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世界に痛みを(嘘) ー修正中ー

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さらば王女ビビ、また会う日まで

 アルバーナの式典が始まる。

『少し冒険をしました』

 拡声器から流れるはアラバスタ王国王女であるビビの声

『砂漠に存在する僅かな水を探すが如く、過酷な旅でした』

 ルフィ達はビビを仲間に迎えるべく船を進める。
 東の港へ向かい、舵を切る。

 当初の手筈通り東の港が一望出来る場所まで船を近付け、ビビを待つ。
 その場に現れたビビをアキトが抱え上げる形でメリー号へと運ぶ手筈だ。

『ですが、心強い仲間と共に舵を切る旅は何事にも代え難い宝物でした』

 しかし、数多くの船を従えた海軍が彼らの前に立ちふさがる。
 全方位を包囲することでメリー号を徐々に傷付けていく。

 火花が散り、爆炎と爆煙が立ち昇る。

『信じ難い程に力強い島々、これまでの常識が一切通用しない旅は今なお私の心に刻み込まれています』

 黒槍がメリー号に突き刺さり、刻一刻とルフィ達を窮地へと誘う。
 ビビはまだ東の港に現れない。

「ビビ、来ねェな」
「当然だ、ビビちゃんは俺達が海賊になった時とは事情が違うんだ」
「アキトがビビを抱えて、王宮から逃げてこれば良かったんじゃねェのか?」

 無茶言うな、アキトは切実にそう思う。

『──お別れを言わなければなりません』

 立志式も佳境に入る。

『旅はまだ続けたいですが、私はそれ以上にこの国を……』





『このアラバスタ王国を愛しているから!』





『だから、私は一緒に行けません!』

 ビビの声がアラバスタ王国全土に響き渡る。
 彼女の決意表明が全国民の耳に、ルフィ達の耳にも届いた。 

 静かにルフィ達はアラバスタ王国へと背を向け、舵を切る。
 "仲間の印"を掲げ、メリー号は次なる旅へと向かうのであった。










『寂しいぃぃ──』

 力無く両腕を伸ばし、涙ぐむルフィ達
 ビビとMr.2ボンクレーの喪失は彼らの胸に突き刺さっていた。

「ビビィィ……」
「ビビちゃん……」
「ボンちゃん……」

 ただ、アキトとゾロの2人を除いての話だが

「いい加減しつこいぞ、お前ら」

 バッサリと彼らはルフィ達の嘆きを断つ。
 正に諸行無常

 アキトはそんなゾロの同意するように首肯する。
 アキトもどうやらゾロと同意見の様だ。

「うわぁ、野蛮人……」
「クソマリモ……」
「6刀流……」
「倍にしてどうすんだよ!」
「イケメン……」
「おい、ナミ。それ褒めてるから!」

 矢継ぎ早にルフィ達はアキトとゾロに向かう非難の声

「うぅぅ、アキトはビビやボンちゃんに対して何も思わないの?」

 涙ぐみながらナミはアキトに質問を投げ掛ける。


いやぁ、まあ。別に何も?


 ゾロ同様、アキトはMr.2ボン・クレーに対して特に感慨深い感情を抱いているわけではなかった。
 ビビは別であるが

 良い奴ではあったのだろう。
 仲間思いで、陽気で、良識も持ち合わせていた。
 最後にはルフィ達を友達だからと自ら囮を買い、海軍から救ってくれた。

 だが、アキトにとってはそれだけだ。

 Mr.2ボン・クレー
 B・W(バロックワークス)の幹部にしてマネマネの実の能力者
 アラバスタ王国で多数の死傷者を生み出す要因を生み出し、クロコダイルにルフィ達の顔をリークした張本人

 アキトはビビの国を混乱と混沌に陥れた敵であった彼に涙を流すことはどうしても出来なかった。
 海軍から救ってくれたことに感謝させすれど、それとこれとでは別の話である。

「漸く島を出たみたいね、お疲れ様」

 突如、感傷に浸るルフィ達の前に、メリー号のデッキに一人の女性の声が響いた。

「手前ェ、あの時の!?組織の仇討ちか!?」
「何であんたがこの船に当然の様に乗っているのよ!」
「非常事態発生──!非常事態発生──!」
「あの時のお姉サマ~!」
「あー、やっぱりお前生きてたのか?」
「……っておい、アキト!お前、何呑気に寝転がってだよ!?」
「メリー号のデッキで寝ることが駄目なのか?」
「違ェよ!アキトは敵を前にして何も思わないのかよ!?」
「いやぁ、まあ。別に何も?」

 漸くアラバスタ王国の事件が解決し、休養を取ることが出来るのだ。
 少しは休ませて欲しい。

「ああ、それとサンジ……」

 件の女性、ロビンの登場にメロメロになっているサンジにアキトが衝撃の事実を暴露する。







「一体いつからビビがこの船に乗っていないと思っていたんだ?」

 アキトの言葉を皮切りに船室の扉が弱々し気に開かれ、ビビが恥ずかし気にルフィ達の前に姿を現す。
 先程、別れを告げたビビ本人に間違いなかった。

 ルフィ達は余りの急展開に付いていけない。
 B・W(バロックワークス)の元副社長ニコ・ロビン、アラバスタ王国王女ビビの突然の登場にルフィ達は騒ぎ立てるのであった。


「ああ、それと私を貴方達の仲間に入れて」
『ファ!?』

 ニコ・ロビンの何処までもマイペースな発言に船上の喧騒は止まるとこを知らず、混沌が場を支配する。

「ああ、それとビビをメリー号に昨夜秘密裏に運んだのは俺だから」
『は!?』

 何だかんだ似た波長を発する二人であり、アキトはロビンとは気が合うことを直感的に感じ取っていた。






 
▽▲▽▲







 時は少し遡る。

 皆が寝静まり、静寂が場を支配する。
 とある王宮の一室でビビは自身の王であるコブラとその側近であるぺル達と対面していた。

「迷っているのだろう、ビビ?」
「パパ……」

 父の的確な問いかけにビビは狼狽える。

「ルフィ君達の仲間になるか、王女として過ごすかの板挟みの状況に……」

「確かに一国の王女が海賊になることは前代未聞の出来事であることは間違いない。王女として許されることでもないだろう」

 今やアラバスタ王国は復興の最中にある。
 この重要な時期に一介の王女が海賊の仲間に加わり、国を飛び出すなど言語道断だ。

「だがなビビよ、私は一国の王である前に一人の父親だ」

 コブラは自身の愛娘であるビビに優し気に語り掛ける。
 慈しむ様に、安心させるように穏やかな口調で

「親とは誰よりも子供の旅立ちと成長、そして幸せを望んでいるものだ」

 無論、王女としての道を選ぶことも望んでもいるが

「ビビよ、お前にはこれまで随分と苦労を掛けてしまったな」

 一国を脅かす組織、B・W(バロックワークス)へと侵入し、死と隣り合わせの人生を歩ませてしまった。
 そのことに一介の父親として申し訳なく感じていたことは否定出来ない。

「もしもの場合はアラバスタ王国のことは任せておけ。なあに、私には頼りになるイガラムとペル、チャカがいる」

「それに我が愛するアラバスタ王国の国民もな」

 王女としての道を違えようとしているビビをコブラは王ではなく、一人の父親として背中を押す。
 愛する娘の人生に幸あれ、と強く望んで

「ビビ様、成長なされましたな。このペル、感服致しました」
「ペル……」

 次にぺルが王女へと諫言する。

「本当に大きく、逞しくなられた。一国の王女として、そして女性としても……」

 ビビの頬が紅く染まる。
 彼女の反応からコブラ達は確信した。

「何も恥じる必要はありませんぞ、ビビ様」

 チャカのぺルへの援護射撃、その言葉は羞恥に耐えるビビに突き刺さる。

「彼には私がクロコダイルの強靭な力に敗れそうになった折に助けてもらった恩がある。無論、ペルも同様だ」

 ペルも力強く首肯する。

「実力良し、性格良し、ルックス良し」
「かなりの優良物件ですぞ、ビビ様!」
「うむ、ビビよ。彼をあのリストに候補者として記しておこう」
「おお、それは良案ですな、国王様!」
「おお、それでは早速このイガラム、件のリストを探してまいります!」
「ちょっと待って、皆!?」

リストって何!?
候補者って何!?
あとそのニヤニヤした表情止めて!?

「まあ、ともかくだ、ビビよ。自分の心に素直になるのだ」
「パパ……」

 人生は一度きり、愛する娘には悔いのない人生を歩んで欲しい。
 一人の父親としてのコブラは切実にビビの幸せを望む。

「もし、ビビが彼らの仲間になるのならそれもビビの人生だ」

 無論、止めはしない。

「それにあらゆる場合を想定し、アキト君には話を通してある」
「アキトさんに?」

 自身のあずかり知らぬ所で事が進んでいることにビビは驚きを露わにする。

「うむ、有事の際には白電伝虫を彼に渡してあるから、もしもの時は気軽に連絡すると良い」
「パパ……」

 白電伝虫、盗聴電伝虫の電波を飛ばすことが可能な電伝虫だ。

「早急にアラバスタ王国に帰還する必要が生じた折には、アキト君に送ってもらうということで彼に了承を貰っている」

 本人曰く、偉大なる航路(グランドライン)を数時間で逆走可能とのこと
 これならば有事の際にはビビはアラバスタ王国に帰還することが出来るだろう。

 立志式では録音したビビの音声を流し、ビビ本人はルフィ達が出航する前にアキトに送ってもらう。
 因みに立志式では王女が立志式の時点ではアラバスタ王国の国内にいることを強く思わせるために、女装したイガラムに国民の前で踊ってもらう。

 王女ビビは顕在だと、強く印象付けるためだ。
 ビビは別の場所でスピーチを行っているのだと

 その後、アラバスタ王国では王女ビビは国外へと勉学に励むべく旅立った噂を、それとなしに流すことで混乱を防ぐ。
 勿論、コブラ達がそれとなしに裏で手を回すことも忘れない。

 これが計画の全容である。
 無論、アキトはこのことをルフィ達には伝えるつもりはない。

 "敵を騙すにはまず味方から"、要らぬ想定外のトラブルを防ぐべく、万全を期しておく。
 また、仮に政府に麦わら海賊団とアラバスタ王国王女ビビとの関係が露見した場合は、責任を負う約束を交わしてもいる。

 ビビがこのことを知ることは現状では有り得ないが、これが今回の事体の全容だ。





「皆さん、これからもよろしくお願いします!」

 ビビは笑顔一杯にルフィ達へと頭を下げる。

「お前ら、宴だ───!!」

 ルフィの言葉を皮切りにメリー号のデッキ上は新たな仲間ビビを祝うべき、宴を始めた。
 サンジは余りの喜びに過呼吸を引き起こすレベルで喜び、ナミはビビへと抱きついている。

 ビビも心からの笑顔を浮かべ、ナミの抱擁を受ける。
 アキトも静かに笑っていた。

 新たな仲間ビビを加えたメリー号は次なる冒険へと向け、舵を切る。
 ルフィ達の冒険はまだ終わらない。 



To be continued... 
 

 
後書き
これで終わりじゃないよ?
あと、ビビの決意表明に嘘偽りはありませんのでそこはご理解を
流石にアラバスタ王国は白電伝虫を持っているという設定ですのでそこもご了承を

さらば王女ビビ、また会う日まで





→ さらば(アラバスタ王国)王女ビビ、また会う日まで(ルフィ達と海へと出航するから)

という意味深なタイトル

喝采を!ビビのルフィ達の仲間入りに拍手喝采を! 
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