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IS《インフィニット・ストラトス》‐砂色の想い‐

作者:グニル
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意外性

 鳳さんが来たその日の放課後、第2アリーナ

 結局やることは変わりません。
 一夏さんは呆れながらも結局訓練することは必要だと理解したのでしょう。
 一夏さん、箒さん、セシリアさん、そして私の4人は一夏さんのIS訓練のためアリーナに集まっていた。箒さんもアリーナにいるのは訓練機の使用許可が下りたためです。
 日本の第2世代型IS『打鉄』。一夏さんが最初に乗った量産型ISと同じものですね。

「せっかく使えるようになったのだ。ならば剣の稽古もISでするべきだろう」

 至極真っ当な意見です。一部の隙もない理論ですね。

「ま、まさかこんなに早く箒さんへの使用許可が下りるなんて計算外でしたわ」

「そうは言ってももう5月ですし……学年別トーナメントもクラス別マッチが終われば案外直ぐですから」

「むう~」

 セシリアさんは唸っていますが下りてしまったものはしょうがないので諦めましょう。

「では一夏、始めるとしよう」

「お、おう」

 そう言って箒さんが『打鉄』の近接ブレードを構えたのを見て一夏さんも構えます。
 箒さんはその雰囲気も合っていて『打鉄』がすごい似合いますね。

「お、お待ちなさい! 一夏さんのお相手をするのはこの私でしてよ!」

「ちょ……! セシリアさん!?」

 セシリアさんがそれを見てISを装着する。まさか二対一でも行う気なんですか!?
 いくら一夏さんの機体が高性能で操縦が上手いとしても一夏さんは初心者、それは無茶があります。
 そういう戦いに慣れるのはもっと後のほうが……

「カルラ……」

「は、はい!?」

「助けてくれ」

 割と本気の声で助けを求められてしまいました。
 し、仕方ありませんね。

「では二対二でやってみましょう。折角4人いるんですし」

「お、いいなそれ。じゃあ俺は……」

「私が一夏さんと組みますわ!」

「私が一夏と組む!」

 一夏さんが言い切る前に二人が同時に言い放った。これじゃあ進まないじゃないですか……
 私は溜息を隠しつつも新しく提案をします。

「ローテーションで回しましょう。クラス別マッチまで時間がありますし……とりあえず今日は一夏さんが決めるということで」

「わ、分かりましたわ」

「そうだな。一夏が決めるのが一番いいな」

「当然私ですわよね!?」

「当然私と組むよな!? 一夏」

 いきなり迫られた一夏さんは……

「えっと~……今日はカルラと……かな」

 あろうことか私を選んでしまいました。完全に私の提案は裏目裏目に出てしまっています。

「な、何故だ一夏!」

「や、だって二人とも何か今日怖いし」

 まあその気持ちは身近で見てる分痛いほど分かりますけどね。

「ま、まさかここまで狙ってタッグ戦を提案したというんですの!? 」

「今まで静かにしていたのもこのためと……く、中々侮れないなカルラ」

 ああ、こうしてまた誤解が深まっていくんですね……

 ちなみにこのタッグ戦、二人とも一夏さんに八つ当たりとばかりに攻撃を集中して私は眼中にないようでした。
 結果だけ言えば3勝0敗で私と一夏さん組の勝ち越しなんですが……勝った気がしません。

 特にボロボロになった一夏さんと対照的に装甲さえ全く無傷の私はどう声を掛けろというのでしょう。
 えっと……

「ごめんなさい一夏さん。こんな時どんな顔したらいいか分からないんですけど」

「笑えば……いいと思う……よ……ガク」

 笑えません。


――――――――――――――――――――――――――――――


「ふんふんふーん♪」

 訓練が終わった後、久しぶりに今日は時間があります。
 何故って、それこそISが無傷だったからに他ありません。弾の補充はすぐ済みましたし、傷がない以上直す必要がありません。
 というわけで私はいつもより二時間ほど早く部屋に戻って趣味に没頭できるというわけです。
 隣で箒さんと鳳さんらしき声の言い争いが聞こえてきたりしていましたがそんなことは関係ありません。ええ、ありませんとも。

「ふんふーん」

 自然と手の中のものを拭く作業で鼻歌も出るというものです。
 ちなみに今手にあるのは大型自動拳銃『デザート・イーグル』。アメリカ製で自動式拳銃の中では世界最高の威力を持つ弾薬を扱えるという一品です。

 ああ、鈍い鉄の光沢……無駄のない綺麗なライン……そして何といってもこの重量感。たまりませんね。

 『デザート・イーグル』の整備を終えて壁にかかっている飾り棚に戻します。こういう時一人部屋はいいですね。誰にも趣味に対して言われません。
 えっと次は隣の『グロック17』ですね。うーん、『ベレッタM92』の整備は明日ですかね。流石に一日二丁くらいにしておかないと集中力が持ちませんからね。

 銃の整備は時間が掛かりますが……まあその時間がいいというかなんと言うか。
 この部屋に来てからそろそろ一か月経ちますしライフルとか大型のものを家から送ってもらおうかなあ。M4とかドラグノフとかー、そしたらもっと大きな飾り棚が必要ですよね。今度の休日にそれに使えそうなものを見に行くとして……とりあえず送ってもらうものを考えないと幅も分かりませんし送ってもらうものを考えましょう。うむむ、やっぱりドラグノフですかね。申請通るといいんですけど。

ゴンゴン!

 そんなことを考えつつ、次に整備するために置いていた『グロック17』を手に取った瞬間誰かが扉を叩く音がしました。
 ……嫌な予感しかしません。だって『コンコン』じゃなくて『ゴンゴン』ですよ!?

ゴンゴンゴンゴン! ベキィ!

 明らかに破壊音なんですけど!?
 敵襲!? 敵襲なんですか!?

 って鳳さん?

 ?
 なんで真っ青な顔で両手を上げているのでしょう?

「あ、あたしが悪かったからその銃しまってくれない!?」

「へ?」

 言われて気づきました。そういえば『グロック17』を持ったままでした。
 でも私の銃に弾は入ってないんですけどね。観賞用で持ってるだけなので撃たないから弾なんて持っていても無駄なだけですし。
 慌てて『グロック17』を寝巻きの腰に挿して手を離しました。

「殺されるかと思ったわよ」

「す、すいません」

「あんた大人しそうな顔して随分な物持ってるのね……」

「はあ、ちょっとした趣味で」

「まだ護身用のほうがいいわよ……趣味ってなによ……」

 鳳さんに呆れた顔で言われてしまいました。まあ……そうですよね……分かってるんです、変な趣味って言うのは。
 でもあの無駄のないフォルムを一目見たときから好きになってしまって……その後は成り行きでズルズルと大型銃器にまで手を出す始末で……でも大型銃器はいくらIS学園と言えども持ち込むのが難しいと言うことで申請が通るか通らないか微妙なところですよね。ああ、早く部屋に飾りたいです。
 ってそれは置いておいて!

「そ、それで? こんな時間に何のご用ですか?」

「あー、いやなんていうかさ……頭に血が上ってたから殴り込んじゃったんだけど……さっきので下がったわ。ごめん」

「はあ……一夏さんのことですか?」

「……なんのことかしらね!」

 分かりやすいんですから。
 これで何で一夏さんが気づかないのか不思議で仕方ないのは私だけではないはずです。
 ……目の端に涙の跡があるのはなんでなんでしょう?
 一夏さんは女の子を泣かすようなことはないと思っていたのですが……鳳さんはプライドが高そうですし言わないほうが吉ですね。

「あー、用事……用事……ああ! そうよ! あんた,一夏から聞いたけど勝ったのにクラス代表になるの辞退したらしいじゃない。なんか理由でもあんの?」

 明らかに今思いつきましたね。その用事。

「ええ、私そういうガラじゃないので」

「まあ見た目争い事好まなさそうな顔してるもんね。決闘……っていってもあんた受けなさそうだし」

「そうですね」

 セシリアさんの時も売り言葉に買い言葉でしたから。正直一夏さんとは戦う理由がなかったので戦いたくなかったんですよね。
 当然理由がない鳳さんとは臆病者と言われても戦いませんよ?
 あ、故郷(オーストラリア)や友達を侮辱されれば言われなくても戦いますけどね。わざわざそんなこと言いませんけど。

「んー、じゃあいいや。あたしの変わりにクラス代表戦まで一夏のこと鍛えておいてよ。あんまりあっけないんじゃ味気ないでしょ?」

「鳳さんはいいんですか?」

「ま、あたしも負けたくないしねー。自分の手の内はなるべく残しておきたいし」

 セシリアさんといい鳳さんといい他国の代表候補生は負けん気が強いのが特徴なんでしょうか? IS学園ではまだ二人しか会っていませんけど。

「それじゃ頼んだわよ。あんた、さっきの二人よりは仲良くなれそうだしね」

「はあ、分かりました」

「んじゃ、邪魔したわね」

 そう言って鳳さんが部屋を出て行こうとしました。

「あ! 待ってください」

「ん? 何か用?」

 ええ、ありますとも!

「ドア、直していってください」

「あ……そっか」

 結局その日はドアが直ることはなく、一日ドア無しで過ごすことになったのは全く別のお話です。


――――――――――――――――――――――――――――――


 翌日、廊下にはクラス対抗日程表が張り出されました。

「マジかよ……」

 隣の一夏さんの声が聞こえます。それはそうでしょう。私もそう思います。

 クラス代表対抗戦、一回戦第一試合、一組VS二組


 つまり一夏さんと鳳さんの戦い……ということですからね。
 
 

 
後書き
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