| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

リング

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

50部分:ローゲの試練その四


ローゲの試練その四

「これだけか」
「はい」
「見たところ性能には違いはないな」
「元々同じ軍に所属していたこともあるでしょう。ですが帝国のそれは我等のものとは形が異なりますな」
「ニーベルングらしい。禍々しい外見だ」
 ローエングリンは帝国軍の各艦を見て言う。確かにそれは尖り、それでいて生物を思わせるシルエットであった。
「だが性能に違いがないというのはな」
「そして各艦艇のそれぞれの数ですが」
 またデータが出された。
「こうなっております」
「機動力を重視したものか」
「はい」
 見ればビーム艦と巡洋艦が主体であった。戦艦や空母は殆どなかった。
「ふむ」
 ローエングリンはそれを見てその整った眉を動かさせた。
「見たところあくまで機動力のみを意識した艦隊だな」
「はい。おそらくは我が軍より先にミュンヘンを狙ったものかと」
「我々より早くにか。考えはよかったが」
「間に合わなければ元も子もありませんな」
「だが戦力としては手強い」
 ローエングリンはそれでも敵を侮ることはなかった。
「巡洋艦もビーム艦も。戦力としては申し分ない」
「はい」
「だが。バランスはいいとは言えないな」
「では」
「まずはミュンヘンに入る」
「ハッ」
「それから迎撃に移る。よいな」
「わかりました。では」
「それにしてもだ」
 ローエングリンの分析は続いていた。
「敵が機動力を優先させた艦隊をこちらに向けて来たということは」
「はい」
「敵の本拠地は。ここから離れているのだろうか」
「その可能性は高いでしょう」
 フロトヴェングラーがそれに答えた。
「卿もそう思うか」
「はい。そうでなければ機動力の高い艦隊を派遣するとは思えません」
「うむ」
「我々の現在の本拠地であるブラウンシュヴァイクと比べて。遠いものと思われます」
「問題はそこが何処かだ」
 ローエングリンはそれに応える形で言った。
「それによって今後の戦略が決定する」
「はい」
「ミュンヘンに入り、先遣の艦隊を退けてから情報収集を本格化させるぞ」
「わかりました」
 フルトヴェングラーだけでなく他の参謀達もそれに頷いた。
「それではそのように」
「ローゲもある。通常よりはスムーズに情報収集が可能だろう。それを考えるとこのローゲという生体コンピューターは非常に役に立っているな」
「ですね」
「しかしだ」
 だがローエングリンの疑問はそこにこそあった。
「しかし?」
「このローゲとは一体どういう構造になっているのか」
 彼はそれに関して疑問を抱いていたのであった。
「ただ能力が高いだけではない。自己修復機能まで持っている」
「生体であるからではないでしょうか」
「それでもだ。まるで人間の様に考えているのではないか、と思う時すらある」
「それは」
「詳しいことはブラックボックスになっているのだったな」
「残念なことに」
 参謀の一人がそれに答える。
「詳しいことはわからないようになっています」
「開発した者ももういないな」
「第四帝国崩壊の時のバイロイト破壊で」
「死んでいるか」
「はい。ですが一つわかっていることがあります」
 別の参謀がここでローエングリンに対して言った。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧