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Fate/WizarDragonknight

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闇と闇の激突

「キャスター……」

 フェイカーは首をかきならす。

「君はまた邪魔をしてくるのか……」

 苛立った様子のフェイカーは、キャスターを睨んだ。

「キャスター、どうしてここに?」

 ウィザードも変身を解除しながら尋ねる。
 キャスターは首だけをハルトに向け、さらにその背後の彼女のマスター、ほむらにも目を配った。
 フェイカーの攻撃により、ほむらはすでに変身を解除して倒れている。虫の息ながらも、フェイカーを強く睨んでいる。
 そんな彼女の頬に触れ、キャスターは自動でページをめくる本に手を当てる。

「マスターの反応が途絶えた。気になってきてみれば、案の定というわけだ」
「フェイカーとはもう戦ったのか」

 キャスターは頷く。彼女の本からは緑色の淡い光が溢れ出し、それがほむらを包んでいく。
 すると、ほむらの息使いが安定していった。それに回復の能力があるのかと、ハルトは息を呑んだ。
 やがて傷も癒えたほむらは、そのまま気絶した。
 立ち上がり、フェイカーに向き直ったキャスター。

「私としたことが、出し抜かれてしまった。そのせいでマスターの大切な人を奴に連れ攫われてしまった」
「アンタでも、出し抜かれたりするんだね」
「私も完全無欠の存在ではない。以前はエンジェルにもやられたからな」
「ああ……だからあの時、オーパーツも全部持ってたのか。やっと解決した」
「何よりだ」

 キャスターの本。茶色の皮表紙のそれは、ハルトにとっても見覚えがあるものだった。
 ハルトももう一度ドライバーオンの指輪を使い、出現したウィザードライバーのハンドオーサーを操作する。

「行くよ。キャスター」
「ああ」
『シャバドゥビダッチヘンシーン シャバドゥビダッチヘンシーン』

 ベルトから流れる音声とともに、ハルトは指輪のカバーを被せる。
 同時に、キャスターもまた、本を頭の位置に浮かせた。

「変身!」
「セットアップ」
『フレイム プリーズ』
『standby ready』

 炎と闇の魔法陣。それが、ハルトとキャスターの姿をそれぞれ変えていく。
 それぞれ、黒を基調とした魔法使い。
 ウィザードとキャスターの違いは、それを彩る色合い___この場合、ウィザードの赤___があるかどうか。

「行くよ……キャスター」

 ウィザードは、ソードガンを構えながら言う。
 キャスターは頷きながら、フェイカーへ手のひらを向けた。

「闇へ。落ちろ」

 放たれる、闇の柱。それは、上空へ逃げるフェイカーを追いかけていく。
 それを避けながら、フェイカーはせせら笑う。

「闇が私の前に立ちはだかる……これもまた一興」

 さらにキャスターはその背中から漆黒の背中を生やす。足元に再び魔法陣を浮かべ、その体に飛翔能力を与えた。
 そのまま本を手元に携えて、キャスターはフェイカーを追いかける。

「おい、ちょっと待って!」
『コネクト プリーズ』

 ウィザードを置いて飛んでいくキャスターとフェイカーを追いかけるため、ウィザードは急いでマシンウィンガーを魔法陣から取り出す。
 跨りながら、ウィザードは叫んだ。

「ガルーダ! まだ近くにいる!?」

 ウィザードの声に、レッドガルーダが現れる。
 あまり遠くなくて助かったと思いながら、ウィザードは倒れているほむらを指しながら指示する。

「ガルーダ。ほむらちゃんを看ていてくれ」

 ガルーダは吠えて承諾する。
 ウィザードは頷いて、マシンウィンガーを走らせる。
 周囲がバイクが通れる道ではない都合上、マシンウィンガーでビルの壁を走らせて上昇していく。

「おや?」

 その声はフェイカー。まさかバイクで来ることなど想定していないであろう彼は、マシンウィンガーの車輪に驚き、肩に食らった。

「ぐっ……!」

 フェイカーはバランスを崩し、転がり落ちていく。
 高層ビルの屋上に落下したフェイカーに続いて、ウィザードも着地する。

「へえ……」

 起き上がったフェイカーは、打撃を受けた箇所を掃う。

「やってくれるね……」
「少しくらいは、痛い目を見てもらえたかな?」

 ウィザードはグリップを回しながら仮面の下でほくそ笑む。
 フェイカーはクスリと笑い、飛びのく。
 彼がいなくなったと同時に、その地点は漆黒の光線が撫でていく。

「……ッ!」
「おいおい。人が話している途中に割り込むなよ」

 フェイカーは両手を腰に回しながら、同じく上空にいたままのキャスターへ吐き捨てる。

「ミストルティン」

 銀色の閃光が、フェイカーを狙う。
 だが、それに対してフェイカーは焦ることなく、両手を交差させる。交差した腕より波の形をした黒い波動が飛ばされ、キャスターの技と相殺された。

「チッ……」

 フェイカーは舌打ちをしながら、その場を離れていく。
 キャスターは右手に銀と黒の籠手のような武器を装備し、その後を追いかける。
 黒と蒼の流星となった二人のサーヴァントは、上空でそのまま何度もぶつかり、周囲へ光線を何度も放つ。

「少しは近所迷惑ってものを考えてよ!」
『ディフェンド プリーズ』

 そして、撃ち漏らされたフェイカーとキャスターの攻撃は、マシンウィンガーを駆るウィザードが防御の魔法で防ぐ。
 二人とも光線技を多用するおかげで、マシンウィンガーが右へ左へ。
 時にはエクステンドを使って、腕を延長してまで防壁を張らねばならなかった。
 やがて二人が上空で取っ組み合い、回転しはじめたところで、マシンウィンガーのハンドルをフェイカーへ向けた。

「おや?」

 だが、フェイカーはそれを素早く察知。腕を引き、キャスターの顔をぐいっと近づけた。

「悪いね。美しいお嬢さん。どうやら外野がうるさいようだ」

 そう言ってフェイカーは右手でキャスターの顔を引っ叩き(驚いたことに、キャスターはそれで普通に怯んだ)フェイカーはウィザードへ黒い雷を放つ。

『フレイム シューティングストライク』

 炎の弾丸と相殺される雷。
 爆炎が晴れ、上空のフェイカーは挑発するように手を動かす。

「どうした? これ程度か? ウィザード君」

 ウィザードは唇を噛みながら、バイクのアクセルを入れる。フェイカーの高度へ上昇し、座席に飛び乗った。

「どうかな? じゃあもう一発喰らってみるか!?」

 ウィザードはもう一度シューティングストライクを準備する。
 次は同じものでも威力を増加するため、こっそりと右手に別の指輪を用意した。
 さらに、フェイカーの後ろには、黄色の雷をその手に宿すフェイカーの姿もあった。右手を大きく振り、雷光が三日月のような形を描く。

『ビッグ プリーズ』
「クレッセントセイバー」

 巨大化した炎の魔弾と、三日月型の雷光。それぞれがフェイカーへ向かうが、フェイカーは全く焦る様子がない。

「無駄だよ」

 フェイカーは焦ることなく、紙一重でそれを躱す。体を曲げることで回避したそれらは、それぞれウィザード、キャスターへ向かっていく。
 だが、ウィザードもキャスターも、全く焦っていはいなかった。

『コネクト プリーズ』
「ハッ!」

 ウィザードとキャスターの前に、それぞれを象徴する魔法陣が現れる。空間を捻じ曲げる魔法により、同士討ちを狙った攻撃は、再びフェイカーへ向けられた。

「目障りだ!」

 フェイカーの両手から発せられた雷が、それぞれを打ち消す。
 それにより、二つの魔法は、爆発とともにフェイカーの左右を煙で覆った。

「ウィザード!」
「ああ!」
『フレイム スラッシュストライク』

 キャスターの合図に、ウィザードはソードガンの手のオブジェを開く。
 読み込まれたルビーの指輪により、ウィザーソードガンの刀身に炎が宿った。
 魔力が込められた刃を、フェイカーは身を反らして避ける。
 だが、ウィザーソードガンは、そのままフェイカーの胸元を___丁度十字の形に結ばれたそこに一閃の傷を入れた。

「何っ!」

 流石に痛みを感じたのか、フェイカーが鋭い声を上げる。

「今だ!」

 ウィザードはそのまま、その傷口に手を突っ込む。

「貴様……っ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 さらに、入れた手に力を込める。
 中から出てきた、白い肌色。
 それが腕だと分かったのは、そこから肩、顔の順番で、フェイカーから抜け出てきたから。
 やがて、顔が完全にフェイカーから抜け出る。
桃色の髪の少女。完全に意識がない鹿目まどかは、そのままウィザードの体にのしかかってくる。

「よし……! まどかちゃんは、返してもらったよ!」

 ウィザードはまどかを背負い、マシンウィンガーを飛ばす。
 高層ビルの壁を駆け下りる魔法のバイクは、そのまま背後より狙い来る黒い雷を避けながら、一気に駆け下りる。
 黒い鞭が、ウィザードを追いかけていく。

『ディフェンド』

 ウィザードは即座に魔法を発動し、背中に防壁を張る。万一破られたとしてもまどかが無事になるように、彼女をフェイカーから見て後ろに回す。

「お返しだ!」

 ウィザードはそのままウィザーソードガンを発砲。銀の銃弾たちは、黒い雷を掻い潜り、フェイカーの腕、肩に命中する。
 それにより、フェイカーは攻撃の手を止める。十分に距離を引き離した後、ウィザードは地上に着地した。

「君はなんて邪魔をしてくれる……!」

 フェイカーは自らの首筋を掻きむしる。

「まさかこんなに私の邪魔をしてくるとは思わなかったよ……ッ!」
「! やばい!」

 フェイカーはウィザードを完全に敵とみなした。
 彼の手から放たれる雷は、それまでの弄ぶようなものとは違う。明らかにウィザードの手足を狙い、動けなくなることを目的にしている。
 ウィザードは背負ったまどかに被弾させないためにも、必死にハンドルを切る。
 フェイカーの雷は、マシンウィンガーを狙っていく。黒い雷が、コンクリートジャングルをどんどん破壊していく。

 その時。

「何だ……?」

 その気配に、ウィザードはマシンウィンガーを停める。同時に雷の雨も収まり、周囲は静けさを保っていた。
 そして、見上げる。フェイカーが相変わらず滞空しているが、彼もまた、その異様な気配に動きを止めていた。
 その気配の正体。それは。

「咎人達に、絶滅の炎を」

 キャスター。
 彼女は、両手を前に突き出し、術式を展開していた。やがて、彼女の本もまた、赤く発光するページが開かれる。彼女の足元と頭上に、深紅の魔法陣が生成された。周囲の気温が上昇し、冬の天気を熱くしていく。

「炎よ集え、全てを撃ち抜く炎となれ」
「あれは……あの力は……!?」

 その力に見覚えのあるウィザードは、体がすくんだ。
 ウィザードの口からは、思わずその力の名前が出てきた。

「オーパーツ……ムーの力……ッ!」

 そして。

「貫け。熱線」

 彼女の魔法陣が、猛る恐竜の顔面となる。
 古代の王者の口が開かれるとともに、キャスターは両手を収束させた。

「ジェノサイドブレイザー」

 恐竜の口とキャスターの腕が重なり、あたかも恐竜が熱線を吐いたようにも見える。
 その巨大な炎の柱は、難なくフェイカーを捕らえ、どんどん上昇していく。

「……!」

 やがてキャスターは、その右手をぎゅっと握る。すると、炎はやがてキャスターの位置に集中し、爆発。
 だが、戦いの花火が散ったあとは、そこにフェイカーの姿さえもなかった。

「……仕留めたのか?」

 ウィザードの近くに着陸したキャスター。
 彼女はウィザードの言葉に直接は答えず、フェイカーがいた箇所を睨んでいた。

「手応えがなかった。……逃げたか」
「……」

 ウィザードは変身を解除して、キャスターと同じ個所を見つめ上げる。

「アイツ、まどかちゃんをどうするつもりだったんだろう?」

 ハルトは、背負った、気絶しているまどかを見返しながら呟いた。
 その問に、キャスターが答えるはずもなかった。 
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