デジモンアドベンチャー Miracle Light
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第10話:制裁
火田浩樹と及川悠紀夫と言う、デジモンを知る大人達と出会った大輔達。
取り敢えず大人達が泣き止むのを待って大輔達は現在、話の場として道場に移動していた。
「いやあ、恥ずかしい所を見せてしまったね。」
「本当にすまなかった。デジモンとの接触は俺と浩樹の小さい頃からの長年の夢だったんで、つい涙腺が緩んでしまった。」
顔色の悪い顔を赤らめながら言う悠紀夫に釣られて、浩樹も苦笑した。
「それにしても本格的にデジモンと交流していたのが、まさか本宮さんの息子さんとはね」
「それに君は一乗寺さんの息子さんだね?君のお父さんには…」
「そんなことより、どうしてあなた達がデジモンを知っているのかを教えてもらえますか?」
「あ、ああ…すまない…」
賢の声が明らかに冷たくなったことに気付いて、悠紀夫は気まずそうに謝罪し、浩樹が代わりに説明した。
「いや、すまないね。こちらの事情でここに連れてきておいて…俺達のことには大体の見当はついていると思うけど、俺達も君達と同じようにデジモンと接触したことがある…」
「え?本当に?」
「と言ってもほんの僅か…一瞬とも言える時間だったんだけどね。それでも今でも鮮明に覚えているよお嬢さん。浩樹と昔、一緒にゲームをしていた時に見えた…あの子の影をね…」
懐かしそうに言う悠紀夫に、ヒカリもいつか自分にとって特別なデジモンに会えるだろうかと思うヒカリであった。
「それにしても賢君が光が丘で暮らしていたのは知っていたが、まさか君達まで光が丘で暮らしていて光が丘爆弾テロ…巨大デジモンの激突を目撃しているという共通点があるとはね…そんな君達がこうして共に過ごしている…正にこれは運命と言うべきかもしれない。」
浩樹と悠紀夫に自分達が光が丘爆弾テロ事件の目撃者であることを教えていた大輔達。
「2人が持っている機械、俺のパソコンと繋げられそうだ。」
鞄からケーブルを取り出そうとした時、道場の扉が勢い良く開かれ、そこから厳しい表情をした老人が現れた。
「あ、伊織のお祖父さんだ」
「父さん!?」
「おじさん!?どうしてここに?」
「浩樹、悠紀夫君…お前達2人がまだ馬鹿げたことをしていると聞いてな。今度はこんな子供を巻き込んで…相変わらず、パソコンの中にいるデジタルな生き物がいるなどと信じているのか?」
「「「む?」」」
それを聞いた大輔もヒカリも賢もむっとなる。
「「「…………」」」
隣のブイモン達も気付かれないように睨んでいた。
「いい歳した大人が何時までも下らない妄想に取り憑かれおって…いい加減目を覚ませ!!」
「………」
ブイモンはゆっくりと立ち上がる。
「お前達の妄想に子供達を巻き込むな!!このままでは一生現実を見れない大人に……」
「おい」
「何じゃ…!?ぬ、ぬいぐるみが動いて…喋っておるじゃと!?」
「…俺はブイモン。爺さんが真っ向から否定したパソコンの中のデジタルな生き物さ。本物を見てもまだ否定出来るか?」
「ば、馬鹿な…これは…夢じゃ…夢なんじゃ…デジタルな生き物など存在するはずが…」
「そうか、なら夢かどうか教えてやる!必殺、ビクトリーくすぐり地獄!!」
「いや、ただのくすぐり攻撃だろ」
「ぬわあああああ!?」
「「とうっ!!」」
ブイモンだけでなくワームモンとハニービーモンまで加勢してくすぐり始めた。
「や、止めろおおおお!?」
「「「止めなーい」」」
道場に老人…主税の笑い声が数十分間響き渡った。
数十分後、ピクピクと震えながら意識を失っている主税の情けない姿があった。
「デジモンを否定する悪は滅びた…」
「「悪人って…」」
主税の哀れな姿に思うことが無いわけではないが、このままでは話が一向に進まないために取り敢えず話を進めることにした。
悠紀夫はデジヴァイスをパソコンに繋げて解析を開始すると…。
「デジヴァイスの製造元…サーバ大陸…ピラミッド…後に子供達の心の性質を反映させた10種類の紋章…」
突然パソコンの画面に映し出された謎の文字、ブイモンが即座に正体に気付いて文字を読み始めた。
自分達と関係のある単語達に大輔達もジッとパソコンの画面を見つめる。
「ゲンナイの隠れ家…?」
“ゲンナイの隠れ家”と言う仕事柄パソコンに触れる機会が多い悠紀夫も知らないサイト名に疑問符を浮かべる。
しかし、デジヴァイスと無関係ではないだろうと確信し、アクセスした。
すると画面に老人のドット絵が現れた。
「初めましてじゃな、わしの名はゲンナイ。デジタルワールドのエージェントじゃ…奇跡の紋章の子供と優しさの紋章の子供…まさか、そちらから此方にコンタクトを取ろうとしてくるとは思わなかったがのう」
大輔と賢を見遣り、次にヒカリを見遣るとゲンナイのドット絵がピョンピョン跳ねた。
「何と…まさか、光の紋章の子供までいるとは…すまんのう、お主のパートナーデジモンは未だに行方が分からんのじゃ…」
光の紋章の子供と呼ばれたヒカリは目をパチパチさせている。
どうやらゲンナイの発言からヒカリにもパートナーデジモンがいるらしい。
行方が分からないと言うのが気にかかるが。
「あなたは一体何者なんです?何故、僕達を知ってるんです?」
「至極尤もな質問じゃな、まずはデジタルワールドのことから説明しようかの?デジタルワールドは現実世界…つまりお主達のコンピュータ・ネットワークの中にある情報、つまりデータを基にして誕生した世界じゃ。ネットの情報やデータが物体として実体化した世界である故にお主達も言うように、デジタルワールドと呼ばれており、デジタルワールドの住人であるデジタルモンスターがいる世界と言うことでデジモンワールドとも言われておる。まあ、分かりやすく言えば、現実世界とデジタルワールドの2つの家があり、インターネットは、その2つの家を繋ぐ道のようなものじゃな」
「へえ…そうなんだ…」
ヒカリがパソコンをマジマジと見ながら呟いた。
「一応は人間の世界と独立した世界と言うことを覚えておいて欲しい。そして、この世界の安定を司っておるのが、ホメオスタシスという監視を行っておるセキュリティシステムの一端。ホメオスタシスは実体を持っておらんので、手足となる存在が必要となる。その手足となってセキュリティシステムの代行を任されているのがわしのような存在なんじゃよ」
「では、僕達のデジヴァイスと紋章を作ったのはあなた達で間違いはないんですね?」
「うむ、デジヴァイスと紋章はお主達の心の性質…大輔とヒカリと後もう1人の紋章はちと特別なんじゃが、お主達の専用アイテムとして作り上げたのはわしと今は亡き仲間達じゃ」
賢の問いに頷くゲンナイ。ゲンナイの言葉に仲間が死んだことを察した大輔達が次の質問をする。
「ブイモンとワームモンはゲンナイさんを知らないようなんだけど何で?」
「それはじゃな、お主達のパートナーデジモンとなるデジタマとお主達専用アイテムのデジヴァイスと紋章を制作し、次の作業に移ろうとした時じゃった。ダークマスターズと呼ばれる暗黒軍団のデジモン達にわしらの計画を知られ、奴らは攻めてきた。わしは何とかデジタマとデジヴァイス、紋章を持ち出すことに成功したのじゃが、3つのデジタマ、紋章、デジヴァイスが落下し、行方が分からなくなってしまったのじゃ…」
「なる程、だからデジタマから生まれた時、俺は独りだったのか」
「僕も…」
ブイモンとワームモンが現実世界に繋がるゲートに飛び込むまでは集落で暮らしつつ、孤独を感じていたようだ。
やはりパートナーデジモンだからだろうか?
同族と暮らしていても微妙な差異を感じてしまい、寂しさが何時までもブイモン達に付きまとっていたのだろう。
「そのうちの2つは何らかの拍子に現実世界に、そしてもう1つのデジモンとデジヴァイス、紋章は行方不明のままじゃ…それが…」
「私のパートナーデジモン……」
ヒカリは顔も知らぬ自身のパートナーデジモンの身を案じた。
独りぼっちで寂しがっていないだろうか?
もし出会えたら絶対に寂しい思いはさせないとヒカリは決意した。
「さて、話を戻すが、お主達は光が丘爆弾テロ事件と呼ばれておるデジモン騒動を目撃しておるな?特にヒカリはコロモンをグレイモンにまで進化させた。」
「いや、ヒカリちゃんはデジヴァイスを持ってないから進化なんか出来ないぞゲンナイさん。」
「デジモンは勝手に進化などせんよ。あの進化は偶然ではない。コロモンはヒカリ達といたからグレイモンに進化出来たんじゃ…大輔達に関してもヒカリ達のデータと共通する部分があった。だから選ばれたんじゃよ…しかし正規のパートナーデジモンではないから急激な進化に心が追い付かず、コロモンはグレイモンの本能に飲まれてしまったんじゃ…コロモンと心を通わせていたお主からすれば、辛い事故じゃったな…」
「…コロモン」
「ゲンナイさん、僕達はどうすればいいんです?ダークマスターズと言う敵を倒せば?」
「ダークマスターズを倒すのもそうじゃが、敵はダークマスターズだけではない。デジタルワールドを侵している暗黒の力を悪用しようとしている邪悪なデジモン達…しかも暗黒の力を取り込んで想像を絶する力を手に入れておる。残念ながら今のお主達では奴らには勝てん。悔しいじゃろうが、今は力を蓄えて欲しい。」
「力か…なら、成熟期よりも上を目指そう!!俺は神聖属性のデジメンタルの力を…」
「僕は完全体への進化だね!!」
ブイモンとワームモンが更なる力を求めて気合いを入れ始め、大輔達も同じように決意を強くし、大人達も出来るだけのサポートをしようと心に決めたのであった。
後書き
今から言っておきます。
及川は死なない。
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