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レーヴァティン

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第二百三十話 飢饉その五

「普通にな」
「軍鶏鍋ですね」
「それでいいですね」
「今宵も」
「楽しみにしている」
 こう言って実際にだった。
 英雄は会津若松城のその中にもうけられた本丸の舎の中で軍鶏鍋を食べた、そしてその鍋を食って言った。
「美味いものだ」
「満足して頂き何よりです」
 鍋を作った料理人が応えた。
「それでは」
「実にな、それで鍋の後だが」
「それについては」
「雑炊にしたい」
 所謂〆はというのだ。
「そうしたい」
「雑炊ですか」
「それを食ってだ」
 そうしてというのだ。
「身体を温めてな」
「休まれますか」
「そうする」
 言いつつ酒も飲んだ、こちらは冷えである。
「是非な、ただ酒だが」
「何でしょうか」
「昨日は熱燗だったが」
「はい、今日はです」
「そのままか」
「冷やしたものに」
「何故昨日は熱燗だった」
 英雄は料理人にこのことを問うた。
「それは」
「お気に召しませんでしたか」
「あれはあれで美味かった」
 熱燗もというのだ。
「だからいいが」
「昨夜は非常に寒く底冷えしていたので」
「熱燗にしたか」
「今日は昨日よりずっとましなので」
 それでというのだ。
「その様にです」
「そのままにしているか」
「左様です」
「そうか、そういえばだ」
 英雄は飲みつつこうも言った。
「俺が起きた世界で泉鏡花という作家がいるが」
「もの書きですか」
「酒は徹底的に沸騰させて飲んでいた」
「そうだったのですか」
「夏でもな」
「それはまた極端ですな」
「湯豆腐が好きだったが」 
 好物はそうであったことが有名だ。
「夏でもだ」
「湯豆腐ですか」
「それはまた」
「かなりですね」
「熱くてもな」
 夏でというのだ。
「兎に角火を通したものをだ」
「食べていましたか」
「それはまた極端かと」
「幾ら何でも」
「その者は」
「実際に極端過ぎてだ」
 それでというのだ。
「評判だった、水もだ」
「それもですか」
「やはり沸かして」
「それから飲んでいましたか」
「それは俺も命じているがな」
 英雄もというのだ。
「そうして殺菌をしてな」
「飲んでいたのですね」
「兎角徹底していますね」
「それはまた」
「だが殺菌になっていてだ」
 そしてというのだ。 
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