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IS《インフィニット・ストラトス》‐砂色の想い‐

作者:グニル
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訓練訓練、また訓練

 クラス対抗戦まで残り一週間。各アリーナは対抗戦のための調整に入るので実質今日が最後の訓練日です。

 現在いる場所はいつもの第3アリーナ。今は私一人ですが後から3人も合流する予定です。
 最近一夏さんとの訓練ばかりで自分の鍛錬を怠っていましたからね。

 右手に突撃銃『ハディント』左手に散弾銃『エスペランス』を構えて射出されてくる模擬戦用ターゲットを撃ち落とす。
 しばらくそれを繰り返してからターゲットの設定を高機動モードから反撃モードへ。ターゲットから射出されてくる攻撃を避けながらターゲットに『ハディント』を、近距離のものには『エスペランス』を叩き込んでいく。
 頭の周囲に映し出しているマガジンの弾数が見る見るうちに減っていくのが分かります。

  弾数が0になると同時に『ハディント』が鉄を弾く音が響きます。弾幕の薄くなった右側からターゲットが迫ってくるのを左手の『エスペランス』で撃ち落とし、『ハディント』の先端に銃剣を展開。また同時に弾切れになった『エスペランス』を左腰に戻しながら両手で槍を扱う要領で『ハディント』を構えます。

「はあっ!」

 銃剣による突きで気合の声と共にターゲットを突き刺し、引き抜くと同時に左手にマガジンをオープンして装填。セミオートに切り替えて近距離は突く、遠距離は撃ち抜くという行動をマガジンがなくなるまで続ける。
 マガジンが切れると同時に目の前に『completed』の文字が表示されました。

 「ふう……」

 訓練終了、ですね。

 私が銃をすべて量子化するのと同時に、頭の周囲に今の訓練のデータが表示されます。

 射撃命中率73%に撃破率85%……うーん、射撃命中率落ちましたね。前は射撃命中率85%超えていたんですけど……近接戦闘の洩らしは一個もないのに。
 やっぱり一夏さんと訓練するようになってから近接戦闘の訓練が多くなったせいですかね?
 それに命中率73%というのは簡単に言えば無駄撃ちです。無駄撃ちはいけません。弾代だって撃ったら撃った分だけ本国に請求されるんですから多少は自重しないと。
 それと被弾率9%というのも案外問題なんですよね。セシリアさん程の射撃レベルが相手だとこれ以上の被弾率は簡単に行くでしょうし、もっと精進しないと。

「お待たせしましたわね」

 声に振り返るとISスーツ姿のセシリアさんが、その後ろに箒さんと一夏さんが来ていました。
 
 ???
 なんで一夏さんはものすごい落ち込んでいるんでしょう?

「あの………」

「ああ、これは一夏さんのせいですので気にしないでいいですのよ?」

「え? でも……」

「ああ、あれは一夏が悪い」

「え? え?」

「うん、俺が悪かった………」

「はあ……」

 意味が分からないですけど『触らぬ神に祟り無し』ですね。
 予定通り行きましょうか。

「で、では今日も訓練を始めましょう」

「ああ、今日が実質最後だからな。なるべく有意義なものにしないと」

「そうですわね」

 皆さんがまだISを展開していなかったのでセシリアさん対策の時もやったとおり、空中に画面を映し出して皆さんに見えるようにする。
 目の前に映っているのは凰さんの専用機、中国第三世代型IS『甲龍(シェンロン)』。今回も文章のみですけどね。

「ではこれまでに分かった情報を一夏さんにお教えします」

「これには私の分析が入っていますの。存分にお役立てになってくださいませ」

「お前だけなものか! これは私が……ゴホン! 私たちが分析した結果だ!」

 いえ、どうでもいいですけどお二人とも、言い争いは後で……
 はあ……

「始めても?」

「お、おう。頼む」

 言い争っている二人を置いて話を進めてしまいましょう。

「まずこの『甲龍』ですが、コンセプトとしては私の『デザート・ホーク』と似たところがあり、燃費と安定性を第一に設計されています。策無しで行くと燃費の悪い『白式』はほぼ確実に負けます」

「お、おう……」

 ほぼ確実に負けるという言葉に一夏さんは驚きながらもしっかりと頷きました。
 『白式』の単一(ワンオフ)仕様能力(アビリティ)、『零落白夜(れいらくびゃくや)』。
 あ、単一仕様能力っていうのは、操縦者と最高状態の相性になったときに自然発生する固有の特殊能力のことで、他の人には絶対真似できない、正にその人だけの特殊能力のことですね。私も使える人を見たのは一夏さんが初めてです。
 しかも通常第二形態から発動するものであって、第2形態に移行しても発現しない可能性の方が高いんです。それが第一形態から発現するなんて、相性がいいとかの問題じゃないですよ全く……

 それで今までの訓練で分かったのは相手のエネルギー兵器による攻撃を無効化したり、シールドバリアーを斬り裂いて相手のシールドエネルギーに直接ダメージを与えられるという反則的な最高レベルの攻撃能力。
 ただ、反面シールドエネルギーを攻撃に転化する能力のため、極端に燃費が悪い。
 攻撃するたびにシールドエネルギーを使うんですからゲームで言うとHPやMPを常に削りながら戦っているようなものです。

「そして武装ですがこれは少数……まず近接用武装の『双天牙月(そうてんがげつ)』。双と名の付く通り二本で一対の青龍刀だそうです」

「ちなみにデータを見た限りですけど明らかにパワータイプでしたわよ」

「ああ、パワーだけなら『白式』を上回っているかもしれん」

 いつの間に言い争いが終わったのか、セシリアさんと箒さんが一夏さんと同じくデータを見ていました。

「次の武装ですが、これが曲者です。セシリアさんの『ブルーティアーズ』と同じく第三世代型兵器『龍咆(りゅうほう)』。情報によると空間自体に圧力をかけ砲身を作り、空気を圧縮して固め衝撃を砲弾として打撃ち出す衝撃砲、ということです。やはり文章ではこの程度の理解が限界ですが……」

「んー、もっと分かりやすく言うと?」

 私の説明に一夏さんは首を傾げています。少し難しく言いすぎましたか?

「そうですね……ドラ○もんって知っていますよね?」

「ああ。もちろん」

「あれの空気砲と原理は同じです。ただ圧縮した衝撃を飛ばすか空気を飛ばすかの違いですね」

「なるほど、あれ? ってことはつまりそれって……」

 気づいたようですね。この武装の最大の特徴が……

「はい、恐らく……というかほぼ100%の確率で相手の弾丸は見えません」

「ああ、結局私たちもそこに辿り着いた」

「いくらバリア無効化とはいえ、衝撃の塊では切り裂くことも回避することも困難ですわね」

「おいおい……それじゃ打つ手なしか!?」

 私たちの深刻そうな声に一夏さんが声を上げます。いやー……

「一夏さんじゃなければ色々手はあるんですけれども……」

「そうだな。一夏じゃなければ……」

「ですわね。一夏さんじゃなければ……」

「おい……」

 正確に言うと一夏さんの『白式』では、なんですけどね。近接武装しかないので突っ込むしか戦略がないわけですし……

「しかし今から射撃のノウハウを教えても今日だけでは身につきませんし……」

「うむ」

「ですわね」

「だああああ! どうすんだよ! 結局突っ込むしかないのか!?」

「分かってるじゃないですか」

「は?」

「一夏さんには近接戦闘しかない。ということは接近しなければ戦えない」

「あ、ああ」

「なら私がセシリアさんにやったのと同じように、射撃兵器を使わせる隙を与えなければいいんです。ですから今日は……」

 そう言って私は腰部の『マリージュラ』を引き抜いて一夏さんに突きつけます。

「射撃武器を切り抜けてからの接近戦を主にやります」

「ちなみにこれは3人の総意でしてよ?」

「ああ、今日は覚悟しろ一夏」

 そう言ったときにはもうセシリアさんも箒さんもISを身に着けている。
 ちなみにセシリアさんは左手に『スターライトmkⅢ』右手にショートブレード『インターセプター』を展開しています。箒さんは訓練用の『打鉄』なので近接ブレードしかインストールしてないのは仕方ないですね。

「さ、時間がもったいないので一夏さんも」

「あ、ああ……」

 そう言って一夏さんが『白式』を身に着けました。

 さあ、訓練(地獄)の開始ですね

「おい、ちょっと待て! 何か三方向から警告出てるんだが!?」

 え、今更それ気づきます?

「当然ですわ」

「今までの話を聞いてなかったのか?」

「いやいやいや! まさか3対1か!? そんな無茶な! カルラだけの時だって負けたんだぞ!?」

「勝つ必要ありませんからね」

「は?」

「今から鍛えるのは反射神経とか状況判断能力とかですから。私たちに勝つのではなく、いかに相手の隙を見て懐に入り込むかの訓練です。本当はもう少し早く出来ればよかったのですが……」

 この訓練方法だと一夏さんがもたないですからね。あとは分析やら準備やらで最終日にしか持って来れなかったという悲しい事実が……

「1日では付け焼刃かもしれませんがやらないよりはマシでしょう」

「では予定通りに」

「ああ、行くぞ一夏! 男ならこの程度は切り抜けて見せろ!」

「お、鬼だ……鬼がいる」

 多分、赤鬼とか青鬼とか考えているんでしょうね。私とセシリアさんは髪と機体の色的に結構そのままですから。
 あ、そうだ。忘れていました。

「箒さん、これ、忘れていました」

「ん? ああ、すまんな」

 そう言って私の60㎜グレネード付22㎜アサルトライフル『グリニデ』を手渡します。前日の内に使用許可を出しておいたので箒さんは『グリニデ』を使えるようになっています。
 箒さんの『打鉄』にはまだ射撃武器をインストールしていませんからね。

「おおおおおおおおおい! 箒も射撃武器持つのか!? ずるくないか!?」

「実戦にずるいも何もあるわけないじゃないですか」

「私はお前と違って多少遠距離武器にも心得があるからな。慣れるついでに付き合ってやる」

 あ、今鬼に金棒とか考えてますね。なんでこんな分かりやすいんでしょう?
 箒さんとセシリアさんの顔は笑顔ですけどキッチリ頭に青筋浮いていますし……ご愁傷様です。

「では……」

「行くぞ!」「行きますわよ!」

 私たち3人はほぼ同時に銃を構え、そしてそれらが一斉に火を噴きました。

「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 その日だけで一夏さんの黒星は10を超えました。
 さすがにやりすぎましたかね?
 
 

 
後書き
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