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大阪のコロボックル

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第四章

「彼女いないですから」
「男の人も着られるわよ」
「そうなんですか」
「だから買ったら?」
 こう言って購入を勧めるのだった。
「そうしたら?」
「僕が着るんですか」
「お父さんへのプレゼントとかね」
「親父に、ですか」
「そうしたらどう?」
「考えさせてもらいます、ただ」
 ここでだ、山縣は。
 アイヌの人形達、そのアットゥシを着ている彼等を見てそのうえで美里に対してこんなことを言った。
「この人形はです」
「欲しいのね」
「そう思いました」
 実際にというのだ。
「これは」
「それがお土産だと一番売れるのよ」
 美里もその人形達を見て話す。
「毎年ね」
「そうですか」
「だから沢山用意して」
 そうしてというのだ。
「次から次に出してるの」
「可愛いですからね」
「そう、沖縄フェスタの時もね」
 この時もというのだ。
「琉装の服のお人形がね」
「一番売れますか」
「日本ハムのマスコットのぬいぐるみよりもね」 
「あの熊の」
「それよりも売れるの」
「あのマスコットより前のマスコットの方が」
 山縣はこう美里に返した、尚二人共野球は地元阪神である。
「いいって言われてますね」
「ファイティーの方がよね」
「何か出て来た時不評で」
「それで変な仇名も付いたのよね」
「そんなので」
 それでというのだ。
「今もどうかってなってますね」
「そのマスコットのぬいぐるみよりもね」
「売れていますか」
「お土産では一番人気よ」
「じゃあ切れたらですね」
「すぐに出してね」
「わかりました」
 山縣は美里の言葉に頷いた、そしてだった。
 人形達に異常がないかチェックしているとだ、すると。
 人形の一つがピクリと動いた気がした、山縣はこのことにまさかと思って一旦目を閉じてそれからだった。
 瞼に指を置いて目を休めてそれからこすってもう一度見ようとするとそこにはその人形はいなかった。それで。
 山縣は美里に言った。
「あの、人形が動いたと思ってもう一度見たら」
「ああ、いなくなってたのね」
「そうなったんですが」
「それコロボックルよ」
 すぐにだ、美里は答えた。
「紛れ込んでいたのよ」
「コロボックルって」
「知ってるわよね」
「北海道の妖怪、いや」
 すぐにだ、山縣は言った。
「妖精ですか」
「小人よね」
「そうですよね」
「実は毎年見たって人がいるのよ」
「このフェスタの時は」
「そうなの」
 美里は山縣にあっさりとした口調で答えた。 
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