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レーヴァティン

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第百三十話 北九州攻めその七

「だからでござるな」
「すぐに食わせる」
「そうするでござるな」
「それが何でも同じだ」
 英雄はこうも言った。
「壊血病でもな」
「壊血病なら」
「柑橘類やザワークラフトだ」
 こちらはビタミンC不足でなってしまう病気だ、大航海時代の船乗り達を散々に悩ませた病気であった。
「それを食わせてだ」
「防いで、ござるな」
「例えなってしまってもな」
「治すでござるな」
「それが効くならな」
「だからでござるな」
「俺はあの男は嫌いだ」
 森林太郎、この医師はというのだ。
「まことにな」
「そうした事情で」
「脚気菌があるなしに関わらずな」
「それが効果があるなら」
「試してもよかった筈だ」
 実際に陸軍でも麦飯を食わせてだ。
「海軍の様にな」
「海軍は実際にそうして」
「わかったな」
「そうだったでござる」
 二隻の軍艦を出港させて一隻の食事を白米そしてもう一隻を麦飯にしてみた。すると麦飯の艦艇では脚気は殆ど出ずなった者も麦飯を碌に食べていなかったのだ。
「それならでござるな」
「意固地に脚気菌を探さずな」
「食事療法を試すべきだった」
「そうすればだ」
「陸軍で脚気になる人は減ったでござるな」
「それも画期的にな」
 そこまでだったというのだ。
「そうなっていた」
「間違いなく」
「そのことを思うとな」
「どうしてもでござるな」
「森林太郎は嫌いになる、そして」
「森鴎外の作品についても」
「否定的になる」
 そうした背景があると、というのだ。
「どうにもな」
「それな、鴎外さんが実はとんでもない奴やったとか」
 耕平も麦飯に山芋をかけたものを食べつつ言った、見れば仲間達の間で彼が一番食べる勢いがいい。
「わい知らんかったわ」
「そうだったか」
「高校までな」
「俺も高校を卒業する間際にな」
「このこと知ったんやな」
「そうだった、舞姫の話もな」
「鴎外さん自身の話とかな」
 耕平はこの説についても述べた。
「そう言われてるな」
「このことを思うとな」
「ほんまにやな」
「森鴎外は人として、医師としてはな」
「お世辞にもやな」
「そうした人間だった」
「ほんまにな」
「そのことがだ」
 まさにというのだ。
「俺もだ」
「ショックやったな」
「小説を詠めばな」
「凄いからな」
「そこから人としても考えたが」
 森鴎外、彼をというのだ。
 
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