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もう一人の八神

作者:リリック
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新暦79年
異世界旅行 ~カルナージ~
  memory:38 模擬戦 その3

 
前書き
お願いがあります。

なろうの頃に書いていた「世界に落ちた者(原作:魔法先生ネギま)」のテキストデータを持っていないでしょうか?

数か月前にPCのデータが飛んでしまい、バックアップがなくなってしまったのです。

あるよ、という方がおられましたらどこかにアップしてもらえないでしょうか。

もし、アップしていただけるのなら感想やメッセージでURLを送ってください。

よろしくお願いします。 

 
-side other-

ルーテシアは飛行し、悠莉はウィングロードやエアライナーを飛び回りながらキャロが召喚、使役する大量の鎖を避ける。

「ほらほらぜんぜん当たってないわよ」

ルーテシアの言う通り、狙いが甘いせいか、二人を捕らえられずにいる。
心なしか、悠莉を狙う鎖が多いように感じる。

「しつこい! って、うわっ!?」

「え? キャッ!?」

キャロの鎖を避けようとした二人だったが接触してしまい、そのせいで脚が止まってしまった。

「げっ!?」

「これって……ヤバくない?」

鎖に全方位のほとんどを囲まれ、二人は意図的に一ヶ所に集められていた。

「気付いたんだね。さっきまでのは当てるためじゃなくて―――、撃墜のための布石だから!」

悠莉とルーテシアの背筋に嫌な予感が走った。
改めて周囲に目を向けると放置していたコロナといつの間にか回復を終えたリオがいた。

その二人がこんな好機を逃すわけもなく、

「行きます! リオ、合わせて! ゴライアス!」

「リョーカイ! ハアアアッ! 紅蓮拳!!」

コロナからは巨人のロケットパンチ、リオからは炎熱砲撃。
このままではルーテシア共々撃墜コース一直線と直感した悠莉。

「(……あんまり燃費よくない上に未完成だから使いたくなかったけど仕方ない!)ルー! 二つまとめて対処するからブーストお願い!」

「何をする気かはわからないけどわかった!」

ルーテシアは瞬時にブーストをかけると、悠莉は紫色の魔力に包まれた。

「OSS起動!」

悠莉が高らかに宣言する。
五つの球体が現れ悠莉を中心に旋回する。

悠莉が起動したOSS、正式にはOrrery's(オーレリーズ) Solar(ソーラー) System(システム)
モチーフは太陽系儀であり、完成形ならば六つのビットのはずなのだが、未完成なので仕方ない。

「ユー、それはいったい……」

「簡単に言うと発動する魔法をビットの数分増やすやつ。攻撃力を上げることを念頭に開発したオリジナルで未完成な切り札」

答えながら魔力を集束する。

「だけど未完成とはいえその性能は十分! プリンシパル・スター!!」

短時間の魔力集束のためにルーテシアによるブーストがあっても普段の五割も満たない出力の砲撃がそれぞれの方向に五つ放たれる。

悠莉が直接放つものと球体一つから放出される計二本のプリンシパル・スターとリオの炎熱砲撃がぶつかり合う。

「ぐぅぅぅっ!」

砲撃による力比べが始まり、リオが歯を食いしばる声をあげる。

威力は互角のようで拮抗しているように見えるが、蒼が炎を飲み込み始め、徐々に圧されている。

「飲み込めええええええ!!」



一方、別角度から螺旋回転しながら迫りくるロケットパンチを残りのビット四つから放たれる砲撃が対処していた。

リオの砲撃と同様に正面からのぶつかり合い、ではなく、二本が正面から、残りは角度をつけて。

理由は簡単で、圧し勝てないのなら軌道を逸らし、直撃しなければいいというわけだ。

ところで扇風機の止め方を知っているだろうか。
決して電源を切るや壊すという意味ではない。
扇風機の止め方、それはすなわち中心を押さえること。
正確に、一寸の狂いもなく回転する中心を押さえることで回転数は減少し、忽ち止まる。

それを利用して螺旋回転するロケットパンチの回転数と勢いを減らし、横から加える力で軌道を逸らした。

「うそっ!?」

「よそ見は厳禁よ」

「コロナさん!」

いち早くルーテシアの行動に気づいたアインハルトが叫んだが、間に合わず、驚くコロナはあっさりと捕まってしまった。

「コロナ捕獲完了♪ これでおわりね」

「そんなことないよ! まだ私が!」

「ううん、これで終わり」

「それっていったい―――へぅっ!?」

ルーテシアに注意がいっているキャロの後頭部に桜色の魔力弾がクリーンヒットし、ライフを0まで一気に削り取った。

「油断大敵だよキャロ」

「なのはさん、助かりました」

ルーテシアのお礼にうなずく。
しかし、つい先ほどまでいた悠莉の姿がなくなっていた。

「(悠莉くんの姿がなくなってるということは誰かの応援に行ったんだね)」

そう予測し、次の行動に移る。

「(ルーテシアや悠莉くんのお陰で均衡が崩れた。タイミングは今!)ブラスター1ッッ!」

なのはの周囲に七機のビットが現れる。

残りの魔力量が心配な状態と判断しつつも集束を開始した。

「(なのはさんが集束に入った!)」

その子を確認したティアナはなのは同様にクロスミラージュに魔力を集束させる。

集束する二人の魔力量は次第に増え、レイジングハートとクロスミラージュの前に巨大な桜色とオレンジ色の魔力の塊がさらに膨らむ。

『赤組生存者一同ッ!! なのはさんを中心に広域砲を撃ち込みます! コロナはそのまま!動ける人は合図で離脱をッ!』

分割多弾砲(マルチレイド)で敵残存戦力を殲滅、ティアナの集束砲を相殺しますッ!』

二つの魔力の塊は限界まで肥大し、その時が来た。

―――モード・マルチレイド

―――シフト・ファントムストライク

「「スターライトー! ブレイカーーーッッ!!」」

桜色とオレンジのブレイカーがフィールドの中心で激突する。

フィールドの中心から激突の余波である魔力の放流がレイヤー建築物を飲み込んだ。

建築物の半壊は当たり前、中には倒壊や全壊と、完全に原型を留めていないものも目にはいる。
それに加え、地上には亀裂が入り、それは中心地に近づくほど酷くなっている。



「……これなんて最終戦争?」

「まー、集束砲同士が激突すればねえー」

なのはとティアナから放たれたスターライトブレイカーの激突によって作られたフィールド有り様にセインは表情を引きつらせる。

「悠莉たちはどうなったのでしょう……」

メガーヌが苦笑しながらパネルを叩き撃墜者及び行動不能者を確認する。

「まずはエリオ君とフェイトちゃんは……二人とも撃墜されてるわ」

「でもでもエリオは頑張ったじゃん。スターライトブレイカー直撃前にフェイトさん落としてる!」

二人の言うように、エリオはSLB-PS直撃により、ライフは0で撃墜されながらも着弾直前に一撃与えフェイトを自身の手で撃墜していた。

「コロナは何とか防いだみたいですが……これ以上は無理そうですね」

ゴライアスで防御し、ライフ30で持ちこたえたが完全には防ぎきれずに戦闘不能となっていた。

『あーーん、や~ら~れ~たぁ~!』

『ギリギリ持ちこたえれるって思ったのにーーーっ!』

悔しそうな声を上げるなのはとルーテシア。
なのははSLBーPSを相殺しきれず、ルーテシアは防御するも耐えきれずに共にライフは0となり撃墜。

「あらあら、ルーテシアとなのはちゃんは撃墜されちゃったみたいね」

「あと撃墜されたのは、スバルとノーヴェですね」

「ということは」



「な……なんとか生き残った……」

ついさきほとまで無傷だったが、息を切らし、ぼろぼろのティアナ。
残りライフは300、SLBーMRをギリギリで相殺していた。

ティアナはすぐさまモニターを開き、生存者を確認する。

「残ってるのはあたしと……三人?」

生存者を示す赤と青のマークが二つずつ映し出される。
そのうちの一つ、赤のマークがスピードを上げ接近している。

「近づいてくる…!! この速度、まさかスバル!?」

「じゃなくてヴィヴィオですっ!!」

接近する赤いマークの正体はヴィヴィオだった。
しかも、そのライフは1600とまだまだ元気な数値だ。

「うそおっ! なんでほぼ無傷ッ!?」

ティアナが驚愕する。

ヴィヴィオがSLBーPSを受けてもなお、これほどのライフを残せている理由……それはスバルにあった。

己を犠牲にヴィヴィオをSLBーPSから無傷の状態で護ったのだ。

そしてSLBーPS着弾後、ヴィヴィオは撃墜寸前のノーヴェを墜としてここへ向かって来たのだった。
ティアナはヴィヴィオを迎い撃つ。
しかし高い機動力を発揮するヴィヴィオには魔力弾は一向に当たらない。

「ティアナさん、行きますッ!!」

「来なくていいけど…ッ!!」

距離を詰めてくるヴィヴィオと焦りるティアナ。

だが、その間に割って入る一つの影があった。

「覇王―――」

目に入ったのは碧銀の髪の女性。拳を握りヴィヴィオに狙いを定めて

「空」

一気に

「破」

撃ち抜く

「やらせない!」

「だ―――ッ!?」

ことはできなかった。

声が響いた直後、爆発が起こった。
が、それには威力はなく、爆風のみだった。

その爆風に乗ったヴィヴィオはアインハルトから距離を取り、一撃をもらわずにすんだ。

そしてそれを皮切りに魔力弾が降り注ぐ。

「蒼い爆撃魔力弾……まさかユーリ!?」

それが正解だといわんばかりにティアナにも幾つかのアステルシューターが向かう。

「ありがとユーリ!」

「どういたしまして」

アステルシューターによって舞った砂煙が風に吹き流される。

「ティアナさんだけなんとかは墜としたかったんだけど……ぜんぜん削れてないとか……」

「うん。でもアインハルトさんは」

着弾することなくアステルシューターを全て撃ち落としたティアナ。
しかしアインハルトの方はそうはいかず、被弾して1550までライフを削られた。

「とはいえライフも魔力もちょっと心許ないしな」

悠莉のライフは残り200。

二つのスターライトブレイカーによる余波などの影響を受けないよう空へ跳ぶのだが、運悪く飲み込まれていた。
しかし、ライフを大幅に削れながらもどうにかこうにか影響範囲外へ避難した結果がこれである。

「アインハルト、ユーリは前衛で出てくるだろうから、そこを叩くわよ」

「……ですが、八神さんのライフは一発当たれば終わってしまうんですよ? 射撃や砲撃ができますし、ヴィヴィオさんのサポートなのでは?」

アインハルトのそれに首を横に振る。

「向こうの狙いは恐らく私。私を倒すまでヴィヴィオはむしろサポートよ。こちらの攻撃を一つも受けないという自信と
それにユーリにはヴィヴィオにない一撃必殺の隠し玉を持ってる」

「それ、とは……」

ティアナがその先を言おうとした時だった。
ティアナが懸念するそれが悠莉の口から紡がれた。

「―――抜刀!!」

「ッ! ……ユーリの集束斬撃(ブレイカー)よ」

二人の視線の先では悠莉のデバイスが周囲の魔力を糧にしながら蒼い光を纏い始めていた。

「ヴィヴィオ!」

「オッケー!」

集束が完了したのと同時に走り出す悠莉とヴィヴィオ。

ティアナの予想通り、狙いを自分に定めている。

「アステルシューター!」

スフィアを一つ作り出され、それがティアナとアインハルトに迫る。

牽制、そう思ったアインハルトは回避を取り、攻めに転じようとした瞬間、アステルシューターが突如爆発した。

「ッ! 目眩まし!?」

爆発で巻き上げられた砂ぼこりで一瞬視界が奪われる。

「はぁぁあああああッ!!」

後方から聞こえる聞き慣れた叫び声。
ハッと振り向き、まず金色の髪が目に入り、突きだされる右拳を認知する。
それをなんとか受け止め、一旦距離を取った。

砂ぼこりが消え、視界が戻ってくる。
そして、アインハルトはすぐさまあることに気付いた。

「ティアナさんが……それに八神さんもいない?」

そう警戒していると

―――ドゴォォォオオオン!!

半壊した建築物が完全に倒壊した。



アステルシューターの目眩ましの直後、二つの人影があの場から離脱していた。

「なんだ、考えてることは一緒だったのか」

「この終盤にアンタを残してると、厄介なのよ!」

「それは、お互い、様、です!」

弾幕を張るティアナと、それを避けながらも徐々に距離を詰める悠莉。
かすりさえすれば、即終わりの悠莉は慎重かつ大胆に前へ前へと進んでいく。

「いただき!」

「しまっ……!?」

一瞬のスキをつき、刀を薙ぐ。
それは確実にティアナに届き、決着が着いた……はずだった。

「なっ……これは……!」

悠莉の目の前のティアナだったものはまた、瞬く間に消えてしまった。

「フェイク、シルエット……ッ!?」

刹那、今度はオレンジの弾幕が全方位から悠莉を埋め尽くそうとする。

「(マズッ!? 回避も防御も無理! だったら……)」

悠莉は覚悟を決め、

「ハァ……ハァ……ッ、これで終わってくれれば……」

悠莉にスキを作らせるために払った対価は大きく、残り魔力は底を尽きかけていたティアナは淡い希望を抱いた。

そして、悠莉の撃墜を確認するべくこの場に留まる。

「死なば諸共だ!! 烈空、一文字!!」

悠莉の刀に集束されていた魔力が解き放たれた。
それは巨大な弧月状の斬撃で、ティアナの視界を埋め尽くした。

それと同じくして悠莉も魔力弾を受け、二人のライフは0となった。



「そんなわけで残りは私とアインハルトさんお二人だけっていうことです」

「ええ。行きますよ、ヴィヴィオさん」

赤組青組共に生存者の一人となったヴィヴィオとアインハルトの最後の戦いが始まった。

先制を取ったのはアインハルト。
突き出す右拳を防がれながらも拳を振るう。
しかし、ヴィヴィオはそれらを防ぎ、避け、逸らす。

互いに動きを止めることなく、一層激しさを増す。

戦いを通してアインハルトはヴィヴィオを思う。

戦いにおいての学習能力。
早く精密な動き。
恐れることなく前へと出る勇気。

「(それらが重なる、ヴィヴィオさんのファイトスタイルは……!)」

アインハルトは素早く右拳を撃つ。
しかし、ヴィヴィオはそれを体を傾け避けた。

「(カウンターヒッター!)」

そして、ヴィヴぉおは左拳でアインハルトの顔を打ち抜いた。

「(ここっ!)一閃必中―――!」

バランスを崩され、ぐらりと揺れるアインハルトに勝機を見出し、沈めるべく最高の一撃を放つ。

「アクセルスマッシュ!!」

魔力のこもった右拳昇打がアインハルトの顎を打ち抜いた。

「(よしっ、これで―――)」

完璧に極まり、少し気が緩んでしまった、そんな時だった。

倒れるアインハルトから鋭い蹴りが放たれた。

「(あ―――)」

それは完全なヴィヴィオの油断。
避けるなり防ぐなり出来ていたであろう一撃受けてしまった。

そして二人のライフは0になり、地面へと倒れこんだ。

『試合終了~~~!』

その直後、メガーヌから模擬戦終了のアナウンスがフィールド全体にアナウンスされた。

-side end- 
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