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レーヴァティン

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第百九十三話 武蔵入りその一

               第百九十三話  武蔵入り
 英雄は大坂城で政務を続けていた、そしてある程度区切りがついたところで周りの者達に対して問うた。
「武蔵に行っていいか」
「はい、あの国に入られて」
「あの国をご覧になられますね」
「そして江戸の町も」
「江戸城もですね」
「そうしたい」
 是非にという言葉だった。
「だからな」
「これよりですね」
「武蔵に行く時をもうけられ」
「そうしてですね」
「あの国をご覧になられますね」
「そうする、そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「東国のことを考えたい」
「どう攻めるか」
「そしてどう治めるか」
「そのことをですね」
「定めたい」
 こう幕臣達に答えた。
「いいな」
「はい、それでは」
「その様にしましょう」
「ではです」
「留守の間はお任せを」
「是非な」
 こう言ってだった、次に武蔵入りの詳しい日を定め。
 そのうえで夜は大奥に入り正室を含めた多くの女達と褥を共にした、そしてその中において彼はこんなことを言った。
「俺は一度に多くの女を抱くこともするが」
「するが?」
「それでもですか」
「何かありますか」
「そこに見張りの様な女を置くことはしない」
 こう言うのだった。
「部屋の中には」
「そうしたことはどうも」
「私達もです」
「褥を共にしない方がおられるなぞ」
「どうも」
「だがそうしたならわしもあったのだ」
 英雄は大奥の話をした。
「国によってはな」
「そうなのですか」
「それは上様がご存知の国ですね」
「私達の知らない」
「そうした国ですね」
「そうだ、何かとならわしがありだ」
 その国のその時代のその場所によってだ、これは長年そこで培われたものであったりするので一概に否定出来ないものがある。
「それが人によってはわずらわしい」
「なくていい」
「そうしたものもありますね」
「それはそうですね」
「確かに」
「そして俺は褥を共にするならだ」
 それならというのだ。
「そこに入れるものはだ」
「共に寝る女だけですか」
「そうですか」
「他の人は入れない」
「そうされますね」
「そうする、そしてどんな日でもだ」
 夜ならというのだ。
「寝る」
「私達とですね」
「そうされますね」
「それが上様のお考えですね」
「そして人の女には手を出さないが」
 このことは徹底している、彼は人の妻や恋人には手を出さない。この世界に来て常に守っていることの一つだ。 
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