息つくのそこじゃないですから!

「え? ……え!? デュノア君って……女の子だったのぉっ!!?」

 そうですよ! そこなんです!

「おかしいと思った!! 美少年じゃなくて美少女だったわけね!? 通りで肌がきめ細やかだと思ったわ!」

 だからそこじゃなくてですね!
 いや、まあ確かにデュノアさんは肌を見ただけでも綺麗って分かりますけど。

「って、織斑君! 同室だから知らないってことはないわよね!?」

「ちょっと待った! 確か昨日って大浴場男子が使ってたはず…………」

 そうして集まる視線の先には一夏さんがいるわけです。
 後ろからでも冷や汗かいてるのが分かります。

 でもまあ今回は私も全く擁護できないわけで……
 というより本当に一緒にお風呂入ったんですかね?

「一夏ぁっ!!!!」


 ドゴォン!


 一体どこから聞きつけたのか!

 そこには気迫で髪の毛を逆立たせんばかりの鈴さんが立っていました。
 そして一人でドアを吹き飛ばしましたよ。当然IS無しで。

 一ヵ月の内で3回も扉が吹き飛ぶのを見てしまいました。これもうドラマ撮れるレベルですね。

 いつもの鈴さんの気配はなく、今のそれはまさしく獲物を狙うトラのようです。

 そしてその顔は怒れる龍の如く。竜虎相打つとかそういうレベルじゃないです!
 あれ? 竜虎相打つって意味全然違いましたっけ?

 そしてそれを見た一夏さんは席を立って……

「げぇ!かn」

「関羽は言わないでくださいね」

 同じネタは止めてください。

「カルラ! せめて今から殺される奴の最後の台詞くらい言わせt」

「死ね!」

「せめて言い訳させてくれ!」

 一夏さんが叫んでいる間に鈴さんが『甲龍』を展開して両肩の衝撃砲をフルパワーで……ってちょっとちょっとちょっと!

「鈴さんちょっと待った!」

「大丈夫よ! 一夏以外当てないから!」

「そういう問題じゃないです!」

 私の席真後ろなんですってば! 余波とかそんなのの関係とかあるんですってば!

 ズドオオオオオオオオオン!!!!

「あ……危なかった…」

 間一髪で盾の展開が間に合いました。危うく潰れたトマトになるところでしたよ。
 衝撃砲の余波で黒板の中心部は粉々。山田先生も粉g……

「きゅう~……」

 いえいえ! 山田先生は吹き飛ばされて目を回してるだけで粉々ではないです!

 で……クラスの人たちはいつの間に私の後ろに隠れてるんでしょう……

「いやー、助かったよカルラ」

「うんうん、持つべきものは専用機持ちの友達だね!」

 危機察知能力が半端じゃないですねこのクラス。まあ怪我がないなら良かったです。
 あ! そういえば一夏さんは!?

「た、助かったぜラウラ、サンキュな。……っていうかお前のISもう直ったのか? すげぇな」

 え? ボーデヴィッヒさん?
 『オーガスタス』を下げるとそこには黒いIS『シュバルツァ・レーゲン』を纏ったボーデヴィッヒさんが立っていました。どうやら衝撃砲はAICで直撃弾だけ無効にしたみたいです。
 というかもう動けるんですね。ほっとしたというか驚きというか……

「……コアは無事だったからな。予備パーツで組み直した」

 あ、なるほど。そういえば肩のレールカノンがありませんしワイヤーブレードの射出口も………

「へー。そうなん――むぐ!?」

『きゃーーーーーーーーーー!』

 いきなり……何の脈絡もなく一夏さんに近づくと……き、ききききき………キスしました……

 それを見ていた教室中のクラスメイトから飛び交う黄色い声。

 どうして? 何で? 3日前私の気絶した後何があったって言うんですか!?
 ただ助けただけなんじゃないんですか!?

「ズキュウウゥン!」

「や、やった!」

「さすが代表候補生! 私たちにできない事を平然とやってのけるッ!」

「そこに痺れる憧れるぅ! っていうか変われ!」

 あの、皆さん? 代表候補生だからってキスできるわけじゃないんですけど……
 そして口で擬音言いましたね今。誰かは分かりませんけど……

 ていうか口つけてる時間長くないですか!? たっぷり一分は経っていますよ!?

 そしてボーデヴィッヒさんがようやく口を離すと顔を真っ赤にして宣言しました。

「お、お前は私の嫁にする! 決定事項だ! 異論は認めん!」

「……婿じゃなくて?」

 一夏さん、突っ込むところそこでいいんですか……いえまあ十分突っ込みどころなんですけどもっとあるでしょう。

「日本では気に入った相手を『嫁にする』と言うのが一般的な習わしだと聞いた。故に、お前を嫁にする」

 ボーデヴィッヒさんの言葉に思い出す。そう言えばオーストラリアにいた時も日本のアニメ好きの人がそんなこと言ってたような……

「あ、あっ、あ………!」

 そして忘れられている鈴さんは顔を真っ赤にして口をぱくぱくと動かし、声にならない声を上げています。
 顔真っ赤ですし一夏さん辺りなら金魚とか言いそうですね。言った瞬間命がないでしょうから私は言いませんよ?

「アンタねええぇぇッ!!」

 今度は『双天牙月』を取り出す鈴さん。

 これは戦場の予感!

「皆さんはやく退避を……!」

「もうしてるよ!」

 早っ!
 いつの間にか皆さん廊下まで退避していました。

「待て! 俺は悪くない! むしろ被害者であって……」

「全部アンタが悪いに……決まってるでしょうがああああああああ!」

ジャキン!

 事実一夏さんが天然女タラシって言うのは認めますけど今のは一夏さんが悪いわけじゃ……もう鈴さん理屈も何も無いですね。頭に血が上って一夏さんを殺すことしか頭にないようです。
 鈴さんが『双天牙月』を連結させると同時にそれを投擲。そしてそれはボーデヴィッヒさんのAICによって再び止められます。

「邪魔よ!」

「人の嫁に無粋な真似をしてもらっては困るな」

「何が嫁よ!」

 そしてそのまま二人が両手を組み合って押し合いに……ISでここまで原始的な戦いは中々……
 あ、その隙を突いて一夏さんが廊下へと脱出を試みようとしていますね。


ビシュン!


「ひゃあ!」

 わ、私の頭の上レーザーが掠りましたよ!? レーザーって言ったらセシリアさんしかいないですよね! 危ないじゃないですか!
 振り返ると予想通り『ブルー・ティアーズ』を展開し、額に青筋を浮かべたセシリアさんが……

 あー、こっちも何言ってもダメですね。

「あら、一夏さん? どこかにおでかけですか? 実は私どうしてもお話しなくてはならないことがありまして……」

「そ、それは今じゃないとダメなのか……?」

「急ぎの御用ですの? でしたら上半身を置いていってくださればそれで。あ、首から上だけでもよろしいですわよ?」

 『ブルー・ティアーズ』の周りにはBT兵器4つがフヨフヨと浮いていて、右手にはいつものライフルではなく『インターセプター』が握られています。そして『インターセプター』を顔の前に持ってきてニコリと笑う姿はかの英国の殺人鬼『切り裂きジャック』を彷彿とさせます。
 見たこと無いですけどね!

 それを見た一夏さんは即座に窓へ。ここは二階ですから生身でも何とかなるとの判断でしょう。
 でも忘れてますよね。

 窓際の席には修羅が……失礼、恋する乙女がいますよ?

 予想通り、箒さんが一夏さんの前に立ちふさがりました。そして腰には『緋宵』。
 何で教室に持ってきてるんでしょう。朝一緒に来るとき持ってましたっけ?

「一夏……」

「ほ、箒……さん?」

 箒さんの台詞にはほとんど感情が篭っていません。一夏さんの冷や汗尋常じゃないくらい出てますね。

「どういうことか説明してもらおうか……」

「待て待て! 説明を求めたいのは俺のほうで……!」

「そうか……心当たりはないと……」

「そうだ!」

「ならばその身に聞くまでだ! 篠ノ之流抜刀術……」

 そう言った箒さんは『緋宵』の柄に手をかけ姿勢を低くする。あれはまさしく抜刀術の構え。
 『緋宵』の抜刀術ですか。情報で見たとおりならまさしく『その一太刀を持って必殺とする最速の瞬き』なんでしょうね。斬るの見てみたいなあ。




 人以外で……





 そして辛うじて箒さんの間合いから何とか逃げ出した一夏さんに待っていたのは……
 デュノアさん……もといデュノアさん……って私の言い方だと変わりませんね。シャルロットさんとぶつかりました。

 その顔にはいつもよりも数段いい笑顔が浮かんでいます。
 普段笑顔の人って怒ると怖いってよく言いますけどこれ怖いってレベルじゃないんですけど……!

「一夏って他の女の子の前でキスしちゃうんだね。すごいなぁ、憧れちゃうなぁ」

「それほどでもない!」

 ………一夏さん……それは殺してくれと言っているようなものですよ……

「あのー……シャルロットさん? 俺はされたんであってしたわけではないし、憧れる要素は一つもないし……なぜにISを起動してるんでしょうか?」

 さて、逃げるなら今ですね。
 さようなら一夏さん。あなたのことは忘れません。多分半年から一年位。

 とりあえず山田先生を回収しないと……
 『ユルルングル』で山田先生を回収……

「はわー、カルカル待ってー!」

 何故かまだ教室にいたのほほんさんも一緒に回収ー!

 私はシャルロットさんがパイルバンカーを取り出すのと同時に教室を出ました。
 教室を出た瞬間……


ドカアアアアァンっ!!!


 校舎が文字通り揺れました。

 ああ、これはなんというか……もう泣きたい……


ポン


 思わず廊下で膝を着いた時、誰かの手が肩に触れました。
 見上げるとそこにはのほほんさんがいつもののんびりした笑顔を浮かべていました。
 その平穏そのものの顔が今私には神にも匹敵します。

 ああ、布仏神さま!


「泣いていいんだよー?」


 泣きました。 
 

 
後書き
明日からは修学旅行編!

誤字脱字、表現の矛盾、原作流用部分の指摘、感想、評価等などお待ちしてます。
 
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