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200部分:ラグナロクの光輝その五十四
ラグナロクの光輝その五十四
彼女達はビブロストに案内した。その細長い回廊を通っていく。
「この道は長い間アース族の中でも限られた者しか知りませんでした」
「そうだったのですか」
「はい、我々のうち何人かがここを通り」
「そしてノルン銀河に広がっていったのです」
「ではノルン銀河の発展には貴女達が大きな力となってきたのですね」
「はい」
彼女達はそれに頷いた。
「それは否定しません」
「第一帝国もそうでありました」
「最初の帝国も次の帝国も」
「ですが第三帝国は」
「ホランダー族が」
そうなのだった。第三帝国はホランダー族の国であったのだ。それはもう彼も知っていたがあえて話されることであった。
「そうです、ですが第四帝国でまた我々の手に戻り」
「次の国は」
「ニーベルング族か、それとも二つの血脈を受け継いだ者か」
「二つの血脈!?」
この言葉の意味はワルキューレ達にもわからなかった。
「総帥、それは一体」
そしてパルジファルに問う。
「どういう意味なのでしょうか」
「私達にもわかりかねますが」
「リェンツィ帝のことは御存知ですね」
「はい」
「第四帝国の最後の皇帝です」
「彼の子供のことは聞いておられるでしょうか」
「勿論です」
パルジファルの艦隊は回廊の中を進む。その中で話を続けていたのである。
「幼子の時に姿を消したとか」
「そして今だに行方が知れないと。そう聞いております」
「そうです。ですが」
パルジファルはその言葉に頷いたうえで述べた。
「その子供が生き残っていたとしたら」
「えっ」
「そして彼がアース族とホランダー族の血を引いていたとしたら」
「確かリェンツィ帝の皇后は」
ワルキューレ達はここで自らの記憶を辿った。辿りながら答えを探す。
「ゼンタ。ゼンタ=フォン=ダーラント」
「ダーラント家の長女でありました」
ダーラント家は帝国においては屈指の名門であった。タンホイザーの仕えるチューリンゲン王家やトリスタンのカレオール家、ローエングリンのブラバント家に並ぶ名門とされている。文官の家であり代々重要な政治家を出している。彼女の父もまた帝国において数々の要職を歴任しており、その関係から娘が皇后となったのである。バイロイト崩壊の折に皇帝と共に死んだとされている。
「ダーラント家は第一帝国の時からの歴史があります」
「はい」
「アース族の血ですが」
「第二帝国の時には既に名家でありました」
パルジファルはさらに話を続けた。
「第三帝国においても。かなりの力を持っていました」
「まさか」
ここで彼女達は気付いた。
「そうです、系譜にはれっきとしたホランダー族の者もいますよ」
「それでは」
「その皇子は」
「はい、アースとホランダーの血を引くのです」
パルジファルは話を核心に持ってきていた。
「その二つの血を」
「それは一体誰ですか?」
ブリュンヒルテはどうしても気になった。若しその人物がいるならば彼が次の国の主となる。アースとホランダーの血脈により。嫌でも気になるというものであった。
「首領です」
「首領!?まさか」
「はい、ジークフリート=ヴァンフリート首領こそその皇子だったのです」
「まさか」
「いえ、これは事実です」
パルジファルは驚きを隠せないブリュンヒルテに対して述べた。
「その証拠に皇子が姿を消したのは二十二年前」
「はい」
「首領がワルキューレの先代の首領に拾われたのも二十二年前。年が一致します」
「ですがそれだけでは」
「その容姿もまたリェンツィ帝と生き写しですが」
「それもありますが」
「まだありますよ」
パルジファルはさらに述べた。
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