リング
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48部分:ローゲの試練その二
ローゲの試練その二
「だが今はあの女に戦力を割くことはできないな」
「メーロトの追跡だけで手が一杯ですから」
「ヴェルズングならやってくれると思うがな」
「はい」
部下はその言葉に頷いた。というよりは頷くしかなかったと言ってよかった。
「空母を中心とした艦隊を任せられたのですね」
「そうだ。メーロトは今大軍を率いてニーベルングの帝国に反抗する勢力を潰していっているそうだな」
「その通りです」
「迂闊だった。あの男がニーベルングに寝返っていたとは」
「ですが何の為に」
「さてな。金や地位で動く男ではなかったが」
ローエングリンはそう言いながら席を立った。そして後ろにある窓に顔を向けた。
「今我々もまた動こうとしている」
「はい」
「進撃の準備は出来ているな」
「無論です」
部下は答えた。
「全艦隊の準備が完了しております」
「そうか。では各艦隊の提督達を呼べ」
「はっ」
部下は敬礼で応じた。
「すぐに作戦会議に入る。よいな」
「了解」
こうして各艦隊の司令が召集された。かくしてカイルベルト、ワルター、クナッパーツブッシュ、ベーム、クライバーといった提督達が招集されたのであった。
「よく来てくれた」
ローエングリンはまず彼等を前にしてこう述べた。
「今日集まってもらったのは他でもない」
「はい」
提督達はそれを受けて頷いた。
「今日まで耐えたことを感謝する」
「それではいよいよ」
「そうだ。我が軍は動く」
彼は言った。
「帝国に対してな。攻勢に出る」
「そうですか。思えば長い雌伏の時でした」
ワルターがそれを聞いて言う。
「帝国の崩壊以後。我等はここで時を待っていました」
「そしてその時に備えて兵を養ってきました。その苦労が今報われるのですね」
「そうだ」
ローエングリンはカイルベルトとベームに対して答えた。
「五個艦隊でまずはそれぞれの星系を解放していく」
「はい」
「そして然る後にこちらに派遣されている帝国軍を討つ。よいな」
「わかりました」
提督達はその言葉を聞き頷いた。
「それではすぐに」
「だがここで問題がある」
ローエングリンははやる彼等に釘を刺すことも忘れなかった。
「問題」
「そうだ。その帝国軍の将だ」
彼は言う。
「この星域に派遣されているのはフリードリヒ=フォン=テルラムント提督だ」
「テルラムント」
提督達は彼の名を聞き思わず声をあげた。
「かって帝国で名将と謳われた男だ。知っているな」
「無論」
ベームがそれに頷いた。
「かっての同僚でもありました故」
「そうだ。ではどれだけ手強い相手かもわかるな」
「はい」
彼等はローエングリンの言葉にまた頷いた。
「まさに名将と言えましょう。いささか猪突猛進ですが」
「そうだ。そして気になることが一つある」
「それは」
「彼の参謀だ」
「参謀」
「そうだ」
ローエングリンは言った。
「彼の参謀は女だ」
「女」
「名をオトフリートというらしい」
「オトフリート!?」
提督達はまた固有名詞を口にした。だがそれはテルラムントの名を口にした時とは異なり懐疑的な響きを持つ呼び方であった。
「誰でしょうか、それは」
「やはり知らないか」
「申し訳ありませんが」
クライバーが答える。
「何者なのでしょうか、その女は」
「残念だが私も知らない」
ローエングリンも知らないと言った。
「だがかなりの策士らしい。注意しておくことにこしたことはないな」
「わかりました。では」
「うむ。まずは進撃する」
「ハッ」
提督達は一斉に応えた。そしてローエングリンの指揮の下一路進撃を開始した。最初の目標は既に決まっていた。
ミュンヘン。この辺りで第一の星系であり産業も盛んである。そして交通の要衝であり、ここを抑えることが戦略の第一目標と考えられていた。その為ローエングリンはまずここを目指したのであった。
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