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世界に痛みを(嘘) ー修正中ー

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Extra StoryⅡ
  ビビの心象Ⅰ

 アラバスタ王国王女
 それが私の肩書きだ。

 尤も過去には、アラバスタ王国の転覆を目的に秘密裏に暗躍する秘密結社B・W(バロックワークス)に潜入していた経歴を持っている。

 近年、アラバスタ王国の国内では内乱が絶えることなく、現国王であるネフェルタリ・コブラへの国民達の疑心が募っていた。
 争いの火種が各地に点在することになった背景にはB・W(バロックワークス)の暗躍があることを突き止めた私とイガラムはB・W(バロックワークス)に潜入することを決意する。

 王女から一転、犯罪組織であるB・W(バロックワークス)に在籍することに抵抗感が無かったと言えば嘘になる。
 だが、私も一国の王女であり、将来アラバスタ王国を先導していくことになる身だ。

 愛する臣民と王国の為に体を張らずして、何が王女か
 命を懸けずして何がアラバスタ王国王女か

 当時の私は祖国であるアラバスタ王国を救うべく奮闘し、心に余裕など無かった。
 ましてや一人の男性に生まれて初めて恋慕の情を抱くなどもっての他であっただろう。

 当時の私が現在の私を見れば信じられないとばかりに呆けるに違いない。
 王女としての立場を捨て、一介の海賊になり、一人の男性に懸想の念を抱くなど

 B・W(バロックワークス)という敵組織に身を置き、恋とは無縁の人生を歩んできた私が一人の男性に恋慕にも似た情を抱くなど
 死と隣り合わせの数年間を過ごしてきた自分が気付けば一人の男性の姿を目で追っていた。

 一体何時からアキトさんの姿を目で追っていたのか。
 それは定かではない。
 ただ一つ言えることはこの想いは憧憬(・・)から始まったということだ。

 件の男性、アキトさんと初めて言葉を交わしたのはウイスキーピークであった。
 巨大クジラであるラブーンの捕獲に失敗し、成り行きで当時は敵であったルフィさん達の船に乗った後の出来事だ。
 全ては体面上のB・W(バロックワークス)への貢献の為に

 しかし、それも徒労に終わる。
 イガラムを含めた此方の素性を突き止めた刺客が本腰を入れ始めたのだ。

 Mr.5・ミス・バレンタイン、B・W(バロックワークス)のオフィサーエージェント、精鋭中の精鋭部隊、それも悪魔の実を食べた二人組だ。

 イガラムはボムボムの実のクソ汚い攻撃により倒れ、私はカルーに跨り必死に逃げるしかなった。
 実力差は歴然、地の利は此方にあるが、それ以上に奴らとの間には絶対的な実力差が存在している。
 ならば逃げるしかない。

 背後が爆発
 刻一刻と死の気配が迫り、これまたクソ汚い攻撃が火を噴いた。



 それを一刀両断



 突如、現れるはMr.ブシドー
 助けてくれたのだろうか。

 見れば彼はクソ汚い攻撃を切ってしまったことに嘆いた後に、何故か麦わら帽子の男と戦闘をし始めた。



 うん、訳が分からない
 "昨日の味方は今日の敵"ということであろうか。



あ、Mr.5とミス・バレンタインが吹き飛ばされた



 今更ながら自分達がとんでもない奴らをこのウイルスピークに誘い込んでしまったらしい。

 端的に言って強し
 そして、B・W(バロックワークス)の精鋭、オフィサーエージェント、弱し

 しかし、止まらない。
 両者の戦いの余波が飛び火し、沿岸まで辿り着くことが出来ない。
 激突は過激さを増し、周囲を破壊し、より苛烈さを増していく。




 そこに一人の男性が降り立った。

 文字通り空から自身の前に現れた。
 今なお戦い続ける二人の仲間であろうか。

 髪の色は黒、瞳は真紅の長身の男性だ。
 見れば非常に端正な顔つきをしている。
 その男性は眼前の光景に動じることなく、此方に意識を向けている。

 その瞳に敵意は無い。
 ただ此方の安否を確認した後は目の前で戦う二人をいとも簡単に鎮圧した。

 端的に言って強し
 やはり自分達はとんでもない連中を招いていたようだ。
 もはや後の祭りだが、相手との力量を見誤ったことは愚行と言わざるを得ない。




 その後、B・W(バロックワークス)の追っ手を振り切り、私はルフィさん達と共にウイスキーピークを後にした。

 かけがえのない仲間を犠牲にして



そんな、イガラム……







▽▲▽▲







 蝋人形になってしまった。
 誤字にあらず



おのれ、Mr.3、許さん



 燃え盛る炎の中、目を覚ませば、アキトさんがいた。
 何故、燃えていないのか。
 何故、周囲一帯が暑くないのか。
 疑問は尽きない。

 だが、ただ一つ確かなことはアキトさんが助けに来てくれたことだ。
 やはり彼も能力者であるようだ。

 何の能力者であるかは不明だが、何とも応用性に優れた能力であろうか。
 業火さえも弾き、空中を闊歩するなど並みの能力ではない。

 そして、ただ一つ言えることはアキトさんの手はとても温かった。
 とても包容力がある男性だと漠然と感じた瞬間でもあった。



傍から飛んでくるナミさんの視線が怖かったが……



 どうやらナミさんはアキトさんに恋慕に似た感情を抱いてるようだ。
 肝に銘じておこう。

 そして、リトルガーデンから発つ際に現れた巨大金魚に対するアキトさんのリアクションが薄すぎたことも強く脳裏に焼き付いている。

 どうやらアキトさんは並大抵の事では驚愕に値しないようだ。







▽▲▽▲







 古代の生物が蔓延る太古の島・リトルガーデンを発った後にナミさんが床に伏した。

 顔は激しく上気し、呼吸も荒く、その場に立っていることも困難な状態だ。
 明らかに普通ではない。

 メリー号は瞬く間に大パニックに陥り、ルフィさん達が騒ぎ立てている。
 アキトさんが即座にナミさんを寝室に運び、自分がナミさんの身体をタオルで拭き取った。

 騒ぎ立てるルフィ達はアキトの拳で即鎮圧
 余りの痛みにのたうち回り、声にならない叫びをルフィさん達は上げている。



アキトさん、容赦無いですね



 だが、助かった。
 これ以上声を荒げてしまえばナミさんの身体に響いてしまうだろう。

 ナミさんに一刻の猶予も残されていないのは事実
 だが、それと同時にアラバスタ王国も刻一刻と破滅のレールを渡っている。

 正に板挟みの状況
 ナミさんを選択するか、アラバスタ王国を選択するか。

 葛藤に苦しむそんな私を見兼ねてか、アキトさんが声を掛ける。
 その冷静かつ王女としての選択は間違っていないのだと肯定してくれた。

 今、アラバスタ王国を優先したとしても解決できるわけでもないのは事実
 ならば今ビビがすべきことは後で後悔しない選択をすることなのだと

 それはアキトさんにとって気休め程度の言葉だったのかもしれない。
 葛藤に苦しむ私を元気づけようと何と無しに出た言葉なのかもしれない。

 だが、その言葉で私は救われた。



 思えばこれがアキトさんを特別視するきっかけだったのかもしれない。
 アラバスタ王国王女である私はまだまだ未熟だ。

 あの時、あの場で選択したことは間違っていなかったのだろうか。
 私は本当に正しい選択をしているのか。
 何度も自問自答したことは数知れない。

 そんな自分の背中を後押ししてくれる。
 肯定してくれる。
 それだけでどれだけ救われることか。
 彼は、いや、アキトさんは分かっているのだろうか。

 見ればアキトさんはその端正な顔を曇らせ、ナミさんを見ている。
 苦し気に呻くナミさんの左手を心配げに握り締め、彼女の傍から一時も離れない。
 その紅き瞳にはナミを救い出すという強い意志が宿っていた。



 この瞬間、自身の心の内に憧憬の念が生まれた。

 こんな状況でこんな思いを抱いてしまうのは不謹慎だと分かっているが、思わざるにはいられなかった。
 心より一人の男性から身を案じられ、想われるナミさんのことを少しだけ羨ましく思ったのだ。

 自分の傍にもそんな男性がいれば、どれだけ心休まることか
 どれだけ救われることか

 ナミさんとアキトさんを直視できない。
 ただ、私はそんな湧き上がる憧憬の念から目を背け、ナミさんの寝台に寝そべることしか出来なかった。
 
 そんな私の心境に構わず、メリー号は舵を切る。


 次なるメリー号の目的地は医療大国『ドラム王国』
 
 

 
後書き
「憧れは理解から最も遠い感情だよ」
→現在のビビの心境を表すとこんな感じですね

やはりビビがアキトに対して想いを抱く背景を描く必要があると考え、今回のビビの心象Ⅰを投稿させて頂きました。
本作では敢えてナミやビビの心象を余り描かず、読者達の想像をかき立てることを目的としています
余りナミとビビの心象を描いてしまうと本編の進行の妨げになってしまいますし、作者である私の作風に背いてしまいますしね('ω') 
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