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レーヴァティン

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第百九十二話 港を見てその十四

「その情報もな」
「使う」
 戦の時にとだ、耕平は言った。
「そうするな」
「そうだ、そして一度俺達もだ」
「武蔵に行くな」
「江戸の街を観てだ」
「江戸城にも入るな」
「そうする、あの城は実に巨大でだ」
 そしてとだ、英雄は江戸城の話もした。
「見事な天守閣もあるからな」
「思えば旅の時に観た時が懐かしいぜよ」 
 当季が笑ってまだ自分達が旗揚げする前のことを話した。
「あの時に観た天守閣が」
「そうだな、しかしな」
「今度はじゃのう」
「観るだけでなくな」
「中に入って」
「登ってだ」
 そうしてというのだ。
「最上階から周りを観ることもだ」
「するのう」
「具体的にどれだけ観られるかな」
「江戸の街そして周りを」
「そうする」
 こう言うのだった。
「その時はな」
「戦に備えてじゃな」
「天守閣は塔だ」
「高いところから遠くまで観るのう」
「その役目をどれだけ果たすかな」
「それを観るのう」
「その時はな」
「そうじゃのう」
 当季も頷いた。
「人を見下ろす趣味はないが」
「それは俺もだ」
「人を見下ろしてもぜよ」
「それで満足かというとな」
「それで満足するなんぞ器が小さいぜよ」
「そうだな、俺がこの世界で目指しているのはそんなことではない」 
 英雄は何でもないといった口調で答えた。
「それよりもだ」
「大きなことじゃのう」
「この世界を救うことだからな」 
 それ故にというのだ。
「江戸城の天守閣に登るならだ」
「より大きなものを見るんじゃな」
「そうだ、では武蔵にもな」
「行くのう」
「そうする」
 英雄は確かな声で言った。
「これからはな」
「そうじゃな、ではな」
「まずは武蔵を手に入れたことを喜びだ」
「あの国を治めるぜよ」
「そうする」
 こう言ってだった、英雄は手に入れた武蔵の政に早速かかった。彼は戦をせずとも動きを止めてはいなかった。


第百九十二話   完


                  2021・1・1 
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