レーヴァティン
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第二百七十四話 その時が来てその三
「思えば懐かしい」
「そうだな、しかしな」
「しかし、どうした」
「いや、お前は表情は変わらないけどな」
久志は英雄に笑って話した。
「けれどな」
「それでもか」
「お前の考えはわかる様になった」
「そうなのか」
「目は口程にものを言うだな」
「表情や口調に出さずともか」
「ああ」
それでもというのだ。
「目を見るとな」
「わかるか」
「お前も目では語るな」
「隠してるつもりもない」
全くとだ、英雄も述べた。
「ただ表情と口調はだ」
「そのままか」
「元々な」
「そうしたものでか」
「意識してだ」
その様にしてというのだ。
「していない」
「そうなんだな」
「それで俺は目を見るとか」
「ああ、感情がな」
それがというのだ。
「わかる様になったぜ」
「そうか」
「この世界で長い付き合いだからな」
それ故にというのだ。
「わかる様になってきたぜ」
「そうか」
「ああ、それでお前今はな」
久志は英雄の目を見つつ話した。
「その最初の頃を思い出してるな」
「そうして話していた」
英雄もそうだと答えた。
「実はな」
「やっぱりそうだな」
「今思うとな」
英雄はさらに言った。
「懐かしい」
「あの頃がか」
「心からな」
こうも言った。
「そう思える」
「そうだな、デルフォイに行くまでもな」
「長くな」
「二人でてくてく歩いてな」
「西の浮島をな」
「まさに身一つでな」
「旅をしていたな」
こう久志に話した。
「そうだったな」
「ああ、本当にあの頃がな」
「お前もだな」
「懐かしいな」
久志に笑って話した。
「本当にな」
「そうだな」
「あの時からはじめてな」
「この世界で何十年かけてな」
「ここまで来たな」
「そうだよな、長い様でな」
「あっという間だった」
まさにというのだ。
「最初は何故この世界に来たか」
「それすらわからなかったな」
「そうだった、だがな」
「そこから色々と知っていってな」
「この世界のことをな」
「今に至るな、思えばな」
久志も笑って話した。
「何かとあったな」
「お互いにな」
「色々な人にも会ってきたしな」
「結婚もしたな」
「ああ、実は子供もいるよ」
久志は家庭の話もした。
「この世界ではな」
「そうか、お前もか」
「皆子供いてな」
仲間達もというのだ。
「俺は最初男の子が生まれてな」
「跡継ぎになるか」
「ああ、そこから三人女の子が続いてな」
「そうしてか」
「この前次男が生まれたよ」
「それは何よりだな」
英雄は彼なりの祝いの言葉を贈って応えた。
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