リング
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218部分:ラグナロクの光輝その七十二
ラグナロクの光輝その七十二
「罠はないのか」
「罠か」
「そうだ、あのニーベルングのことだ。何かしらの罠をこの宮殿に配していると考えた方がいい」
これはトリスタンの言葉であった。
「罠だけでなく伏兵もだな」
次にローエングリンが述べた。
「あの男のことだ。やはりそうしたものを配していると考えた方がいいな」
二人の言葉を受けてヴァルターが言った。
「ならばこの先は慎重に進むべきか」
タンホイザーがそれに続く。
「そうだな。さもなければ死ぬのは我々だ」
ジークフリートが頷いた。
「だったらよ、七人で纏まって行こうぜ。どのみちそのつもりだったんだしな」
「ああ」
そして彼等はジークムントの言葉に応えた。そのまま周囲に警戒を払いつつ正面の廊下を進んでいった。
廊下も周りの壁も鏡の様に磨かれている。それ自体は非常に美しいものであった。だがその赤と紫の中間を思わせる色が不気味なものを漂わせていた。そこがまるで魔宮であるようにだ。
「まだ何もないな」
「そうだな」
七人はその中を慎重に進みながら話をしていた。
「まさかこのままニーベルングのところまでいけるか?」
「いや、そうもいくまい」
そう言いながら一歩一歩着実に進んでいく。これまではトラップにも伏兵にも出会ってはいなかった。それは幸運であろうか果たしてより狡猾な策略の為であろうか。彼等はまだそれを知りはしなかった。
「ニーベルングだからな」
「そうか」
「そういうことだ。油断は禁物だぞ」
「うむ」
パルジファルが先導していく。時には曲がり、時には確かめ。そうして道を進んでいく。やがて。彼等は巨大な赤い扉の前にやって来た。
「ここです」
パルジファルはその扉の前で言った。
「以前はここに彼がいました」
「主の間というわけか」
「はい」
「遂にだな」
「ここまで何のトラップも伏兵もなかったが」
「扉を開けたら、というのは考えられるな」
六人はすぐに左右に散った。そして扉の端に張り付く。
「いいか、総帥」
その後でパルジファルに声をかけて顔を向けた。気は扉に集中させている。
「扉を開けたらすぐにどちらかに飛べ」
「おそらく敵は我々が来ることを知っている」
監視されていると予想しているのだ。だからこそ言ったのだ。
「いいな」
「ええ、わかっております」
それはパルジファルも読んでいた。すぐにでも動きをとれるように構えていた。
扉を開ける。今最後の門が開かれた。
パルジファルはすぐに右に跳んだ。すぐに攻撃をかわす為だ。だが。攻撃は来なかった。
「!?」
「妙だな」
七人はそれを見て眉を顰めさせた。必ず来ると思っていたからだ。
「どういうことだ」
「これも何かの罠か」
「わからないな」
流石にこれは予想していなかった。扉の両端で攻撃態勢に入ったまま止まる。だがここで声がした。
「安心してよい、アースの戦士達よ」
「その声は・・・・・・ニーベルングか」
「そうだ、私だ」
彼もそれに応えた。それは確かにクリングゾルの声であった。
「私がこうして卿等に声をかけてくる理由がわかるか」
「ここに来いというのか」
「そうだ」
クリングゾルは答えた。
「その通りだ。ならば話は早い」
「どう思う?」
「さてな」
七人の戦士達はそこに罠を感じていた。そこまでクリングゾルという男を信頼していなかったのだ。
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