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大阪のコロボックル

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第五章

「二年前私も見たわ」
「先輩もですか」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「別に驚くことはないわよ」
「妖精がいてもですか」
「悪いことしないから」
 特にというのだ。
「心配しなくていいわよ」
「そうなんですね」
「というか妖怪とか妖精って珍しくないでしょ」
 これといってとだ、美里は山縣にこれまたあっさりとした口調で答えた。
「そうでしょ」
「いや、妖怪とかは」
「あれっ、大学にいなかったかしら」
「僕大学市立大ですから」
 大阪市立大学だというのだ、山縣はこの大学出身なのだ。
「ですから」
「ああ、そういえば君八条大学じゃないわね」
「先輩は八条大学でしたね」
「中学からでね、あそこは妖怪とか幽霊のお話多いから」
 それでというのだ。
「別に珍しいと思ってないの」
「そうだったんですか」
「けれど市立大だとね」
「そうしたお話ないですから」
 八条大学と違ってというのだ。
「コロボックルもです」
「驚いたのね」
「はい、いるんですね実際に」
「いるわよ、妖怪もね」
「そうですか、ただ」
「北海道の妖怪がどうして大阪にいるか」
「それが不思議ですけれど」
「だって北海道のフェスタしてるわね」 
 美里の口調はあっさりとしたままだった。
「だったらね」
「それで、ですか」
「そう、だからね」
 大阪に北海道の妖怪がいてもというのだ。
「このこともね」
「不思議じゃないですか」
「そう、これといってね」
 特にというのだ。
「不思議に思うことはないわよ」
「そうなんですね」
「それとね」
「それと?」
「コロボックルは守り神と思ってね」
 山縣にこうも言った。
「このフェスタの」
「守り神ですか」
「そうよ」
 そうした存在だというのだ。
「だからね」
「安心していいですか」
「コロボックルは悪い存在じゃないから」
「そうした妖怪ですか」
「妖怪といっても色々でね」
 美里は山縣に自分が学生時代に知ったことを話した。
「悪い妖怪も確かにいるけれど」
「いい妖怪もですか」
「いてね」
 それでというのだ。
「コロボックルはそうした妖怪だから」
「安心していいですか」
「そうよ、むしろね」
「守り神ですか」
「そう思ってね」
 そうしてというのだ。
「お仕事していくといいわ」
「そうなんですね」
「このフェスタを見守ってくれているのよ」
「北海道からわざわざ来てくれて」
「いや、何かね」
 美里は山縣の今の言葉にこう返した。 
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