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199部分:ラグナロクの光輝その五十三
ラグナロクの光輝その五十三
「ですから我々も彼に気付かれることなくそのビブロストを利用してきました」
「成程」
「そして今それを使います」
「ですが総帥」
ワルキューレ達はパルジファルに対して念を押す顔で言う。
「この作戦は敵に気付かれてはなりません」
「念を押しますがくれぐれも」
「わかっております」
パルジファルの言葉には何の余念もないものであった。
「ビブロストに向かうことを申し出た時からそれは注意しております」
「左様ですか」
「ですから今回率いている艦艇にも特殊な塗料を使い身を隠しております」
「成程」
その言葉に頷くのだった。
「くれぐれも。見つからないように」
「では安心して宜しいのですね」
「この作戦は一隻でも一瞬でも見つかれば終わりです」
パルジファルはまた述べた。
「そのことはよくわかっているつもりです」
「それでは」
「ここは総帥に全てをお預けします」
「有り難うございます。それではビブロストは」
「はい」
九人を代表してブリュンヒルテが応えた。
「こちらになります」
会議室のモニターに宙図を映し出す。そこの一点をレーザーで指差した。
「ここにあるのです」
「そこですか」
「ええ」
そこはムスッペルスヘイムから丁度直角に曲がった場所であった。そこに道があるというのだ。
「ここから入られるのです」
「そこから帝国軍の後方に回り込むのですか」
「おそらく帝国軍はここにいます」
ムスッペルスヘイムからの入り口を指し示した。
「七匹の竜と共に」
「入り口で迎撃するのですね」
「どうやら。少なくとも一つに固まり、そこに竜達もいることは確実です」
「そこで決戦を挑むつもりなのですか」
「元よりそのつもりなのでしょう。指揮官はおそらく」
「クリングゾル=フォン=ニーベルング自身」
やはりといった感じであった。彼の名が出たのは。
「ですね。最後の戦いですから」
「彼も後がないことはわかっています」
「それであえて私達をヴァルハラに引き込んだ」
「それには裏があるのがわかっています」
「ええ、それは」
パルジファルはワルキューレ達の言葉に頷いた。
「切り札がありますから」
「それが七匹の竜」
「とりわけファゾルトです」
「ファゾルトへの備えは出来ていると思いますが」
「だからこそこちらへ参りました」
その言葉には確かな裏付けがあった。
「それでは」
「ええ、持って来ています」
そのうえで述べたのであった。
「槍を」
「竜を倒す槍をですか」
「はい、それはその時に御見せします」
「では安心して宜しいですね」
「是非共」
パルジファルは言葉を返した。その言葉には何の迷いも見られなかった。
「では」
ワルキューレ達もその自信を見て最後の決断を下した。普段は至って物静かなパルジファルがここまで言うのならば安心だと判断したからでもある。
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