デジモンアドベンチャー Miracle Light
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第9話:選ばれなかった大人
チャックモンとハニービーモンの騒動からしばらくしてからようやく雪の勢いも穏やかになり、少しずつ真夏の気温を取り戻していた。
「と言うことがあったのさ」
「「はあ…」」
賢からどうしてお台場に来れなかった理由を聞いて、隣の自称・賢の子分のハニービーモンが偉そうにしていた。
「俺は兄貴の子分のハニービーモンだ。よろしくな」
「おお、ハニービーモン。俺が鋼属性のデジメンタルでアーマー進化したデジモンだな。懐かしい」
「ブイモン、こう言うのにも進化するんだ?」
フレイドラモンとライドラモン以外に見るアーマー体のデジモンだ。
成熟期相当の姿にしては小さいが、ブイモンやワームモン曰わく、成熟期でも成長期と変わらない体格のデジモンはいるらしい。
因みにハニービーモンに進化出来るブイモンからハニービーモンの頭の針は敵を麻痺させる強烈な毒針だから絶対に触らないようにと注意を受けた。
「正直、成長期と変わらないサイズだから助かるよ。正直、フレイドラモンサイズかスティングモンサイズだったらどうしようもなかったからさ」
「だよな、ハニービーモンならまだぬいぐるみで通用するしな」
体格はブイモンと大して変わらないため、ハニービーモンはまだぬいぐるみとして通用する。
「まあ、兄貴の家は以外にも過ごしやすかったぜ?結構自由に動けたし」
「賢の家族はデジモンを知ってんのか?」
「いや、知らないよ。ただ干渉してこないだけ。あの人達には兄さんがいるから僕は人目を気にしないで自由に動ける。兄さんに夢中になりすぎて僕に目を向ける余裕がないのさ」
「………お父さんとお母さんやお兄ちゃんと仲悪いの?」
「互いに興味がないだけさ」
「滅茶苦茶冷めた親子関係だな」
「「ブイモン!!」」
あまりにもストレートな言い方に流石の大輔やヒカリも問題だと思ったので咎めようとしたが、賢がそれを手で制した。
「いいんだよ、今はそれで好都合だし。今更構われても困るよ」
正直、今更構われてもワームモン達がいる関係上、現状のままでも構わないと思っている。
「そっか…」
「…何か寂しいね…それ…」
両親と兄弟と不仲と言うのはヒカリからすれば寂しいと感じる。
「もう慣れたよ。まあ、それよりも…ここら辺だよね。テレビのニュースに映っていたのは?」
「うん、カブトムシやクワガタのようなデジモンが映っていたよ?」
「カブテリモンとクワガーモンだな。あの2体が一緒に暴れてるなんてな」
ヒカリの言葉にブイモンがデジモンの正体を説明し、大輔はブイモンに向き直る。
「強いのか?」
「成熟期の昆虫型の代表みたいなものだよ」
「カブテリモンとクワガーモンは憧れの姿だ。強いし見た目も強そうだし」
「あれ?ハニービーモンはデジメンタルで進化したんじゃないの?」
「俺は成長期のクネモンから進化したんだ。ハニービーモンは普通の進化でも到達出来る姿。一応デジメンタルは使ってねえけど、アーマー体に分類されてるぜヒカリの姐さん」
「あ、姐さん?」
ヒカリの問いにハニービーモンが親切にその疑問に答えてくれた。
通常の成熟期として、アーマー体と同じデジモンに進化した個体も存在し、デジメンタルを使わずに通常進化した個体も、一応アーマー体として扱われる。
戦闘力は通常進化個体より、アーマー進化個体の方が若干上らしく、これは恐らくデジメンタル分のエネルギーによる差だろう。
「ハニービーモンの言葉は今は置いといて…カブテリモンとクワガーモンを止めないとな」
「見たところ、チャックモンやハニービーモンと違って半実体化したデジモンのようだから倒しても問題ないだろうね」
理性のない半実体化したデジモンはいつ何処で現れるのか分からないから問題なのだ。
今回みたいに偶然ニュースで姿を発見出来たりするのは本当にラッキーだ。
「………大輔、みんな…気を引き締めろ…来る!!」
派手な羽音が大輔達の耳に届いたのと同時に2つの巨大な影が迫ってきた。
「あれがカブテリモンとクワガーモン!?」
「ブイモン!!」
「ワームモン!!」
「「OK!!」」
「デジメンタルアップ!!」
「ブイモンアーマー進化、ライドラモン!!」
「ワームモン進化、スティングモン!!」
大輔が今回選択したデジメンタルは雷属性のデジメンタルだった。
カブテリモンとクワガーモンは高い機動力と格闘能力を持つデジモンと聞いているので、機動力が高く、広範囲への攻撃が出来るライドラモンを選択したのだ。
ワームモンは通常進化でスティングモンに進化するとカブテリモンに向かっていく。
「ブルーサンダー!!」
ライドラモンはカブテリモンに向けて蒼雷弾を放つ。
カブテリモンもプラズマ弾を放つメガブラスターを放ち、相殺させると角を突き出して突撃してきた。
「ライトニングブレード!!」
ライドラモンも対抗して電撃刃を繰り出してカブテリモンを弾き飛ばす。
カブテリモンの頭部の外郭は想像以上に頑丈でライドラモンの電撃刃で傷一つ付かない。
「スパイキングフィニッシュ!!」
スティングモンが腕からスパイクを伸ばし、一気にクワガーモンを貫こうと突撃するが、かわされてしまう。
スティングモン同様どうやらクワガーモンのスピードも相当な物らしい。
因みにハニービーモンは大輔達を守っているが、いざとなったら加勢するつもりのようだ。
大輔達がカブテリモンとクワガーモンと交戦している場所から多少離れた場所では…。
「ひ、浩樹!!見えるか!?あ、あれはデジモン…デジタルモンスターだ!!」
「ああ、見えているよ悠紀夫!!やっぱり俺達の間違いじゃなかった!!デジモンはいたんだ!!デジタルワールドは存在したんだ!!」
「行ってみよう浩樹!!もしかしたらデジタルワールドに行けるかもしれない…俺達の夢を…叶えられるかもしれないんだ!!」
「ああ!!」
2人の青年が興奮を抑えきれないような表情で大輔達がカブテリモンとクワガーモンと交戦している場所に向かう。
一方、舞台は再び戦いの場に。
「いい加減に墜ちろ!!サンダーボルト!!」
広範囲に電撃を放射するが、カブテリモンは距離を取って回避する。
「ムーンシューター!!」
スティングモンはクワガーモンにエネルギー弾を放つが、クワガーモンは旋回しながらかわすと自身の鋏でスティングモンを真っ二つにしようと迫る。
「くっ!!」
スティングモンは上昇してクワガーモンの鋏による攻撃をかわした。
「カブテリモンとクワガーモンが速すぎて攻撃が当たらない!!」
「何とか動きを止められないの?」
「難しいね、広範囲への攻撃すら有効打を打てないんじゃ…」
「つまりあいつらの動きを鈍らせりゃあいいんですね兄貴?」
賢の呟きに反応したハニービーモンが賢に尋ねる。
尋ねられた賢は不思議そうにハニービーモンを見遣りながら頷いた。
「ま、まあ…少しの間だけ動きを止められれば…」
「なら、俺に任せて下さい兄貴!!行くぜ!とうっ!!」
「「「ハニービーモン!?」」」
小さい羽を高速で動かしながら一気に飛翔するハニービーモン。
紫色の鱗粉を撒き散らしながらカブテリモンとクワガーモンの周囲を飛び回る。
突然の乱入者に驚いたが、すぐにハニービーモンに標的を切り替える。
「へっ!素早しっこさに自信があってね!!」
カブテリモンとクワガーモンを2体をスピードで攪乱しながら数分間飛び回ると、徐々にカブテリモンとクワガーモンの動きが鈍り始めた。
「カブテリモンとクワガーモンの動きが…?」
「…そうか、ハニービーモンのポイズンパウダーか!!」
ハニービーモンに進化する可能性を持つ者としていち早くハニービーモンの放っている紫の鱗粉の正体に気付くライドラモン。
ハニービーモンの必殺技のポイズンパウダーは名前通り毒鱗粉だ。
毒粉は体力を奪う類の毒ではなく、身体の動きを奪う麻痺毒で、まともに毒粉を吸えば、動く事もままならない。
今回時間がかかったのはカブテリモンとクワガーモンがそれなりに巨体で、距離を取りながらだったためだろう。
体の麻痺が酷くなり、カブテリモンとクワガーモンは地面に勢い良く落下し、叩きつけられた。
「今だ!!」
「よっしゃあ!!ライトニングブレード!!」
「スパイキングフィニッシュ!!」
ライドラモンが電撃刃をスティングモンがスパイクによる刺突を繰り出し、麻痺して防御すら出来ないカブテリモンとクワガーモンに向けて繰り出された。
カブテリモンとクワガーモンは悲鳴を上げながら粒子となって消えた。
「やった!!」
「お疲れブイモン」
「ワームモンもお疲れ、ハニービーモンもよくやってくれたね」
「いいえ、兄貴!!俺には勿体ない言葉です!!」
ビシッと姿勢を正して敬礼するハニービーモン。
「よし、今日はもう帰るか!!」
「「賛成!!」」
ブイモンとワームモンが大輔の言葉に賛同し、帰ろうとした時であった。
「坊や達、待ってくれ!!」
「「え?」」
「げっ!?伊織の父さん!?…と、誰?」
大輔は現れた人物に目を見開いた。
何故なら現れたうちの1人は本宮家と交流がある火田浩樹で、もう1人は顔色が悪い細身の男性だ。
「大輔君?」
「知ってるのか浩樹?」
「ああ、息子が世話になってるんだ…大輔君…君の連れている生き物は…デジモンだったんだなやっぱり」
【え?何でそれを?】
ズバリと言い当てられて、大輔達は隠すことも忘れて言ってしまった。
それを聞いた浩樹と悠紀夫は感極まって泣き出す。
「ゆ、悠紀夫…俺達は間違っていなかったんだ…」
「ああ、長年待ち焦がれてきたデジモン達と接触出来たんだ…」
涙を流す大人に大輔達は呆然となりながら見守るしかなかったのであった。
後書き
この2人はあの重要人物ですよ
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