リング
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49部分:ローゲの試練その三
ローゲの試練その三
「まずはそこを抑えて拠点とする」
彼は旗艦ケーニヒの艦橋でこう言った。
「そしてそこからまずは周辺星系を掌握していくことにする」
「畏まりました」
その言葉に主席参謀であるフルトヴェングラーが頷いた。
「それではそのように」
「うむ。ではローゲのスイッチを入れてくれ」
「はい」
フロトヴェングラーはそれに従い艦長にそれを伝える。するとモニターに巨大な銀河の三次元宙図が映し出された。その端には今の彼等の場所、そして周辺星系が映し出されていた。
「只今我が軍はここに展開しております」
「うん」
フルトヴェングラーはレーザーで艦隊を指し示す。ローエングリンはそれを見て頷いた。
「そして目標であるミュンヘンはここです」
レーザーがまた動いた。そして巨大な星系を指し示した。
「最短距離はこうなっております」
また宙図が動いた。航路が青い線で映し出された。
「障害物等は事前に避けられております」
「いつもながら見事なものだな」
「いえ、これは私共の出したものではありません」
だがフルトヴェングラーはここでこう述べた。
「これもローゲのものです」
「ローゲのか」
「はい。ローゲがなければここまで出すことはできませんでした」
それは決して謙遜の言葉ではなかった。偽ることのない真実の言葉であった。
「全て。ここまで出したのです」
「西から来る緑の線もか」
「はい」
彼は答えた。
「それが帝国軍、テルラムントの軍の動きだな」
「その通りです。ローゲはそれすらも出してしまいました」
「そうか」
ローエングリンはそれを聞いて頷いた。見ればその緑の線は数条ある。予測される動きを全て出していたのであった。
「これが予想される全ての動きです」
「その全てが理に適っているな」
ローエングリンは緑の線を見ながら言った。
「だが。我等の方がミュンヘンに到着するのは先のようだな」
「はい」
彼は頷いた。
「それに少し遅れて帝国軍が到着する予定です」
「ではそこで迎撃に入る」
「はい」
「そしてその数は」
「五個艦隊」
「互角か」
「その内実も。艦艇の数もほぼ互角です」
「先遣と思われる軍でそこまで出すとはな」
「テルラムントの下にある艦隊の半分近くだそうです」
「彼の艦隊は確か十二個艦隊だったな」
「その通りです」
「その中から五個か。それでまず橋頭堡を築くつもりだったということか。彼らしいと言えば彼らしいな」
ローエングリンはモニターを見上げながら言った。
「あくまで常道に乗っ取ったやり方だ」
「ではこちらも常道に乗っ取ることにしましょうか」
「そうだな。無闇に奇策を用いてもよくはない」
彼もまた正攻法を好むタイプの将であった。奇策よりも常道を好む。そうしたタイプの男であった。
「まずは敵艦のそれぞれの性能を出してくれ」
「はい」
言われるままにローゲが動かされる。そしてそこに帝国軍の各艦のデータが映し出された。
戦艦に巡洋艦、そしてビーム艦にミサイル艦。空母や揚陸艦のものまであった。
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