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レーヴァティン

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第百三十話 北九州攻めその六

「とかくでござる」
「麦飯はな」
「質素なものとされているでござる」
「そうだな、だが」
「実はどうか」
「美味い」
 麦飯、これはというのだ。
「なら俺はだ」
「粗食とは思わないでござるな」
「馳走だ、特にだ」
「山芋と共に食すると」
「白米よりもな」
 これだけのご飯よりもというのだ。
「美味い」
「左様でござるな」
「昼は普通の飯でおかずは明太子だが」
「今朝はでござるな」
「兵達に力をつけてもらう」
「その為にも」
「山芋を食わせているが」
 その飯にはというのだ。
「こちらの方が美味い」
「山芋の方が」
「遥かにな、そして実際にな」
「美味いでござる」
 智が食ってもだった、山芋と麦飯の組み合わせは実に美味かった。そして彼はこうしたことも話し0た。
「ただ、森林太郎という人は」
「森鴎外だな」
「小説家、翻訳家としての名は」
 つまりペンネームである。
「そうでござった」
「そして本名、本業の医師としてはな」
「森林太郎でござったが」
「文学の面ではともかくな」
 英雄は山芋をご飯にたっぷりとかけた、そうして一気に胃の中に入れておかわりをしつつ言うのだった。
「医者としては最低だったな」
「この麦飯にしても」
「価値を認めなかった」
「脚気にいいでござるが」
「脚気菌があると頑迷に主張してだ」
 そのうえでだったのだ。
「海軍の麦飯での脚気予防を否定してな」
「陸軍は脚気で大勢の人が死んだでござる」
「それも万単位でな」
「日清、日露の戦争で」
 それぞれの戦争でだ。
「陸軍は脚気で多くの死者を出しましたが」
「それをもたらしたな」
「それが森林太郎だったでござる」
「他にも色々言われているがな」
「舞姫のことといい」
 一説にはこの作品は鴎外自身の話だという、無論異説もある。
「出世にこだわったことといい」
「俺は嫌いだ」
 英雄は森林太郎については一言で述べた。
「否定すべきだ」
「まさにでござるな」
「そんな奴だ、麦飯もだ」
 今自分達が食べているこれもというのだ。
「脚気に効果があるならな」
「即座にでござるな」
「導入してだ」
「食べるべきでござったな」
「脚気が治るならな」
「そしてならないなら」
「それに越したことはない」
 まさにというのだ。
「軍としては」
「その通りでござる」
「俺もだ」
「そうされるでござるな」
「脚気になるとな」
 どうしてもというのだ。
「満足に戦えず」
「最悪死ぬでござる」
 実際に江戸時代後半から明治まで多くの人が命を落としている。
 
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