リング
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219部分:ラグナロクの光輝その七十三
ラグナロクの光輝その七十三
「影武者ということもあるしな」
「声だけということもある」
「ふふふ、ここは私の宮殿だ」
クリングゾルはそんな七人に対して笑いながら言った。
「何故小細工なぞ用意する必要があるか」
「ではそこで我々を待っているというのか」
「その通りだ。早く来るがいい、アースの末裔達よ」
彼はまた七人を呼んだ。
「そして私と最後の戦いを行うのだ。アースとニーベルングの」
「その部屋でか」
「不服か?」
「いや」
七人はそれには首を横に振らなかった。
「そこが卿の死に場所というのなら」
「我々は喜んでそこに行こう」
「死ぬのは果たしてどちらかまだわからぬがな」
その声には絶対の余裕があった。死ぬのはどちらか、彼はそこも声に含んでいたのであった。
「覚悟を決めたのなら来るがいい」
挑発さえしてきた。
「私は待っている」
「ならば」
七人はそれを受けて遂に立ち上がった。
「行こう」
「クリングゾル=フォン=ニーベルング、そしてアルベリヒ=フォン=ニーベルングよ」
彼の名も呼ぶ。
「そこで決着を着けようぞ」
「待っていろ」
そして遂に部屋に入った。そこは。漆黒の間であった。
「灯りは」
「心配無用だ」
すぐにニーベルングの声が返ってきた。すると部屋の左右に次々と灯りが灯ってきた。
その中に赤紫の玄室が映し出される。その奥に。彼は立っていた。
「遂にここまで来たな」
その男ニーベルングは七人に対して言った。
「アースの戦士達よ」
「これで会ったのは二度目だな」
七人はクリングゾルを見据えて言葉を返した。
「スルト以来」
「そうだったな。だが一人違う者がいるな」
「はい、全てを思い出しました」
パルジファルがすっと前に出て来た。
「かつての貴方との戦いを。バルドルと呼ばれていた頃のことを」
「どうやら記憶は全て蘇ったようだな」
「ええ」
パルジファルはこくりと頷いた。
「おかげで。全てを思い出しました」
「そうか、それは何よりだ」
「そして思い出したのは過去だけではありません」
「現在もか?」
「未来も。私は全てを知ったのです」
「ノルンめ、何を卿に見せたのか」
クリングゾルはパルジファルのその言葉にシニカルな笑みを浮かべた。
「未来なぞ既に決まっているというのに」
「さて、それはどうでしょうか」
「何が言いたい」
「細かいところまでは見ることは出来ませんがおおよそのことは私も見えました」
先程扉を開けたところで攻撃が来なかったことは見えてはいなかったのだ。彼が見る未来とはあくまで広大なものであり些細なものではなかったのである。
「未来は一つだけではありません」
彼は言う。
「少なくとも貴方の思い描くものだけではないのですよ」
「面白い、では卿等の未来を見せてもらおう」
クリングゾルは笑いながらそう述べた。
「今からな。では行くぞ」
「むっ」
六人はそれを受けて散った。戦いがはじまったと思ったのだ。だがパルジファルは動かない。まだその場に立っていたのであった。
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