デジモンアドベンチャー Miracle Light
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第7話:3人組
賢とワームモンが仲間に加わったことで以前より効率良く敵を倒せるようになった。
今までは多対一が基本だったので、仲間1人…背中を守ってくれる大輔とは違う意味の相棒の登場はブイモンからすれば喜ばしい物であった。
「ナックルファイア!!」
「スパイキングフィニッシュ!!」
フレイドラモンとスティングモンと技が激突し、今までは自主トレくらいしか出来なかったが、同じくらいの実力の相手が出来たのはブイモンにとって最高のトレーニングが出来た。
「今度はライドラモンだ!デジメンタルアップ!!」
「アーマーチェンジ、ライドラモン!!ライトニングブレード!!」
フレイドラモンからライドラモンにチェンジし、電撃刃を繰り出す。
スティングモンは横に飛ぶことで電撃刃を回避するが、手数はやはり複数の進化を持つブイモンが上回る。
しかしスティングモンは高い機動力を誇るために簡単には攻撃を受けてくれない。
「ライドラモン!!」
「おう!!サンダーボルト!!」
全身から放射された電撃が背後を取ろうとしていたスティングモンに当たる。
「ぐっ…」
「デジメンタルアップ!!」
「アーマーチェンジ、フレイドラモン!!ファイアロケット!!」
クラウチングスタートの体勢で繰り出す体当たり、感電で動きが鈍ったスティングモンに直撃させて吹き飛ばした。
「うぐ…っ!!」
「そこまで!!」
賢がスティングモンの不利を悟って模擬戦を中断させると、スティングモンはワームモンに退化した。
「今回は僕の負けだね…やはり複数の進化があるのは強いよ」
「まあ、フレイドラモンとかライドラモンとかそれぞれの相性の悪い相手と当たった時に臨機応変にやれるのがアーマー進化の特徴だからな」
「アーマー進化か…でも完全体と戦うには力不足なんじゃないかな?」
「まあな、だから俺には神聖属性のデジメンタルがあるんだけど…」
賢の言葉にブイモンはチラリと大輔の紋章を見遣る。
神聖属性のデジメンタルを使おうと何度も挑戦しているのにデジメンタルはうんともすんとも言わない。
「神聖属性のデジメンタルでアーマー進化するとどういうデジモンに進化するの?」
「うーん、フレイドラモンとライドラモンを合体させたような姿になるぜ。この世界で言うケンタウルスって奴に近くなるんだ」
「フレイドラモンとライドラモンが合体……」
ヒカリはそれを聞いて、神聖属性のデジメンタルを用いたアーマー体を想像してみるが、フレイドラモンの上半身とライドラモンの下半身のデジモンと言うイメージが頭に浮かんだのである。
「まあ、とにかく普通のデジメンタルを使ったアーマー体にしては強力とだけ言っとくよ」
「普通?その言い方だと特別なデジメンタルもあるような発言だね?」
「おう、メタル属性のデジメンタルでな。メタル属性は2つあるんだけど、もう1つの…箱っぽいのがあって、それで進化したブイモンは金色の騎士になって、滅茶苦茶強いんだ」
希少なデジメンタルで進化した個体には、完全体に匹敵する個体だけでなく究極体と同等レベルの個体もいるために一部のデジモンに関して言えばアーマー体は、成熟期から究極体まである世代と言える。
「へえ、ブイモンも進化したことあるの?」
「ない」
ヒカリの問いにブイモンはメタル属性のデジメンタルを使用してのアーマー進化はしたことがない。
メタル属性には2種類あり、適合するデジモンの中でも飛び抜けて強い個体にしか使用許可が出なかったようである。
しかもメタル属性のデジメンタルは高純度のクロンデジゾイドメタルで精製された物なので数が非常に少ないのでブイモンが進化したことがないのは当然と言える。
「俺も結構良い線行ってたんだけどなあ…」
深い溜め息を吐きながらブイモンは空を見上げる。
自分が現実世界に来てから大分経つが…一体デジタルワールドはどうなっているのだろうか…。
デジタルワールドの情報処理速度が非常に活性な時期のために、向こうでは数千年の時が経っており、ブイモン達古代種は完全に消え去り、今は末裔が何体かいるだけの状態だ。
早くパートナーに会えた代償に真の同族達とは会えなくなってしまったのだ。
「ブイモン、寂しい?」
「んー、ここしばらく同族を見てないからな~」
こればかりは現実世界で解決出来ないからどうしようもない。
「まあいいさ、今はデジタルワールドよりこっちのことが先決だ。」
現実世界に現れるデジモン達のことを優先すべきだとブイモンは思考を切り替えた。
「そうだね、おやつ食べよ?」
「あ、ヒカリちゃん。作ってくれたの?」
「勿論だよ。大輔君と賢君が頑張ってるし…私にはこれくらいしか出来ないもん」
「なーに言ってるんだよヒカリちゃん。ヒカリちゃんがいるから俺もブイモンも頑張れるんだ。そんなこと言わないでくれよ」
「そうだぞヒカリ。秘密を共有出来る仲間は結構ありがたいんだ。ヒカリのおかげで色々助かってるんだから気にしない気にしない」
「…ありがとう」
ヒカリお手製のおやつを食べながら大輔達はホッと一息を吐いた。
「……ん?」
賢は頭にかかった冷たい物に疑問符を浮かべ、顔を顰めながら空を見上げた。
「…雪?」
「「「へ?」」」
賢の呟きが信じられず、上空を見上げると確かに雪が降っていた。
「なあ、ヒカリちゃん」
「何?」
「今、夏だよな?」
「うん」
「8月17日だよな?」
「うん」
「さっきまで普通に暑かったよな?」
「うん」
「“うん”以外にも何か言ってくれよヒカリちゃん!!混乱してんのかもしれないけど!!」
「段々と雪の勢いが強くなってきたね。今日は早く帰ろうか…ワームモン!!」
「ワームモン進化、スティングモン!!」
ワームモンをスティングモンに進化させ、肩に乗り込むと賢は叫んだ。
「君達も早く家に帰るんだ。風邪引くよ!!」
言った直後にスティングモンは飛び立つ。
行き先は田町の自宅だろう。
大輔とヒカリは寒さに震えながらも急いで本宮家に駆け込んだ。
何せ本来ならまだ暑い時期のために夏服でいきなり真冬並みの寒さが襲ってきただけでなくそれを長時間受けていたら寒いに決まっている。
「お母さーん、大輔とヒカリに温かい飲み物を!!」
慌てて出したのか適当な位置に置かれたストーブの前にブイモンは大輔とヒカリを座らせると、着替えを取りに行く。
「はあ~、今日は本当に寒いわ。夏なのに吹雪とか…」
「うらあああああ!!」
「ぶっ!?」
乱暴に開かれたジュンの部屋の扉を顔面から受け、壁に激突したジュンは気絶し、ブイモンは数日前に片付けた(大輔とブイモンだけでなく何故かヒカリを巻き込んでまで)はずなのにもう汚くなっている部屋のタンスから昔のジュンの古着を取り出して服に臭いが移る前にヒカリの元に向かうのだった。
「それにしても災難だったわね、大輔にヒカリちゃんも。ブイモンはどうしたの?ブイモンの分のココアも淹れたのに」
「ブイモンならさっきジュンお姉ちゃんのお部屋に向かったよ?」
「ああ、ジュンの古着を取りに行ってくれたのね…」
「お母さん、ジュンの古着持ってきたからヒカリにこれを」
「ええ、ありがとうブイモン。ヒカリちゃん、お風呂沸かしたから入って。今日は家に泊まっていきなさい。お家には私が連絡を入れておくから」
「はあい」
温かいココアをちびちび飲みながらヒカリは頷いた。
「それにしても、真夏なのに雪…か…」
ブイモンは真夏であるにも関わらずに大雪になったことに疑問が尽きない。
「大輔…」
「ん?」
「ヒカリちゃんと一緒にお風呂入る?」
「ふえ!?」
「入るか!!」
母親の爆弾発言にヒカリと大輔が動揺し、大輔は思わず叫んだ。
「冗談よ冗談…半分はね…」
「半分本気かよ…とにかくヒカリちゃん。風呂どうぞ」
「う、うん…」
謎の動悸にヒカリは戸惑いながら風呂場に向かうのであった。
ヒカリが風呂に入って、次に大輔が風呂に入り、最後にブイモンの順で体を温めた後、夕食のうどんを啜る。
「熱い…でも美味しい」
真夏であるにも関わらずにいきなり真冬並みの寒さとなり、長時間寒さを味わったヒカリからすれば今この瞬間程うどんを美味しく感じたことはなかったろう。
「暖まるよなヒカリちゃん、ブイモン。」
ブイモンの丼は大輔やヒカリのよりも大きなサイズで当然、うどんの量もそれに相応しい量だ。
しかしブイモンは余裕の表情でうどんを啜る。
「ふう…デジタルワールドにいた時は考えられないよなあ…」
基本的に町のあるエリアに行かなければ調理された温かい料理にありつけない。
育った集落では収穫した木の実をそのまま食べ、肉と魚を焼いたりして食べていたので今の生活は集落の中で過ごすデジモンとしては贅沢過ぎるだろう。
「大輔、ヒカリちゃん。明日は学校はお休みよ。今日は暖かくして寝なさいね…それでヒカリちゃん」
「?」
「今日は大輔の部屋で寝てくれない?」
「はあい」
普通なら同性のジュンの部屋が良いのだろうが、ジュンの部屋は人を入れることが出来ない魔境と化しているのでヒカリは大輔の部屋に…。
「暖かいね。大輔君、ブイモン」
「そりゃあ1つのベッドに3人入れば嫌でも暖かいって」
「普通なら姉ちゃんの部屋なんだけどあの部屋は人を入れられないからなあ」
入れた結果が、ジュンの友人達の悲鳴だったわけだし、ヒカリが病気になる可能性も否定出来ない。
真ん中にブイモンを入れて3人は暖かくして眠ることに。
「寝たか?」
「ええ、3人仲良くしてね」
こっそりと大輔の部屋を開けると仲良く3人で寝ている大輔達の姿に思わず笑みが零れた。
しかし夕食の時間になっても降りてこないジュンを心配して部屋を覗き込む。
「……………」
汚い。
とにかく汚い。
この前無関係なヒカリを巻き込んでまで綺麗にしたはずなのにまた元に戻っている。
顔を真っ赤にして倒れ伏している長女を見る限り、何かにぶつかって気絶していたようだ。
取り敢えず母親は部屋の惨状を見て、心の中であることを決めた。
本宮ジュン
上記の者、3ヶ月間の小遣い半分の刑に処す
本宮母
そして翌日の朝、ジュンの部屋から賑やかな物音が響き渡る中、大輔とヒカリとブイモンは冷えた空気に身を震わせた。
「おはよう父さん」
「おはようおじさん」
「おはようお父さん」
「ああ、大輔にヒカリちゃんにブイモンもおはよう。母さんがジュンのことで忙しいから俺が甘いカフェオレを作ったんだが、飲むかな?」
「「「頂きます。」」」
熱いカフェオレをゆっくり啜りながら、大輔達は外を見遣る。
「「うわあ…」」
外は一面真っ白である。
真夏のはずなのに雪が降り積もっている。
「今日は俺も仕事が休みになったよ。ヒカリちゃん、天気が穏やかになってから帰るんだよ?」
「はい」
大輔達の父親はカップをキッチンに持って行く。
多分洗いに行ってくれたのだろう。
「それにしても不思議だね」
「そうだよな、まさか真夏に雪が降るなんてな」
ヒカリと大輔も不思議そうに空を見上げながら呟くのであった。
「最近はアメリカでは雨が全然降らなかったり、砂漠の所では雨が凄いだったり、アジアでは嵐とか色々おかしいことになってるぜ大輔、ヒカリ」
「異常気象だっけ?」
「そうらしいなあ」
ヒカリの問いにブイモンは真っ白な世界を見つめながら呟いた。
「一体、どうなってるんだろうな…」
眼前に広がる白銀世界に、大輔は多少の不安を抱きながら呟いた。
因みにジュンの部屋が片付いたのは正午までかかったのは言うまでもないだろう。
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