リアルバウトハイスクールD×D
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第七話『炎の師弟スパーリング』
前書き
おいっす!
──アーシアと出会った日の翌朝。
『──“うんぎゃらげれぽぽほげるぴれ~!”』
音声入り目覚まし時計から絶叫(音声)が鳴り響き、家の自室で寝ていた俺は目を覚ました。
「むぅ……心臓に悪いな、この目覚まし……」
≪なんつー叫び声だ……≫
俺はのそのそと身を起こして居間へ向かう。
「おはよう」
「おはようにゃん」
居間に入ると、黒猫姿の黒歌が座布団の上に寝そべってTVのニュース番組を観ていた。
「黒歌だけか? 父さんと曹操は?」
いつもの二人の姿が無い。母さんはTVの仕事で出張中だ。
「旦那と曹操は、ついさっき仕事の連絡が入って緊急出動──〈駒王町〉で昨夜の内に複数の行方不明者が出たって話にゃ」
「ふ~ん。黒歌、どう思う?」
「きっと〝ゴル●ム〟の仕業だにゃん」
「おいこら」
「冗談にゃん。十中八九、〈はぐれ悪魔〉の仕業だと思うにゃ」
「やっぱりか」
まぁ、他に考え難いわな。
「因みに十中の残り一二は、イッセーの時のような〈堕天使〉による〝神器所有者狩り〟かにゃ~?」
「ああ、そっちの場合もあったのか」
他に考えられたわ。
因みに『場合』(※他に『恐れ/怖れ/懼れ』や『確率』など)の所を『可能性』と表現すると〝そうなって欲しい〟という期待が含まれてしまう。
「それはそうと朝飯は?」
「これから作るにゃん」
座布団から降りて、黒色の和服姿の猫耳美女に変化する黒歌。髪は黒色で、眼は金褐色で瞳は黒い猫目、肌は白い。なお、そのバストは豊満であった。
「んじゃ、任せた。俺は道場で鍛練してくるぜ」
「分かったにゃん」
──剣道場。
俺は稽古着に着替え、先ずは念入りに身体を解してウォーミングアップに〝型〟を一通りこなす。
続いて本来なら曹操や父さんと組み手や打ち込みをしているところだが、今は相手が不在だ。
なら──と俺は道場中央で結跏趺坐になって瞑想を行い、体内に宿る〈赤龍帝の籠手〉を通して意識を精神世界に潜らせる。
精神世界に潜ると──周囲は何も無い空間で、俺の眼前には『引き締まった筋肉質な身体に、黒帯を締めた上下赤色で上着の両袖を肩口から千切った空手着のような道着を着用し、腰まで届く長い髪を金髪に染めた涼やかそうな〝俺と同い年くらい〟の青年』が待ち構えていた。
生前の〈全米格闘王〉ケン=マスターズ──その修行中の時代の姿だ。
──ケン師匠の〝怨念〟は、生前にとある『悪の秘密結社』に捕まって〝洗脳〟を受けて暴れさせられてしまった時の残留思念だと云う。洗脳については、なんやかんやあって僅かな期間で解けたが、その時よりも姿が若返っている理由は『その時、不思議な事が起こった!』って感じでケン師匠本人にも不明らしい。後、若返った事で得意技である〈昇龍拳〉が本気を出したらヤバい事になっているって話しだ。
俺達の周囲の景色が、何も無い空間から一隻のクルーザーが碇泊している日中の港へと様変わりした。
心象風景の具現化──ケン師匠が自身の記憶の中から印象深い景色の一つを思い描き、周囲をその景色へと塗り替えたのだ。このような現象を魔術師の間では〈固有結界〉と呼称するらしい。
因みにクルーザーには他の〈歴代赤龍帝〉が揃って乗って此方を観覧(モブキャラ化)しているのは御愛嬌(ケン師匠は歴代内部でも人気が高い)。
「──いつでもいいぜ! かかってきな!」
アイサツ抜きに、いきなり始まるケン師匠のインストラクション!
「ニンジャネタを引っ張りすぎだろ」
「自覚は、ある!」
言い終わる前に間合いを詰めて、右のジャブを三連続で繰り出す──上体を動かすだけで全て躱された。
俺は続けて左のローキックを繰り出した。
「よっ」
ケン師匠は俺の蹴り足に後ろ側から足を引っ掛けて掬いあげる(これが本当の『揚げ足を取る』というヤツだ)。
「シャオッ!」
俺は敢えて流れに逆らわず寧ろ加速しながら身を捻り、両手を地面に着けて逆立ちになって〝カポエイラ〟を真似た蹴りを繰り出した。
「おっと!」
バックステップで躱された。
俺は残った勢いの処理にそのままブレイクダンスで数回転して腕の力だけで跳躍し、両足での着地と同時にバック転から高々と跳躍すると空中で体勢を整えながら〈神威の拳〉の呼吸法を行い 、〈龍気〉を練り上げる。
「──〈流星波動拳〉!」
俺は空中から地上のケン師匠に向けて、漫画『ドラグ・ソボール』と同雑誌に掲載の作品で美少女達が超常の技と星座を象った武具を身につけて闘う漫画の女主人公、星弓の必殺技〈シューティングスター・ショット〉(※この作品はフィクションです)から着想を得て独自に編み出した〈波動拳〉の派生技──小さく分裂させた〈波動拳〉を放った。
「──フンッ!」
ケン師匠はスコールの如く降り注ぐ小粒な気弾を、右足を前に出して腰を落とし、右腕一本──あらゆる攻撃を無効化する超高等防御術〈ブロッキング〉で全て弾き飛ばした。この防御術はシビアなタイミングで一撃一撃に個別に対応する必要があるのだが、流石だぜ。
──着地する俺。
「当たんねぇ技は無いのと一緒だぜ?」
「絶対に当ててやる!」
ケン師匠の挑発に激昂する俺。ほぼ毎度のやりとりである。
「ヒュウゥゥゥ──!」
俺は再び〈神威の拳〉の呼吸法を行い、両手を上に広げて全身に〈龍気〉を漲らせる。
「──レッツゴージャスティィィィン!」
気力が最高潮に達し、自分でも意味不明な雄叫びをあげながら特攻する俺。
「──〈灼龍拳〉!!」
俺は、謂わば〈昇龍拳〉のストレートパンチ・バージョン──左の拳に〈炎〉を纏わせて突きを繰り出す。
「──足元があまいぜ!」
「あ(※極太文字)」
ケン師匠に右の屈み蹴りで足を打たれて簡単に止められた。
更にそこから伸び上がり気味の左拳のアッパーがボディに突き刺さり、俺の身体が〝く〟の字に曲がる。
「とっておきをみせてやるよ!」
ケン師匠は再び身を沈めながら左腕を引き絞る。
「──〈昇龍裂破〉!!」
ケン師匠の超必殺技の一つ──左(右でも可能)腕に〈炎〉を纏わせた連続の〈昇龍拳〉。地上で素早く回転を繰り返して遠心力により威力を増幅させながら都度一撃を入れ、最後に跳躍力も加えた特大の破壊力が俺を襲った。
「──しっかり練習してこい!」
(おそらく)断末魔を叫びながら意識がブラックアウトしていく俺の耳に、ケン師匠の激励が届いた。
「──……結局、完敗かよ」
現実世界に意識が戻った俺は、一言目にそうボヤいた。
まぁ、態と当たってもらえても嬉しくはないからそれは良いんだが。少しは本気を出させたいぜ。
ケン師匠の本来の戦い方は、もっとダイナミックでスピーディーな攻性に富んだものだ。最後の技も強烈ではあるものの、まだヤバくはないレベルだ。
「まぁ、しっかり練習するか!」
──とはいえ、時間も押しているし今回は此処までだが。
後書き
Q:赤いリボンは?
A:それは〝あいつ〟にやったもんだぜ。(K氏談)
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