リアルバウトハイスクールD×D
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第八話『はぐれ悪魔 純情派』
前書き
出た! わお!
──放課後の〈オカルト研究部〉部室。
「──そんなわけで、報告は以上です」
俺はグレモリー先輩に、昨日迷子のシスターを町の教会に案内した事を報告した。
別にやましい事でもないし、後で知られて痛くもない腹を探られたくないからな。
「話しは理解したわ。そのシスターを道案内しただけで、他意はないって事ね。イッセー……これが私の眷属だったら、今後は二度と教会に近付かないように注意している所よ」
悪魔には危険な場所だもんな。
「──あらあら、お話しは終わりまして?」
俺とグレモリー先輩の会話が終了すると、姫島先輩がグレモリー先輩に報告書を持ってきた。
「何かしら、朱乃?」
「大公から──〝はぐれ悪魔の討伐依頼〟が届きましたわ」
──夜。
グレモリー先輩達の討伐任務など関係なく帰宅。家の中は、我が家の住人勢揃い。
序でに見知らぬ女性も居る。但し、屋内に入れず中庭に佇んでいる。
見た目はケンタウロス擬きの女性。
下半身は数メートルの巨体で体はもふもふそうな体毛に覆われており、太くて鋭そうな爪、尻尾は独立して動く蛇になっている。
そして上半身は普通の人間サイズの二十代後半くらいの美人で、曹操が外出時に学生服の上に纏っている筈の漢服を素肌に羽織っている。少し長身で割とスタイルも良さそうだ。
彼女の名は──『バイサー』。
訳ありの〝はぐれ悪魔〟で、父さんと曹操が早朝に出動した原因でもある。
事の起こりは、バイサーが塒にしていた〈駒王町〉郊外の廃屋の洋館に、そうとは知らずに夜中に数人の不埒な野郎共が若い女性を無理矢理連れ込んで〝オイタ〟をしようとしていた為。
奥に居たバイサーは〝地獄耳〟でそれに気付いて不快感を覚え、すんでのところで乱入して、恐慌に駆られた不埒な野郎共を得物の二本の突撃槍で胸や背中を突き刺して皆殺しにした。
その光景を目の当たりにして恐怖で動けずに居た被害者女性の上着が野郎共に破かれていた為、バイサーは自分が着ていた上着を脱いで『これでも着て帰れ』と投げ渡して奥へと戻った。
野郎共の上着は、突撃槍による風穴が空いていて使い物にならなかったというのもある。
被害者女性は何とか一度は帰宅できたのだが、一応は助けてもらった事を理解して、怖がりながらも〝名前も知らない妖怪〟に礼を言いに今日の早朝に廃屋まで足を運んだ。
んで、その少し前に父さんと曹操が周囲に〝人払いの結界〟を施してバイサーの塒に突入していて、被害者女性はその場所から離れようとする自身の気持ちを不審に思い強行突破。
廃屋の中に踏み込むと、それぞれ武器を持って対峙する二人の男(父さんと曹操)と全裸の恩人に遭遇した。
その光景に被害者女性は一瞬呆けかけたものの、気をもち直して場に乱入、三人も被害者女性の存在に気を取られたおかげで隙ができ、被害者女性がバイサーに御礼を述べて彼女を庇う。
被害者女性の証言で、情状酌量の余地ありとして父さんと曹操が武器を納めてバイサーに保護を提案。最終的に曹操の説得でバイサーはそれを受け入れると、槍は父さんが預かり、曹操が服を貸して我が家に連れて来られた。
バイサーの姿は普通に連れて歩くと目立つ為、道中は父さんが所持している一時的に透明人間になれる薬草〈きえさり草〉を使ってバイサーの姿を見えなくしていた。
因みにバイサーが全裸だったのは、被害者女性に渡した物以外に服を持っていなかったからで、被害者女性が申し訳無さそうにしていたのが印象的だったとの事。服は後で洗って返すらしい。
──以上が曹操から訊いた、事件のだいたいのあらましである。
後、〝行方不明者〟である不埒な野郎共は廃屋を焼いて、中で遊んでいて火事を起こして焼け死んだという処理になったとの事。そんな輩は死んで当然なのでどうでもよい。
「──柔らか~い♪」
帰って来るなり父さんをとっちめ、中庭に居たバイサーに突撃して体毛に顔を埋めて毛並みを堪能している我が母。
縁側でそれを眺める俺達。
俺の〈神器〉の奥で〝騎士王〟が、もふもふに反応してやがる。鎮まれ、俺の左腕!
この状態で既に30分が経過しており、上半身は腕を組んで背筋を伸ばし、下半身はスフィンクス姿勢で鎮座するバイサーの表情は〝無〟である。
「う~ん、満足したわバイサーちゃん♪ 黒歌ちゃんも良いけど、この感触は味わえないもんね♪」
もふもふ感を存分に堪能した母さんがバイサーから離れた。
バイサーも、ほっとした表情を浮かべた。
「母さん、お帰りー」
「あっはは♪ ただいま、イッセー。『お父さんが、家に新しく女の子を連れて来た』だなんてメールを送ってくるもんだから、直ぐに帰って来ちゃった」
「だ、だから誤解だと言っただろう……」
縁側で愚痴る父さん。さっきまで〝母さん乱舞〟により満身創痍だったのだが、自身の〝完全治癒呪文〟で回復していた。
〈ベホマ〉──この世界では父さんのみが使える、掌に〝魔力〟を集中させ(その際に魔力が緑色に発光する)て〝手当て〟を行う異世界の回復呪文である。
他にも初歩で小効果の〈ホイミ〉、魔力消費量は大きいが魔力を拡散して範囲内の複数人を同時に完全治癒できる〈ベホマズン〉等がある。
「あなた、ごめんね。お詫びに今夜は〈あぶない水着〉を着てシてあげる♪」
「ぶっ!?」
「息子の前で言う事じゃねえよ」
「着衣プレイだにゃ~」
「まあ、先輩。頑張れ」
「……私も、この雰囲気に慣れないといけないのかしら……?」
「──いやはや、お盛んですね」
突如、中庭に漂った〝霧〟の中から現れた、学生服の上に魔法使い風の法衣を纏った眼鏡の青年。
彼の名は──『ゲオルク=ファウスト』。
曹操とは同期で〈国際警察機構〉所属のエキスパートの一人。
通称は〝魔界医師〟や〝ドクトル=ファウスト〟など。
悪魔メフィストフェレスと契約したという『ゲオルク=ファウスト博士』の子孫で同名。
彼の一昨年前に亡くなった祖父こそが〝黒歌を悪魔から元の種族に戻した(それが最後の大仕事)〟人物で、彼自身もその技術を継承した〈医者〉であり、多種多彩な〝魔術〟を操る優れた〈魔術師〉にして、〝神滅具の神器〟の一つで霧による結界や転移などの空間術を操る〈絶霧〉の所有者である。
因みに父親はモヒカン頭の巨漢で、何処かを放浪しているらしい。
「皆さん、こんばんは。兵藤先輩、失礼ながら勝手にあがらせていただきました」
「いや、良く来てくれたね」
「相変わらず、その治癒技術を見せられると医者としての自信が揺らぎますよ」
「俺のは怪我にしか効果が無いんだけどなぁ」
「ちょっと待った。ゲオルク、どうやって〝転移〟して来た? 如何に〈絶霧〉の所有者とはいえ、この家への侵入は容易くない筈だぞ」
「表から敷地内に入ってからですよ、曹操。仕事上がりに急遽呼び出されたというのに、玄関先から声を掛けても誰も出て来ていただけなかったもので」
「盲点だったな。いや、悪かった」
誰も気づかなかったな。
「まあ良いです。黒歌は身体の調子は如何ですか?」
「なんともないにゃあ。ゲオルクのお祖父ちゃんには感謝してるにゃ」
「それは何より」
ゲオルクがバイサーに目を向ける。
「それで曹操、彼女が〝患者〟かな?」
「ああ、名前はバイサーだ」
「患者……?」
バイサーは訝しんだ。
「私は、ゲオルク=ファウスト。〝魔界医師〟と人は呼ぶ」
「バイサー。ゲオルクは〝転生悪魔〟を〝元の種族〟に戻せる男だ」
「そんな事が可能なのかしら!?」
「私が実証例だにゃ。『SS級はぐれ悪魔の黒歌』って、聞いたことなあい?」
「あなたが、あの……!? 名前を聞いた時には、同じ名前なだけだと思ったけれど……本当に、元に戻れるの!?」
「それなりに日数は、かかるがね。バイサーよ、私の治療を受けるかな?」
「こ……心細いから、曹操に付き添って欲しいわ」
顔を赤らめて曹操をチラチラと見るバイサー。
「ん? まあ、別に構わんが?」
特に気にせず請け合う曹操。
「なあ、曹操」
「なんだ、イッセー?」
「お前、バイサーに何て言ってこの家に連れて来たんだ?」
「『俺と一緒に来い』って、手を差し伸べて言っただけだぞ?」
「成る程」
相変わらず、無自覚に人を誑し込む男だ。
「──では、バイサーという人物は私の患者になった。医者とは患者が完治するまで面倒を見るものだ。私の患者にあらゆる危害を加えようとするものは、ファウストにより死をもたらされると思うがいい」
「──晩御飯の支度するけど、ゲオルクくんも御飯を食べてく?」
「御相伴におあずかりいたします、奥さん」
──全員で晩御飯を食べた後、ゲオルクは〈絶霧〉を使って曹操とバイサーを連れて去って行った。
後書き
リアスチームの討伐任務、空振り!
ゲオルクの立ち位置は最初から決まってた。
バイサーの処遇は当初は『既に斃されていた』とか『役割が別のキャラクターに替わっていた』とか、揺れに揺れてた。
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