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デジモンアドベンチャー Miracle Light

作者:setuna
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第8話:氷の化身と鎧蜂

 
前書き
迷い混んだ強い個体は完全に実体化する設定です。 

 
青い空。

白い雲。

そして辺り一面に広がる雪。

真夏にしては異様な光景だが、非常識に耐性がついたのか、雪合戦に興じる大輔達の姿があった。

「くたばれジュン!!この前食われたチョコレートケーキの恨みとその他諸々の恨み!!唸れ俺の右腕と肩!私欲にまみれたマダオ(まるで駄目な女)を討ち倒せ!!ビクトリーストレート!!!」

「ぐふう!?」

日頃の恨みを凝縮して放たれた雪弾(誤字ではない)は見事にジュンに炸裂した。

“ドズン”と言う雪球から発せられていいような物ではない音は自分達の聞き間違いだと信じたい。

「行くよヒカリちゃん!!とりゃあ!!」

「負けないよ大輔君!!えい!!」

大輔とヒカリが普通の雪合戦をしていると、再び雪が降ってきた。

「みんなー、家に入りなさい」

「「「はーい」」」

ブイモンの雪弾を受けて気絶しているジュンを引き摺って、ブイモン達は家の中に入る。

「落ち着いたと思ったらまた雪が降るなんて…このままじゃ家が雪で埋もれそうだわ…」

「昨日の時点で結構積もったもんな」

ブイモンがココアを飲みながら言う。

大輔とヒカリはニュースを観てテレビに映るお台場の映像に自分達が良く使う公園が映し出された時。

「「あ、雪だるま」」

「ん?あ、こいつ…ユキダルモン…にしては小さいな…」

「ブイモンも知らないの?」

「ああ、見たことないな」

テレビに映る雪だるまのようなデジモンは小熊の雪だるまみたいな姿をしており大変可愛らしい。

「もしかしてこの大雪…あのデジモンのせい?」

「…可能性はあるな」

「よし…行ってみようぜ」

バレないようにこっそりと防寒着を着てテレビに映っていた公園に向かう大輔達であった。

「「「うわあ…」」」

3人は何度か積もった雪に埋もれそうになりながらもテレビのニュースに映っていた公園に到着した。

しかし公園は他の場所より酷く、近くの建物の屋根には巨大な…大輔とヒカリの身長に匹敵するくらいの大きさの氷柱まで出来ている。

「凄え…」

思わず感嘆する大輔にヒカリも思わず美しい光景に目を奪われていた。

太陽光を反射し、より美しさを増す自然の芸術に大輔達は沈黙した。

「大輔、ヒカリ。俺達が此処に来た理由は何だっけ?」

「「公園に現れたデジモンを止めること」」

「よろしい」

人間と比べて芸術への感心が薄いデジモンであるブイモンは溜め息を吐きながら大輔とヒカリに尋ねる。

大輔とヒカリが声を合わせて言うと、ブイモンも満足そうに頷いた。

「えっと…雪だるまみたいなデジモンは何処だ…?」

「あ、いたよ大輔君」

ヒカリが指差した先には、小さい小熊のようなデジモンがいた。

ユキダルモンより遥かに小さいがデジモンには見た目によらず強いデジモンもいるため油断がならない。

しかし雪だるまデジモンはランチャーのような物を取り出して、それを建物に向けた。

「あいつ、まさか!?」

「大輔、止めるぞ!!」

「デジメンタルアップ!!」

「ブイモンアーマー進化、フレイドラモン!!どりゃあ!!」

「グアアアアア!?」

雪だるまデジモンに向けて飛び蹴りを喰らわせるフレイドラモン。

不意を突かれたのか勢い良く吹っ飛んでいく。

「やった!!」

それを見たヒカリが笑みを浮かべた。

しかし敵はゆっくりと立ち上がり、怒り狂った表情を此方に向けてきた。

「小さい見た目にしてはタフなようだな」

「グルアアアアア!!」

「ナックルファイア!!」

雪だるまデジモンがランチャーから発射した雪球をフレイドラモンは拳から繰り出した火炎弾で無力化した。

「今だ、フレイドラモン!!」

「ナックルファイア!!」

拳に炎を纏わせた状態でアッパーを繰り出し、まともに喰らったチャックモンは再び吹き飛ぶ。

しかし体勢を整えて全身を巨大な氷柱にするとフレイドラモンに迫る。

「氷が炎に勝てるかよ!!ファイアロケット!!」

対するフレイドラモンも全身に炎を纏って体当たりを繰り出す。

氷柱と激突するが、威力も相性も勝っているフレイドラモンが押し勝った。

「これでとどめだ!!」

拳に炎を纏わせてとどめを刺そうとした時、間に小さい影が入った。

「!?」

「……………」

フレイドラモンの前に立ちはだかったのは大輔やヒカリよりも幼い子供達であった。

「グ…ググ…!!」

デジモンは立ち上がり、勝てないと本能で理解したのか逃げ出した。

「待て!!」

フレイドラモンが追いかけようとしたのだが、先程の子供達がフレイドラモンを取り囲んだ。

「な、何なんだ…?この子達は…」

何故、あんな凶暴なデジモンを身を挺してまで守ろうとするのか、フレイドラモンや様子を窺っていた大輔やヒカリも困り果てた表情を浮かべた。

「お兄ちゃん達」

「「え?」」

「私達について来て」

子供達に引っ張られた大輔達は疑問符を沢山頭の上に浮かべていた。

因みにフレイドラモンは進化を維持する理由がないために既にブイモンに退化していた。

「なあ、一体どこまで行くんだ?」

「僕達とチャックモンの思い出の場所だよ」

ブイモンの問いに男の子が答えた。

「チャックモンってあのデジモン?」

「そうだよお姉ちゃん。チャックモンはね、私達のお友達なの…あ、着いた」

「「「…お~」」」

大輔、ヒカリ、ブイモンが感嘆の声を上げた。

そこにあったのは沢山の雪だるまや城、雪像だったからだ。

チャックモンや子供達の体格故にかなり小さいサイズの作品達だが、大量の数があり、かなり圧倒される。

「まるで雪の美術館みたいだな。でも、どうして俺達にこれを?」

「これ…全部作ってくれたのチャックモンなの」

ブイモンの問いに答えたのは女の子だった。

「これ全部、チャックモンが?」

「うん、僕達…昨日の天気が良くなった時にここで雪合戦して遊んでいたんだ」

確かに昨日は雪や晴れが繰り返し、安定してはいなかった。

つまりチャックモンは昨日の時点では子供達と遊ぶくらいには善良なデジモンだったのだろう。

「と言うより、あなた達もデジモン…チャックモンが見えたの?」

「うん、ママに教えたけど誰もいないって」

ヒカリの問いに答える男の子。

どうやら彼らの親にはチャックモンは見えなかったようだ。

子供達は昨日の天候が穏やかだった時間帯に雪を使った遊びに興じており、その時にチャックモンと出会ったらしい。

チャックモンは見た目通りに氷の力を扱い、力を調節することで、雪を操ることも出来るようで、この作品達は子供達と遊んでいる際に作ったらしい。

「でも、どうしてチャックモンは街を壊そうとしてるんだ?」

現実世界にデジモンが現れると大なり小なり影響があることは知っているが、それにデジモンの人格は関係ないはずだ。

「実はね…」

子供達が当時のことを思い出しながら説明を始めた。

何でも遊んでいる途中で黒い靄のような物にチャックモンが包み込まれ、苦しんだかと思えば次の瞬間に獣のような咆哮を上げて走り去ってしまったらしい。

「………黒い靄ねえ」

ブイモンが空を見上げながら呟く。

チャックモンは何かに操られているのではないかとブイモンは思い始めた。

「ねえ、チャックモンを助けて!!」

自分達ではチャックモンを助けられないが、ブイモンはチャックモンと戦うことが出来る。

しかしブイモンは渋い表情を浮かべていた。

子供達からの頼みが嫌という訳ではない。

ブイモンも大輔やヒカリ同様、お人好しの部類に入る性格をしているのだ。

しかし、黒い靄の正体が分からない以上、チャックモンを助けられるか分からないため、安請け合いは出来ない。

だからブイモンには…。

「…全力を尽くすよ」

子供達の希望に満ちた視線に対してこれだけしか言えなかった。

そして大輔達はチャックモンを捜し始めたのだが、チャックモンの暴走の度合いに応じているかのように雪の勢いは強く、風が大輔達の体力を奪う。

「大輔!!」

「頼む!デジメンタルアップ!!」

「ブイモンアーマー進化、フレイドラモン!!」

このままではチャックモンと戦う前に大輔達が保たないと判断したブイモンはフレイドラモンにアーマー進化して、体から熱を発することで大輔とヒカリの体温低下を防いだ。

「……いた!!」

巨大な氷柱を地面から発生させ、周囲の木を吹き飛ばしているチャックモンの姿。

フレイドラモンは一気に距離を詰めて、チャックモンを抑えつける。

「グ…グルアアアアア!!」

「ぐっ…小さい癖に何てパワーだ…暴走のせいか…!?」

体格はフレイドラモンが上回っているのにも関わらず、チャックモンはフレイドラモンを弾き飛ばした。

「フレイドラモン!!」

「大丈夫だ…来るぞ!!」

駆け寄ろうとする大輔達を制して、フレイドラモンはチャックモンに向かって構えを取る。

「ウガアアアアア!!」

フレイドラモンに向けてランチャーを構えて雪球を乱射してくる。

「ナックルファイア!!」

両拳に纏わせた炎を火炎弾として連射し、チャックモンの雪球を無力化する。

「グッ!?」

弾切れを起こしたのかランチャーの銃口から雪球が発射されなくなった。

今度は全身を氷柱に変化させてフレイドラモンに突っ込んだ。

「ナックルファイア!!」

氷柱に炎を纏わせた拳を叩き付けると、拳に纏わせた炎の温度を爆発的に引き上げて一気に蒼い炎に変化させた。

「ウガアアアアア!?」

あまりの高温に氷と化した体が見る見るうちに溶けていき、チャックモンは命の危険を感じたのか、距離を取って元の姿に戻る。

「ファイアロケット!!」

その隙を逃さず、強烈な一撃を叩き込むとチャックモンは悲鳴すら上げられず、倒れ伏した。

「やったの…?」

「ウグ…アアアア…」

ヒカリが恐る恐る様子を見るが、チャックモンの瞳からは依然として理性は失われていた。

「駄目なのか…やっぱり…」

フレイドラモンが諦めかけた時…。

「…チャックモン」

「大輔君?」

大輔がチャックモンに語りかけた。

「チャックモン、みんな…お前の帰りを待ってるんだぜ?一緒に遊んだ子達みんなが…」

「………っ」

それを聞いたチャックモンが僅かに反応を示したことを大輔は勿論、フレイドラモンもヒカリもそれを見逃さない。

チャックモンの心は完全に失われた訳ではないことに気付いたのだ。

「このままこんなことを続けて、お前の帰りを待ってる子達を傷つけるのかよ?またお前と一緒に遊びたいって言ったのによ…」

「ウ…グ…」

「あの子達のことを今でも忘れられないなら、あの子達を泣かせるようなことすんなよ!!」

「ウ…ウガアアアアア!!」

弾の補充が終えたのか大輔に向けてランチャーを向け、雪球を乱射した。

大輔は後ろのヒカリを庇おうとしたが、フレイドラモンが間に入って、全身から炎を纏って瞬く間に雪球を溶かして水に、そして蒸発させる。

「正気に戻れよ馬鹿野郎…!俺達デジモンはただのデータじゃない。意志を持った生き物なんだ!!」

全身の炎の勢いを増大させ、一気に距離を詰めた。

狙いは…。

「いい加減目を覚ませ、この大馬鹿だるまがあああああ!!」

チャックモンの額に叩き込まれるフレイドラモンの拳による渾身の一撃。

チャックモンは仰向けに倒れて気絶した。

「チャックモン!!」

「大丈夫、気絶しているだけだから……あ!?」

フレイドラモンが目を見開いてチャックモンを見る。

チャックモンの体から黒い靄が噴き出して、チャックモンの体から出て行く。

「黒い靄…」

「あれがチャックモンを…うわっ!?」

デジヴァイスから光が放たれ、黒い靄に光が直撃すると瞬く間に光の粒子となって消えた。

「……何だったんだろう?」

「ん…んん…」

「あ、大輔君!!チャックモンが!!」

「え?あ、チャックモン。大丈夫か?」

大輔もフレイドラモンもチャックモンに慌てて駆け寄るとチャックモンは目を開いた。

瞳には確かに理性がある。

「あ、あれ…?僕は一体…何を…」

「「やったー!!」」

「ふう…」

「?」

喜ぶ大輔とヒカリ、安堵の息を吐いたフレイドラモンにチャックモンは疑問符を浮かべたのであった。

チャックモンに全てのことを話した大輔達。

話を聞いたチャックモンは激しいショックを受けたが、子供達からの優しい言葉によって立ち直り、取り敢えず人目につかないところで過ごしてみるらしい。

一方、賢とワームモンはと言うと…大輔とヒカリがチャックモンと戦う数時間前の田町の公園にて…。

「………僕達はお台場に用があるんだ。そこを退いてもらうよ」

「おいおい、人の縄張りにずかずかと入っといて退けだあ~?てめえ、自分の立場を理解してねえようだな?ああ?」

賢は蜂型のデジモンと対面していた。

どうやらこのデジモンは公園を縄張りにしていたようである。

「君こそ、公園と言う場所が何なのかを理解してないね。ここはみんなが扱う公共の場だよ?」

「いいねえ、その度胸。小さい癖に肝が据わってやがる。胆力のある奴は嫌いじゃねえ。でもなあ、喧嘩を売る相手を間違えちゃいけないって誰かから学ばなかったのか?ああ?てめえの女みたいな顔をグチャグチャにされても文句は言えないぜ?このハニービーモン様の毒針を突き刺してやろうかあ?」

ハニービーモンと名乗ったデジモンは賢とワームモンを睨みながらドスの利いた声で言うが…。

「…うーん、何というか…」

「台詞と見た目がまるで合ってなくて逆に滑稽だね…」

賢とワームモンの正直な感想であった。

ハニービーモンがフライモンのような顔ならまだ迫力はあったかもしれない。

しかしハニービーモンは昆虫と言うよりヒカリの友人でもあったコロモンに似た顔つきである。

ハッキリ言って台詞と容姿が全くマッチしていないのである。

「な、何だとおっ!?」

気にしていることを言われたハニービーモンは当然激怒した。

因みにハニービーモンはブイモンが後に“知識”の名を冠することになる鋼属性のデジメンタルでアーマー進化するデジモンであり、デジタルワールドではまだまだアーマー体は滅んでいないようだ。

「怒る前に自分の顔を鏡で見直したらどうかな?」

「人が気にしてることをよくも言いやがったな!こいつでしめえにしてやる!!パラライズスティング!!」

ハニービーモンの必殺技のパラライズスティングは被っている兜の毒針を突き刺す頭突き攻撃である。

いくら成長期と同程度のサイズであろうとも決して弱くはない。

毒針を賢に刺そうとしたのだが…。

「甘いよ、ネバネバネット!!」

しかし、ワームモンは針を突き刺す以外は殆ど体当たりと変わらないために直線的な動きしか出来ないハニービーモンに粘着性の高い糸でハニービーモンの羽に絡み付かせる。

「う、うおお!?」

「これでとどめだ!!」

賢は近くに転がっていた誰かの忘れ物と思われる金属バットを握っており、フルスイングでハニービーモンをホームランしてしまった。

「清々しいくらいにかっ飛んだね賢ちゃん」

「うん、まあ…見た目と同じくらい軽かったね」

苦笑しながら金属バットを元の場所に置く…結構な威力だったためか、金属バットが曲がってしまった。

そして仰向けに倒れているハニービーモンに歩み寄る賢とワームモン。

「う…ぐぐ…てめえよくも…」

金属バットを顔面に諸に喰らってしまったハニービーモンは顔面を手で押さえながら起き上がろうとするが、思ったよりダメージが入ったのか起き上がれない。

「お?手加減はしたけど意識があるなんて…中々頑丈じゃない。」

「て、手加減…?あれでか…?」

「そうだよ、僕は急ぐからもう行くけど、自己紹介くらいはしようかな?僕は田町小学校の2年生の一乗寺賢。再戦なら学校のある日以外なら受けて立つよ。ただし、その時は遠慮なく倒させてもらうけど…またボコボコにされたくないなら縄張りを張るのは止めて絡むのを止めるんだね。上には上がいるってことさ…勿論僕の上にも…じゃあね…」

そのまま公園を後にする賢。

ハニービーモンは賢とワームモンの背中を見つめていた。

「ち、畜生…悔しいが…格好いいぜ…あん…た…」

ガクッと…ハニービーモンは意識を手放した。

因みに賢はお台場に向かおうにも田町に出現したデジモン達の対応に追われて結局お台場には行けなかったのであった。

翌日の朝…。

「…何、君?いきなり再戦かい?」

「お前…いや、あんたに頼みがある!!」

公園を通りがかった賢にハニービーモンが現れ、土下座してきたのだ。

「頼み?」

「俺をあんたの子分にしてくれ!!」

「は?」

「あんたの強さの秘密を知りたい!!だからあんたの子分になるのが一番だと思ったんだ!!」

「あ、そう…どうしようワームモン」

「害がないなら子分にしてあげたら?…多分しつこいだろうし…」

「…確かにね」

ワームモンと賢はハニービーモンに聞こえないように小声で会話をしていた。

取り敢えず了承してみた。

「まあいいけど?」

「本当か!?じゃあ今日からあんたに男を学ばせてもらうぜ!!」

賢の子分となったハニービーモン。

幸いなのはハニービーモンは成長期サイズなのであまり目立たなくて済んで良かったと言ったところだろうか? 
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