もう二度と
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第二章
「思ってるよ」
「それは厳しくないかい?」
「幾ら何でも生牡蠣を百個は」
「それは厳しいだろう」
「いや、やってみる」
強い決意を以てだ、クライストは言い切った。
「僕の体格だと出来る筈だしな」
「君はむしろビスマルクより大きいしな」
「二メートルあるからな」
「確かにその体格だといけるかも知れない」
「それでだ」
クライストはさらに言った。
「やってみようと思う」
「本気かい?」
「本当に生牡蠣を百個食べるのかい?」
「そうするのかい?」
「もう行く店も決めてある」
既にというのだ。
「後はだ」
「それならか」
「これからか」
「その店で生牡蠣を食べてくるのかい」
「百個、そうしてくるよ」
こう言ってだ、そしてだった。
彼は実際にその店に行って生牡蠣を百個食べることに挑戦することにした、だが店員は彼の注文を受けてだった。
どうかという顔になって彼に述べた。
「お客様、お言葉ですが」
「何かな」
「生牡蠣を百個ですか」
「百七十五個は食べたいね」
ビスマルクが食べた数である。
「それだけ」
「あの、それだけ食べますと」
店員はクライストにさらに言った。
「大丈夫ですか」
「食べるよ」
「いえ、そうしたことではなく」
「お金ならあるよ」
「それでもなく」
「いや、本当に大丈夫だよ」
クライストは店員に笑って話した。
「じゃあお酒はシャンパンで」
「それを飲みながらですか」
「うん、生牡蠣を頂くよ」
「そうされますか」
「これからね」
店員に笑顔で言ってだった、そのうえで。
彼は実際にだ、自分の前に出される生牡蠣を。
シャンパン、ビスマルクが好んだこの酒を飲みつつ次々に食べていった。そして瞬く間に百個食べてしまい。
そこからもさらに食べた、そして。
遂に一七五個食べてだ、さらに十個食べて言った。
「やったよ」
「確かに食べ放題ですが」
店員はビスマルク以上に食べて笑顔でいる彼に言ってきた。
「よく召し上がられましたね」
「僕はビスマルクを超えたよ」
「あの鉄血宰相の」
「何でも生牡蠣を一七五個食べたそうだしね」
「そうですか、ではです」
「では?」
「ビスマルク卿はその後大変だったでしょうね」
店員はこう言った。
「間違いなく」
「というと」
「お客様、当店は新鮮で清潔な牡蠣を用意しております」
店員はクライストに真面目な顔で言ってきた。
「衛生検査も万全です」
「信頼しているよ」
「その言葉誓えますね」
「神にね」
「はい、そのお言葉確かに聞きました」
店員はクライストに返した。
「それでは」
「何か凄いこと言ってるね」
「いえ、これからのことを考えまして」
「これからの?」
「そうです、ではそういうことで」
店員は最後はデザートを出した、そのうえでクライストを送りクライストも笑顔で店を後にした。彼は目標以上に食べられて満足していた。
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