空に星が輝く様に
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206部分:第十五話 抱いた疑惑その十
第十五話 抱いた疑惑その十
「だからな」
「そうだよな。俺達だけで決めていい話じゃないしな」
陽太郎もこう言う。
「それはないよな」
「そうだよな、今は」
「提案ってだけね」
狭山と津島は陽太郎のその言葉も受けた。それから椎名が言ってきた。
「とりあえず提案として受けたから」
「お化け屋敷と喫茶店だね」
赤瀬も言う。
「わかったよ。他にもあったら聞いてみたいし」
「今からもう考えるんだな」
「先に先に考えていく」
こう陽太郎にも返す。
「それが基本」
「そうして動いていくってのか」
「そう。仕事はそうするもの」
椎名は淡々と述べていく。まだ高校一年だがそれでもわかっているのだ。
「だから」
「だからしっかりしてるんだな」
陽太郎はここまで話を聞いて静かに述べた。
「先に先を考えていくから」
「それも何パターンも考えておく」
椎名はまた言った。
「最悪のケースも」
「ちょっと怖い話だな」
「けれど考えておくといい」
そうだというのだった。
「だから」
「ううん、最悪のケースも考えておくとそれへの対処ができるか」
「斜め上の事態もたまにあるけれど」
「斜め上なあ」
「それでも考えておくといい」
あくまでそうだというのである。
「わかった?」
「まあ一応は」
陽太郎は難しい顔で答えた。
「わかったけれどな」
「そうなの」
「とにかく文化祭は絶対するしな」
それは決まっていた。既にだ。
「学校の行事だしな」
「最後にフォークダンスもあったよな」
「そうよね」
狭山と津島はこのことも話したのだった。
「あれってカップルで踊るんだろ?」
「そう聞いたけれど」
「ああ、そうなのか」
陽太郎はそれを聞いてはじめて知った顔になった。
「それでなのか」
「あれっ、御前知らなかったの」
「これ有名な話じゃない」
「文化祭でフォークダンスがあるのは聞いていたよ」
それはだというのだった。
「しかしな。そんな話があったのか」
「そうしたらそのカップルは幸せになれるってな」
「そんな話もあるのよ」
「そうか。だったら」
その話を聞いてだ。陽太郎は心の中で思った。そしてその思ったことをだ。あらためて話すのだった。
「俺も。二人で」
「二人で?」
「二人でっていうとやっぱり」
「あっ、しまった」
失言だった。言ってから気付いた。
しかし言ったことは戻らない。観念して話すのだった。
「ま、まあ月美とな」
「やるねえ」
「相変わらずね」
「と、とにかくな」
陽太郎は必死に話を変えようとしていた。
「考えてみるか、本当に」
「運動会の後で文化祭か」
「とにかくうちの学校って行事もしっかりやるのね」
「そっちの方がいい」
椎名はそれを肯定した。
「何もしないよりずっといい」
「そうだね。何もないと全然面白くないから」
赤瀬は椎名のその言葉に同意して頷いた。
「その通りだね」
「うん。運動会は何もないけれど」
「看板の絵を描いて終わりだしな」
「そうよね」
また狭山と津島が話す。
「まあそれは俺達の仕事じゃないしな」
「絵描けないしね」
これは今ここにいる五人には縁のないことだった。絵を描くということはこれまた特殊な部類に入る技能であるからである。五人共そうした技能はない。
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