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IS《インフィニット・ストラトス》‐砂色の想い‐

作者:グニル
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爆弾低気圧

 さて、席が後ろと言うことはどういうことかといいますと……

「なあカルラ、さっきの授業のここってどういう意味だ?」

 一夏さんに物凄い話しかけられます。特に授業の後はこんな感じで尋ねられるのだからどうしようもないですね。

「ああ、これはですね。その前のページの図を参照にして考え方を……」

 それに答えている私も私です。これでは箒さんとセシリアさんに関係を疑われても無理はありませんね。
 その上あの夜から私は妙に一夏さんを意識してしまうようになっています。教科書を覗き込んでいると顔が触れそうな距離にあったら慌てて離れてしまったり、手が触れ合った程度でうろたえたりと、とにかく今まで何でもなかった行動が一つ一つ気になってしまうのです。

 こうやって気になり始めると一夏さんの鈍感さも非常に目立ちます。なにせ他のクラスメイトたちはその行動だけで気づくのに本人は「?」を浮かべるだけで全く気づいていないのですからもう。
 前も思った通り流石に恋愛感情として一夏さんを見ているわけではないのですがこれはこれで悔しい気がするんですけど……


――――――――――――――――――――――――――――――


 そんな日が続いてあっという間に4月も後半に入りました。朝のSHR前。

 なんでしょう?
 教室がいつもより騒がしいですね。

「皆、おはよー。今日も仲良く4人だねー。そういえばもうすぐクラス対抗戦だっけ?」

 最近ではおなじみとなった通り私、一夏さん、箒さん、セシリアさんの4人で教室に入って席に座ったとき、クラスメイトの谷本さん(だよね確か)が話かけてきました。

 そういえばクラス対抗戦はあと3週間後に迫っています。はやいですね。

「そういえば聞いた? 二組のクラス代表が変更になったって話」

「そうそう、なんとかって言う転校生に代わったのよね」

 一夏さん曰く、女子の情報網の広さは異常だそうです。
 私も女性なので分かりませんがとにかく男性の一夏さんは話に着いていけず、頭に「?」を浮かべています。
 今も谷本さんの一言だけで周囲にいる人たちが話に入ってきます。
 なるほど、教室の騒がしさの原因はその転校生と言うことですか。

「こんな時期に転校生だもんねー」

「家の都合か何かなんじゃない?」

「2組の子の話だと中国から来た子だって話だよ?」

「中国?」

「なあ、そいつって強いのか?」

「わかんないけど、今のところ専用機持ちは1組と4組だけだし余裕だよ」

 一夏さんの単純な質問にもこの状態です。結局噂の域を出ないんですよね。
 そういえば思いましたけど、1組って随分アンバランスな構成にしたものです。普通なら他のクラスに代表候補生を割り振るのではないのでしょうか?
 と思いましたけど考えれば当たり前です。何せこのクラスには一夏さんがいるのですから他の国がこのクラスに人を入れたがるのは明白ですね。
 それより一夏さん、最初に聞くのがどんな人とか以前に強いのかって戦闘思考過ぎませんか?

「その情報、古いよ!」

 そんなことを考えていたら教室の入り口から声がしました。その方向を見ると教室の入口にツインテールが特徴的な小柄で、肩の部分が露出するようにした改造制服を着ている女の子が立っていました。
 いえ、まあIS学園ですから女の子か女性しかいないのが当たり前なんですけどね。
 あ、ちなみにIS学園の制服は許可さえ取れば改造が可能なのです。自由な校風ですよね。

「2組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

「2組の専用機持ち……もしかして貴方が?」

 そういえば彼女の顔は代表候補生のデータベースで見たことがありますね。ええと、名前は確か……
 私の言葉に彼女は腕を腰に当てて仁王立ちの状態で言葉を続けた。

「そう! この私、中国代表候補生、凰(ファン) 鈴音(リンイン)!今日は宣戦布告に来たってわけ!」

 周囲の視線がその言葉で一気に凰さんに集まりました。ファン・リンインって読むんでしたね。中国って漢字の読み方難しいから漢字は分かったんですけど読みが思い出せなかったんですよ。

 ああ、それにしても法治国家日本で宣戦布告なんて物騒な言葉を二回も聞くなんて……日本はいつからこんなに物騒に!
 ……そういえばIS学園は条約上『どの国にも属していない特殊な場所』にあるんでしたね。忘れていました。だからどうだってことはないんですけど。

「セシリアさん。鳳鈴音と言ったら例の?」

 一夏さんと鳳さんが再会を喜んでいるのを見ていて気になったので私はセシリアさんに耳打ちして聞きます。

「ええ……鳳 鈴音。たった1年で人口世界1位の中国で代表候補にまで上り詰めた才能の持ち主だそうで、噂では中国で開発された第3世代ISを専用機として受領しているという話ですけど……そんなことより幼馴染ってどういうことですの……ずるいですわ。そうは思いません!?」

 いや、そこじゃなくてそんなすごい人が幼馴染って言うところに驚きましょうよ。
って幼馴染!? ……この人もですか? でも箒さんは全然知らないような顔をしていますけど……? 一夏さんの仲良さそうに話している様子を見ている限り嘘ではなさそうですね。
 全然関係ないですけど凰さんって小さくて見た目可愛いのに口調がすごい乱暴ですね。

「こら」

 いつの間に来たのか織斑先生が凰さんの頭を出席簿で叩いていました。

「っ! いったー! なにすんの!?」

 ああ、そんな相手を確認する前にわざわざ火に油を注がなくても……
 まあ誰に叩かれたか確認していないんですからしょうがないといえばしょうがないのでしょうか?

「もうSHRの時間だぞ、さっさと教室に戻れ」

「げ、千冬さん」

「ほう……教師に向かって開口一番『げ』とは恐れ入る。私に同じことを二度言わせるつもりか?」

 鳳さんが最前線にニトログリセリンを投げ込みましたね……
 織斑先生が指をコキコキと鳴らすと、凰さんが一歩後ずさる。あの人にアイアンクローをされた日には顔についた跡が消えなさそうで怖いです。
 一夏さんの幼馴染ということは織斑先生とも面識があるのでしょう。どうやら苦手みたいですけど。

「す、すいません」

 織斑先生が入るために凰さんが道を譲る。どうやらまた叩かれるということは避けたようです。

「また後で来るからね、逃げないでよ一夏!」

 そう言いながら凰さんは教室に戻っていった。

「何で俺が逃げる必要があるんだよ」

 まったくもってその意見には同意します。セシリアさんといい凰さんといい何故逃げるなと言うんでしょうか?

「織斑、いつまでくっちゃべっている。出席を取るから黙っていろ」

「は、はい!」

 でもあの凰さんの反応からしてまた一夏さんが好きな人なんでしょう。また障害が一つ増えそうですね。
 私じゃなくて箒さんとセシリアさんの、ですけど。


――――――――――――――――――――――――――――――


 その日の昼休み。すっかりお馴染みの私、箒さん、セシリアさん、一夏さんと今日はもう一人、二組の凰さんも一緒……というより食堂で待ち伏せしていて今日は5人です。
 そして今はそれぞれの昼食を持ってテーブルを囲んでいます。

 箒さんとセシリアさんからは何か気迫に似たような空気がチリチリと。

「で、いつ日本に帰ってきたんだ? おばさん元気か? いつ代表候補生になったんだ?」

「質問ばっかしないでよ。あんたこそ、なんでIS使ってるのよ?」

 そんな二人を尻目に一夏さんと凰さんは会話を進めています。幼馴染というのは本当のようですね。

「一夏、そろそろ説明してほしいのだが!?」

「実は鳳さんと付き合っていた、なんてことはありませんわよね!?」

 流石にじれったくなったのか箒さんとセシリアさんが切り出します。何かまた面倒ごとが始まりそうな予感がします。
 ああ、お茶がおいしい。これはどこの銘柄のお茶なのでしょう?

「べ、べべべ別に付き合ってるってわけじゃ……!」

「そうだぞ? 何でそんな話になるんだ? ただの幼馴染だよ」

「むぅ……」

 ほう、これが玉露ですか。道理でおいしいはずです。

「私の存在を忘れてもらっては困りますわ! 中国代表候補生、凰 鈴音さん!」

「誰?」

「なっ! 私はイギリス代表候補生、セシリア・オルコットでしてよ! まさかご存じないの!?」

「ああ、あんたがそうなんだ。噂は聞いてるわ。英国で開発されたBT兵器っていうのの適性が一番高かった人でしょ? 顔までは知らなかったから。よろしくね。それでさ一夏」

「む、無視しないでいただけます!?」

 うーん、なんというスルースキル。セシリアさんの仁王立ちを軽く流して一夏さんとの会話に戻る鳳さんは流石としか言えません。
 ふむう、玉露と知ってから飲むとまた一段とおいしく感じるのはどうしてなんでしょう?

「あ、あのさぁ……ISの操縦、あたしが見てあげてもいいけど?」

 ああ、このデザートも美味しいです! 紫で四角くてプルプルしています。突ついていると弾きかえってくる弾力が溜まりませんね。なんというのでしょう?

「一夏に教えるのは私の役目だ! 頼まれたのは私だ!」

「あなたは二組でしょう!? 敵の施しは受けませんわ!」

「あたしは一夏と話してんの。関係ない人は引っ込んでてよ」

「関係ならあるぞ!!」

 あ、これが羊羹というのですか。やっぱり資料と実物は違いますね。

「後から割り込んできて、何をおっしゃってますの!?」

「後からじゃないけどね……あたしの方が付き合い長いんだし」

「それを言うなら付き合いは私のほうが早いぞ!」

 なんと! 食後にお茶漬けを食べるのですか?ふむう、日本の食文化とは奥が深いのですね。

「うちでの食事ならあたしも何度もあるけど?」

「い、一夏! どういうことだ!」

「納得のいく説明を要求しますわ!」

「説明も何も……鈴の実家の中華料理屋で飯食ってただけだぞ?」

 お腹がきつくなるかと思いましたけどこれは案外いけますね! 新しい発見です……

「放課後は私とISの訓練をするのだ! 時間など空いていない!」

「そうですわ! クラス対抗戦に向けての特訓が必要不可欠な今、他のクラスの方と接する時間はありませんわよ!」

「じゃあその後でいいや、空けといてね~」

 凰さんはそれだけ言い放つと返事も待たずに空になったトレーを持って去っていきました。
 ふむ、お話は終わったようですね。やはり嵐は黙って引きこもるに限ります。
 今日は新しい食文化に触れることが出来て食事の時間も有意義にすごせました。これでまた一つ勉強になりましたね。

「一夏、当然訓練が優先だぞ!」

「私たちも有意義な時間を使っているのをお忘れなく!」

 一夏さんがお二人の台詞に大きく肩を落としました。おお、今回は私は何もありませんでした。

 今日の一言、『触らぬ神に祟りなし』
 意味、その物事にかかわりをもたなければ、災いを受けることもない。余計な口出しや手出しをしないほうがよい、というたとえ。

 日本には素晴らしい格言があるのですね。これからこの言葉を参考にしま……

「カルラ、一緒に頼む!」
 
 

 
後書き
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