もう一人の八神
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新暦79年
異世界旅行 ~カルナージ~
memory:37 模擬戦 その2
-side other-
ヴィヴィオとアインハルトのマッチアップから数分後、ヴィヴィオは地にたたき落とされた。
断空旋によって魔力弾を投げ返され、虚を付かれたところを狙われてしまった。
ライフも一気に三桁まで削られた。
しかしヴィヴィオの顔には歓喜が浮かんでいる。
負の感情は一切なく、やる気に満ち溢れた。
(ヴィヴィオに火がつき始めたみたい)
その様子を見ていたルーテシアは、ヴィヴィオの心情にいち早く気付いた。
しかし、ヴィヴィオのライフは心許なく、前線に戻すことはせずに回復させることを決めた。
『ヴィヴィオ、治療するから一旦戻って』
「ええ――ッ!?」
ルーテシアの言葉に不満の声を上げるヴィヴィオ。
しかしルーテシアの説得を聞き入れて、渋々ルーテシアの場所まで戻っていった。
「アステルシューター、弾幕集中!」
「リオ、来るよ!」
「わかってる! 炎龍!!」
「シュート!」
蒼い流星群と炎の龍が激突する。
炎龍は流星を喰らいながら悠莉へと直進する。
だが、
「爆ぜろ!」
龍が孕んだ流星が爆発し、一帯に爆音を響き渡らせた。
その爆発に怯むリオのスキをつき、蒼い高速砲が向かってくる。
「私を忘れないでください!」
と、砲撃を遮るように巨人が立ち塞がった。
足腰に力を込め、砲撃を左手で受け止めた。
「ちょっ!?」
「叩いて砕け! ゴライアス!!」
巨人の豪腕が振るわれ、砲撃は相殺。
さらにコロナの魔力弾と雷を纏ったリオが悠莉に詰め寄る。
「ヤァァァッ!」
「くっ!」
リオの一撃を無理に防いだためにバランスを崩した。
二人がそれを見逃すわけもなく、
「雷龍!」
「ゴライアス、ロケットパーンチ!」
回避不可能の状態の悠莉に龍と巨人の拳が直撃した。
-side end-
-side ヴィヴィオ-
「ルールー、回復まだ~!?」
「そう慌てない。全快するまで我慢我慢」
むぅ、早くユーリの応援に行きたいのに!
「でも早くしないとユーリのところにアインハルトさんがっ!」
「わかってる。中途半端な状態で行ってもユーの足手まといよ? ……でもさすがのユーもコロナとリオだけならまだしもアインハルトが加わるとなると……ちょっときついかな?」
ルールーと一緒にユーリの映像とアインハルトさんの位置を確認する。
すごい……ユーリ、本当にコロナとリオを同時に相手しながら戦ってる……。それに二人のコンビネーションも悪くないのにほとんどダメージもらってないなんて。
「ユーはまだ大丈夫そうね。これなら……って!?」
「ユーリ!?」
リオの足技でユーリがバランスを崩したと同時にコロナのゴーレムとリオの雷龍が!?
「ちょ、ヴィヴィオ!?」
ルールーを無視してすぐさま通信を繋いでユーリの安否を確認した。
「ユーリ! 大丈夫なの!? ユーリ!!」
『……』
砂煙のせいでユーリの姿が全然見えない!
そう慌てていたら、
「大丈夫よ」
そういってルールーが肩に手を置いた。
「えっ……でも」
「よ~く見てみなさい」
そう言われてモニターを注視すると……あれって!
『ヴィヴィオ、私がそう簡単にやられるとでも?』
今だよう見えないモニターから声が届く。
「ユーリ!」
徐々にモニターに薄らと蒼い膜のようなものが見え始める。
『ウソでしょ!?』
『今の完璧に決まったと思ったのに!?』
向こうのリオとコロナも驚いてる。
『ギリギリだったけどな。あと油断大敵だ』
『『え……キャッ!?』』
「ユー、おしゃべりもいいけどあと三十秒ほどでそっちにアインハルトが到着するわよ」
『ん。そっちもなるべく早くな。一応コロナとリオは捕縛完了した』
「わかってるって♪ ―――青組一同に伝達」
ルールーは青組全員にチャンネルを開いた。
「準備が整い次第例の作戦を開始します。いつでも行けるようにお願いします♪」
『『『『了解ッ!』』』』
伝達を終えて切るとにっこりとルールーが笑った。
「そんなわけだからヴィヴィオは回復に集中ね」
「うん!」
私が今やるべきことは回復に集中して、青組の作戦に備えること!
-side end-
-side 悠莉-
あの様子だとヴィヴィオの復帰も早いか。
とはいえ、まだ回復するまで時間あるし……。
でもまずは、アインハルトだな。
「八神さん、一槍いかせてもらいます!」
「ああ、かかってこい!」
駆けてきたアインハルトはスピードを殺すことなく一気に迫ってくる。
そしてキレのいい打拳を、足技を繰り出してきた。
あの時はニヒルを通してだったけど、こうやって拳を交えると結構一撃一撃が重いな。
センスも悪くないし、愚直に力を求めてたらしいから実力も年のわりに高く、基礎トレでしっかり土台ができてる。
なのはさんが喜びそうな子だな。
だからと言って負ける気は全く無いけどな!
アインハルトの拳を一つ一つ受け止め受け流し、スキを作らせる。
「三散華!」
拳撃と足技のコンビネーション。
風を切る音が聞こえるほどの重さと速さをもった三連撃にもかかわらず、
「これくらいッ!」
「おぉ! 初見でカウンターとか!」
「逃がしません!」
バックステップで一旦離れ、アインハルトを誘い込むと案の定引っ掛かって向かってきた。
一瞬で詰められた……ってフェイント!?
「ヤバ……ッ!」
「覇王―――……ッ!?」
「―――なんてな」
アインハルトよりも速く魔力を込めた掌打を腹部にあてた。
「烈波掌!」
掌打からの爆発によって吹き飛ぶアインハルトを確認し続けざまに追い打ちをかける。
「星屑の破者!」
貫通性の強い高速砲はアインハルトへ一直線に迫り、飲み込んだ。
「っ……」
ふぅ、当たったみたいだな。
ライフも大幅に削れて行動不能。悪いけど残しておいたら厄介そうだから、ここで退場してもらうか!
「アステ……ルぅ!?」
『アインハルト、よくやったわ!』
背後を弾丸で狙われ、中断させられた。
ティアナさんか!
『これが赤組勝利の篝火!』
突如空を埋め尽くさんばかりのオレンジの弾幕が広がり、各地へと降り注いだ。
それと同時に目の前のアインハルトの足元に魔方陣が現れた。
「転移魔法!? まさか!」
空からの弾幕を避けながらハッと振り返ると案の定誰もいない。
「あーあ、リオとコロナも回収された」
『そんなユーにうれしいお知らせです』
ティアナさんの支援弾も止んで、出し抜かれ、溜め息を吐いていると通信が開かれた。
どうやら私だけではなく、全青組メンバーにもいってるようだ。
『均衡が崩れ、ヴィヴィオの回復もすみました。少し早いですが、作戦発動しますッ!』
「「「「了解ッ!」」」」
その号令に従って行動を開始する。
目指すは赤組の後衛!
ルーの通信終了後、青組全員が行動を開始する。
スバルさんを振り切り、青組後衛に向かっていたノーヴェさんだったが、突如現れたヴィヴィオの奇襲に遭う。
更にヴィヴィオの奇襲によって足を止めたことでスバルさんに追いつかれ、挟まれた。
エリオと戦っていたフェイトさんにピンクの砲撃が放たれた。
難なくそれを避けるがエリオの後ろにはなのはさんの姿があった。
召喚魔法によって回収したアインハルト、リオ、コロナを回復させているキャロの元には私とルーテシア。
「2on1―――!」
「ルー! あたしとコロナを無視するとはいい度胸じゃないのッ?」
焦るコロナとティアナさんは声を上げる。
それに対し、ルーは不敵に笑った。
「度胸じゃなくて知性の勝負♪」
ヴィヴィオとスバルさんの格闘型コンビがノーヴェさん、元六課の教官&教え子コンビのなのはさんとエリオがフェイトさんにあたり、戦闘を開始している。
「そしてわたしとユーは中距離からキャロを潰す!」
「これ以上キャロに回復・支援をさせるわけにはいかないからな。リオたちが復帰する前に速攻で全員退場してもらう!」
ルーはタガーを展開し、私は鞘から刀を抜き、正眼に構える。
それを見たリオとアインハルトさらに焦りだすが、キャロは不敵に笑みを浮かべる。
「アインハルト、リオちゃん、防護バリアで守るから、そこでじっとしててね!」
「ですが……」「だけど……」
この状況が自分たちにとって不利、そんなことは一目同然にもかかわらずキャロがどうして諦めていないのか、そう思う二人。
しかし、
「赤組メンバーも、わたしも、そう簡単に落ちたりしないよ! そうだよね、コロナ!」
「そのとおりですっ!」
私のバインドを解除したコロナが再びゴライアスを創り出し、キャロの声に答えた。
「ユー、やるよ!」
「あいよ!」
地を蹴り、キャロへ斬りかかる。
「アルケミック・チェーン!」
「よっと。相変わらず器用に操るな、それ」
「だけど二人を回復させながらじゃそれが限界みたいね」
鋼鉄の鎖を避けて一度体勢を整える。
「鎖で刀が止められるだろうから、これはどう? ―――覇道滅封!」
「ゴライアス!」
「させないわよ!」
「コロナ!? くぅっ!」
衝撃波を防いだキャロだが、コロナはルーのタガーによって行動不能の一歩出前に陥った。
「これで墜ちないとか……」
「当たり、前っ! 向こうでもエリオくんと前線で頑張ってるんだから!」
再び鎖を操るキャロ。
だが今度のは私だけではなくルーにまで伸ばした。
「うっふふー♪ 当たらない!」
二人して回避に専念していたとき、なのはさんからの念話が届いた。
『青組各員! 作戦通達! 防戦しながら、戦闘箇所をなるべく中央に集めてください』
それを聞いてハッと気付く。
ティアナさんが姿を眩ましてる? ……試合開始から10分くらい経ってる。
それくらいに経ってるなら……うん、やっぱり魔力散布が充分されている。
ということは今の念話はティアナさんの目論見に対抗するためのもの! ティアナさんがやろうとしてるのは……ッ!
次のなのはさんの言葉で仮定は確信になった。
『 集束砲で一網打尽にします!』
-side end-
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