もう一人の八神
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新暦79年
異世界旅行 ~カルナージ~
memory:36 模擬戦 その1
-side 悠莉-
赤組
フロントアタッカー:ノーヴェ、アインハルト
ガードウィング:フェイト、リオ
センターガード:ティアナ
ウィングバック:コロナ
フルバック:キャロ
青組
フロントアタッカー:スバル、ヴィヴィオ
ガードウィング:エリオ、悠莉
センターガード:なのは
フルバック:ルーテシア
夕げの際に模擬戦のチームが発表された。
チーム表を見てみんなやる気十分で、特に子供組のテンションが高かった。
そして現在は夜が明けた早朝。
数時間後の模擬戦の準備をしている。
「よっ! はっ! そい!」
そんな呼吸と共にインパクト音が響く。
「おー、相変わらずキレイに防いでいい感じにカウンターする」
「そ、そうかな?」
照れた様子で言葉を返すのは、相手をしてもらっているヴィヴィオ。
「ああ。しっかり攻撃が見えてるみたいだし、体も反応して着いてきている」
タイミングをずらし、拳速を上げて右拳を打つ。
「わわっ!」
驚きながらも捌ききる。
「お見事」
「ユーリ! いきなりヒドイよ!」
「ヒドイ言ってるけどちゃんと対処できてるじゃん」
「それはそーだけど……」
「ごめんごめん」
「ヴィヴィオさん、八神さん」
不意に名前を呼ばれで振り向くと、そこにはアインハルトがいた。
「アインハルトさん!」
「おはよう、アインハルト。アインハルトも模擬戦に向けて?」
「はい。お二人はいったい何を?」
「スパーリングです! アインハルトさんもやりませか?」
「スパーリング、ですか?」
「軽くだけどね。どう?」
きりのいいところで止めて、アインハルトに持ちかける。
「いえ、ここに来たのは朝食の準備ができたことを知らせるためですので」
そう言われて時間を確認すると、予定していた時間を過ぎていた。
「もうこんな時間!?」
「ちょっと熱中しすぎたか。アインハルト、ありがとね」
「い、いえ」
練習を切上げ、ロッジへと戻った。
-side end-
-side other-
朝食を取り終えてしばらく、模擬戦参加者の面々はルーテシアが手掛けたレイヤー建造物の中心にいた。
「全員揃ったね」
「じゃ、試合プロデューサーのノーヴェさんから!」
「あ、あたしですか?」
フェイトの振りに驚きながら前に出てルール説明、再確認を始める。
赤組七人、青組六人の変則マッチ。
それぞれのポジションに設定されるライフポイントは、DSAA公式試合で用いられるタグで管理する。
それぞれの初期ライフポイントは、
フロントアタッカーは3000。
ガードウィングは2800。
センターガードは2500。
ウィングバックは2500。
フルバックは2200。
「あとは皆さん怪我のないよう正々堂々頑張りましょう」
その言葉を皮切りに赤組青組はそれぞれ円陣を組んだ。
「じゃあ赤組、元気に行くよ!」
「青組もせーの!」
『セーット! アーップ!』
それぞれバリアジャケット、武装形態を展開した。
「へぇー、それが昨日言ってた大人モードか」
「へっへーん。どう、悠兄ぃ?」
いつものように中華風のバリアジャケットに身を包む成長した姿のリオ。
髪は腰あたりまで伸び、背丈も伸びている。
とはいえその顔にはまだあどけなさが残っている。
その姿は良くも悪くも中学生だった。
「私やライと同じくらいの設定なのか? 数年後が楽しみだ」
「悠兄ぃなんかおとーさんみたいだよ」
苦笑いのリオ。
けれども悠莉に褒められて顔を綻ばせた。
-side end-
-side 悠莉-
場所は変わって青組陣営内。
そこで私たち青組は作戦を確認していた。
「ルールー、向こうって一人多いでしょ? 二人を同時に相手することになったらどうするの?」
「それのことなら心配ないわ。多分だけどユーに集まるだろうから」
そう言ってこっちを見るルー。
「向こうが最も警戒してるのはオールランウドで何をしでかすかわからないユーだろうし」
そして各個人が当たるであろう名前をそれぞれあげていく。
「という感じかな。一応なのはさんと話し合った結果なんだけど」
ヴィヴィオも納得したようでこれ以上は聞かなかった。
「ほかに聞いておきたいことはあるかな?」
最後になのはさんが確認するが私も含め誰も特に無いようだ った。
「序盤は同ポジション同士での戦闘。戦況が傾き次第、朝伝えた作戦を決行するから。ユーには負担をかけるけど何とか持ちこたえて」
「了解」
確認も終わり、少しするとモニターが現れメガーヌさんと銅鑼の前に立つガリューを映し出した。
「みんな準備はいいかしら? カウントダウンを始めますよ~」
モニターの端に表示されたタイマーは三十秒を切っていた。
「二十秒前」
大人組も子ども組も胸を高鳴らせ、
「十秒前」
今か今かと始まりを待ち望む。
「五秒前!」
そして、
「三! 二! 一!」
それは、
「試合開始~!」
メガーヌさんと銅鑼の音によっと火ぶたを切って落とされた。
「ウィングロード!」
開始の合図と同時に全員が行動を開始する。
スバルさんがウィングロードを張り巡らす。
その道を使いながら私とヴィヴィオは敵陣へと駆け出す。
「ユーリ、頑張ろっ!」
「ああ!」
しばらく駆けていると、ウィングロードとノーヴェさんのエアライナーが混じりあっていた。
「そろそろか。ヴィヴィオ、そんじゃアインハルトの相手よろしく」
「うん、任せて!」
駆けるスピードを一つあげる。
さらに一つと徐々にトップスピードへと持っていく。
回りの景色が変わっていき、建物の密集地に差し掛かったその時だった。
「っ!?」
四方八方から複数の魔力弾が視界に入る。
電気に炎と通常魔力弾に岩。
数にして二十弱、それらが襲いかかってきた。
「なんの、これくらい!」
誘導弾のみを斬り裂き、その他は刀で逸らすなど、奇襲に対応した。
「やっぱりこれくらいじゃダメみたい……」
「さすが、悠兄ぃだね」
「でも……」
声がする方に顔を向けると、
「うーわっ、予想してたとはいえ……」
試合前にルーやなのはさんから聞いた通り、私の目の前には二人の少女。
「悠兄ぃ! 覚悟してよね!」
「今年こそユーリさんを撃墜します!」
そう言って二人から再び魔法が放たれる。
「やっぱしリオとコロナか……」
建築物を利用しながら回避する。
弾幕を見る限り牽制、というよりはどこかに誘い込もうとしているように感じる。
「とはいえ二人同時はちとキツイか?」
リオは特に問題ないとなると……コロナか。確かにこんな建物の屋上じゃコロナのゴーレムが十分に機能しない。……面白そうだし、その誘いに乗るか。
-side end-
-side イクスヴェリア-
フィールドで戦うみんなの様子を確認出来るモニターで観戦している。
きれいに同じポジション同士の戦闘が行われており、ヴィヴィオとアインハルト、スバルとノーヴェ、エリオとフェイトさんの1on1を行ってる。
悠莉はというとリオとコロナを相手に2on1。
『ソニックシューター、ファイアッ!』
『覇王流、旋衝破』
そして今観ているものはヴィヴィオとアインハルトのマッチアップで、これを隣にいるメガーヌさんとセインが驚きの声を上げた。
「今の何!? 弾丸反射?」
「おそらく受け止めて投げ返したのね」
理論上は可能ですが……アインハルトはこれまでツラい訓練をしていたしていたのでしょう。とはいえあの技術は悠莉でも……ないですね。
「それよりも」
ヴィヴィオとアインハルトの映像から悠莉たちの映像へと切り替える。
「う、うわぁ……」
映像を見た瞬間そんな言葉がまず出てきてしまいました。
「ゆ、ユーリってば……かなりはっちゃけてる?」
「みたい、ですね。ずいぶんと楽しそうな笑顔してますし」
セインが若干引き気味になるのは仕方なく、モニターに映る悠莉は嬉々として二人が張った倍以上の弾幕を張り、それらを容赦なくリオとコロナに向けていた。
その二人から聞こえるのは悲鳴で、いまだ直撃はしていないものの少しずつライフは削られている。
「二対一だからもしかしたらーって思ってたけど……そんなことなかったね」
「フルバックの二人も支援のセッティングがそろそろ済む頃だし、アタッカー達のバランスも崩れ始めるここからが見物よ」
-side end-
-side 悠莉-
「し、死ぬかと思った……」
肩で息をし、軽く汗を拭うリオ。
アステルシューターや高速砲撃などで構成された、そこそこ密度の濃い弾幕で襲いかかって来る魔法を相殺しただけなのに。
「(……ユーリさん、もしかして私たちがここに誘きだそうとしてたことわかってたのかな……?)」
コロナはコロナで呼吸を整えながら何かを呟いている。
「鬼ごっこはもう終わり? リオ、コロナ?」
そうは言いながらも弾幕の中に潜ませていたサーチャーで周囲の状況を確認し、警戒する。
結構敵陣の奥に引き出されたみたい。周囲の魔力反応は……ん? これは…キャロか。少し離れたところにいるとはいえ、リオとコロナの相手をしながら気をつけておかないと。
「でも、こちらとしても好都合か……」
二人を完全に無効化すればだけど……。
「コロナ!」
「うん! 創成起動――――!」
「双龍円舞ッ!!」
目の前に立ちはだかるように現れたのは炎龍と雷龍、そして巨大なゴーレム。
なんというか壮観かな。リオとコロナが作り出した双龍とゴーレムがこうやって並び立つと。でも、だからといって負ける気はしないけどね。
「悠兄ぃ!」「ユーリさん!」
「準備できたみたいだね」
再びリオとコロナに目を向ける。
準備万端といった様子で、二人とも楽しそうに笑みを浮べている。
かくいう私も同じような笑みを浮かべている。
「「正々堂々!」」
「試合開始!」
-side end-
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